『新・幕末純情伝』FAKE NEWS開幕!北原里英、つかこうへいに「作品を通じて繋がれた」


2018年7月7日(土)に東京・紀伊國屋ホールにて、『新・幕末純情伝』FAKE NEWSが開幕した。本作は、「新撰組の沖田総司が実は女だった」という着想から生み出されたつかこうへいの代表作。今回は、演出をフジテレビドラマ制作部ゼネラルディレクター・河毛俊作が手掛け、新たな面から作品を掘り下げた。

初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、演出の河毛のほか、出演者より北原里英、味方良介、小松準弥、田中涼星、増子敦貴、松村龍之介、細貝圭が登壇し、初日に向けた心境を語った。

『新・幕末純情伝』FAKE NEWS舞台写真_20

本作が初主演、そしてほぼ初舞台になる北原は「約1ヶ月間、汗だくになりながら稽古をしてきました。その想いを全部、公演にぶつけていけたらなと思います」と、落ち着いた様子で切り出した。十代目となる沖田総司役を演じることについては「初めてつかさんの作品に出演させていただくたんですけれども、もう一生会うことはできないつかさんに、作品を通じてどこかで繋がれたような気がしています。そして(つかの生誕)70周年という切りの良い時期にこの役をやらせていただけるということは、すごく幸せなことです」とにっこり。

しかし「すごく緊張して、夜寝れなかったりドキドキしていた」そうで、稽古場を訪れた『熱海殺人事件』経験者の木崎ゆりあや2年前に北原と同役を務めた松井玲奈に話を聞いたり、AKB48時代の同期である仁藤萌乃ら舞台経験の豊富な仲間に連絡を取ったりして「アドバイスをもらったり、結構助けてもらいました」と明かした。

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同作や『熱海殺人事件』にも連続で出演している味方は、「今回、坂本龍馬としてまた『新・幕末純情伝』に出演させていただけることになった時に、つかさんの思いやつかさんを支えてきた人たちが紡いできたことを、僕らの世代がきちんと伝えていって、(この先)10年20年続いていくように、またがんばっていかなければいけないなと感じました」と気を引き締める。

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また「1ヶ月という濃密な時間の中で(座組)皆のことが大好きになったので、この“好き”というパワーを使っていいものができたらなと思います」と、愛を語った。その言葉どおり、会見の中では味方からの愛あるツッコミが随所に見られた。

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土方歳三役に抜擢された小松が「とにかく総司を愛し、百姓出身の武士魂!見せつけてやりたいと思います!!よろしくお願いします!!!」と気合いたっぷりに挨拶すると、味方から「バキバキじゃないかよ、どうしたんだよ(笑)。稽古場で見たことない・・・」とツッコまれ、一同爆笑。

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そのまま「やりづらいな(笑)」と味方に振られた新撰組隊士・二宮役の増子だったが「あ、大丈夫です(笑)。新撰組の二宮らしく、突っ走りたいです。熱い稽古をやってきたので、それを本番でガツンと全力でやりたいと思います」と、座組最年少ながら冷静に対応していた。

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稽古場は、相当白熱していたようで、桂小五郎役の田中は「1ヶ月かいた汗を信じて、千秋楽までがんばっていきたいと思います」とコメント。岡田以蔵役の松村も「暑い日が続くの中、皆で鍛錬してきたんですが、その夏の暑さに負けないぐらいの熱い気持ちで、精一杯やらせていただきたいと思っています」と続いた。

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『新・幕末純情伝』への出演が、これで4回目となる細貝は、河毛の演出に言及。「今回の『FAKE NEWS』は、河毛さんが、今まで伝わりにくかった部分をかなり分かりやすく、初めてつかさんの作品を観る方にも楽しんでいただけるような作品になっているので、いろんな方に観ていただきたいです」と語る。

