『Indigo Tomato』平間壮一&長江崚行インタビュー!「名前をちゃんとお伝えする前にあだ名が決まりました(笑)」


“みんながHappyになれるミュージカル”を目指して誕生したColoring Musical『Indigo Tomato』。2018年5月に小林香作・演出、平間壮一主演で初演された作品が、2019年11月10日より再演されている。サヴァン症候群で“共感覚”をもつ主人公・タカシを平間が再び演じ、兄のためにさまざまなことを諦めて働きながら生活を支える弟・マモル役として、新キャストの長江崚行が加わる。

このほか、初演に続き大山真志、安藤聖、剣幸、彩吹真央が出演。そして、大山とWキャストで川久保拓司が参加する。バージョンアップした『Indigo Tomato』について、平間と長江に初共演となる互いの印象などを交えながら語ってもらった。

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――約1年半と言う短い期間で再演が決まりましたが、そのことを聞いた時のお気持ちは?

平間:シンプルにめちゃくちゃ嬉しかったです!初演の打ち上げで「ぜひ再演やりたいです」ってプロデューサーさんと話をしていて。でも、再演をするには時間がかかったり、実現しないこともあると心のどこかでは思っていたんですけど・・・(笑)。1年半で再演が決まって、嬉しかったと同時に、さらにいいものを作っていかないと再演をやる“意味がない”と考えていました。

再演は、物語が分かっている分、さらに伝えられることがあるのかなと思っています。初演は現実味のある話ながらファンタジー要素も強かったのですが、再演ではより現実味が増して、自閉症の方を見る冷たい目線など、周囲の描写がよりリアルになっているんです。ミュージカルと言いながらも、ストレートプレイに近くなっている感じがしますね。

――初演を通してどんなことを得ましたか?

平間:座長をやらせていただくこと自体が挑戦でした。経験して自信がついたし、自分は自分で良いんだってタカシに教わりました。これまでは、「言われることを一生懸命にがんばろう」という吸収していくスタイルでやっていたんです。そういう時期も大事だったなと思いつつ、自分の考えそのままでいいんだと思えるようになりました。これからは自分が考える芝居スタイルを作ったり、表現したいものをもっと伝えていこうと思ったり、今は「やりたいことはこれだ」と演出家さんの前で見せて相談できることが楽しくなりました。

――長江さんは初演を映像で見られたそうですが、その時の作品の印象は?

長江:舞台上に5人しか出ていないのに、とんでもない人数がいるようなすごいパワーを感じました。すごく好きなお話のジャンルなんですけど、自分が好きなお話が人を通して形になるとこんなにパワーアップするんだなって・・・。台本をいただいたのが別作品の地方公演中だったんですけど、一人でホテルの部屋で読んで、すごい作品に関わらせていただくんだなとしみじみ思いながら、すごく楽しみになりました。

――長江さんは、新キャストとして作品に参加されますが、ご心境は?

平間:必死だよね。

長江:必死です(笑)。一度作り上がって、お客様の元に届いた作品が再演と言う形で再構築されるので、そこに参加するプレッシャーは感じます。でも、現場の雰囲気がすごく温かくて、優しい方ばかりなので。のびのびやらせていただけているので、すごく恵まれているなと思っています。皆さん、実力があって、余裕もあって、舞台上で何が起こっても大丈夫な方たちなので、その中でできる安心感もあります。僕は僕で、マモルには共感できる部分がたくさんあるので、その辺を掘り下げつつ、皆さんの胸を借りながら等身大に、謙虚にがんばりたいと思いました。

平間:信頼できる人しかいないからね。

長江:毎日がめっちゃ楽しいんです!すごく勉強になることばかりで、毎日いろんなことに気づいています。それを家に持って帰って、自分なりに解釈して、でも上手くいかなくて次の日に稽古場に行って「こういうことか!」と改めて思う・・・ということを毎日繰り返して。何かしらの発見を持って帰ることができるという現場はなかなかないと思うので、この年齢でこの作品に出られることは、すごくありがたいことだなと思いました。

