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京極夏彦の言葉に松崎史也、橘ケンチら感無量『魍魎の匣』顔合わせ現場レポート

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2019年6月から7月にかけて、京極夏彦の大人気小説「百鬼夜行シリーズ」の中でも最高傑作の呼び声高い『魍魎の匣』(講談社文庫)が、EXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチ主演で上演される。1,000ページを超える大作を、演劇という手法でいかにして表現するのか――。エンタステージでは、その始めの一歩となる顔合わせを取材。原作者の京極も訪れ、いい緊張感に包まれた瞬間をレポートする。

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『魍魎の匣』を含む「百鬼夜行シリーズ」は、戦後間もない昭和20年代後半を舞台に、民俗学や論理学、妖怪など様々な分野の薀蓄(うんちく)をぎっしりと詰め込んだミステリー。「憑物落とし」を副業とする古本屋の“京極堂”こと中禅寺秋彦らが、奇っ怪な事件の数々を解決していく様を描く。長編小説としては現在9作品(「魍魎の匣」は2作目)が刊行されているほか、映画化、コミカライズ、TVアニメ化などもされてきた。

舞台としては、劇団てぃんか~べるにより1999年(2001年にも再演)に上演されている。今回の座組は、脚本は畑雅文、演出は松崎史也が担当。出演者には、初舞台を踏む14歳から大ベテランの72歳まで、幅広い出自の顔ぶれが集まった。

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原作モノは監修が入るものだが、京極は、一切メディアミックス展開に対して監修は行っていない。今回も「台本チェックの必要はない」「なんなら京極堂を犬にしてもいい」などと伝えられていたそう。求められたのは“必ずおもしろいものを作ってください”という一点だけ。

京極は、この日の顔合わせでも「この作品を書いたのは24年前。つまり、古い作品です。幸いにも読まれ続けているのですが、今の作品ではありません。舞台化だけでなく、映画やコミック、TVアニメにもなり、相当いろいろなものがくっついた作品でもあります。しかし、この舞台は皆さんの舞台です。原作も含め、過去の一切を気にしていただく必要はありません。皆さんが、身体を使って、自分なりの『魍魎の匣』を作ってくだされば、私はそれで満足でございます」と語った。

そして「観客が喜ぶのが何より。原作がある場合、その原作のファンが怒るケースがありますが、それは、原作と変えたから怒るのではなく、作品があまりよろしくなかったからです。原作とどれだけ違っていても、観客や読者に同意を得られれば決してそうは言われません。ですから、今回の脚本をいかにしておもしろくするか、それだけを考えていってください。よろしくお願いいたします」と加えた。

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その言葉に、演出の松崎は「フィクションやエンターテインメントを扱う人間として、京極先生の言葉があまりにも素晴らしく・・・この数年、自分がやってきた演劇のことを一気に思い出しました。演劇の最も強くて素晴らしいところは、生身の肉体がそこにあることです。先生もおっしゃいましたが、今ここに集まった我々が、今ここに確かにある肉体によって、今の演劇を、今の人間を描いていきたいと思います。本当は作品について言いたいことがいっぱいあったんですけど!・・・ありがとうございます!!」と深く感銘を受けた様子。

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脚本の畑も、台本化するにあたり相当影響を受けたようで「魍魎にあてられないように、今日もお守りをいっぱいつけてきました(笑)。この作品が、お客さんにとっても重くいい形で抱えられて、その後もずーっと心に残るようなものになるといいです」と、期待を寄せた。

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続いて、中禅寺秋彦役の橘をはじめ、木場修太郎役の内田朝陽、関口巽役の高橋良輔、榎木津礼二郎役の北園涼、鳥口守彦役の高橋健介ら出演キャストが紹介された(なお、柚木陽子役の紫吹淳、美馬坂幸四郎役の西岡徳馬はスケジュールの都合により不在)。

橘は、出演が発表された際、年齢性別問わず多くの知人から本作について声をかけられたそうで「京極先生の作品を、本当に多くの方が慕っていらっしゃることを実感しました。言葉の応酬の中で、皆さんと共にしっかりと舞台を作っていきたいと思います。責任重大ですが、僕は舞台が大好きです。劇場に足を運んでくださる方々の心にドスンと残るような作品にしたいと思います」と挨拶。

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内田も「いい作品にできるよう、自分にできることを一生懸命に、真剣にやろうと思います。皆さんと一緒に、この作品に向き合っていきたいなと思っています」、高橋良輔も「京極先生のお言葉に、言葉にならない思いを味わいました。関口という男を、必死で生きたいと思います」と続く。

