新メンバーを迎え“演劇”を暴れまくる!柿喰う客『虚仮威』東京公演ゲネプロレポート


年末の12月28日(水)、劇団柿喰う客の新作本公演『虚仮威(こけおどし)』の東京公演が、下北沢の本多劇場で幕を開けた。三重公演、仙台公演を終えての東京上演となり、この後は大阪公演へと続く。柿喰う客にとっては、劇団結成10周年を迎え、新メンバー6名が加わってから初めての新作書き下ろし&劇団本公演である。

柿喰う客『虚仮威』公開ゲネプロ_2

黒と白と赤だけのガーリーなビジュアルとは掛け離れ、物語の舞台は東北。クリスマスイブの夜、幼い娘と妻(深谷由梨香)のいる男(牧田哲也)は、愛人(七味まゆ味)に呼び出される。家を空け、男が向かうと、愛人はおもむろに自身の曽祖父の話を始める。

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時代は、現代と大正時代が入り混じる。曽祖父(永島敬三)は村の貧乏地主。山の神に守られ、座敷童や河童が住む東北の地で、三人の息子に恵まれている。しかし長男の一太郎(玉置玲央)が11歳になった12月25日の朝、枕元に見知らぬプレゼントが置かれていた。「これは誰の仕業なのか・・・」分からぬまま、三人の息子は歳を重ねていく。

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物語は、音楽と台詞に乗り、勢いよく進んでいく。パワーある役者たちの身体の動きが美しい。音楽に合わせ踊るように、静止と躍動が繰り返される。抽象的な舞台装置の中で、俳優の身体だけが世界を作っていく。

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長年のメンバーである七味、玉置らが軸のしっかりした声と身体で舞台の安定感を保つ。また永島、大村らがアドリブも混ぜ、息もつかせぬ怒涛の展開に、ふっと息つける笑いを挟み込む。

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新メンバーは若干、まだ身体の軸は不安定ながら、のびのびと舞台上を動き回る。11年目を迎える柿喰う客に、これまでの色に染まらないフレッシュな風を運んできた。

俳優各自が一つの役を演じると言うより、全キャストが渦を巻いて一つの作品となっているような、ごった煮状態だ。

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明治から大正にかけて、文明開化が叫ばれ、日本がどんどん変わっていく時代。玉置が演じる一太郎は、東北の片田舎から東京へと出て「ハイカラだ!」「モダンだ!」と声高に唱え、部落解放運動・婦人解放運動・社会主義運動などにのめり込んでいく。

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東京と東北、日本と西洋・・・それらの間にある深い溝。古き日本の風習を大切にする父と、新たな時代へと邁進していく息子のもとに、それでも毎年12月25日のプレゼントはやってくる。一体、なぜ・・・?

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それぞれが放つ、ハッタリ、大ウソ、虚仮威。クリスマスのプレゼントが、黒い衣裳に身を包んだ古き日本の東北の家族と、赤い衣裳を纏った現代の家族の、思いと願いを少しずつ浮き彫りにしていく。

「演劇でしかできないことをやる」と、東京公演初日直前のインタビューで彼らは語った。それはただの“虚仮威”か、それとも“真実”か。演劇ならではの武器、生身の俳優の身体で魅せていく。

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柿喰う客が演劇で虚仮威す、今作。柿喰う客 2016-2017新作本公演『虚仮威』東京公演は、12月28日(水)から2017年1月9日(月・祝)まで本多劇場にて上演(※1月1日、1月2日は休演日)。大阪公演は、2017年1月19日(木)から1月22日(日)までナレッジシアターにて。

なお、大晦日の12月31日(土)21:00開演の回終演後には、年越新春イベントが開催される。
※入退場は自由
※『虚仮威』12月31日(土)21:00開演の回のチケット購入者のみ入場可
※条例により18歳未満は入場不可

(取材・文/河野桃子)
(撮影/エンタステージ編集部)

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