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味方良介、井上小百合、植田圭輔、つかこうへいの言葉に突き動かされる俳優たち・・・蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』開幕レポート

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2020年7月10日(金)から7月12日(日)の3日間、東京・紀伊國屋ホールにてつかこうへい没後10年追悼イベント 朗読 蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』が上演される。本作は、通常公演を中止し3日間の「朗読劇」へと変更、客席半分・有料ライブ配信として行うもの。初日前には、出演者の味方良介、井上小百合、植田圭輔、そして演出の岡村俊一が登壇し、公演にかける想いを語った。

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もともと、つかこうへいの没後10年を偲び企画された「つかこうへい演劇祭」の1つとして、紀伊國屋ホールで約1ヶ月の公演期間を予定していた本作。中止を余儀なくされたが、追悼イベントとして「朗読劇」を企画、ソーシャルディスタンスを確保した形で観客を客席に入れる決断をするも、チケットは約1,000枚しか用意できなかった。

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要望を受け7月10日(金)の初日公演で有料ライブ配信が行われたほか、本日新たに7月23日(木・祝)から7月26日(日)の4日間5公演の追加公演が決定したことが発表された。

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会見では、上演までの経緯が明かされた。一旦中止となったが、つかこうへいの10年目の命日に何か“演劇”を届けることができないかと企画されたのが、今回のイベントだった。「こういう形でだったらできるのではないか」と編み出されたのが朗読劇の形式だったが、本番までの約1ヶ月間、リモートを含めた稽古を進めていく中で、徐々に俳優たちの中に台詞が入り、朗読劇という形式はおぼろげになっていったという。

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演出の岡村は、「最初は半分くらいが朗読だったのに、どんどん朗読じゃなくなっていって、6月が終わる頃には8割朗読ではなくなってしまった。ひょっとしたら、つかさんが『紀伊國屋で俺の命日になにやってるんだ』と言っていたのかもしれません。俳優の力というものはおそろしいもので、ソーシャルディスタンスを保ちながらも“今できること”の形が出来上がっていったんですよね。実際の形で稽古ができたのは10日ほどでしたが、その短い時間で俳優が自分たちの表現したいこと、届けたいものを見てやってください」とここまでの経緯を振り返る。

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そして「(こういったご時世ですが)皆さんには、劇場で演劇を観る権利があると思います。この紀伊國屋ホールでは、すごい俳優がたくさん生まれましたが、観客からも今の日本の演劇を支えるクリエイターが生まれてきています。文化を継承していくためにも、我々は強い気持ちで演じ続けなければと思っています。よろしくお願いいたします」と語った。

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岡倉銀四郎役を演じる味方は、話だそうとしてすぐに「あの・・・」と言葉を詰まらせた。うっすらと涙もにじんでいるように見えた。「・・・ちょっと泣きそうですね。何を話そうか考えていたんですけど・・・ 劇場にいるってに最高ですね!幸せだし、演劇をできること、つかさんの命日にここに立てるということ・・・こんなに幸せなことはないなと思います」と一言一言を噛みしめる。こんな味方は見たことがない。

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そして、「やれることは稽古でやってきたし、これが舞台に乗って僕らの力でお客さんにどれだけ届けられるかも楽しみだし、『蒲田行進曲』という作品を紀伊國屋で、と待っていてくださった方もたくさんいらっしゃると思うので。その想いに恥じぬよう120%、200%の力で燃え尽きたいなと思います。朗読劇と言っていますが、進化型です。どこが朗読劇なんだ?と思われるかもしれないですが、皆さんに観ていただいて、楽しんでいただけたら僕はもう、それだけで満足です」と力を込めた。

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小夏役の井上は、つかこうへい作品初参加。乃木坂46卒業後、6月に本多劇場で行われた企画『DISTANCE』にて一人芝居を経験するなど女優として邁進する井上は、「いろんな困難を乗り越えて、劇場でお芝居ができるというこの奇跡に感謝しております。人によって演劇は必要ではない存在かもしれないですが、自粛期間を経て、私にとって誰かと泣いたり笑ったりする時間は、生きる上で大事なものなんだなと改めて思いました。いろんなリスクを背負って劇場に来てくださる方々に、絶対に届けられるものがあると信じて。楽しんでいきたいと思います」と喜びを噛み締めた。

