市村正親ら演じる家族の愛と絆の物語!2021年版ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』公演レポート


2021年2月6日から東京・日生劇場でミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』が上演されている。本作は、1905年―帝政ロシアの時代、アナテフカという寒村を舞台に、酪農業を営むお人好しで働き者のテヴィエ(市村正親)とその家族の愛と絆が描いている。日本初演から54年目を迎えても幅広い人から愛される名作の2021年版の模様を舞台写真と共に紹介する。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、1964年ブロードウェイで初演され、トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、脚本賞、作曲賞など7つもの賞を獲得。ブロードウェイでの上演は72年まで8年間も続き、3242回という、当時としては記録的なロングランを達成。1967年に日本初演され、2004年からは“21世紀版”『屋根の上のヴァイオリン弾き』と銘打ち、市村正親がテヴィエを務めてきた。

2021年版でも市村が6度目のテヴィエ役を演じ、妻のゴールデを鳳蘭が務めている。信心深く楽天家で愛情深い、ちょっとだけ気弱な市村のテヴィエと、市村から「最強の女房」と言われるほどの存在感を放つ鳳蘭の“肝っ玉な”ゴールデのコンビはこれで4度目。2人が演じる夫婦はまさに“お似合い”。25年連れ添い、5人の娘たちを愛し、貧しいながらも幸せな日々を送る姿は微笑ましくほっこりとあたたかくて心地よさそうだ。

そんな夫婦に愛されている娘たちとして、長女・ツァイテル役を凰稀かなめ、次女・ホーデル役を唯月ふうか、三女・チャヴァ役を屋比久知奈が務めている。唯月は2017年公演のチャヴァ役から役替わりでホーデルを演じ、凰稀と屋比久は今回が初参加。優しく、賢く、働き者、時には両親を困らせる娘たちをとてもキュートに演じている。

物語は、“仲人婆さん”という異名を持つイエンテ(荒井洸子)が、ツァイテルに縁談を持ってきたことから始まる。金持ちで肉屋のラザール(ブラザートム)からツァイテルを後妻に迎えたいと申し出を受けたテヴィエは、ラザールが自分より年上であることを気にしつつも、金持ちの家に嫁ぐならツァイテルが幸せになれるのではと、酔った勢いでついつい結婚に同意。長女の結婚相手が見つかったことで妻のゴールデも大いに喜ぶが・・・実はツァイテルには仕立屋のモーテル(上口耕平)という結婚を誓った相手がいたのだ。

ユダヤの人たちであるテヴィエ一家。ツァイテルは、両親の祝福が無ければ結婚は許されないというユダヤの厳格な戒律と“しきたり”から、テヴィエに「祝福してほしい」と懇願する。本作のテーマはここにある。結婚に必要なのは「愛」なのか「金」なのか?政治的思想と、理想の家庭は両立するものなのだろうか?宗教の違いを超えて、人は幸せになれるのだろうか?親の信念を子供たちに押し付けることは良いことなのか?など、激変する世界情勢の中、いつの時代でも、どの国でも通じるテーマが描かれている。

ツァイテルだけではない。次女ホーデルは革命を志す学生のパーチック(植原卓也)を追ってシベリアへ旅立つことになり、三女のチャヴァはロシア人学生のフョートカ(神田恭兵)と結婚したいと言い出し駆け落ち同然で家を飛び出すことになってしまう。

娘たちが恋に落ち、その相手に寄り添いたいと心に決める度、テヴィエは葛藤する。信心深いからこそ“しきたり”を守ろうとするが、娘たちには心の底から幸せになってほしいと願う。革命の足音がする中、非情な現実と理想、しきたりと願い、いろんなものに挟まれたテヴィエはゴールデと改めて愛を深めながら手を取り合いながら答えを導き出していくのだ。

家族の幸せを第一に考え、明るく素直な姿で周囲から好かれる父・テヴィエに家族を切り盛りし貧乏な中でも力強く生きる術を娘たちに教える母・ゴールデ、控えめながら縁談を断って純愛を貫き通した長女・ツァイテル、革命の波にさらわれていくパーチックと愛を誓い、添い遂げるため厳しい地へ行くことを決意する次女・ホーデル、本を通して交流を深めた異教徒のフョートカと駆け落ちする三女・チャヴァ、そして2人の幼い妹。このあたたかく愛おしい一家がどこに辿り着くのか、気になって仕方がなくなるだろう。

初日公演のカーテンコールでは市村が「コロナで世界のエンターテインメントが苦しんでおります。ブロードウェイもウエストエンドもまだ再開の見込みが立っていない・・・そんな中で、『屋根の上のヴァイオリン弾き』の初日を迎えられたことが本当にうれしいです。ありがとうございます」と深々と頭を下げ、「稽古から通し稽古まではずっとマスクをしっぱなしでした。今回新しいメンバーが沢山いて、どんな顔をしてるのか、ようやく拝見することが出来て非常にうれしかったです」と笑顔に。本当は観客とも顔を合わせて・・・と願いを零しつつ、3月までに東京の他、愛知、埼玉を巡れることを楽しみにしている様子だった。

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』は下記の日程で上演。第一幕1時間45分、休憩25分、第二幕1時間15分の計3時間25分を予定している。

(取材・文:エンタステージ編集部3号/写真提供:東宝演劇部)

公演情報

ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』
【東京公演】2021年2月6日(土)~3月1日(月) 日生劇場
【愛知公演】2021年3月5日(金)~3月7日(日)
【埼玉公演】2021年3月12日(金)~3月14日(日)

【出演】
市村正親、鳳蘭、凰稀かなめ、唯月ふうか、屋比久知奈、上口耕平、植原卓也、神田恭兵、ブラザートム

真島茂樹、石鍋多加史、青山達三、廣田高志、荒井洸子、祖父江進、かとりしんいち、山本真裕、品川政治、日比野啓一、北川理恵、園山晴子

板垣辰治、大森輝順、佐々木誠、附田政信、楢原じゅんや、尾関晃輔、佐野隼平、酒井銀丈清水錬
鈴木結加里、真記子、真田慶子、竹内晶美、飯塚杏実、松本弥恵、渡辺京花
神田愛莉、池田葵

【公式サイト】 https://www.tohostage.com/yane/

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