その河毛は「稽古場でやってきたことは、小屋に入ったあと、やってきたこと以上のことをお客様に見せるための基礎。これは、撮ったものがすべての映像作品と違うところで(舞台の)本番はこれからですから。1ヶ月間の稽古場で見られなかったものを見せてもらえるんではないかなと。それが一番の楽しみであり、彼らを信じています」と期待を寄せた。

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また、初日が七夕ということもあり願いごとを聞かれると「どうしよう、絶対聞かれそうなことなのに考えていなかった!」と珍しく慌てる北原。考えた末、「・・・この作品を一人でも多くの方に観てもらい、最後まで誰一人怪我なく、走り抜けられたらいいなと思います」と“優等生”な答えを出したが、イマイチ、納得を得られていない空気に「待ってください~(笑)!」とやり直しを直訴。

間を繋ぐため、突然振られた細貝が「が、んばるヨ!」とカタコトで言葉をひねり出したり、田中が「満点の“星”空のように、たくさんの人に来てもらえたらなと・・・七夕だから星にかけてみました。(名前も)涼“星”だし」と珍(?)回答を繰り出す中、再度整えた北原は「沖田総司と坂本龍馬のように、命をかけた素敵な恋愛ができますように!」と願いをかけていた。

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公開ゲネプロでは、幕開けから若いエネルギーがほとばしっていた。桂小五郎役の田中に潜むすべてを超越するような美しさ、岡田以蔵役の松村が繰り出す鋭い剣さばき、新撰組隊士・二宮のまっすぐな純情、勝海舟役の細貝が抱える苦悩・・・。実際に“つかこうへい”という存在に出会うことが叶わない若い役者たちの中にも、確実にそのスピリットは受け継がれている。熱く、どこまでも泥くさく“今”を懸命に生きる姿は、形より記憶に残る演劇そのもののように感じた。

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また、『北の国から』やトレンディードラマのプロデューサーとして活躍してきた山田良明が、71歳にして、本作で俳優デビューしていることにも注目だ。岩倉具視役を演じる山田からは、華やかな経歴を脱ぎ捨てた挑戦への気概がほとばしる。

今回の「FAKE NEWS」では、近年の『新・幕末純情伝』では描かれていなかった男たちと沖田総司の関係なども描かれている。しかし“恋”という一点においては、やはり土方歳三、坂本龍馬との関係が一番色濃く見えた。

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土方歳三役を演じる小松の姿は矮小だ。それ故に、総司に向ける優しさはより純粋に、卑屈さはより屈折し、人間味に溢れている。新境地を切り開く音が聞こえた気がした。

坂本龍馬役の味方は、若く見えるが本当に若いのだ。しかし、その若さの中に安心感と安定感を内包させ、座組とつか作品の未来を引っ張る。

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そして、北原が作り上げた“沖田総司”は、ここ近年の“沖田総司”の中で最も「女」だった。「新撰組の沖田総司が女だった」ということ自体がフェイクだが、果たして本当にフェイクなのか・・・。そう思わされた要因は、北原の持つ“包容力”にあるのではないかと感じた。

思い出すのは、たまたま見かけたAKB48選抜総選挙のスピーチ(どの年のものかは定かではないが)。感情ほとばしるスピーチが多い中、北原の言葉は落ち着きと思いやりに溢れていて、あたたかさを感じたことが記憶に残っている。それは、NGT48時代キャプテンとして見せてきた柔軟性の高いリーダーシップにも言えることだ。

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男たちの青さや身勝手さに、傷つき翻弄されながらもすべてを包み込む「女」である“沖田総司”。ラブシーンが取り沙汰されがちだが、ラブシーンがあるからこそ、見えてくるものがあるのではないだろうか。役者として、新たな一歩を踏み出した北原がどんな道を進んでいくのか、楽しみである。

『新・幕末純情伝』FAKE NEWSは、7月7日(土)から7月30日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。

【公式HP】http://shin-bakumatsu2018.com

『新・幕末純情伝』FAKE NEWS舞台写真_25

※木崎ゆりあの「崎」は、「大」の部分が「立」が正式表記

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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