ドラマ『来世ちゃん』Pとペヤンヌマキがテレ東無観客フェスに“演劇”で参戦!『女のみち特別編』7月4日配信


テレビ東京が、池袋の「Mixalive TOKYO」を使って9日間連続で行う配信プログラム「無観客フェス2020」。その一つとして、2020年7月4日(土)に演劇『女のみち特別編~アンダーコロナの女たち~』が配信される。

作・演出を手掛けるのはぺヤンヌマキ(ブス会*)。その代表作『女のみち』は、AV女優たちの控室で起こる女たちの物語だ。外出自粛でうっぷんが溜まり、怒涛のようにしゃべりまくる女たちと、そしてコロナ厳戒態勢下で行われるAV撮影の様子を、会話劇であぶり出す。

この演目は、ドラマ『来世ではちゃんとします』などをヒットさせたテレビ東京の祖父江里奈プロデューサーによって実現した。自身も“演劇が大好き”という祖父江P。配信という、物理的距離を超えられるこの機会にぜひ多くの人に届けたいと、ペヤンヌに作品作りを依頼したという。

“日常の地続きの、私の話”を作品作りの核に置く二人が、コロナ禍でどんな作品作りに取り組んでいるのか、話を聞いた。

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――テレ東さんの「無観客フェス2020」が、6月27日(土)から始まっていますが、この企画はどのようにスタートしたのでしょうか?

祖父江P:実は、この企画はとてもふわっと始まったんです(笑)。テレビ東京も運営にかかわる新施設「Mixalive TOKYO」が3月にオープンしたのですが、コロナの影響で一つも公演が打てないという状況になってしまって・・・。だから、テレビ東京として何かできないか?と、何をやるかを決めないまま、とにかく動き出したのがこのイベントです。

各プロデューサー・ディレクターには、1人1日を自由に使っていいというお達しがありまして。「なんでもやっていい」というスタンスだったので、逆に困ってしまって(笑)。どうしようかなと思っていた時に、上司から「おまえは演劇が好きなんだから、演劇やってみたら?」と言われまして。

私、学生時代に演劇をやってはいたのですが、社会人になってからはもっぱら観る専門だったので、いざやりたいとしてもやり方とか分からなくて、イベントまであまり時間もないから焦っていたのですが、「ぺヤンヌさんに相談してみよう!」と思い立ち、今に至ります。

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――祖父江プロデューサーとぺヤンヌさんと言えば、ドラマ『来世ではちゃんとします』(以下『来世ちゃん』のタッグですね。

祖父江P:ペヤンヌさんとは、『来世ちゃん』で一緒に作品作りをさせていただく中で、描きたいこととか、作りたいものの方向性が一緒だったんですよ。よく知った方ですし、優しい方なので全力で甘えました(笑)。

――昨今、様々な演劇人の方が、作品を届ける手段として“配信”を模索していますが、ぺヤンヌさんはこの「無観客」「配信」で舞台を届ける企画をどう受け止めましたか?

ペヤンヌ:やはり、演劇ってお客さんに劇場に来ていただいて観てもらうもの、という考えだったので、無観客で配信をするとどうなるんだろうか・・・と最初は思いました。今回の作品は、今まで、ブラッシュアップしながら劇場で繰り返し上演してきたシリーズです。配信という形でやるには、また別のおもしろさを加えなければいけないのかなと・・・。

でも、この『女のみち』というシリーズはAV女優さんたちの控え室での様子をワンシチュエーションで描く作品なので、シットコムの映像作品のような感じで成立するんじゃないかとひらめいて。祖父江さんと一緒なら、演劇と映像作品の中間で、すごくおもしろいものが出来上がるんじゃないかと思ったので、お引き受けしました。

祖父江P:短い時間での作品づくりになるので、ゼロから何かを立ち上げるよりもともとある企画を違う形で見せる方がいいなと思ったんです。そして、私が『女のみち』のファンだったということもあり、「番外編などを作っていただけたら嬉しいんですけれども・・・」と恐れ多くもお願いしてしまいました。たくさんの人に観ていただきたい作品だったので、ご快諾いただけて嬉しかったです。

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――この状況下で描く『女のみち』では、でどんなことを考えて作られていますか?

