鄭義信 三部作vol.3『パーマ屋スミレ』開幕!南果歩「生きることを見直す」


2016年5月17日(火)より東京・新国立劇場 小劇場にて『パーマ屋スミレ』が開幕した。本作は、3月より始まった『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』に続く鄭義信 三部作の最後を飾る作品。今回、2012年の初演にも出演した南果歩、根岸季衣に加え、千葉哲也、村上淳など新たな実力派俳優陣を迎え再演される。開幕に先駆け、5月15日(日)に行われた囲み取材に、主演の南が応じた。

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「あまり再演を望むタイプではないんですが、この作品はぜひもう一度やりたいという気持ちがすごく強かった」と4年ぶりの再演を喜ぶ南。劇中で“すみしゃん”と呼ばれる自身演じる高山(高)須美役について、「しっかりと大地に根ざした女性、その場で咲く、その場で生きるといういうところに、すごく魅力があるんですよね」と語った。

『パーマ屋スミレ』フォトコール_2

本作では、1960年代の高度経済成長期、石炭から石油へとエネルギー転換していく中で、炭鉱を糧に得ている在日コリアン一家の姿を描いている。「この家族は、本当にたくましく時代を生き続けてきた一家です。観てくださった方へ何か投げかけるだけなく、私達自身も生きる意味を見直す作品だと思います」。

南自身も、乳がんを患い、3月11日(金)に手術を受けたばかり。「1日1日を生きることに必死という意味では、私もこの二ヶ月はまさにそういう状況でした。この作品で復帰できるというのは、本当にありがたいです」と、一層作品への思い入れを深めたようだった。

『パーマ屋スミレ』フォトコール_4

稽古場に夫である渡辺謙がサプライズで訪れたエピソードを聞かれると、「ニューヨークから帰ってきてすぐの頃、差し入れを持って来てきてくれたんですけど・・・何の連絡もなかったんですよ(笑)」と笑いつつ、「この作品を観たことで、彼(渡辺)も再び舞台やりたいという気持ちがすごく強くなったみたいで。それ以降、舞台の仕事を入れようって変わったみたいです」と明かしてくれた。

また、12日(木)に亡くなられた蜷川幸雄さんについて、「蜷川さんとは、2000年に上演された『グリークス』で初めてお会いしたんですが、俳優を心から愛し、信じ、やってみろと送り出してくださる方でした。その作品では、稽古中にケガをしてしまったんですが、病院から戻ってきた私に、ただ一言“やれるな”って声をかけてくださったんです。影ではものすごく心配してくれつつ、“あいつは、何があっても絶対に舞台に立つから”とおっしゃってくださっていたというのを聞いて。本当に、その言葉は忘れられないですね」と目を潤ませた。

『パーマ屋スミレ』フォトコール_3

最後に、南は「炭鉱の世界の話なので、汗みどろなんですけど、必死に、生きようとする人の姿は、なんだか美しく見えるんです。明日に繋げる、今を生きる力強さは、観ていただく方に絶対届くんじゃないかなと思っています。6月半ばには、北九州の劇場でも公演を行います。“生きるエネルギー”が詰まった作品ですので、ぜひ劇場にいらしてください」と締めくくった。

『パーマ屋スミレ』フォトコール_5

1965年の九州、“アリラン峠”と呼ばれた小さな町。そこからは、有明海を一望することができた。アリラン峠のはずれ、「高山厚生理容所」には、元美容師の須美(南)とその家族たちが住んでいる。須美の夫の成勲(千葉)は、炭鉱での爆発事故に巻き込まれ、一酸化炭素中毒患者となってしまう。須美の妹の夫もまた一酸化炭素中毒患者となり、須美たちは生活を守るために必死の戦いを始めて。しかし、石炭産業は衰退の一途をたどり・・・。日本の影の戦後史をたくましく生き抜いた庶民の姿を描く、涙あり笑いありの物語。

『パーマ屋スミレ』フォトコール_6

鄭義信 三部作vol.3『パーマ屋スミレ』は、2016年6月5日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて上演。その後、福岡、兵庫にて公演が行われる。日程は、下記のとおり。

5月17日(火)~6月5日(日) 東京・新国立劇場 小劇場
6月11日(土)・6月12日(日) 福岡 北九州芸術劇場中劇場
6月17日(金)・ 6月18日(土) 兵庫 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

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