屋良朝幸がピュアな恋に揺れる!ミュージカル『ドッグファイト』観劇レポート


2015年12月17日(木)にシアタークリエにて東京公演初日の幕を開けたミュージカル『ドッグファイト』。リバー・フェニックス主演で1991年に映画化され、2012年にはオフブロードウェイでミュージカルとして上演された本作だが、日本での公演は今回が初となる。

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『ドッグファイト』レポート

ローズ(ラフルアー宮澤エマ)がギターを片手に切ないナンバーを歌うシーンから物語が始まる。長距離バスで一人サンフランシスコに向かうバードレイス(屋良朝幸)…彼は車内で任務に就く前日夜の記憶を思い出しているのだ。そこには親友、ボーランド(中河内雅貴)とバーンスタイン(矢崎広)の明るい笑顔があった。

『ドッグファイト』レポート

ベトナム戦争出征前夜のアメリカ・サンフランシスコ。訓練期間を終えた兵士バードレイス、ボーランド、バーンスタインの3人は、それぞれの名前の頭文字“B”を取り「スリービーズ」(3匹の蜂)と名乗るほど仲が良い。そんな彼らが母国で過ごす最後の夜、海兵隊で代々受け継がれている「ドッグファイト」に参加しようと街へ繰り出す。「ドッグファイト」とは一番イケていない女の子を連れてきた者が優勝者となり、賞金を得られるという軍隊のバカ騒ぎパーティーだ。

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バードレイスはふと入った食堂の片隅でギターを弾くウェイトレスのローズに目を付け、彼女をパーティーへ誘う。生まれて初めて男性に声をかけられたローズは舞い上がり「ドッグファイト」の会場へ。しかし次第に彼女の純粋さに魅かれるバードレイスは「ドッグファイト」の本当の意味を知って落ち込むローズに謝罪をし、改めて彼女をサンフランシスコの街へと連れ出すのだった…。

屋良はキレのあるダンスと繊細な演技で青年期から大人になろうとするエディー(=バードレイス)を瑞々しく演じる。軍隊仲間と騒ぐ時のハジけた顔と、ローズを前にどう自らの思いを伝えればよいのか戸惑う様子の対比が上手い。夏にクリエで上演された『SONG WRITERS』の時にも感じたことだが、屋良のダンス、台詞、歌には役の人物の思いが細部まで宿っており、本作でもその真摯さに胸打たれた。

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ローズ役の宮澤は地声と高音とを巧みに切り替えながら、透明感のある歌声で“イケてない”女の子を魅力的に演じ切る。エディーとローズが惹かれ合いながら一晩共に過ごす様子はなんともピュアでキュート。大人になった誰もが二人の姿を見て、真っ直ぐな恋愛をしていた頃の記憶を呼び起こされるのではないだろうか。

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スリービーズのリーダー格・ボーランド役の中河内は華のある踊りで舞台上の熱量を上げ、お調子者で少し気弱なバーンスタイン役の矢崎は軽妙な芝居で客席の笑いを誘う。彼らがハジけた様子を見せれば見せるほど、その後のシビアな展開が切なく響くのだ。

『ドッグファイト』レポート

「ドッグファイト」の会場に連れてこられた歯のない売春婦・マーシー役他を演じる保坂知寿はあばずれの雰囲気と、どこか冷めた目で世の中を見ている底辺の女性を好演。ローズとマーシーがパーティーの後に二人で歌う場面は圧巻だ。一人で大人のパートを何役も演じる戸井勝海はその演技の幅を存分に披露し、海兵隊の一員・フェクター(浜中文一)とスティーヴンス(末澤誠也=共に関西ジャニーズJr.)の存在は、まだ年若い青年たちが戦争という渦に巻き込まれていく悲劇を際立たせていた。

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時代の渦に飲まれながら、青年たちが大人になろうと必死にもがく様子がビビッド&エネルギッシュに描かれる本作。パワー溢れるダンス、力強く響く歌とともに紡がれる熱いストーリーをぜひ客席で体感して欲しい。

◆ミュージカル『ドッグファイト』
2015年12月30日(水)までシアタークリエ(東京・日比谷)にて上演
2016年1月7日(木)~1月8日(金)東海市芸術劇場大ホール

(取材・文 上村由紀子)

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