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北園は「非常に緊張しています」と口にしながらも「役をいただいてから、先生の作品を読んだり、映画を見たりしていたのですが、この舞台での“榎木津礼二郎”を僕が作らねばと思いました。持てるアイデアを出し、必死に稽古していきたいと思います」、高橋健介も「全身全霊で鳥口と向き合っていきたいと思いますので、最後までよろしくお願いいたします」とそれぞれ気合いを入れていた。

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そんな役者陣に対し、帰り際「台詞が多くてすみません、漢字も多くてすみません。語彙表があるので、それを見ていただければ(笑)」とお茶目な一言を残していった京極。冗談めかしていたが、『魍魎の匣』という作品を舞台化する上では、この“漢字”の扱いが鍵になるだろう。それは、この後に行われた初の本読みの中でも感じられた。

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台本の読み合わせ開始前、松崎は「この読みあわせは、皆さんがどういう俳優なのか、僕が知っていく場でもあり、皆さんが互いを知る場でもあるので、現時点での自分なりの解釈や、こう読みたいという意思をなるべく乗せ、想像を巡らせながら読んでみてください」とオーダー。

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通常、本読みを1回行ったあとすぐ立ち稽古に入っていくケースが多いが、本作では、最初の3、4日間、本読みを繰り返すという。「情報や感情など、目に見えないものを立体的に具現化していくことが、俳優に求められる最初の技術だと思います。名詞や熟語に対し、どれだけ意味を込められるか。単語一つを発することで、漢字の持つ意味を伝え、想像させる。漢字をどれだけ豊かなものにしていけるか、それがこの作品にとって最も重要な要素だと考えています」と松崎。

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さらに松崎は「主語、述語、形容詞、そして文節を意識しながら、自分の台詞を分解していってほしい」とも伝えていた。その単語は物語の中でいつ出てきたものなのか、それぞれの登場人物がいつ出会った言葉なのか、作品の中でどれぐらい重要なのか、観客側にどの程度浸透しているものなのか。俳優たちが個々に膨らませ、豊かにしていくものを、演出としてしっかり情報をコントロールする。

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本作の台本は、演劇としてきっちり上演時間内に収まる形に仕上がっているし、原作を知らない方にも物語をしっかり伝える構成になっている。一方で、原作に書かれていることすべてをなぞるのは不可能だ。そこで、今回は「起こっている現象・事件は台本に書かれていることがすべて」「役柄の背景には原作のみに書かれている要素も取り入れていく」という指針が定められた。

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俳優たちも、言葉と向き合う準備と心構えは、すでにできているようだった。本読みだが、さながら朗読劇。松崎は、初めての本読み終了後「言葉を扱う能力の高い俳優が多くてよかった」と、手応えを感じたようだ。

「役の背景として『今回の台本には描かれていないけれど、この要素はこの台詞に込めたい』といったように、役に奥行きを作っていけるとより楽しめると思うので、どんどんやっていってください。また、情報を伝える役割を持つ人は、役として目の前の相手に伝えながらも観客に伝えているという実感を持って台詞を言ってほしいと思っています。そうすることで、特殊な世界観を持つ人物が際立ってくる。本読みの段階からしっかりと意識していきましょう」。松崎の指揮のもと、俳優たちは日々“言葉”と格闘する。京極の生み出した世界をリスペクトしつつ、新たな『魍魎の匣』が動き出した。

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舞台『魍魎の匣』は、以下の日程で上演される。

【東京公演】6月21日(金)~6月30日(日) 天王洲 銀河劇場
【神戸公演】7月4日(木)~7月7日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe

【出演者】
中禅寺秋彦役:橘ケンチ

木場修太郎役:内田朝陽
関口巽役:高橋良輔
榎木津礼二郎役:北園涼
鳥口守彦役:高橋健介

楠本君枝役:坂井香奈美
久保竣公役:吉川純広
楠本頼子役:平川結月
柚木加菜子役:井上音生

中禅寺敦子役:加藤里保菜
雨宮典匡役:田口涼
須崎太郎役:倉沢学
増岡則之役:津田幹土
青木文蔵役:船木政秀
福本郁雄役:小林賢祐
里村絋市役:中原敏宏
寺田サト役:新原ミナミ

寺田兵衛役:花王おさむ

柚木陽子役:紫吹淳

美馬坂幸四郎役:西岡徳馬

【公式HP】https://www.nelke.co.jp/stage/mouryou/
【公式Twitter】@stage_mouryou

※西岡徳馬の「徳」は旧字体が正式表記

 

(文/エンタステージ編集部)

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