ミュージカル『プリシラ』古屋敬多インタビュー!再演で「初演のアダムを超える」


オーストラリアを舞台に3人のドラァグクイーンが繰り広げるさまざまな人間模様を描いたミュージカル『プリシラ』。往年のヒットソングで綴る華やかな舞台が、まもなく帰ってくる。

ダンスボーカルグループ「Lead」で活躍する古屋敬多は、2016年の初演に引き続きドラァグクイーンのアダムを演じる(Wキャスト:ユナク)。どのようにアダムと向き合っているのか、再演にかける思いを語ってもらった。

011502.jpg

――ミュージカル『プリシラ』の再演、いよいよですね!

個人的にずっと再演を待っていた作品なので、「とうとう来たか!」「また帰ってきたか!」という思いです。

――再演では、どのようにアダム役と向き合っているのでしょうか?

アダムはものすごく体力を使う役なので、毎日稽古でヘトヘトになりながら向き合っています(笑)。それぐらいパワフルな役柄なのですが、僕自身は、そういうところを楽しんでやっていますね。

アダムは鉄砲玉みたいな性格なので、ティック(山崎育三郎)とバーナデット(陣内孝則)、3人の間もかき乱しますし、物語を動かす一人でもあります。ものすごくエネルギッシュに、パワフルにいきたい!という思いがあるので、初演のアダムを超えるつもりで稽古に挑んでいます。

011502_3.jpg

――エネルギッシュでパワフルなアダムは、素のご自分と比べて通じるところはありますか?

うーん・・・(しばらく考えて)、ないんですよね(笑)。アダムは、自分とは真逆だと思っています。アダムは欲に素直だし、欲に従って生きているような人。僕はどちらかというと、何でも「こうしたほうがいいかな」と頭で考えるタイプです。・・・考えているつもりなんですが、僕のことを知ってくれている人たちには、「天然っぽい」とか「ぬけてそう」とか、いろいろなことを言われているんですけれどね(笑)。

アダムには「まず、飛び込んじゃえ!」という勇気があるんですよね。僕は、気が小さい部分があるので、そうした自分の違うところのあるアダムを演じるのは楽しいです。違う世界を見ることができるから。

――自分と違うキャラクターを生きることができるというのは、、観ている側としてはうらやましいと思うことがあります。

それが役者のいいところですね~。アダムは幼い頃から心が女の子で、そうした現実に小さい頃から向き合ってきて、嫌なこともいろいろあったと思います。それでも「好きなものは好き」という性格なんですよ。

例えば歌手のマドンナが大好きでしょうがなくて、マドンナの真似ばかりして生きてきたと思うんです。オーストラリアのど真ん中、エアーズロックの上でマドンナの曲を思いきり歌うというのが、アダムの夢。それに向かって、アダムは人生の中で一番ワクワクしている時なんですよ。

だから余計に欲で突っ走って楽しもうとするところがあるので、ティックとバーナデットを巻き込んで迷惑をかけたりします。いろいろある中で、ティックとバーナデットから人間の大切な部分を教えてもらいながら、アダム自身も最終的にものすごく成長したドラァグクイーンになっていきます。アダムの危なっかしい部分と成長していく過程、3人の関係性を見せていけたらいいなと思います。

011502_2.jpg

――華やかな舞台だけれども、人間ドラマを感じますね。山崎育三郎さん、陣内孝則さんとは、初演から密に関わってこられたと思いますが、今回はいかがですか?

初演の時もそうでしたが、お二人ともプロだなあと思う瞬間が多いです。僕が言えることではないかもしれないけれど。アダムがはけたあとに二人のお芝居を見ているんですが、本当に引き込まれるものがあって、自分はこういう演技ができているのかなと考えてしまいます。

お二人もすごいし、(アダムWキャストの)ユナクも素敵な色気があって目を引くものがあります。皆さんが素晴らしいので置いていかれそうだと感じることもありますが、そういう時は、アダムという役が僕を助けてくれるんです。

――アダムが古屋さんの中に入ってきた時に、お二人に向かっていけるパワーをもらっているのでしょうか?

