味方良介、文音、多和田秀弥、黒羽麻璃央が生み出す“新しさ”『熱海殺人事件 NEW GENERATION』稽古場レポート!


2017年2月18日(土)より東京・紀伊國屋ホールにて開幕する『熱海殺人事件 NEW GENERATION』。紀伊國屋ホールにて春の風物詩として幾度となく上演され続けている演劇界の巨匠つかこうへいの代表作に、“NEW GENERATION”と銘打ち、味方良介、文音、多和田秀弥、黒羽麻璃央という4名の俳優が挑む。本番を10日後に控えた稽古場を取材した。

『熱海殺人事件』は、もともとは1973年に文学座に書き下ろされたものであり、この作品でつかは、岸田國士戯曲賞を史上最年少で受賞。その後も、『売春捜査官』や『モンテカルロイリュージョン』などと変化させながら、上演されてきた。そして、つかの他界した翌年からは岡村俊一が演出を手掛け、つかの遺志を後世へと伝えようと、上演が続けられている。

『熱海殺人事件 NEW GENERATION」稽古場レポート_2

2011年、2012年には“紀伊國屋つかこうへい復活祭”と冠した『NEXT~くわえ煙草伝兵衛捜査日誌~』、戯曲誕生40周年となった2013年には『40years’ NEW』、2015年には木村伝兵衛部長刑事役をWキャストとした『Battle Royal』。そして2017年春、新たな『NEW GENERATION』が誕生する。

今回、木村伝兵衛部長刑事役に挑むのは、2016年夏に松井玲奈主演で上演された『新・幕末純情伝』で桂小五郎役を熱くしなやかに演じ切った味方良介。味方は、2015年に同役に抜擢された馬場徹と並び、史上最年少の24歳でこの大役に挑む。

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水野朋子婦人警官役を演じるのは、1986年の映画版でヒロインを演じた志穂美悦子の娘である文音。刑事の熊田留吉役には、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』などで知られる多和田秀弥。そして、犯人・大山金太郎役には、ミュージカル『刀剣乱舞』の三日月宗近役で注目を浴びた黒羽麻璃央が演じる。

この日は、劇中に加えられる“あるシーン”の台本が上がってきたようで、稽古前には談笑しながら楽しげに読み合わせをする姿が見られた。稽古開始時間になると、味方がハットと革靴を身に着け、稽古場の中央へ進み出る。「喉を傷めないように」と声をかけた岡村に軽く頷く味方。BGMにチャイコフスキーの「白鳥の湖」が流れ出すと、スッと表情が変わった。

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味方の見せる伝兵衛は、スタイリッシュで爽やかだ。長台詞も流暢にこなし、“デキる男”という印象を持った。岡村は、そんな味方を「優しい」と言う。確かに、歴代の伝兵衛を演じた面々の強烈な自己主張の強さからするとソフトな伝兵衛かもしれない。しかし、これは味方の強い武器でもあるように思う。稽古中、味方は何度も「もう一回やっていいですか?」と納得のいくまでシーンを反復していた。その芝居へ向かう真っすぐな情熱と優しさを昇華させ、本番で味方がどんな伝兵衛を見せてくれるのか、非常に楽しみである。

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そんな伝兵衛の元に新しく赴任してくる熊田留吉は、富山から警視庁捜査一課に赴任してきた田舎の刑事。手足の長い、恵まれた体格を持った多和田が、この役を演じるとどうなるのだろうか?と想像がつかなかったのだが、いい意味で期待を裏切られた。多和田の演じる熊田は、とても熱く振り切れていて、ちょっとおバカさもありつつ、そこがかわいいと思わせる不思議な魅力がある。台詞の解釈について岡村からアドバイスを受けると、瞬時に飲み込む素直さにも、おもしろ味を感じた。

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水野朋子を演じる文音は、細くしなやかな身体が健康的で、身のこなしがとてもきれいだ。伝兵衛と共に荒唐無稽な言動を繰り返すが、その中に女性という立場ならでは切なさも滲ませる。あるシーンで「もう少し振り切れた感じでやってみて」と受けたオーダーを反映したところ、少々“かなり大胆!”と周囲からツッコまれ、笑いが止まらず崩れ落ちるなど試行錯誤している様子も見られた。この日は前半のみの取材だったため観ることはできなかったが、後半、殺されたアイ子として金太郎とやりとりをするシーンにも期待が高まる。

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そして、稽古はついに大山金太郎の登場シーンへ。オレンジ帽にサングラス。その佇まいは、見惚れるほど美しい。伝兵衛と熊田の尋問に「海が見たいと言ったのさ。涙こらえて言ったのさ。肩を震わせ泣いたのさ。一人で見るのが怖いから、一緒に見よう・・・泣いたんだ」そう答える黒羽の横顔には、照明も何もない稽古場なのに、まるでスポットライトが当たっているかのような華がある。それ故に、本来の金太郎とのギャップが激しい。どのぐらいギャップがあるかは・・・ぜひ、本番でご覧いただきたい。きっと、黒羽の見たことのない姿を多く目にすることができるだろう。

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岡村は、個々の持つ資質と特性を見極め、その魅力を最大限に引き出しながら、台詞という言葉に方向性を指していく。つかこうへいの芝居は、口立てで作られたものが多いため、台本に残っていない台詞も多々存在するという。いくら書き残したとしても、そこに込められた想いは“人の中”にしか残すことができない。演じる側も、観る側も、実際につかこうへいの芝居を観たことがない人が増えていくだろう。だからこそ、今回の“NEW GENERATION”は、想いを継ぎ未来を作る、新たな一歩となる気がした。

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『熱海殺人事件 NEW GENERATION』は、2017年2月18日(土)から3月6日(月)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演される。

なお、エンタステージでは当日、味方&黒羽にインタビューを行った。本日夜、公開予定なのでこちらもお楽しみに!

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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