最高にHAPPYなミュージカル!劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』開幕レポート


2月22日(日)、東京・浜松町の四季劇場[秋]にてミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』が初日の幕を開けた。本作は1993年の初演以来、常に再演リクエストが止まない劇団四季の超人気作品。今回は2011年以来、約3年半振りの上演となる。物語の舞台は古き良き時代のアメリカ。ダンスに夢中な銀行の跡取り息子・ボビーが差し押さえに行ったネバダ州の劇場の一人娘・ポリーに恋をし、彼女の気持ちとショービジネスでの成功を得ようとあの手この手を使うのだが、彼が劇場を差し押さえに来た銀行の人間だと知ったポリーはボビーに対して宣戦布告。そこでボビーはニューヨークの興行主・ザングラーに変装してショーに関わろうとするものの、ポリーはそのザングラー(実はボビー)に恋をしてしまう。そこにニューヨークから本物のザングラーがやってきて・・・。果たしてボビーはネバダ州の砂漠の町・デッドロックでショーを成功させる事が出来るのか?そしてポリーとの恋の行方は?

関連記事:『クレイジー・フォー・ユー』はじめ、劇団四季の公演情報はエンタステージでチェックを!

『クレイジー・フォー・ユー』

『クレイジー・フォー・ユー』がブロードウェイで上演されたのは1992年。「ロンドン産の作品に押されていた劇場街に、本場の威信を取り戻した」と大絶賛された本作は、トニー賞で最優秀作品賞を含む計三部門を受賞。当時、ウエストエンドのみならず、ブロードウェイでも重厚でシリアス路線のロンドン産ミュージカルが幅を利かせていた中、圧倒的に明るいテイスト&ボーイ・ミーツ・ガールに拘った『クレイジー・フォー・ユー』が観客たちにはどれだけ新鮮に映ったことか想像に難くない。中でもスーザン・ストローマンの斬新な振り付けは多くの観客と批評家たちの度肝を抜いた。

ボビー・チャイルドを演じる松島勇気は登場時からとにかく場を明るく照らす。銀行の跡取り息子でありながらダンスに夢中、どこか天然で一途・・・そんな天真爛漫でチャーミングなキャラクターをこれ以上はない位魅力的に演じている。松島ボビーから伝わってくるのは初演から長くこの役を演じ、今回は演出スーパーバイザーとして作品全体を率いている加藤敬二と同じく“踊ることが楽しくて仕方がない”という前向きで力強いエネルギーだ。

『クレイジー・フォー・ユー』

ポリー役の岡本美南はのびやかな歌声と表情豊かな演技で西部のじゃじゃ馬を熱演。ニューヨークの興行師、ベラ・ザングラーを演じる青羽剛はコミカルな面を巧みに見せながら、恋人・テスへの大人の恋心を繊細に表現し、ランク役の志村要は粗野でありながら憎み切れない西部の男を好演。ベテラン・松下武史の飄々とした演技も微笑ましい。
また“ザングラー・フォーリーズ”の女性ダンサーたちの華やかさと明るさ、デッドロックの男たちの素朴でありながらユーモアにあふれた佇まいも観客の目を引く。

『クレイジー・フォー・ユー』

全編を通して流れるガーシュインの音楽は耳馴染みのあるナンバーばかりだし、タップを始めとするダンスシーンは圧巻だ。特に1幕最後の「アイ・ガット・リズム」でパエリア皿やのこぎり、トタン板、かなづちなど、日常生活にある小道具を使いながら大人数のダンサーたちが歌い踊る場面は迫力満点。ミュージカルの魅力がこれでもか!と詰め込まれたシーンは無条件に楽しい。

その他にもザングラーに変装したボビーとザングラー本人が見せる「鏡」の場面や女性ダンサーのボディとロープをウッドベースに見立てた振り付け、当時のミュージカル界を皮肉った“バリケード・・・”云々の台詞、マジックのように車に吸い込まれていくダンサーたちなど演出的な見どころも満載。また、砂漠の町・ネバダ州のデッドロックが現在のどの都市に当たるのか、想像しながら観るのも面白いかもしれない。

『クレイジー・フォー・ユー』

出てくる登場人物たちが全員魅力的で楽曲・ダンス・芝居と三拍子そろった最高にHAPPYなミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』。ミュージカルラバーは勿論、ミュージカルはちょっと苦手という方にもお薦めしたい作品である。

※文中のキャストは編集部観劇時のもの。
※出演者は変更になる可能性があります。

撮影:荒井健

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。