平間:稽古場で見ていて思うんだけど、真志のこと超好きでしょ(笑)。

長江:はい!大きくておもしろい人、好きなんです(笑)。その大きさではしゃぐ人が・・・。

平間:大きいもんね、真志(笑)。

長江:顔合わせで初めてお会いした時に、すごいポップな登場をされたんです。ミュージカルに出てきそうで。すごくおもしろくて、一緒に居たら毎日楽しいだろうなと思いました。

平間:真志はおもしろいよね。真志はおもしろさの奥に優しさが見えるから人間としてすごく好きだなって思う。二人になった時に話すと、すごく優しいから場を和ませたくてやってくれているんだなというのが伝わってくるので、大好きです。

――お二人は、今回が初共演で兄弟役を演じられますが、関係は?

平間:初めて会ったのはチラシ撮影の時だったんですが、最初からあまり壁がなかったので兄弟役に違和感はなかったです。

長江:僕はめっちゃ緊張しました(笑)。

平間:緊張してたね~(笑)。

――最初はどんな話をされていたんですか?

長江:「今何の作品やってるの?」と聞かれて「金太郎役をやっています」と伝えたら、「じゃあ君は金太郎だね」って、名前をちゃんとお伝えする前に“あだ名”が決まりました(笑)。まだ名前で呼ばれたことないかもしれないです・・・。

平間:あ、そうだね(笑)。「マモル」か「金太郎」だもんね。

――ちなみに、会う前のお互いのご印象は?

平間:マモルに選ばれる子だから、「こういう子かな」とか予想はしていました。

長江:合ってました?

平間:うん、合ってたかな。同じ左利きなんですけど、左利きって脳みそを使っているところが違うので、右脳左脳の切り替えが激しいらしいんです。浮き沈み激しかったりしない?

長江:激しいです。

平間:話したら絶対共感できるタイプ、そこで兄弟っぽいなって思いました。絵を描くのが好きだっていうし、僕も好きだし。

長江:僕は、平間さんがすごく好きな作品のすごく好きな役をやっていらして・・・『RENT』のエンジェルが大好きなんです。

平間:そうなんだ!

長江:昔『RENT』のオーディションをエンジェル役で受ける時に海外版の『RENT』を見たんですが、めちゃめちゃ泣いて・・・生涯の中ですごく好きな作品の一つに巡り合えた、運命の出会いを果たしたなと思うくらいの衝撃でした。平間さんがエンジェルを演じられたと聞いた上で、タカシを演じている姿を見て、すごく繊細な方なんだろうなって思っていました。細やかな描写が出来る方なんだなって。

平間:嬉しいです(笑)。

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――長江さんは今作での“新人”として、平間さんに何か聞いておきたいことありますか?

長江:めちゃくちゃプライベートなことでもいいですか・・・?

平間:なあに?

長江:年上の方への距離の縮め方が絶妙で、お上手だなと思って。現場の先輩方に対しても砕けたあだ名をつけていたり、その距離感がすごいなと。相手の方も受け入れていらっしゃるので、その、先輩の懐に入っていく術を・・・。

平間:もともと、めちゃくちゃ真面目だったの。真面目で、敬語しか使えなくて、先輩を「上の方だ!」と強く意識しちゃうと、いつまでも俺自身がすごく遠くにいる気がして。敬語だと先輩との距離の掴み方が分からなくて・・・それを吹っ飛ばして同じくらいの感覚でいったら、この方はどう反応するのかな?と思ってからそうやって接していくようになったよ。でも、そういう接し方が苦手な先輩もいるから、その時は空気を読みます(笑)。距離をグッと縮めて、受け入れてくれそうな方に対してはそうやって交流を深めています。

長江 距離感を見極めるの難しいですよね・・・ありがとうございます!

