舞台『文豪ストレイドッグス 三社鼎立』多和田任益×君沢ユウキ インタビュー!「いい作品にはいい縁の下の力持ちがいる」


まもなく、2019年6月8日(土)より、舞台『文豪ストレイドッグス 三社鼎立(さんしゃていりつ)』が上演される。舞台化第三弾となる本作では、「三社鼎立」というタイトルが示すように、異能力を持つ探偵集団「武装探偵社」、ヨコハマの裏社会に巣食う「ポートマフィア」、そして新たに襲来した北米の異能者集団「組合(ギルド)」がぶつかり合う“巨大異能戦争”が描かれる。

今回は、シリーズを通して太宰治役を演じる多和田任益と、フランシス・Fとして初参加を果たす君沢ユウキにインタビューした。久しぶりの共演となる多和田と君沢。演劇への熱い想いがほとばしる二人に、演劇が大好きなおもしろい人が集まった座組を、様々な角度から二人に語ってもらった。さらに、君沢から語られた、20歳の頃から知る多和田の変化とは――。

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――舞台「文豪ストレイドッグス」、いよいよ第三弾です。多和田さんは、シリーズすべてに出演されていますが、今回の稽古場を振り返って雰囲気はいかがでしたか?

多和田:いい意味で変わらなかったです。第二弾の「黒の時代」は座長が違うこともありましたし、お話の密度も違うので、空気がまた違ったんですが、今回は第一弾の稽古場をパワーアップさせたような感じになりました。新しいキャストさんもたくさん加わって、舞台「文豪ストレイドッグス」というものが大きくなっているのを感じましたね。

――君沢さんは、初参加となりますが、まず外から見ていた時はどう感じていらっしゃいましたか?

君沢:やっぱり、中屋敷さんの演出はすごく演劇的だなと!僕は、若い頃うらぶれた劇団をうろうろしておりまして(笑)。すごく演劇が好きで、この世界に入ったんです。中屋敷さんとは同い年なんですが、その頃から演劇ぶっくとかに載っているのを見ていて、ずっと「いつか一緒に演劇を作ってみたいな」と思っていたんですよ。

――念願叶って、ですね。実際に、中屋敷さんと作品作りを一緒にされてみたご感想は?

君沢:中屋敷さんの頭から出てくるものは、すごいです。昔から知っている手法やフィジカルを使った表現もたくさんありますが、2.5次元から演劇に入ってきた方には、逆に新しく映っているじゃないでしょうか。
でも、会う前は、すげぇ怖い人だったらどうしようって思ってたんですよ。昔はすぐ「コラぁ!」とか、「永遠に立っておけ!」とか言う方がいっぱいいましたから(笑)。中屋敷さんは、温和でずっと笑ってらっしゃる方で・・・。

多和田:ある種、ヤバイですよね(笑)。

君沢:うん(笑)。ふとした瞬間、何に笑ってるんだろう・・・って思う時もあるんですよ。誰も笑ってないのに、中屋敷さんだけ笑ってる。

多和田:多分、ゾーンに入られてる(笑)。

君沢:それだ!ある意味、この作品の登場人物みたいだよね。異能力の持ち主!多分、演出をしながら何手も先が見えているんだよ。だから笑いも先行していて自分の中だけで増幅させて爆笑している感じ。・・・ヤバイですよね(笑)!でも、演出家が喜んで笑ってくれてるなら自信が持てます。

――本作は「三社鼎立」ということで、登場人物もぐっと増えています。それぞれのカラーは見えましたか?

多和田:そうですね。武装探偵社としては、第一弾でできたものがあって、第二弾には江戸川乱歩(長江崚行)と太宰しか出ていませんでしたが、「これだ!」っていう居心地の良さはずっとあるんです。今回は、ついに福沢諭吉社長(和泉宗兵)もいてくれますしね。
ポートマフィアは、第二弾で森鴎外(窪寺昭)が登場したことで、鴎外さんが中心にいる重みが出たなと。今回、さらに(尾崎)紅葉さん(夢月せら)とかQちゃん(夢野久作/倉知あゆか)が出てきますから、魅力が増し増しです。

