村井良大、三浦涼介ら恋する人々がてんやわんや!?『ラヴズ・レイバーズ・ロスト』レポート


2019年10月1日(火)に東京・シアタークリエで開幕したミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』。シェイクスピアが生んだ傑作喜劇『恋の骨折り損』が、設定や展開、キャラクターを現代的にアレンジされ、ロックサウンドの賑やかなミュージカルに大変身した。2013年にニューヨークで上演された本作だが、日本ではこれが初演。本記事では、村井良大、沙央くらま、渡辺大輔、入野自由、大山真志、中別府葵、田村芽実、伊波杏樹、樋口日奈、三浦涼介らが繰り広げる恋の“てんやわんや”をレポートする。

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物語はシンプル!禁欲生活を誓った大学の同級生の男4人が、やってきた女4人に恋をする。しかし、友人の手前そんなことは口が裂けても言えない。みんながみんな、こっそり恋を成就させようと奮闘するのだが・・・。

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原作では4人は一目ぼれをするが、本作では「それぞれが大学時代に相手と淡い恋心を抱きあっていた」という設定になっている。それによって、女性側の複雑な心情も描かれる。「やっぱり素敵!」「本気だったのに・・・」。再燃しくすぶる思いは男も女も同じ。果してこの恋、どうなるの!?怒涛の音楽とダンスで、嵐のような恋の大騒ぎが始まる。

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国王と同窓生を演じるのは、村井、渡辺、入野、三浦。それぞれの恋する思いを一人で吐露するシーンは、原作でも見どころのひとつ。キャラクターがはっきりしていて、様々な恋の表現を楽しませてくれる。

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禁欲生活に納得がいかないビローン(村井)は、詩に思いをしたため想い人に伝えようとする。豊かな表情からはやんちゃさを感じさせながらも、力強い歌声で仲間と物語を率いていく。

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ロマンチストのデュメーン(渡辺)は、パジャマ姿で情熱的に歌う。スーツを着ている時は真面目な顔なのだが、恋をすると一転。コミカルなダンスと妄想のギャップがかわいらしく見えてくる。会見でも話題になった「ロングトーン」の豊かな声量には、客席から大きな拍手が起こった。ロンガヴィル(入野)は、子どもっぽさとワイルドな面を同時に持つ男。ギラつく衣裳と照明で魅せるタップダンスは、恋の興奮が弾け飛んでいるよう!

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そして「禁欲」の言いだしっぺ、国王ファーディナンド(三浦)は終始、苦悩の表情。それでも押さえられない恋心を、跪いて真剣に伝えるシーンは、まるでたくさんの少女たちが、かつて夢見た王子様そのものだ。三浦の歌うソロナンバーには、客席を巻き込むドキドキの演出も・・・。

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そんな男達の恋の迷いなどいざ知らず、女たちは強気である。フランス王女は(中別府)はちょっと気位が高くて意地っ張り。王ファーディナンドのことが気になるのに、悪態をついたりからかったりするばかり。まるで好きな子に意地悪をしてしまう子どものようで、その分、外からみると相手に惹かれていることがよく分かる。

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キャサリン(伊波)はクールでドライ。ちょっとやさぐれているようにも見えるけれど、4人の中では冷静に恋を楽しんでもいるよう。一方、マライア(樋口)はとっても無邪気。意地を張る王女の横でも、いつもニコニコとしている。衣裳や踊り方で、それぞれの個性が表現されているのも楽しい。

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そしてロザライン(沙央)は、ビローン対して素直になった方がいいのかをずっと悩んでいる聡明な女性。恋をして裏切られたら怖い・・・でもどんどん惹かれていく・・・。好きな相手とどう接したらいいのか。ただの照れだけでない、大人の恋との向き合い方の迷いを体現している。

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お互いに数年前から気になっていたということで、恋の不安や、なかなか成就しないやきもきに感情移入ができる。また、長い原作を100分に凝縮しても説得力がある。一気に奔り抜けるような、スピーディーで嵐のような恋物語だ。

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恋する8人だけでなく、周囲の人たちの個性がとても強い。その筆頭が、国王の同窓生の一人、アーマード(大山)だ。お金持ちすぎて庶民の感覚が分からなくなったのかと思えるほど、服装は派手だし、考え方も唐突。村井演じるビローンとは学生時代に(表面上だけは)仲が良かったようだが、ビローンには腹の中で「利用しよう」と考えられている。役柄としてはそんな関係だが、村井と大山の久しぶりの共演に、心躍る方も多いのではないだろうか。ミュージカルで再びの共演が叶った二人のシーンは、なんだかとても楽しそうだ。

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そしてこのアーマードも、酒場で働くセクシーなジャケネッタ(田村)に恋をする。しかし、彼女に宛てた恋文のセンスは最悪。会見で大山本人が「下ネタ満載の歌があります。引かないでください・・・(笑)」と言ったほど、歌詞を聞き取るとかなり下品なのだが、この恋文が8人の男女の恋を大きく左右することになる・・・。

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アーマードの召使モス(石川新太)が大のネコ好きで、独自の愛を追求しているのも、物語を華やかに彩る。女性グループに付き添う王女の友人・ボイエットを演じる一色洋平のキレのある演技は、コミカルさを倍増させ、女性たちの先生・ホロファニーズ(木村花代)とナサニエル(ひのあらた)もそれぞれの愛に生きている。・・・大人の方が、自分の心に素直に動いているのかもしれない。

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また、ジャケネッタ役の田村、チャラい放浪者・コスタード役の遠山裕介、警官役の加藤潤一らの歌とダンスも人間的で生々しく、おしゃれな貴族たちの恋愛ストーリーに違う味を加えていた。

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“骨折り損”とは「ものすごく苦労すること」。けれども恋は、その過程が苦しくても、傍から見たら滑稽だったり、振り返ってみれば楽しかったりもする。どんなに骨が折れても、恋することはやめられない。シェイクスピアは『夏の夜の夢』などドタバタなラブストーリーをいくつも書いているが、古今東西どの時代でも、恋する気持ちは変わらないものなのだと感じられる。登場人物たちが恋に浸るように、思いきり歌とダンスに身を任せれば、鮮やかで華やかな怒涛の恋を楽しめるだろう。

なお、劇場を訪れる際には、ぜひ時間に余裕を持って行かれることをオススメしたい。できれば「喉が乾いていているな」「“ドリンク”が欲しいな」と思うぐらいの状態で。

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ミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』は、以下の日程で上演。上演時間は、約100分を予定。

【東京公演】10月1日(火)~10月25日(金) シアタークリエ
【兵庫公演】11月1日(金)~11月4日(月・休) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【福岡公演】11月9日(土)・11月10日(日) 福岡市民会館
【愛知公演】11月16日(土)・11月17日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール

【公式サイト】https://www.tohostage.com/loves-labours-lost/index.html

(取材・文・撮影/河野桃子)

 

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