村上虹郎×小泉今日子で岩松了の『シブヤから遠く離れて』を12年ぶりに再演


2016年12月に東京・Bunkamura シアターコクーンにて『シブヤから遠く離れて』が、約12年ぶりに再演されることが決定した。本作は、2004年にBunkamura15周年記念企画として、岩松了が蜷川幸雄に初めて書き下ろした戯曲。当時、同劇場の芸術監督を務めていた蜷川たっての希望で、二人のタッグが実現したという。

物語の中で描かれているのは、ヴェルディのオペラ『椿姫』をモチーフに、暗い記憶の狭間を浮遊する青年ナオヤと、すべてから逃れようとする不思議な女マリーの静かで力強い愛。タイトルから濃厚な社会派の匂いを漂わせつつも、人間の多面性を繊細に描き出した、青春譚かつラブストーリーとなっている。

今回は、演出も岩松が手掛ける。出演は、初演で二宮和也が演じたナオヤ役に『書を捨てよ町へ出よう』(2015年12月)で初舞台を踏んだ村上虹郎、マリー役には初演でも同役を演じた小泉今日子の続投が決定。

この他、鈴木勝大、南乃彩希、駒木根隆介、小林竜樹、高橋映美子、たかお鷹、岩松了、豊原功補、橋本じゅんという顔ぶれが揃った。

上演決定にあたり、岩松、村上、小泉からコメントが届いている。

◆岩松了(作・演出・出演)
『シブヤから遠く離れて』は12年前、蜷川さんに演出してもらうために書いたホンです。渋谷にある廃屋の話で、僕はト書きに「ススキが繁っている」と書いたんですが、蜷川さんに「ススキじゃなくてもいい?」と言われて「いいですよ」と返事をした。何にするんだろうと思って稽古場に行ったら、黒いヒマワリが仕込んであった。その時の強烈な印象を今も覚えています。
今回改めて台本を読んで思ったのは、やっぱりこれは蜷川さんに演出してもらおうと思って書いたんだな、と。俺、演出できるのかな?ってちょっと不安になりました(笑)。どこかで、蜷川さんならこんな風に演出するんじゃないか・・・というイメージを加味して書いているんですね。自分自身には掴みきれないものを、意図的に書いている感覚。そういう意味では、すでに何かによって筆が操られている。これはがんばらなきゃイカンな、と思っているところです。
マリー役は12年前と同じく、小泉今日子さんです。これはキョンキョンの舞台と言っていい、そんな気が僕はしているんですね。マリーという役は、言ってみればいくつであってもいいわけです。例えば、12年前は二宮和也くんがナオヤという相手役だったんですけど、二宮くんはもう、あの役はできない。20歳前後で、大人になろうか、なるまいか・・・という年齢の子をキョンキョンが通過させていく、そういう作品構造になっている気がするので。あの時の彼女は30代でしたが、今50歳になったキョンキョンが作品の全体像をどんな色に変えていくのか、すごく興味があります。
ナオヤ役の村上虹郎くんは、素人っぽい、手垢のついていない感じが、僕にとっては非常に新鮮でした。彼は役者として歩き出したばかりで、これからどんどん伸びていくのだろうと思います。そのエネルギーを目の当たりにすることを、僕自身の起爆剤にして、演出に挑みたいと思っています。
コテコテの具象でもなく、まるっきりの抽象でもない。そんな混然としたものが渦巻いている世界観であり、それはすなわち今、現在を描くことにふさわしい作品であると感じています。12年前とはきっと違うものが立ち上がると思いますけど、あの時も現在だったし、今回も現在に違いない。もし10年先にまたこの作品を上演したとしても、やはりその現在を映すのだろうと思います。

◆村上虹郎(ナオヤ役)
この芝居を自分がやるんだ・・・と思って最初に台本を読んだ時は、正直、難しくてよく分からなかったんです。でも二回目に一つの物語として読んだら、面白さが自分の中に素直に入ってきました。ト書きも台詞も区別することなく読めて、一冊の小説みたいだな・・・という感覚。それが岩松さんの書くホンの魅力なのかなと思いました。
小泉今日子さんとの共演は、良い意味で怖いなと感じています。でも実は、僕のことを子どもの頃から知ってくださっている方なので、安心感もあります。岩松さんは、おもしろくて、まさに“芝居の世界の人”というイメージ。岩松さんのもとで芝居をする集団に混ざれることにワクワクしています。
二度目の舞台出演ですが、いつも初挑戦の気持ちでいます。まだまだ“初めてに驚く”ことを繰り返していたい。その“分かってなさ”がいつまで続くのか。ずっとガキであり続けるのか、大人になるのか、自分でも分からない。どっちでもいいな、と思っています。

◆小泉今日子(マリー役)
もう一度観てみたい!とずっと思っていた戯曲です。岩松さんにも「やればいいのに」と何度も言っていたのですが、やっとその願いが叶いました。しかも前回と同じマリーという役を演らせていただくことになって、とても嬉しいです。けれど、台本を読み返してみて、こんな難しい役を何も考えずにやっていたんだ・・・!と、怖くなりました。今回は前よりももっと稽古場で苦しむのかもしれません。
このお話に出てくるのは、すぐにも消えてしまいそうな、その一時だけの、一過性の儚い魅力を持った若者たち。そして、年齢を重ねてすべてを知ってしまった、その葛藤を抱える大人たち。ナオヤとマリーが出会った瞬間に、二人の心に何かが生まれ、一瞬同じ方向を向く。そのドラマチックさが、たまらなく素敵に思えてしまう。12年前に蜷川さんが演出した作品を、今度は岩松さんの手で、村上虹郎さんを始めとする新しい、魅力溢れるキャストの方々と共に作り上げます。そこで起こる化学反応を心から楽しみにしています。

『シブヤから遠く離れて』は、12月に東京・Bunkamura シアターコクーンにて上演される。

チケットぴあ
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