ペヤンヌ:AV業界って、“濃厚接触”な業界の一つです。それでも、できる限りの対策はしようと、通常のドラマ撮影と同じように控え室やリハではマスクやフェイスガードして、ワンシーンごとに全部消毒、うがい・手洗いの徹底と、基本的な対策を全部やった上で、やることはやる。

今回の台本は、そういう“今”をリアルにそのまま書きました。このシリーズ出てくる女性たちは、いつも過酷な状況に晒されているんですが、それでも逞しく生きている人たちです。今こそそういう姿を見せることで元気をお届けしたいなと思っています。

AV業界に限らず、今って誰の身にも“生死”の問題が降りかかってくる状況ですよね。でも、どんな時も人は臨機応変に対応して、生きていくしかない。ブス会でも、もともと日常の些細なことを会話劇にしてきたんですが、そのスタイルは変わりません。でも、SFものでしか聞かなかったような言葉が日常会話として出てきますね(笑)。

――ぺヤンヌさんも祖父江さんも“日常の地続き”の作品作りを非常に大切にされていますが、今のこの日常に非日常が入り乱れる状況をどう捉えていらっしゃいますか?

祖父江P:今まであり得なかったことが起きたとしても、人間ってあまりやることも考えることも変わらないんだなと思いました。例えば、人と気軽に会えなくなればなるほど、好きな人に会いたいなという気持ちが募る。身体の関係しかないカップルの片方は思いが募るけれど、もう片方は関係を断つチャンスと思っていたり・・・。こういう人の心の動きって、普段と何も変わらないんですよね。

世界レベルで見ると未曾有の大惨事ですが、我々レベルに落としていくと、シチュエーションや時代背景が変わっただけ。「恋がしたい」「美味しいものを食べたい」「あいつムカつく」といったような、人間の営みは何ら変わっていない。状況は変わっても「その中で私たちはどう生きていくのか」ということを描いていくことには、あまり変わりがないものなんだなと実感しました。

ペヤンヌ:今、会議もリモートで成立できるということに大勢の人が気づきましたからね。 状況が変わると、人は何か行動を起こすもので。 そうやって新しいことがどんどん出てくる中で、受け入れて乗りこなしていく人と、乗り切れない人が出てくる。そういう衝突も、特別なことではなく日常の“あるある”なんですよね。

祖父江P:エンタメにはいろんな種類があって、もちろんSFも会話劇も、どちらもエンタメです。でも、私が好きなのは「ここで描かれているのは私と同じだ」「これは私の物語だ」と思える作品なんです。そういう意味で、まさにこの作品は苦境の中で生きていく女性たちのあり方を描いているから、観てくださった方が「私と同じだ、私もがんばろう」って思ってくれたら、エンタメとして意義のあるものになると思っています。

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――今回の作品作りの中でも、今までにはなかった“リモート本読み”が行われたそうですね。

ペヤンヌ:私、「リモート本読み」に新しい可能性を感じたんですよ。今までだと、わりとすぐに立ち稽古に入ってしまっていて、共通理解を深められていないままとりあえず動きを作りがちだったんです。今回「リモート本読み」をやってみて、改めて立つ前のディスカッションって大切なんだなと気づきました。

何回か、画面越しに本読みを重ねるうちに見落としていたことや気づくこともあって。どこか台詞がうまく噛み合わないところがスッと解決したり。互いに理解することの大切さを痛感しましたね。

祖父江P:確かに。今回出演してくださる内田慈さん、もたい陽子さん、高野ゆらこさん、尾倉ケントさんは、ずっとこの作品に出ている役者さんたちですでに息の合った方々なのに、よりスムーズになるってすごいですね。

ペヤンヌ:実は、いつか演劇が元の状態に戻っても「リモート本読み」は続けようという話をすでにしています(笑)。

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――困難を乗り越える時って、新しいことが生まれる瞬間でもありますね。配信も、この自粛期間に一層生活に浸透してきた気がします。

ペヤンヌ:私も、自粛期間中は配信をたくさん観ていました。まったくエンタメに触れずに過ごすということはなかったので。

祖父江P:少し時間経ったからこそ、感じることもありますよね。テレビ東京にはParavi(パラビ)というプラットフォームがありますが、登録者数が増えたという話を聞きました。今後どうなっていくかは分からないけれど、配信はこの先間違いなくエンタメを楽しむ選択肢を広げていってくれると思います。

――「生」であることが最大の醍醐味である演劇が、「配信」という場を広げることについて、お二人は作り手としてどう感じていらっしゃいますか?

