河合郁人(A.B.C-Z)主演ミュージカル『天国の本屋』開幕レポート「人生で今、一番歌っています」


2020年1月17日(金)に東京・よみうり大手町ホールにてミュージカル『天国の本屋』が開幕した。原作は、日本だけでなく、海外でも出版されているベストセラー小説「天国の本屋」(松久淳+田中渉/新潮文庫刊)。これまで舞台化や映画化もされてきたが、今回初のミュージカル化を果たした。主演の大学生・さとし役は河合郁人(A.B.C-Z)、ヒロインのユイ役は井上小百合(乃木坂46)、物語のキーパーソンであるヤマキ役はブラザートムが務めている。初日前には、公開ゲネプロと囲み会見が行われた。

(以下、話のあらすじに触れています)

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就職活動中のさとし(河合)は、企業の面接を受けても自分がどんな仕事をしたいのか語ることができない中途半端な大学生。そんなさとしを見つけた怪しげな中年男、ヤマキ(ブラザートム)は、天国の本屋店長代理としてさとしをスカウトし、期間限定で天国へ連れて行ってしまう。

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わけが分からないまま天国に連れてこられたさとしは、本屋の店員でいつも不機嫌にしているユイ(井上)や仲間たちと共に「ヘブンズブックサービス」で働くことに。最初は「なんで俺が本屋なんかで働かなきゃいけないんだよ」とイライラしていたが、本屋に来る子どもたちに本の読み聞かせをしているうち、さとしの気持ちに変化が生まれていく。やがてユイの存在が気になり始め、ユイが天国に来た理由を知ることで二人の距離が近づいていくのだが・・・。

さとし役の河合は、冴えない大学生が『ヘブンズブックサービス』で働くことで、徐々に変化していく姿を巧みに表現。ユイへの恋心を上手く伝えることができず、何度か怒らせてしまうのだが、ユイに少しでも近づきたいと必死になる様子が純粋で胸がキュンとなる。

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そんなユイはいつも不機嫌で怒鳴り散らしてばかり。同じ職場にいたら大変・・・といった感じだったが、彼女にはそうならざるを得ない暗い過去があった。そんな過去を乗り越えるきっかけとなったさとしに少しずつ心を開いていき、素直なかわいらしい女性になっていく過程を井上は丁寧に演じていた。

さとしとユイが働く「ヘブンズブックサービス」の店長・ヤマキは、店をさとしに任せて旅行に出てしまったりするつかみどころのない男だが、次第にさとしとユイにとって重要な存在であることが分かっていく。一見チャラチャラしているのだが、二人を温かく見つめるブラザートムの落ち着いた演技が良い。

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この作品は、オリジナルの歌が非常に多く「ヘブンズブックサービス」でキャスト全員が歌い踊るシーンが盛りだくさんだ。天国が舞台というからにはもっと違う雰囲気をイメージしていたが、とにかく明るく楽しい。私たちが想像している天国とは違うイメージを描いており、劇中「天国」と「現世」の関係性について説明が入るところがおもしろい。本当にそういう関係性ならホッとするかも・・・と思う人もいるのではないだろうか。

華やかで、かつハードな舞台だが、河合と井上をまわりで支えるキャストたちの達者ぶりが素晴らしい。歌とダンスが盛りだくさんということもあり、元劇団四季の末次美沙緒や数々のミュージカルに出演している佐々木崇をはじめとした実力派たちが顔を揃えた。彼らのパフォーマンスが、河合と井上が繰り広げるラブストーリーをしっかり彩っている。ブラザートムがアドリブで笑わせたり、コメディー要素もたくさんあるのだが、観終わったあとに、あたたかい気持ちになる作品だった。

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ゲネプロ公演終了後、河合郁人(A.B.C-Z)、井上小百合(乃木坂46)、ブラザートムが囲み会見に登壇。初日を迎えるにあたり河合は「稽古が12月と1月に行われ、年をまたいだため長かったような短かったような感じですが、今は準備万端で、キャストの皆さんも初日に向けてしっかり作りこんできているとゲネプロを終えて感じました」と力強く語った。

ラブストーリーは初めてで、お互い人見知りで最初は大変だったという河合と井上。河合が「最初はなかなか話すタイミングがなかったんですが、役の上でも二人は最初うまくいかない状態が続くので、普段の二人とつなげてできればいいとポジティブに考えてやってきました」と語れば、井上は「今回の現場は初めましての方が多くて、人見知りなので苦労しましたが、12月、1月と稽古が続いていて、クリスマス、年末、誕生日の人も多かったので、いろいろなイベントを通してみんなと一致団結して作ってきたという感じがありました」と笑顔で語った。

そんな二人を見てきたブラザートムは「すごくおもしろかった。二人がどんどん近づいていくシーンがあるじゃない。それなのになかなか近づかないのよ。照れ屋の人っておもしろいなあと思いましたよ。でも最終的にはプロの力でなんとかなったからすごいよね」と笑った。

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曲の多さについて質問がおよぶと河合は「多いです!今までA.B.C-Zの曲、ほとんど歌っていなかったんだなと思いました。人生で今、一番歌っています。改めて先輩方、(堂本)光一くんとかすごいんだなと思いましたし、ミュージカルってすごいなって感じました。途中寝られない日が何日か続いて、ちょっと怖かったんですが、今は楽しんでできるようになりました」と人知れず苦労していたことを明かした。

井上は「ここまでオリジナルのミュージカルというのは初めてなので、その日に届いた音源で『じゃあ歌ってみよう』という感じで、聞いたこともない歌を稽古場でいきなり歌ったりしました。でも、そのおかげでどんどん臨機応変に対応できるようになって、キャストのみんなと一致団結できたのかもしれません」と苦労したことがチームワークにつながったと語った。

また、今回の公演では高い場所に立つシーンが多い。そのため、河合が“高所恐怖症”ということがバレてしまったのだという。高い場所にユイと二人で座り、手を握るシーンでは、「ユイの手をギュっと握っているのですが、たぶん、相当力が強くなっていると思います」と河合が言うと、井上は「怖いんだろうなあって思っていました(笑)」とにっこり。

河合にとってはいろいろなことに挑んだ公演なので、誰に観てほしいか問われると「ラブストーリーを演じている自分を見られるのは恥ずかしいから、(A.B.C-Zの)メンバーは観に来てほしくないかも・・・。でも先輩方には観てほしいし、特にラブストーリーを上手く演じるキスマイ(Kis-My-Ft2)の藤ヶ谷に見てほしい」とアピール。

ラブストーリーを演じるにあたり、どう演じればいいのか困ったため、母親に相談したという井上は「母は初日に来る予定だったんですが、私の話を聞いて後半に行くことにすると言ってきました」と明かした。「相談して具体的なアドバイスはもらったの?」とブラザートムが聞くと「がんばれ!としか言われませんでした(笑)」と笑った。

最後に河合は「心温まる素敵な作品になっておりますので、観に来られる方はぜひ楽しみにしていてください。よろしくお願いします」という言葉で会見を締めくくった。

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ミュージカル『天国の本屋』は、以下の日程で上演。上演時間は、2時間20分(休憩なし)を予定。

【東京公演】1月17日(金)~1月25日(土) よみうり大手町ホール
【大坂公演】1月31日(金)~2月2日(日) サンケイホールブリーゼ

【公式サイト】https://www.tengokuno-honya.com/
【公式Twitter】@Tengoku_Honya

(取材・文・撮影/咲田真菜)

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