平間:そういうのが上手くないからこそ、不器用なりのがんばり方ですね。

――長江さんは稽古に入る前に初演でマモルを演じていた溝口琢矢さんとお会いしたとか。今作について何かお話されましたか?

長江:僕が出演していたシリーズ作品の前作に出演されていたので、見に来てくださっていたんです。作品の感想をすごいスピードで語られていたので・・・すごく話す方なんだなと(笑)。『Indigo Tomato』の再演にマモル役で参加させていただくことを伝えたら「がんばって!」と声をかけてくださって。マモルを構成した方の雰囲気ってこうなのかなと感じました。

平間:(溝口くんと長江くんは)似ているんです、稽古の仕方とか。最初にトマトの絵を描くという稽古をするんですけど、描く絵の感じが似ていたりして。マモルを演じるのはこういう子なんだなって思いました。一人だけ、すごくリアルだったんですよ(笑)。みんな大雑把に“丸描いて赤で、緑!”みたいな感じなんですけど、(長江くんは)ちゃんとしたトマトを描こうとしていて。

――トマトをリアルに描いた理由は?

長江:僕の感性の中にファンタジーがなかったんだと思います(笑)。マモルも“リアル“をすごく感じている子なのかなって。マモルが中学を卒業してすぐに働きに出て、兄を支える中で月々にかかる税金や生活費、食費を全部管理して、自分の夢を追いかける隙間がどんどんなくなって・・・自分の感情が“リアリティ”に淘汰されていくというのを無意識に感じていたのかなと。トマトを描くシーンがシーンなので、もっとファンタジーがあってもよかったかも・・・って今、急に稽古の反省をし始めちゃったんですけど(笑)。

平間:真面目だなぁ(笑)。

長江:なんかその稽古の日は、リアルに描きたい日でした。

――ちなみに長江さんは溝口さんに“おしゃべり度”も似ていますか?

平間:似てますね(笑)。

長江:僕、そんなにおしゃべりですか?

平間:あまりしゃべってはいないけど、「この子、開放したらずっとしゃべっているのかな」というのは感じている(笑)。

長江:開放したの平間さんですよぉ(笑)。

平間:(笑)。

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――再演で注目してほしいポイントはどこでしょうか?

平間:円周率の数字が増えました!一生懸命、苦戦しながら覚えています(笑)。それから、5人しかいないキャストの中で、皆さんがいろんな役をやってくださっているのがすごくおもしろいところだなと思います。「通行人役もやるの?」とか。

――長江さんは演出を務める小林香さんとは今作が初めてですよね。

長江:そうです。シーンが始まる前に細かな時代背景から描写、キャラクターの感情の流れなどを説明していただいたんですが、あまりそういう経験がなかったので新鮮でした。僕が本を読んで持ってきた解釈と微妙に違う時もあるんですけど、一人のキャラクターに対して感じ方が違った時に「なんで違うんだろう?」と深堀していく方なので、ご一緒してみてすごくおもしろい方だなと思いました。

平間:1度、4時間そういう話し合いしてから1回立ち稽古して終わった時がありましたよ。「この年代は何が流行っていて・・・、野球はどこのチームが強くて・・・」と、時代背景とかを事細かく話してから、立ち稽古して終わり。みたいな。

長江:それぞれの解釈を聞くことで、自然と進むべき道が見えるので、良いですよね。

――サヴァン症候群という難しい役どころですが、どのように作り上げていったのでしょうか?

