「発信していくことが大事」小泉今日子が『asatte FORCE』に込めた未来への思い


2020年10月1日(木)から東京・本多劇場で小泉今日子がプロデュースする公演『asatte FORCE』が上演されている。10月18日(日)まで、ペヤンヌマキが主宰する演劇ユニット「ブス会*」の公演やとくお組によるオンライン連動型演劇、西城秀樹について語り合うトーク&ライブや朗読劇など14演目を日替わりで上演している本作。新たな挑戦に溢れた今作にプロデューサーとしてだけでなく、脚本、演出を務め、演者としても登場する小泉に本公演にかける思いなどを聞いた。

元々この時期にプロデュース公演を予定していたが、キャスティングが終わりそろそろビジュアル撮影を・・・というタイミングで新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が行われ、公演するか否かを悩んでいたそうだ。

12月に出演予定だった舞台も中止になり、小泉は「キャストやスタッフの皆さんにお詫びをして、『いつか必ずやろう』ということで元々予定していた公演を延期にする決断をしました」と振り返り、「劇場の予約だけが残っていて、その時点で手放してもキャンセル料は払わなきゃいけないしな・・・と考えた時に、出来る限りで何かを発信するべきなんじゃないかと思ったんです」と語った。

劇場やスタッフ、演者もコロナの影響で断念したものが多くあった。そこで小泉は「そういう方たちの受け皿になれたらというのと、日頃やってみたいと思っていてもなかなかできなかったことをこれを機にやってみたらどうだろうと」と考え、「そんな日々の中で、フランスの学者が『コロナの後には利他的な社会が生まれるべきだ』と仰っていたのがすごく脳裏に残っていて、自分の得になるだけではなく、他者の得にもなることが自分にとって“利”なのでは、と言う考えに至ったんです」と今回の公演開催を決意したという。

本公演で小泉は予定していた公演をやむなく中断した劇団を招いたり、朗読劇で構成台本や演出を務め、14演目中8演目に出演するなどさまざまな事にチャレンジ。大忙しの中でも充実しているようで、今回特に思い入れの強いとして挙げたのが10月13日(火)上演の『わたしの茶の間 沢村貞子の言葉』と10月14日(水)上演の『あなあきい いん ざ にっぽん 殿山泰司の言葉』。

小泉は「殿山泰司さんと沢村貞子さんの随筆を若い頃から読んでいて、とても尊敬する大好きな役者さんなのでいつか何かできないかなと思ってたんです。2人とも明治、大正生まれなんですけど、戦争をくぐり抜けているからこその経験が描かれているんですが、今改めて読んでも今我々が社会に対して感じていることが書かれているんです。それが嬉しいことでもありとても怖いことでもあり・・・と感じたので、観にいらしたお客様にも同じように感じて、何かを考えるきっかけになったらなと思いました」としみじみ語った。

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朗読『わたしの茶の間 沢村貞子の言葉』には小泉も参加しており、峯村リエ、村岡希美、西尾まりと共に、沢村の言葉を紡いでいくことに。「いろんな経験をなさって、80歳で女優を引退してからは横須賀の海が見えるような部屋で執筆活動をされて、それで旦那様をみとって、1、2年でご自身も・・・という沢村さんの人生の深みは一人や二人じゃ出せないと思って、4人で演じることにしました。4人の女優のそれぞれの声とかそれぞれの生きてきた感覚とか経験とかが物語を紡ぎ出していくので、すてきな公演になると思います」と自信を見せた。

また、最終日である10月18日(日)に上演される『ピエタ』は元々この時期に公演を予定した演目だとか。未発表の演目だったが、元々作・演出を務める予定だったペヤンヌマキに朗読用に書き直してもらって峯村、石田ひかりと共にリーディングの形で上演することに。小泉は石田との共演は初めてとのことだが「昔『悪女(わる)』(1992年)というドラマがあって、そこで石田さんが演じていた役が素敵だったんです。今は優しい役が多い印象なんですけど、そういった面もまた見たくて『ピエタ』ではツンとした貴族の役をやっていただくことにしました。ご本人も『最近優しい役が多かったからこの役がいただけてとても楽しみ』と仰ってると聞いたので、すごく楽しみなんです」と期待を口にした。

一方、「私の役はどちらかというと逆のタイプなんですが、『ピエタ』では一番真面目な役を(笑)。意外性を楽しめると思います。あと峯村さんには高級娼婦のすごいかっこいい役を演じていただきます。私も貫禄があれば一番やってみたかったくらいすてきな役です」と語り、「登場人物がほとんど女性なんですけど、面白いキャスティングが出来ていたので今回リーディングとして上演しますが、必ずリベンジして舞台でちゃんと描きたいです。元々原作の小説が大好きで・・・18世紀のベネチアのお話なので、セットとか衣装とかどうしても凝りたくなっちゃって、理想が高くなっているんです(笑)。だからまたちゃんと整えてみんなと公演したいなと思います」と並々ならぬ思いを秘めているようだ。

そして、この公演を通して「いろんなことを網羅したかった」と語る小泉は「赤字になってしまうと思うし、今の私たちの“利”にはならないかもしれないけど、長い目で見たら自分たちにとっても演劇業界にとっても“利”になるんじゃないかと思っています」と今回の挑戦が将来に繋がると語る。「ここで試せたことはことはきっと他の人にもできるという目安になるし、私達『明後日』にとっての“隠し球”がまたいくつかできたという感じになるんじゃないかなと思ってます」。

最後に、「みんなで横に一列並んで、『ここに立っているんだ!』ということを発信していくことが大事なんじゃないかと。今発信しないと世の中がもっと辛くなっちゃう気がしていて。それがモチベーションにもなっているんじゃないかなと。一致団結してやるという思いを今の状況の中で改めて意識して、強くなったと思います。巻き込んでしまっているスタッフみんなには申し訳ないなと思いつつ・・・(笑)、キャスト、スタッフ全員で一生懸命やっているので笑顔で終われたらいいなと思います」と改めて本公演に込めた思いを語った。

『asatte FORCE』は本多劇場で10月18日(日)まで上演。チケットは発売中。各公演、Streaming+(ストリーミングプラス)での配信でも楽しむことができる。

【配信チケット】https://eplus.jp/asatteFORCE/
9月24日(木)12:00から10月31日(土)21:00まで購入可能。
【公式サイト】https://asatte.tokyo/asatte-force/

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