11月10日配信!『読奏劇』佐藤流司「芥川龍之介 著/藪の中」レポート


『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』の第8弾、佐藤流司の朗読「芥川龍之介 著/藪の中」が、11月10日(火)21:00より配信される。“朗読をMV風に仕立てる”この「読奏劇」の最後を飾る佐藤の作品。“佐藤流司”という役者の求心力と、集中力の高さを感じさせた撮影現場の様子をレポートする。

本企画には、佐藤のほか、有澤樟太郎、太田基裕、大平峻也、北村諒、崎山つばさ、橋本祥平、牧島輝(50音順)と計8名の俳優が参加。俳優たちが“読みたい”と抱いたイメージから、国内外の文学作品をピックアップし、それぞれに合った作品を選出。佐藤は、誰もが知る「芥川龍之介」の作品に、今一度向き合ってみたいとこの作品を読むことを決めた。

1922年(大正11年)に発表された芥川龍之介の「藪の中」は、ある殺人事件について尋問を受けた7人の証言が並ぶ物語。それぞれ、自分の見たこと、知っていることを検非違使に語るが、内容は微妙に食い違っており、矛盾が生じていく。話を進めば進むほど、分からなくなっていく真相・・・。タイトルの「藪の中」は、慣用句の語源にもなった。

撮影前、ミュージカル『刀剣乱舞』のMVなどを担当してきた鎌田哲生監督とイメージをすり合わせる打ち合わせが行われていた。最初に、佐藤に伝えられたのは「正面のカメラを検非違使に見立ててほしい」というオーダー。「なるほど」と佐藤が頷き、軽い本読みへと入った。

佐藤が読み始めてすぐ、「いいですね、声がいい」と監督の顔をほころぶ。今回の朗読はすべて1人の俳優のみで行うため、人物の演じ分けをどうするのかが肝となる。読みすすめるうちに、佐藤の中にしっかりとしたイメージがあることを悟った監督は、この時点で人物表現について細かな演出をつけることはせずに任せることを決めたようだ。

打ち合わせを終え、撮影準備に勤しむ監督の足取りは軽い。佐藤の様子に、クリエイター魂が触発されているようだった。佐藤は有澤と同日に撮影を行っており、『読奏劇』としてはこの日が本格的な始動の日。まったく違う2人の芝居の色が、シリーズの方向性と未来図、そして「いい企画になる」という手応えを生んでいったように感じた。

カメラが回るぎりぎりまで佐藤は本に目を落とし、小声で朗読を繰り返していている。静かに文章を身体になじませていっているようだった。最小限に設置した照明が、濃いめに焚かれたスモークの中に、強い陰影を生んでいく。

様々な角度から佐藤の表情を捉えるため、複数のカメラが佐藤に向けられる。正面には、“検非違使”のカメラ。「よーい、スタート!」の声に、ゆっくりと佐藤が台本から顔を上げた。厚めの前髪の奥、瞳がキラリと光った。

「藪の中」の登場人物は、「木樵(きこり)」「旅法師」「放免」「媼(おうな)」「多襄丸」「懺悔する女」「巫女の口を借りた死霊」という、4人の目撃者と3人の当事者。撮影は、登場人物ごとに区切って行われた。

佐藤は、ほぼ椅子に座ったまま朗読を行った。しかし、ひとたび声を放てば様子が一変。声色、表情はもちろん、スタジオの中の空気もガラリと変わる。空気に呑まれるように、撮影クルーが固唾を呑んで朗読を進めていく佐藤を見守る。

そして、聞いていて気づいたことがあった。佐藤は「鼻濁音」(やや鼻にかかったガ行の音)の効かせ方が非常にうまい。鼻濁音は、日常会話の中では使われることが非常に少なくなっているが、言葉を“音”として美しく届け、“伝える”上で非常に大きく作用するという。

ハスキーでよく響く低音の声に、意図的なのか、無意識なのか、巧みに織り交ぜられる鼻濁音。朗読だからこそ際立つ、佐藤という役者の魅力であり、武器。佐藤自身も「耳でも楽しめるように」と意識していたようだが、朗読だからこその良さを存分に味わうことができる。

撮影は、前半と後半でセッティングを変更して行われた。大方、順調に進んでいたのだが、「媼(おうな)」の場面は、トラブルにより数度撮ることに。「おうな、呪われてますね(笑)」と笑いながらも、集中力を切らさず、最後まで佐藤の中にあるイメージをしっかりとカメラに向けて演じきっていた。

カメラというフィルターを通して、佐藤流司という「役者の中」に分け入っていくような感覚。その奥に見える顔は・・・。真相は、貴方の目でお確かめを。

作品情報

『Dream Stage -読奏劇-』

【#8】11月10日(火)21:00~
佐藤流司
朗読作品:「芥川龍之介 著 / 藪の中」
チケット:https://ima-ticket.com/event/188

※配信開始後、途中入場可
※アーカイブ配信あり

シリーズ作品配信中
【#1】アーカイブ配信(11月30日まで)
太⽥基裕
朗読「シャルル・ペロー 著/眠れる森の美女(原題:眠る森のお姫さま)」
https://ima-ticket.com/event/117
【#2】アーカイブ配信(11月30日まで)
⼤平峻也
朗読「小泉八雲 著/雪女」
https://ima-ticket.com/event/118

【#3】アーカイブ配信(11月30日まで)
崎⼭つばさ
朗読「太宰治 著/走れメロス」
https://ima-ticket.com/event/119

【#4】アーカイブ配信(11月30日まで)
橋本祥平
朗読「ヴィルヌーヴ 著/美女と野獣(原題:ラ・ベルとラ・ベート『美し姫と怪獣』)」
https://ima-ticket.com/event/120

【#5】9月30日(水)21:00~
牧島輝
朗読「宮沢賢治 著/注文の多い料理店」
https://ima-ticket.com/event/158

【#6】11月4日(水)21:00~
北村諒
朗読作品「夢野久作 著 / 瓶詰地獄」
チケット:https://ima-ticket.com/event/186

【#7】11月7日(土)21:00~
有澤樟太郎
朗読作品「小川未明 著 / 負傷した線路と月」
チケット:https://ima-ticket.com/event/187

【公式Twitter】@dreamline_inc
【公式サイト】https://dreamline.link/dream_stage
【チケット】イマチケ https://ima-ticket.com/dreamstage

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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