ギルドに関しては、もう「君沢さんを中心に出来上がってます!」っていう感じがすごい!元々のキャラクターもすごく濃いんですが、それに負けないフェイスと飛んでくる圧がすごい(笑)。何もないところにお金が見えるくらいのゴージャス感があります。皆さんにも、観たら絶対「そうだよね、ギルドってこうだよね」って感じてもらえると思います。衣裳やセット、照明が加わったら、より三社それぞれのカラーが出るだろうなあと、今から楽しみです。

君沢:ギルドの人間としては、こちらにウェイトを置いていただいているので、大変ありがたいです。この人数が、メインキャストとして出てくる舞台も、そうそうないと思うんですよ。この人数だからこそ表現できるものがあって、それもまた演劇的だなと。ギルドが異能力を発動する時は、すごく驚いてもらえるんじゃないかな。

多和田:異能力を発動している時、すごく気持ちよさそうです(笑)。

君沢:皆さん、「スイミー」ってご存知ですか?あのイメージです。僕はスイミーです(笑)。独裁者の役ですが、一人ではできないことをすごく感じています。

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――役作りに関してはいかがでしょう?

多和田:僕は、ありがたいことに三作連続で太宰を演じさせていただいているのですが、初演の頃には見えなったものが明瞭になってきた感覚があります。普段も、ちょっと太宰さんに寄ってきた感覚があって。鳥ちゃん(鳥越裕貴)にも「アイツますます太宰やん」って言われたりして。余計なものが、良い意味でそぎ落とされてきたのかなって思っています。

――それは、何かきっかけがあったのですか?自然とですか?

多和田:「黒の時代」の頃の太宰を演じられたのが大きかったんだと思います。第一弾の頃も、もちろん役として必死に生きていたんですが、「黒の時代」を終えて、あの時代を経験したかしないかって、自分の感じ方や居方にものすごく影響があるなあと感じました。太宰にとって織田作之助(谷口賢志)が特別な存在であることと同じように、僕の中にも賢志さんからいただいたものがちゃんと生きているんです。くさい言い方になってしまうんですが、太宰の中に織田作がいるように、僕の中にも黒の時代がずっと生きてる。過去ができたことで、より「ギルド編」を生きるのが楽しみになりました。

君沢:僕、任益が演じる太宰を観た時に衝撃を受けたんですよねえ。任益とはミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで共演していまして、その時はずっと「油断せずに行こう!」って言葉の似合うキリッとした部長として見ていたんですよ。太宰は、キラキラ感が半端ないけど変。それを嫌味なく出来ている上に、どこがアドリブなんだか分からないようなシーンをいっぱい作っていて。それって演劇においてすっごい良いことじゃないですか。だから、任益はまた一つ武器を身に着けたんだなと思って、なんか嬉しくなっちゃって。

多和田:嬉しい・・・(君沢さんの言葉を噛みしめる多和田さん)。

君沢:この座組、本当に仲がいいんですよ。プラス、座長の鳥ちゃんを筆頭に、ベテランの方から若手の子まで、演劇への魂を持った芝居好きが集まっている。そんな人たちのところへ、僕はギルドのフランシス・Fとして、黒船のように乗り込まねばならないから大変です。でも、立ちはだかる相手が強大な存在であればあるほど、結果的に立つ花があると思うので・・・まずは顔から圧が出るようにしたいなと(笑)。悪ではなく、不器用な選択を貫きたいと思います。

あとは、どうやって妻と子どもを持つか・・・今は、そればかり考えてやっていますが(笑)。冗談はともかく、この世で一番大切なものを自分の中で置き換えて、突き詰めます。途中参戦だからこそ、丁寧に強くやっていきたいなと思います。

――お話にも出ましたが、お二人は久しぶりの共演ですね。お互い、何か思うことはありますか?

