安蘭けい×平方元基 濱田めぐみ×柿澤勇人 二組のキャストが魅せる『サンセット大通り』観劇レポート!


2015年7月4日(土)に東京・赤坂ACTシアターにて初日の幕を開けたミュージカル『サンセット大通り』。エンタステージではこれまで製作発表会見、稽古場レポート、ゲネプロ動画に加え、安蘭けい、濱田めぐみ、鈴木綜馬、平方元基、柿澤勇人、水田航生、夢咲ねねのインタビューをご紹介してきた。今回は満を持して開幕した東京公演の模様をお伝えしよう。

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ハリウッド・サンセット大通りの邸宅で若い男性の射殺体が発見された。男の名前はジョー・ギリス(平方元基)、売れない脚本家だ。プールに沈んだその男は「半年前に何が起きたか話そうか」と、邸宅の女主人、ノーマ・デズモンドの事を回想し始める。ノーマは無声映画時代に活躍した大スター。映画界に復帰を果たす為、自らが主演する映画の脚本を書いており、その手伝いを頼まれたジョーは彼女とその執事・マックス(鈴木綜馬)と共に邸宅に暮らし始めるのだが、そこでの生活は彼の想像を絶するものだった…。

初演から3年の時を経て再びノーマ役を演じる安蘭けいは時折客席の笑いを誘う演技と存在感で大女優の佇まいを見事に表現。ある種の楽天性と、ジョーを自分の元に引き留めようと精神的に不安定になっていく様子の切り替えがリアルで引き込まれる。クラシカルな各ドレスの着こなしも美しい。

『サンセット大通り』安蘭けい、平方元基

平方元基は明るさとストレートさを併せ持ったジョー役を好演。ノーマに振り回されながらも、どこかそれを受け容れている様子が見て取れる役作りだ。夢咲ねねは、キュートさと芯の強さとを併せ持ったベティを魅力的に演じ、重くなりがちな本作に一服の清涼感をもたらしている。初演から執事・マックスを演じる鈴木綜馬は、一癖ありながらノーマに対して絶対的な愛情と忠誠を誓うキャラクターを時に不気味に、そして時にピュアに演じて作品に深みを与えていた。

『サンセット大通り』平方元基

本作『サンセット大通り』の重要なキーワードの一つが「忘れられた大女優」というノーマの存在だ。安蘭が演じるノーマは自らが大スターであると今でも心の底から信じ、周囲の人間に自分は愛される存在であると確信している人物造形。別日に観劇したもう一人のノーマ・濱田めぐみが、他者に心を許さず常に孤独と影とを噛み締めているノーマ像を作ったのとは対照的である。

二人のジョーも全く違う個性で魅せる。明るさと優しさを有し、ノーマやベティに対して戸惑いつつも素直に呼応していく平方に対し、濱田と組む柿澤勇人の役作りはそれとは違う。柿澤は常に崖っぷちにいる人間のギリギリ感を前面に出すジョー像で、何をしていてもどこか人生を斜め上から見ている諦観が漂っていた。

太陽と月…これは製作発表後のインタビューで安蘭や濱田からも出た言葉だが、正に今回の『サンセット大通り』は同じ作品でありながら、全く違うアプローチの二組により、“Wキャストの醍醐味”をこれ以上はない位実感できる舞台になっていると感じた。ノーマが終盤で語る「私は世界一の大スターなのよ」という台詞も安蘭版と濱田版で観客には全く違う響きとなって届くはずだ。

アンサンブルも少人数ながら、一筋縄ではいかないハリウッドの住人達を色彩豊かに表現。それぞれの細かい役作りを見るのも楽しい。

ビリー・ワイルダーの傑作映画に惚れ込んだ巨匠アンドリュー・ロイド・=ウェバーが、美しくドラマティックな楽曲を乗せ、ミュージカルとして蘇らせた『サンセット大通り』。個性が違う二組のキャストが織りなすそれぞれの世界観を堪能して欲しい。

◆ミュージカル『サンセット大通り』◆
【東京公演】2015年7月20日(月・祝)まで赤坂ACTシアターにて上演
【名古屋公演】2015年7月25、26日(土・日)愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2015年7月31日(金)~8月2日(日)シアターBRAVA!

(c)渡部孝弘

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