祖父江P:映像側の人間としては、お客さんをお互いに呼び込めるようになるのはメリットだなと。私はこの『女のみち』を劇場で拝見して、たくさんの人に観てもらいたい!と思ったんですが、演劇という形が一つハードルになっている部分も大きいなと思ったんです。劇場までわざわざ足を運ばなくてはならないし、チケット代も高いですし。

でも、配信なら「試しに見てみようかな?」とそのハードルが少し下がります。今まで劇場に行ったことがない方々にも、まず映像として作品に触れて「知っていただく」機会が増えることは、次も観てみよう、次は劇場に行ってみようという間口を広げることに繋がるんじゃないかなと思うんですよね。ペヤンヌさんはどうですか?

ペヤンヌ:やっぱり、全国どこでも観られるというのは強味ですよ。演劇って、なかなか地方公演をやるには予算的に難しい部分もあるので。ブス会のお客さんにも、観たいけれど地方だから・・・という方が結構いらっしゃるので、そういう方々にも作品を届けられるのは嬉しいです。物理的距離を超えられるチャンスです。

祖父江P:映像にも生での観劇にも、それぞれの良さがあるので、両方楽しんでくれる人が増えるといいですよね。実際に劇場で観た作品も、映像で観ると「こんな表情していたんだ」とか「細かいところこうなってたんだ」という発見がありますし。でも、一人がアップで映っていると、その時他の役者さんがどんな表情しているか分からない。生で観たものを配信でリピートできるというのがベストですね(笑)。

ペヤンヌ:今回は配信一回限り公演ですけど、いつか通常の劇場公演としてもできたらいいですね。もともと、この『女のみち』シリーズは何年かおきに更新しながら続編を作り続けたいと思っていたんです。ちょうど今年か来年やりたいなと思っていたんですが、こんな状況になってしまったので難しいかな・・・と諦めていた時にすごくいい機会をいただけたので、ラッキーです(笑)。

祖父江:お互いにラッキーでしたね(笑)。

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――祖父江さんとペヤンヌさんという信頼関係の上に成り立つスピーディな作品作り、楽しみにしています。最後に、配信に向けてお客様へメッセージをお願いします。

ペヤンヌ:映像と演劇、祖父江さんとのこの関係がないとできない作品だと思うので、タイトで大変なんですが、楽しいという気持ちの方が勝っているんですよ。全国どこからでも観ることができますので、劇場に行くのはハードルが高いなと思っていた方々にも、これまでの『女のみち』をご覧くださった方々にも、新しい楽しみとして味わっていただけたらと思います。

祖父江P:AVを嗜む方は、この作品を観てからAVを見ると、また違った楽しみ方ができると思います。女優さん、スタッフさんたちはこういうことを思っていたんだなあと(笑)。特に、このコロナ禍に撮られたAVを観ると、より感慨深く、新たな感情が生まれるんじゃないでしょうか!

とにかく、本当におもしろいんですよ。私が観たいものを作っていただきました。ドラマ『来世ちゃん』が好きだった方は、絶対楽しめると思います。同じ人間が作っています(笑)!
ぜひ、配信を楽しんでください。

◆作品情報

テレ東 無観客フェス2020
演劇『女のみち特別編~アンダーコロナの女たち~』

2020年7月4日(土)20:00開演 

【出演】内田慈、もたい陽子、高野ゆらこ、尾倉ケント
※作品は約40分程度を予定
※終演後、出演者、ペヤンヌマキによる座談会あり

<追加情報!>
座談会の特別ゲストとしてAV女優・羽田希さんの参加が緊急決定!
現在まさにコロナ感染対策下での撮影に参加している羽田さんに「現場の生の声」を聞かせていただきます!

【プロデューサー】祖父江里奈(『来世ではちゃんとします』など)

【詳細】https://www.tv-tokyo.co.jp/mixalive/event/tvtokyo_fes2020/

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