君沢:任益はいい意味で図太くなりました。強くなりました。昔はもっと繊細で。自信つけてきたんだろうなと思います。

多和田:君沢さんは、20歳の頃から僕を知ってくださっている方で。僕にとってなくてはならない作品の一つであるミュージカル『テニスの王子様』では、役としても人としてもコーチのような存在だったので、そんな風に思っていただけて嬉しいです。今までやってきたことが間違っていなかったんだなと思えました。

君沢:本当に、太宰を演じている任益を見て大ファンになりました。単純に、袖から見てたいもん。眼圧強めで。

多和田:なんかギラギラって視線を感じるなと思ったら君沢さんだと思っておきますね(笑)。

君沢:アドリブやないかぁ!って、袖でツッコんでるから。

多和田:君沢さんは、いてくださるだけで周りが明るい気持ちになれるし、顔が濃いのも変わらないですね。

君沢:薄い道はもうないですからね(笑)。

多和田:こんな風にノッてくれるところも好きです(笑)。僕が君沢さんに久しぶりにお会いして、まず思ったのは「変わらないな」でした。今、僕は25歳なので、あれから5年経っているはずなんですが、「この人、歳とってる?」って思うくらい変わらないパワーがあって。むしろ増してる。

君沢:そうね、あの時より若いかもしれない、なんて。そう思ってもらえているのは、嬉しいですね(という話をしながら、筋肉マッサージを怠らない君沢さん)。

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――お二人の久しぶりの共演も楽しみですし、新キャストの方もおもしろそうな方ばかりですよね。

多和田:おもしろい人しかおらへんな・・・。

君沢:僕、鳥ちゃんとは初めて共演するんですよ。プライベートでは、めっちゃ会っている役者なんですけど。居酒屋で会う度、ずっと二人で漫才してたんです(笑)。これだけボケてツッコんで拾って広げられる人はどんな芝居するんだろう?と思って見たら、めちゃめちゃしっかり演劇をやっていて嬉しくなりました。まだ20代ですけど、下北沢の小劇場によく自発的に観に行ったりもしていてね。そんな演劇人としての血が流れている人たちと中屋敷さんの作品なので、本当に楽しいですね。ほかもおもしろい人だらけで、全員エピソード出てくるよね。

多和田:僕、Qちゃん役のあゆかちゃんのこと、年下だと思っていたんですよ。年上だと発覚した時は、敬語で話していたもののちょっと慌てましたね。普段も独特の空気を放っていて。鳥ちゃんもすぐに「広川(与謝野晶子役)と同じ匂いがする」って言ってたくらい、「あれ?あの子は・・・」って気になっちゃう存在です。

君沢:不思議さと不気味さが、Qちゃんにぴったりだよね。

多和田:そう!それから、僕発見しちゃったことがあって・・・。あゆかちゃんの靴を見たら、なんか靴紐が縫い合わせている途中みたいにぐちゃぐちゃになっていたんです。どうしたのかと思ったら、靴紐が長かったみたいで「こうしたら転ばない」って真顔で言うんですよ・・・。「え~!?」ってなりましたけど、闇を感じて、好きですね(笑)。

君沢:みんな「こわ~い、でもおもしろ~い」って言ってたよね。僕も驚きました(笑)。僕は、(エリザベス・)マリーちゃんを挙げたいと思います。動きもすぐ覚えてぱっぱとできるし、自分のことだけではなく、振付の先生がいらっしゃらない時はドッグスメンバー(アンサンブルのこと)の動きを見たりしてくれていました。もともと、第一弾、第二弾にドッグスメンバーとして参加していたから、この作品のことをよく知っているんだなと。いい作品には、そういう縁の下の力持ちがいることを、白日の下に晒したい!本当に素晴らしいと思っています。

多和田:第一弾、第二弾をやらせていただく中で、なぜこの舞台がこんなにも演劇として愛されているのか、考えたんです。もちろん役者やスタッフさん、いろんな要素がありますが「アニメや漫画では見ることのできない瞬間が舞台では観られる」点が、大きいんじゃないかと。それは、ドッグスメンバーの力なんですね。彼ら彼女らが、あれだけ身体を駆使して異能力になったり、時にはモノになったりしてくれて、世界観を作り出してくれる。「文豪ストレイドッグス」という作品のファンの方に、新しい“視覚”としてのおもしろさを伝える上で、ドッグスメンバーは必要不可欠です。

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――魅力的な方ばかりで、ますます目が足りないと思う作品になりそうです・・・。「文豪ストレイドッグス」と言えば、異能力の表現にもいつも驚かされます。

