韓国キャストの熱量とラテンのリズムの相乗効果が活きたステージ!ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』開幕レビュー


サルサ、メレンゲ、ヒップホップといった情熱のサウンドに、韓国俳優が誇る安定の歌唱力と全身からほとばしるエネルギー。相性抜群に違いないと予想はしていたが、期待以上の爽やかな興奮が東京・Bunkamuraオーチャードホールのステージを駆け抜けた。2016年8月19日(金)に開幕したブロードウェイミュージカル『イン・ザ・ハイツ』、韓国キャストバージョンの来日公演だ。

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マンハッタン北西部の都市、ワシントンハイツに住む中南米系移民たちの悲喜こもごもが描かれた本作の魅力は、客席にいても体を揺らさずにいられないラテンミュージックの誘惑と、街全体が一つの家族のような繋がりを見せる情の深い人間ドラマである。昨年秋の韓国初演でもウスナビ役で高評価を受けたKey(SHINee)が、軽やかに舞台中央に登場し、小粋なハングル・ラップで瞬く間に場の空気を掌握していく。

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朴訥な表情と力みのないたたずまいが、周囲に散らばるアクの強いキャラクターたちを見守る要として非常にバランスが良く、好印象だ。お茶目な相棒ソニー(ユク・ヒョンウク)とのリズミカルな掛け合いも愉快である。キレ味鋭いダンスで雑然とした街の温かみを表現するキャストたちが、ところどころに日本語のセリフを差し込んでくるご愛嬌にも頬が緩む。

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快活さの中に実直な苦労人の横顔をにじませるベニー(イ・サンイ)、知的で可憐なニーナ(ルナ)、マドンナとしての華と憂いを携えたヴァネッサ(J-Min)。悩める若者を演じる俳優たちは、透き通る美声でその心の叫びを伝えてくる。彼らを応援する街の人々も、見るほどに愛しさがつのる個性派揃いだ。美容室オーナー・ダニエラ(チェ・ヒョクジュ)の抱腹も涙も誘う人情の厚さ、老婆クラウディア(イ・ユンピョ)の故郷への思慕、ニーナの両親(シム・ジョンワン、チャン・ジヘ)が娘に向ける愛ゆえの葛藤など、韓国俳優が内包する熱量の高さ、圧巻の表現力が、ラテンのリズムに負けず劣らず、観る者の感情をおおいに刺激するのである。

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韓国ミュージカル界のトップランナーとしてヒット作を連発させている演出家イ・ジナが、シャープな手腕でまとめ上げた人間愛あふれる群像劇。胸を突き抜ける爽快感とともに、明日へのパワーチャージを実感できること請け合いだ。

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(文中のキャストは筆者観劇時のもの)
ウスナビ役は、チョン・ウォンヨン、ドンウ-INFINITE-、Key-SHINee-のトリプルキャスト。
ベニー役は、キム・ヒョンジュン-Double S 301-、イ・サンイのWキャスト。
ヴァネッサ役はオ・ソヨン、J-MinのWキャスト。
ニーナ役はチェ・スジン、ルナ-f(X)-のWキャスト。

(文/演劇ライター 上野紀子)
(撮影/宮川舞子)

◆公演情報
ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』(韓国語上演、日本語字幕付)
【東京公演】8月19日(金)~9月3日(土) Bunkamuraオーチャードホール
【神奈川公演】10月16日(日)~11月6日(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール

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