平間:症状が人によって違ったり、感じ方が違かったりするんですよね。自分なりの見え方があって、この音が聞こえたら青に見える・・・というのを設定したらやりやすくなりました。低めの音が聞こえたら肩が動いてしまうとか。一個起きたことに対して、二個反応しちゃうんですって。普通だったら耳だけで聞くけど、それと連動してどこかが動いちゃうみたいな。実際に聞いたのは、外に出て電車とか乗っていると音がずっと鳴っているからずっと動いちゃうようで、不安だからとかじゃなく、音が鳴っているから動くんです。そういうことからヒントを得て作りました。

前は、どうしても演じに“行く”という意識や、無理やり取り入れている感覚があって。一生懸命やらないとタカシになれなかったのが、すんなり入るようになりました。今回は、意識しなくても自然とできるようになっています。前は、すごく頭で考えて「俺にはそう見えるんだ」と意識していたんですけど、今はもう、自然に見えている感じです。

――長江さんはマモルをどのように作り上げていっているのでしょうか?

長江:サヴァン症候群の兄がいて、二人で生きていくということに対してのリアリティを持っている人は少ないと思うので、自分の経験の中でうまく組み立てつつ、ないものは取り入れつつ、(平間さん演じるタカシが)現場でいて、サヴァンを持っている人に見えない時もあるんです。もちろん普通の人より出来ないこともあるけど、他の人よりすごいことができる人でもあるし・・・という不思議な感じです。

平間:マモルって、すごく難しい役だと思うんです。マモルからしたら、タカシって思っているより意外と出来ちゃってるじゃんって。会話もできるし・・・マモルがタカシを支えている部分はバックボーンにあって、舞台では見えない部分だったりするから一番難しいだろうなって。多分、お兄ちゃんのことがすごく好きで、そんな兄ちゃんを受け入れてくれない社会に苛立っているのかな。

長江:やっていて思うのは、二人で一つだから、お兄ちゃんが感じることは俺も感じているというような、自分に言われているような感覚もあるんです。

平間:マモルが若いゆえに、「分かっちゃいるけどストレスがたまるよ!」って気持ちが爆発してしまって、思わず「お前のせいだ!」と言っちゃうんですよ。タカシに「働けよ」って言うけど、働かせてくれない社会というのも分かっていて・・・、でも兄ちゃんはがんばれば働けるとどこかで思っている、みたいな。

長江:うわぁ~、この話あと2時間くらいしたい!

――お話は尽きませんが(笑)。最後に公演を楽しみにしている皆様へ、メッセージをお願いします。

長江:今回、6都市を回るので、全国のいろんな方に観ていただけることがすごく嬉しいです。たくさんの方に観てもらえるということは、その数だけ解釈や見え方が生まれるということですから。お客様の心に、何かしら届いたら素敵だなと思っています。この作品が「明日からこうしてみよう」と考えを切り替えるきっかけになったり、心に刺さったりするものになればいいなと思います。楽しみにしていてください!

平間:『Indigo Tomato』という作品は、演じる側のキャストやスタッフも裸になってやっているような感じで、上手くやろうとか、お客さんを感動させようとか、そういう気持ちは一切ないんです。ただ単純に、作品として一つのものを作り上げたいという気持ちだけでやっています。その熱が観てくださる方に届いて、「心がなんかあったかくなったね」と感じていただけたら。上手い下手ではなく、人間としてお互いにぶつかっています。受け取ってもらえるものが必ずあるという自信があるので、ぜひ劇場に観に来てください。

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◆公演情報
Coloring Musical『Indigo Tomato』

【福島公演】2019年11月10日(日)~2019年11月11日(月) いわきアリオス小劇場
【北海道公演】2019年11月14日(木)~2019年11月15日(金) 札幌市教育文化会館大ホール
【大阪公演】2019年11月19日(火)~2019年11月21日(木) 東大阪市文化創造館小ホール
【福岡公演】2019年11月26日(火) 福岡ももちパレスホール
【石川公演】2019年11月29日(金) 北國新聞赤羽ホール
【東京公演】2019年12月4日(水)~2019年12月10日(火) 東京グローブ座

【作・演出】小林香
【出演】平間壮一/長江崚行、大山真志、川久保拓司、安藤聖/剣幸、彩吹真央

【公式サイト】https://www.indigo-tomato.com/

(取材担当・撮影:エンタステージ編集部3号)

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