観劇レポート!ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』


【提供:東宝演劇部】

2016年4月11日(月)、帝国劇場で初日の幕を開けた舞台『1789 -バスティーユの恋人たち-』。2012年にフランスで上演されるやいなや社会現象を巻き起こし、フランス中を熱狂の渦に巻き込んだフレンチロックミュージカルだ。今回、日本版の演出を担当するのは『エリザベート』や『モーツァルト!』等、話題の作品を次々と世に送り出している小池修一郎氏。日本版『1789 -バスティーユの恋人たち-』でも宝塚版とは違うアレンジを加え、新しい『1789』の世界を創り上げた。日本初演となる本作が帝劇でどんな“熱狂”を生み出しているのか…舞台の模様をレポートしたい。

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1788年、フランスの片田舎で家族と共に農業を営む青年ロナン(加藤和樹)は、税を取り立てに来たペイロール伯爵(岡幸二郎)に父を撃ち殺される。父の敵を討ち、奪われた土地を取り返そうとロナンは単身パリへと向かい、ひょんなことから出会ったロベスピエール(古川雄大)、デムーラン(渡辺大輔)、ダントン(上原理生)ら、市民の手に自由を取り戻そうと活動を続ける革命家たちと行動を共にすることになる。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』観劇レポート_2

【提供:東宝演劇部】

その頃、ヴェルサイユ宮殿では貴族たちが贅沢三昧の日々を過ごしていた。王妃、マリー・アントワネット(凰稀かなめ)はスウェーデンの青年貴族、フェルゼン(広瀬友祐)と愛人関係にあり、そのことは宮廷内でも公然の秘密となっている。ある日、皇太子の養育係、オランプ(夢咲ねね)の案内により、パレ・ロワイヤルで密会することになったアントワネットとフェルゼン。しかしその場で寝ていたロナンとフェルゼンが決闘を始めてしまい、オランプは王妃らを逃がそうと嘘を吐いてロナンを逮捕させる。

良心の呵責からロナンをバスティーユ牢獄より助け出すオランプ。互いに二人は惹かれ合っていくが、民衆の貴族に対する怒りは頂点を迎え、世の中は変わろうとしていた。革命家たちと共に王政を覆そうとするロナンと、王妃に深い敬愛の念を抱くオランプ…そしてとうとうパリでは革命の火の手が上がる。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』観劇レポート_3

【提供:東宝演劇部】

本作が初の帝劇主演となる加藤和樹は、一本芯の通った芝居で、武骨でありながら、自らの使命のために真っ直ぐ走るロナン役を好演。真っ赤な火というよりは、青白く静かに燃える炎を胸に宿して革命に身を投じる青年を魅力的に演じている。

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自身が置かれた立場と、愛した人の間で揺れるオランプ役の夢咲ねねは、清楚で決して前に出過ぎない立場の役柄をしっかり演じながら、内に秘めた芯の強さも的確に表現。ドレス捌きや腰を曲げてのお辞儀など所作の美しさも心に残る。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』観劇レポート_4

【提供:東宝演劇部】

これが“女優”としての初舞台となる凰稀かなめは、長身とスタイルの良さを活かし、華のある存在感で場の空気を一気に彩る。我儘放題の王妃というよりは、誰よりも子供たちを愛し、不器用で感情のキャッチボールが立ち行かない夫・ルイ16世との心の隙間を埋めるために、フェルゼンに救いを求める人物像を体現しているように見えた。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』観劇レポート_5

【提供:東宝演劇部】

革命家の“三人組”ロベスピエール役の古川雄大、デムーラン役の渡辺大輔、ダントン役の上原理生。キレと華のあるダンスで魅せる古川、明るいキャラクターで場を盛り上げる渡辺、自由人の雰囲気漂う上原と、三人は最高のバランスで作品に鮮やかな世界観を構築している。ロナンから「お前たちは本当に飢えたことがあるのか!」と迫られるシーンで、元は良い家の出である三人が苦悩しながらも自分たちの思いを伝える場面に胸打たれた。

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そして、革命を成し遂げようとする若者たちと敵対する“王党派”のベテラン勢からも目が離せない。久々の帝劇出演となる岡幸二郎は、圧倒的な存在感と歌声とでバスティーユを支配するペイロール伯爵を怪演し、ルイ16世の弟、アルトワ伯を演じる吉野圭吾は、キャラの立った悪役を魅力的に見せる。坂元健児は、秘密警察長官という役柄からイメージするキャラクターとは全く違う方向性でラマール役をコミカルに演じ切る。坂元の振り切った芝居で客席は大きく沸いていた。

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』観劇レポート_6

【提供:東宝演劇部】

今回の日本版ではセットを極力シンプルに配し、その分プロジェクションマッピング等の映像で臨場感を出しており、よりマンパワーが前面に出ていると感じた。さらに、ただメロディラインに乗って踊るのではなく、打楽器のリズムに合わせたダンスも多く用いられており、この演出により、民衆のエネルギーの大きさがより強く伝わったように思う。

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革命という疾走感溢れる時代の変化の中で、世の中のこと、そして愛する人のことを思い、苦悩しながらも前に進もうとする若者たち。そのエネルギーとパッションが胸に迫る作品となった『1789 -バスティーユの恋人たち-』。この新しい風を劇場で思い切り体感して欲しい。

(文中のキャストは筆者観劇時のもの。ロナンは小池徹平、オランプは神田沙也加、マリー・アントワネットは花總まりがそれぞれWキャストとして配役されている)

ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』は、5月15日(日)まで帝国劇場にて上演中。

(取材・文 上村由紀子)

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