多和田:今回、もっと驚いてもらえると思いますよ~。初めて発動する異能力もありますし。絵面としても、役者本人が飛ばす力も、圧がより上がっていると思います。君沢さんなんて「この人、本当に倒せる?」って思いますもん。

君沢:はははは(笑)!自分で言うのもなんですけど、ベストキャスティングですよね。外見も大事なんですが、中身も役と性質が似ている人、あるいは、引き出せる人が多いと思いました。座組の人数が増えたことで、異能力を発揮した瞬間もよりゴージャスに見えるんじゃないかな。座組が作品と共にパワーアップしてるのを感じるし、生身の人間が持てる力を最大限に活かしていると思います。普通、こんな異能力どうやって表現しようってなるところを、中屋敷さんは超えてきますから。

多和田:きっと今回の「三社鼎立」を観たら「あれはどうやるんだろう?」「あの異能力は?」って想像がよりふくらんじゃうと思いますよ。

――「三社鼎立」でどんな景色が見られるのか、楽しみです。最後に、公演を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。

君沢:素晴らしい役をいただきました。悪とされる側の役をやらせていただくことはこれまでもありましたが、今までやってきたことのすべてがあってよかったなと思える役に辿り着いた気がしています。僕の30代、一つの集大成になるのではないかと思っているので、ぜひご期待ください!

多和田:帰ってきた武装探偵社のわちゃわちゃ感を、まずは感じてほしいです。そして、個人的には「黒の時代」を経て、太宰さんとの出会いは自分にとって大きなターニングポイントだったと改めて思うので、立ち止まらず、一緒に成長していきたい。自分が演じさせていただける限り、愛を持ってやっていきたいです。
第三弾では、岩手、福岡、愛知、大阪、東京と行かせていただきます。スタッフさん、メインキャスト、そしてドッグスメンバー一丸となって、レベルアップして全国へ演劇のおもしろさを届けていきたいです。初めて舞台「文豪ストレイドッグス」をご覧になる方も、愛を持って劇場に来ていただければ、きっと僕らはそれを超えるようなパワーと愛をお届けします。劇場でお待ちしています。

君沢:欲を言えば、いつかフランシス・Fとして太宰と戦いたいな。

多和田:僕もそれ、思ってます!

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◆公演情報
舞台『文豪ストレイドッグス 三者鼎立』
【岩手公演】6月8日(土)~6月9日(日) 北上市文化交流センター さくらホール 大ホール
【福岡公演】6月14日(金)~6月16日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【愛知公演】6月21日(金)~6月22日(土) 名古屋市公会堂 大ホール
【大阪公演】6月27日(木)~6月30日(日) 森ノ宮ピロティホール
【東京公演】7月3日(水)~7月10日(水) 日本青年館ホール
※7月5日(金)14:00 追加公演決定!

【原作】テレビアニメ「文豪ストレイドッグス」
【演出】中屋敷法仁
【作】御笠ノ忠次
【協力】朝霧カフカ、春河35
【出演】
中島 敦:鳥越裕貴、太宰 治:多和田任益、国木田独歩:輝馬、江戸川乱歩:長江崚行、谷崎潤一郎:桑野晃輔、宮沢賢治:堀之内 仁、泉 鏡花:桑江咲菜、与謝野晶子:広川 碧、谷崎ナオミ:齋藤明里、福沢諭吉:和泉宗兵
芥川龍之介:橋本祥平、中原中也:植田圭輔、梶井基次郎:正木航平、夢野久作:倉知あゆか、尾崎紅葉:夢月せら、森 鴎外:窪寺 昭
フランシス・F:君沢ユウキ、ジョン・S:川隅美慎、ラヴクラフト:村松洸希、ナサニエル
・H:香取直登、ハーマン・M:砂塚健斗、ルーシー・M:エリザベス・マリー、マーガレット・M:富樫世羅、ルイーザ・A:永田紗茅

岡村 樹、田中博士、ニノ戸新太、碧 さやか、小林らら、鈴木彩乃、長岡ありさ、山本 華

【公式HP】http://bungo-stage.com/
【Twitter】@bungo_stage

(C)舞台「文豪ストレイドッグス 三社鼎立」製作委員会

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