花村想太、生駒里奈らと共にしたディスグーニー5度目の航海『PHANTOM WORDS』振り返りレポート


2019年3月15日(金)から3月24日(日)まで東京・ヒューリックホール東京にて、DisGOONie Presents Vol.5『PHANTOM WORDS』が上演された。DisGOONie(ディスグーニー)とは、作家・演出家の西田大輔が「創ることは出逢うこと」をテーマに掲げ、仲間と共に作り上げる公演。その過程は“航海”と呼ばれている。

ディスグーニーにとって5度目の“航海”で描かれたのは、秦の始皇帝の死で乱れる世に立ち上がった、最期の言葉を知る女と、最初の国を創った二人の男の物語。本作は、西田が同じく作・演出を手掛ける人気シリーズ『RE-INCARNATION(リインカネーション)』よりも、ずっと前からあたためていたオリジナル作品だという。

今回集ったのは、主演の花村想太(Da-iCE)、そして、生駒里奈、鈴木勝吾、安西慎太郎、畠山遼、楠田亜衣奈、田中良子、長友光弘(響)、高橋良輔、松本ひなた(Candy Boy)、君沢ユウキ、村田洋二郎、萩野崇、山本涼介、谷口賢志。西田作品と初めて出逢う者から欠かせない者まで、演劇への熱い情熱を感じる面々が、その船に乗り込んだ。

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【あらすじ】
紀元前210年、中国戦国時代の王朝・秦の王・始皇帝の死をきっかけに、秦は急激に弱体化した。「陳勝・呉広の乱」を皮切りに大陸の全土で反乱が起こり、再び群雄割拠の乱世に突入。その時、横暴だった秦帝国打倒のために、立ち上がった者たちの中に二人の男と一人の女がいた・・・。
一人は項羽。大陸の南、楚の名家項家の出身であり、祖父に名将軍と名高い項燕を持つ。楚には珍しい大男であり、武勇に秀でていた。もう一人は劉邦。沛という片田舎の百姓の家に生まれた酒と女が大好きなろくでなしで、家族からもごくつぶしと疎んじられていた。
そして、歴史の英傑であろう項羽と劉邦の二人が出逢った一人の天才軍師・雛罌粟(ひなげし)。雛罌粟は「出逢った人間の死期が分かる」という力を持っていた。
後に天下の覇権を賭けて、ぶつかる運命にある項羽と劉邦、そして一人の女軍師。
これは、秦の始皇帝亡きあと暴政を奮う「秦」を、両雄がともに力をあわせ滅ぼすまでの、始まりの物語――。

ディスグーニーの舞台では、とにかく俳優たちが圧倒的な輝きを放つ。まるで、命そのものが燃えるような光のようだ。そして、西田が一人一人を大切に想う愛情が伝わってくる。

中でも、もののふシリーズ最終章『駆けはやぶさ ひと大和』で西田と出会った花村の、成長ぶりが目覚ましかった。劉邦役を演じる花村は、これが3度目の舞台挑戦。これまでで最も演劇と格闘したのではないかと思ったが、その分、舞台の上では肩の力がいい意味で抜けていた。それが、劉邦という歴史に名を残した男の“人間力”に説得力を感じさせる。また、花村は本作のテーマソング「最期の言葉」でも、自ら作詞・作曲を手掛けて参加。本作の鍵となっている“言葉”に、ぐっと強い力を持たせた。

そして、強さと儚さを両立させる生駒の魅力。生駒が演じる雛罌粟は、女軍師として自ら2本の刀を振るう。数ある舞台の中でも、殺陣の激しさと手数の多さが群を抜いている西田作品。本作が殺陣初挑戦となる彼女の立ち居振る舞いは、手練の俳優たちに引けを取っていなかった。そして、雛罌粟の持つ花言葉の一つには「別れの悲しみ」とある。国を憎み、誰も愛さない女軍師が、「最期の言葉」に触れる瞬間。その繊細さに、生駒の持つ「表現者」としての輪郭がより明確になった。花村、生駒、共にこれからがますます楽しみだ。

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そして、鈴木、安西、高橋、君沢、山本と、それぞれ違うタイミングで西田と出会ってきた役者たちが、言葉を得て、自らの役をまっとうする様は、水を得た魚のよう。舞台上から放たれ続ける彼らの熱、刻みつけるように発せられる膨大な言葉の数々が、観客を飲み込み、いざなう。その先で、俳優も観客も、演劇という大海原へと解き放たれるような感覚を共に得ているような気がした。

また、出てくる度に一笑いを取っていく長友はさすがだ。お笑いモードからシリアスへ、エッジの効いた芝居の変化は、物語に呼吸を与えてくれる貴重な存在。生駒もそうであるが、畠山、楠田、松本は、これが西田作品初参加。この出逢いはより大きな発展を期待させる。そして、田中、村田、萩野、谷口という、西田の作品作りに欠かせないメンバーが櫂を握り、しっかりとこの作品を未来へと進めていく。

上演時間3時間30分の長編大作。「観客と共にいたい」と、1分1秒を惜しむように彼らが紡いだ時間は、嬉しいことに記録に残る。ぜひ、まだディスグーニーに乗船したことがない方は、映像、または、次回の公演で、彼らと劇場で出逢ってみては。

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◆公演情報
DisGOONie Presents Vol.5『PHANTOM WORDS』
2019年3月15日(金)~3月24日(日) ヒューリックホール東京

【作・演出・プロデュース】西田大輔

【出演】
花村想太(Da -iCE)/生駒里奈
鈴木勝吾 安西慎太郎 畠山遼 楠田亜衣奈 田中良子 長友光弘(響) 高橋良輔
松本ひなた (Candy Boy)/君沢ユウキ 村田洋二郎 萩野崇/山本涼介/谷口賢志

(取材・文/エンタステージ編集部、写真/オフィシャル提供)

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