実咲凜音インタビュー 音楽劇『ライムライト』テリー役で、バレリーナになる夢が叶った


老芸人と若きバレリーナの愛の物語として知られる名作『ライムライト』。テリーのテーマとも呼ばれている「エターナリー」の美しい旋律をすぐに思い浮かべる人も少なくないだろう。チャールズ・チャップリン生誕130年の今年、音楽劇『ライムライト』が再演され、若きバレリーナ・テリー役を実咲凜音が演じる。宝塚歌劇団在団中、ダンスの上手いトップ娘役として活躍していた実咲だが、テリーという大役にどう挑むのか。『ライムライト』への熱い思いを聞いた。

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――宝塚時代から魅力的なダンスをする娘役と言われていた実咲さんが『ライムライト』再演でバレリーナのテリー役に決まり、喜んだファンも多いと思います。ご自身はどんなお気持ちでしたか?

私は昔からバレエを習っていて、本当はバレリーナになりたかったんです。ところが中学生になった頃、バレリーナになるのは無理だなと考えるようになりました。持って生まれた足のラインや体つき、その他いろいろな条件が揃わなければ、バレリーナになることは難しいからです。でもバレエを活かせるところに進みたいと考えた結果、宝塚音楽学校を受験して入学することができたんです。

『ライムライト』の初演を資料で拝見したのですが、観た瞬間思ったのは「本当に踊っているわ、トウシューズで!」ということでした(笑)。バレリーナ姿をお見せする、という意味では大変ですしプレッシャーもあるのですが、もともとバレリーナに憧れを持っていたので、夢が一つ叶うといいますか、舞台上で表現をさせてもらえることが嬉しいと思いました。

――テリーは実咲さんにぴったりな役だと思いますが、どのように役づくりをしたいとお考えですか?

映画も観ましたが、その時にテリー役の女優さん(クレア・ブルーム)が美しくきれいだなと、同じ女性として惹かれる何かがあったんです。その方自身の魅力でもあり、役柄でもあるだろうなと思ったので、私も同じように感じていただけるように役作りをしたいと思っています。

テリーは周りの人から、内気でおしとやかな女の子だと言われていますが、本当は自信がないだけで、自分の思いを発散できる場が踊りだったのだと思います。映画を観て、彼女は真っ直ぐ素直に何かを感じる子だと思ったので、そのあたりを大切にやっていけたらいいのかなと考えています。

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――今回、演出を担当するのが荻田浩一先生ですね。

宝塚の時は、残念ながらご一緒したことがなかったんです。以前、朝夏まなとさんのコンサートの演出をされていて、その舞台を拝見した時に楽屋でお会いすることができました。今回の役については、ポスター撮影の時に「テリーの方がカルヴェロを愛しているという思いが強いので、その雰囲気を出してほしい」とおっしゃられていたことが印象的でした。

――カルヴェロ役の石丸幹二さんの印象は?

初めて共演させていただくので、お会いする前は緊張しましたが、本当に気さくで優しい方です。石丸さんは舞台で様々な役を演じられていますが、いつもご本人の持っていらっしゃる魅力がにじみ出ているんだろうな、とそんな予想しながらお会いしたんです。実際は、それに気さくな雰囲気が加わっていて「わあ、すごく素敵!」って思いました。作品のことや、初演のお稽古場の雰囲気なども、石丸さんからお聞きすることができたので大変ありがたかったです。

――今回は8人というカンパニーですが、少人数で作品を作っていくことについてはいかがですか?

初演は少人数で行っている舞台には全然見えなかったんですが、皆さんが何役もされていたので、改めて出演者の方々を見て、こんなに少ない人数だったのかとびっくりしました。宝塚時代は80人近くで舞台を行っていましたから・・・。

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――少人数での作品作りでは、どんなところにおもしろさを感じていますか?

皆さんとコミュニケーションが密に取れるところですね。出演者が多いと、どうしても役でからんでいる方や、以前共演した方に集中してしまいがちですが、一人一人としっかり関われるのが、人数が少ないカンパニーのよい点だと思います。

――今回実咲さんの役は、出演者全員と絡みがありますよね。

確かに!皆さんご一緒するシーンがありますね。それぞれに楽しみがありますが、中でもバレエダンサー役の舞城のどかさんは、私が宝塚に入団した時はすでに卒業をされていましたが、初舞台公演のロケットのお姉さんだったんです。私たち95期生からすると「舞城先生」という存在で・・・。その頃から優しくて、私たちにとって癒しの存在でした。久しぶりにご一緒できることがとても嬉しいです。そして保坂知寿さんは、劇団四季にいらっしゃった時から舞台を拝見して素晴らしい役者さんだと思っていた方なので、楽しみですね。

――本番に向けて、どんな舞台にしていきたいですか?

曲もいいですし、とても引き込まれる作品です。映画でカルヴェロを演じるチャップリンが、とにかくすごくいい言葉を言ってくれるんです。心に響く台詞がたくさんありすぎて、どれがいいと言えないくらい(笑)。不朽の名作と言われる所以をすごく感じたので、それにどっぷりはまっていれば、自然にいいものになるんじゃないかと思います。私と矢崎(広)さんは初参加ですから、役に集中しながら、初演に続いてご出演される皆さんの中に溶け込んでいけたらいいなと思っています。でも、新しい作品に参加する時は緊張しますね(笑)。

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――大きな舞台を何度も経験されている実咲さんでも緊張するんですか?

宝塚にいた時からそうなんですよ。毎回同じメンバーだけれども、次の作品に入る集合日はとても緊張していました。「がんばらなきゃ」とか「前より良くしなきゃ」と毎回思っているので、楽しみよりもまず緊張してしまうんですよね。そんな時は「ひるむな、ひるむな」と自分に言い聞かせています(笑)。

再演物も何度もやらせていただきましたが、難しいですね。やはり初演のイメージが皆さんの中に強く残っていると思いますから。それだけに、真似にならないようにしたいなと思っています。

――ファンの皆さんへメッセージと共に、公演への意気込みをお願いいたします。

私は『ライムライト』の映画が大好きです。お客様の中にも、この作品をよくご存じの方もたくさんいらっしゃると思います。でも、石丸さんが「今回の舞台は映画とまったく違うものとして観ていただきたい」とおっしゃっていました。ミュージカルとは少し違う、繊細な音楽に、私たちの感情や役柄をのせていくと素敵なものになると思っています。

また、映画を観ていなくても、心にズドンと響くカルヴェロの言葉の数々で、何かお持ち帰りできるものが必ずある作品だと思います。美しい曲と作品の世界観、そして私は、どこまでバレリーナとして表現できるかというところに課題を大きく持ち、皆さんに何かを感じ取っていただきたいと思います。この作品のテーマをお届けできるよう、がんばります。

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◆公演情報
音楽劇『ライムライト』
2019年4月9日(火)~2019年4月24日(水) シアタークリエ

【原作・音楽】チャールズ・チャップリン
【上演台本】大野裕之
【音楽・編曲】荻野清子
【演出】荻田浩一

【出演】
石丸幹二、実咲凜音、矢崎広、吉野圭吾、植本純米、佐藤洋介、舞城のどか、保坂知寿

ヴァイオリン:岸倫仔
リード:坂川諄
アコーディオン:佐藤史朗
ピアノ:荻野清子

(撮影/咲田真菜)

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