2020年10月6日（火）に東京・PARCO劇場にてねずみの三銃士の第４回企画公演『獣道一直線!!!（じゅうどういっちょくせん!!!）』が開幕した。「ねずみの三銃士」とは、生瀬勝久と池田成志と古田新太によるユニット。3人が発案したネタをベースに、宮藤官九郎が新作を書き下ろし、河原雅彦が演出する。初日前には、公開ゲネプロが行われた。
「ねずみの三銃士」は、これまでに『鈍獣』（2004年）、『印獣』（2009年）、第22回読売演大賞優秀作品賞を受賞した『万獣こわい』（2014年）を同劇場で上演。今回、6年ぶりの新作であり、新生PARCO劇場のオープニング・シリーズとして行う本作には、ゲストとして2度目の舞台出演となる山本美月、池谷のぶえのほか、脚本を手掛ける宮藤が出演者として初参加している。
本作で描かれるのは、男性3人の殺人事件を巡る物語。殺害方法も三者三様、無関係と思われた被害者3人だが、大金持ちで、同じ婚活サイトに登録し、同じメーカーのED治療薬を飲んでいたという共通点があった。これに関心を持ったドキュメンタリー作家が取材を続けていくと、“苗田松子”という一人の女性の存在が浮かび上がってくる。
3人の被害者と“苗田松子”は、それぞれに関係があった。決して美人ではない、どこにでもいる地味な女に、男たちはどうして騙されたのか。はじめは被害者を滑稽に思っていたライターだったが、彼女を取材するうちに･･･。
（以下、一幕の内容に触れています）
公開された一幕冒頭には、生瀬はパニック気味な俳優、池田は心配性すぎる俳優、古田は酒好きの俳優として登場。個性が強すぎる3人が臨んだオーディションに、池谷がそれを凌駕する謎のプロデューサー風の人物として現れ、男たちに無茶振りをし、なぎ倒していく。
宮藤が扮するのは、山本が演じるかなえと結婚したばかりのドキュメンタリー作家・関。“魔性の女”と呼ばれる苗田松子に興味を持った彼の前に、今度は池谷が苗田松子として現れる。池谷は、男たちを虜にし、「作品を残したい」という自信に満ち溢れた松子役で、ねずみの三銃士と肩を並べる怪演っぷりで女優魂を見せつける。
「ねずみの三銃士」が演じる俳優たちは、そのドキュメンタリーに出演することになる。話が進むうちに分かったのは、被害者となった男性たちにはED治療薬を飲んだ影響で、池田の演じる“苗田松子”が、山本の演じる“苗田松子B”に見えている、ということ。天真爛漫に輝く山本は、二つの役を通して違った女性の“怖さ”と抗えない魅力を放っていた。
曲者だらけのゲストたちを迎え、さらに自由に舞台上ではじける「ねずみの三銃士」は一層楽しそうに見える。いや、こちらが楽しく観ているのか。双方、「やっぱり生の舞台っていいね」と言いたくなる演劇が戻ってきた。
ねずみの三銃士 第4回企画公演『獣道一直線!!!』は、以下の日程で上演。上演時間は約2時間35分（休憩20分含）を予定。
【東京公演】10月6日（火）～11月1日（日） PARCO劇場
【長野公演】11月5日（木）～11月8日（火） まつもと市民芸術館
【北海道公演】11月13日（金）～11月15日（日・祝） カナモトホール（札幌市民ホール）
【京都公演】11月19日（木）～11月23日（月・祝） ロームシアター京都 メインホール
【福岡公演】11月27日（金）～11月29日（日） 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【高知公演】12月3日（木）～12月6日（日） 高知県立県民文化ホール オレンジホール
※テレビ高知開局50周年 記念公演
【沖縄公演】12月11日（金）～12月13日（日） アイム・ユニバース てだこホール
※浦添市市制50周年記念事業・PARCO-CITY 1st Anniversary
【公式サイト】https://stage.parco.jp/program/judo
コメント紹介
◆宮藤官九郎
6年ぶり4回目、俳優としては初出場の宮藤です。