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同じく、つかこうへい作品初参加となるヤス役の植田は、「今日という日を迎えるまでいろんなことがありまして。出演させていただくことが決まったのはもう随分前で、僕にとっても皆さんにとってもどんどん状況が変わっていきましたが“それでも今、できること”を目指して、試行錯誤しながら今日を迎えられたことを光栄に思います」と挨拶。

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「僕は、つかこうへい氏にはお会いしたことはないのですが、今日という日につかさんの作品で演じられるということは、僕の人生においてもすごく大きな意味があると思っています。それはきっと、ご覧になるお客様にとっても。きっと、この日のために(役者を)続けてきたんだろうなと思うぐらい、気合い十分です。みんなでがんばって作り上げました。全然朗読劇じゃないです(笑)。胸を張ってこう言えることは、きっととてもいいことなんだろうなと思います。魂を届けますので、ご覧になる方も魂で受け取ってください。よろしくお願いします」と自信の表情を見せた。

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一同が、口にした「朗読劇と銘打ったけれど、すでに朗読劇じゃない」ということ。味方は、以前『熱海殺人事件』の朗読を経験したこともあるそうで、「(つかこうへい作品は)朗読でやるものじゃないなと・・・。稽古の中で、岡村さんにも『やってみますけど、無理じゃないですか?』と言ったんです(笑)。つかこうへいさんが書いた台詞には、文字を超越する力があるんですよね。生きた人間が作った時間は、やっぱり“文字”じゃなくて“言葉”に現れるので」と正直な気持ちを吐露。

そして、「正直、もはや朗読劇の範疇ではないんですが、朗読のよいところも意識して背負った新しい形が出来上がったと思っています。僕は難しいことはよく分からないんですけど、この世界がものすごく好きで、仲間と作る“演劇”がやっぱり大好きだと改めて思わせてくれた機会になりました」と続けた。

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井上も、「作品によって朗読に向き不向きがあるとおもうんですけど、(つかさんの作品は)100%合わなかった・・・(笑)」と苦笑い。悩みながらも、「本当はがっと距離を詰めていきたいところを、感情で心をその距離まで持っていかなければいけないところがたくさんあって、すごく勉強しました」と成長の糧にしているようだ。

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植田は「これは朗読?演劇?はっきりしてくれよ岡村さん!と言いました(笑)」と明かしながら、「エネルギッシュな作品なので、僕たちが体感してる時間軸で言葉が発せられていくから、どうしても本を置いてしまいたくなることがすごく多くて。そこを、みんなで協力して調整しながら“朗読劇”に見えるようにしました(笑)。なんじゃこりゃ?と思われるかもしれませんが、これは僕らに突きつけられた挑戦であり、この世界で生きていく意味みたいなものを感じています」と、意欲的な姿勢を示した。

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確かに朗読劇の概念が吹っ飛ぶぐらい、役者たちが台本に目を落としている場面は少ない。つかこうへい作品は長台詞が多発するが、覚えずには、身体に入れずにはいられなかった俳優たちの衝動のようなものが、舞台からほとばしる。しかし、確かに朗読劇でもある。『蒲田行進曲』と言えば“階段落ち”のシーンが有名だが、その表現は本を持っていなくとも確かに朗読だった。

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今目の前にいる役者・・・生きている人間が放つ熱量は、同じ空間を共有するものにも“生”をいやというほど意識させる。この時勢の中で、俳優たちは生きる場所を奪われた。同じように、観客も心の豊かさを奪われた。少しずつ歩みだしつつも、完全な日常が戻ってくるのはまだまだ先だ。それでも求めずにはいられない、今、できることを。

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岡村は「どんな制約があっても、役者というものはこれだけ美しいんだというところを観てもらえたら」と語っていた。その言葉どおり、もどかしい距離を汗と涙でぐちゃぐちゃになりながら心で埋めていく俳優たちの姿は壮絶に美しかった。

なお、当初発表されていた公演分のチケットはすでに完売しているが、追加公演として決まった7月23日(木・祝)から7月26日(日)の公演のチケットは7月19日(日)に販売開始となる。詳細は、公式サイトにてご確認を。

【公演詳細】https://db.enterstage.jp/archives/2723

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