関という、ドキュメンタリー作家の役で出演しています。
自分で書いたストーリーを、全く知らないテイで取材するという演技が、
こんなに難しいとは思っていませんでした。
「お前が書いたんちゃうんけ」と一瞬でも思われたら負けですので。
なおかつ、三銃士と池谷のぶえさんが全力でふざけ倒す中、
全く面白いことを言わずに笑いを取らなきゃいけない。難しい。
でも、山本美月さんの夫という、自分以外の作家は絶対に書いてくれない役なので、
楽しんで演れるよう、とにかく免疫力を高めていきたいです。
◆河原雅彦
僕はいつだってこんな芝居を観たいと思っていて、今回もただただそんな気の違った芝居になりました。
ねずみの三銃士が結成されて16年･･･いまだに自分たちで作るしかないですよね。他に誰も作ってくれませんから。
注意事項としては、替えのマスクをご持参されるといいかも。
きっと幕間で交換したくなるので。
それぐらいご自身の飛沫でマスクが濡れると思います。
演出してる僕が何度もそうなりましたもの。
思わず笑っちゃうとこ多くて。
◆生瀬勝久
私事ですが、この春、実現出来なかった舞台があり、忸怩たる思いで過ごしていました。
今回の芝居も、どうなるのかとても心配な毎日でしたが、ようやく初日を迎えられそうです。
出演者、スタッフ一同、お客様に「ああ、やっぱり生の舞台が良いね！」と言っていただけるよう、
精一杯創りました。劇場でお待ちしております。
◆池田成志
いよいよ「獣道一直線!!!」初日です。このコロナ禍の中、演劇というものの価値が各人各位で変容したり、向上したり、下降している中、我々は敢えてというか、寧ろ必要以上にいつもの、スタイルでお送りします。PARCO劇場はじめ各地でやります。劇場の感染対策等は、しっかりやっておりますゆえ、ご心配は重々承知ごもっともでございますが、2、3時間の間、やな事忘れに来ませんか？･･･でもどうしよう、もっとやな気持ちにさせちゃったら？ ヨロシクです。
◆古田新太
開幕直前を迎えて、鋭意努力中でございます。宮藤くんのホンは、表は愉快だけれど裏は忙しく、ずっと着替えてます。短いコントの目白押しです。全体的には少し怖いお話になると思うのですが、それまでにはお客様には下品なお笑いを楽しんでいただくべく、工夫しております。おいらは工夫という言葉が大嫌いなのです。工夫をして良くなった試しがありません。ですからなるべく思い付きでやろうと思っていますが、工夫をせざるを得ません。なぜならば、工夫をしないと上手くいかない構造になっているからです。頼んだ人間としては、よくもまあ、こんな面倒くさいホンを書きやがるものだと。それを演出のリーダーがきっちりやろうとするから、我々アクターは大変です。今回の裏のテーマは、「俳優って大変ね」です。それを少しでも感じていただけましたら幸いです。
◆山本美月
何事もなく皆で無事に初日を迎えられそうで安心しています。
稽古が始まったばかりの時は、6年ぶり人生2回目の舞台、久しぶり過ぎて右も左も分からない状態だったので、毎日緊張ばかりしていましたが、皆さん優しく丁寧に、色んなことを教えていただけました。日々勉強の毎日です。
本番も、精一杯頑張ります。たくさん笑えて面白いけど、ちょっとこわい素敵な舞台を是非多くの方に楽しんでいただけたらと思います。
劇場でお待ちしてます。
◆池谷のぶえ
1作品にお1人出演してたら充分の、演劇魔人が集うねずみの三銃士･･･に加え、演出の河原さん、脚本・初共演の宮藤さん、舞台で初共演の美月ちゃんと、刺激的な作品づくりの日々でした。このような時期に舞台ができること、それもこんなにぶっ飛んだ作品ができることに感謝です。実際のとある事件が元になっているのでそうした見方もできますが、全く違う見方もできると思います。個人的にはなぜだか泣けてきます。ぜひ皆様の楽しみ方でご覧ください。
（1枚目・15枚目撮影／細野晋司）
（取材・文・撮影／エンタステージ編集部 1号）