それは感じますね。僕はどちらかというと役に入る時は100%スイッチが入るほうなので、100%アダムになりきります。アダムとして全力でぶつかっていった時に、ティックもバーナデットも生き生きし始めるなと感じます。逆に全力でぶつからないとティックとバーナデットも生きてこない気がして・・・。アダムはそれぐらい大事な役なんだなと思っています。

011502_5.jpg

――ある意味、アダムはキーパーソンのような感じがしますね。

そうですね。ティックもバーナットもストーリーの中では闇があって二人で支え合っている感じがありますが、アダムはそんなことお構いなしに、はっちゃけていますから(笑)。役の上では僕がはっちゃけていますが、普段は稽古場で育三郎くんがすごく気さくにみんなを笑わせてくれるんですよ。誰かが台詞を噛んだら、小声で「噛んだよ、噛んだよ!」とか言ったりしてくるんです。

陣内さんはとてもおもしろくて、「僕は尻上がりだから、まだまだ期待しないでね」っておっしゃるんですよ。例えば、ちょっと間違えてしまった時に「わざとだから!」「僕がちゃんとやってしまうと、みんなもちゃんとやらないといけなくなるでしょ」みたいな冗談をよく言うんですよ。そうすると、稽古場は爆笑です(笑)。本当に楽しいです。

――アダムはユナクさんとのWキャストですが、同じ役をやるもの同士、意識するものですか?

ある程度全体で決まっていることは合わせようと、二人で話しています。ユナクと僕でバラつきが出ると他のキャストが大変になってしまうので。ただ、そういうところは気にしつつ、あとはお互いがお互いのアダムでいいのかなと話しています。結構自由に役作りをしているので、同じようなアダムにはならないと思いますね。

――両方ご覧になる方は、アダムの違いを楽しめますね。

ユナクがアダムをやった時と僕とでは、違う雰囲気や空気感が出てくると思います。それがWキャストの楽しさなのかなと。例えばシンシア役もキンタロー。さんと池田有希子さんのWキャストで、こちらも全然違います。違った楽しみを感じてほしいですね。

011502_4.jpg

――ドラァグクイーンは見た目の美しさを保たなければいけないと思いますが、どんなところに気を使っていますか?

やっぱり一番は、処理じゃないでしょうか(笑)。毎日剃らないとダメですからね。人にもよると思いますが、男性は毛が多いので・・・お風呂場で毎日格闘です。肌が荒れちゃったりするので、いいカミソリがあったら教えて欲しいです(笑)。

あとは衣装が多いし、重いんですよ。頭にのせるものは3~4kgぐらいあるのかな?靴もブーツで20cmぐらいの高さがあります。こうした衣装をつけて踊ったりするのは大変で、気をつけなければいけないところですね。

――踊るといえば、作品の中で往年のヒットソングがたくさん出てきます。古屋さんが好きな曲は何でしょう?

全部好きなんですよ。その中であげるとするならば・・・毎日アダムと向き合って、アダムの大好きなマドンナの勉強をしているので、『マテリアルガール』でしょうか。アダムの登場曲でもありますからね。

――再演でまた深まった古屋さんのアダムを楽しみにしています。最後に、公演への意気込みとファンの方へメッセージをお願いします。

とにかく派手ですし、瞬きして次の瞬間には全然違う世界になっていることが連続する作品なので、ほかでは観ることができないものだと思います。ドラァグクイーンの、つらいけど力強く楽しく生きていく様を見届けてほしいですし、みんなの成長を楽しんでもらいたいです!

それから・・・育三郎くんが“動物園”って表現していましたが、出演している皆さんの個性がすごいです!モンスター級というか(笑)。(宮本)亜門さんが前回よりも濃くしたいとおっしゃっていたので、踊りも今の時代に合った派手で激しいものになると思います。台詞も変更になっているところがあってよりおもしろくなっていると思います。

毎日「マドンナってすごいな」と思いながら勉強していますが、僕も普段はLeadというグループで歌と踊りをやっているので、昔からマドンナのことを好きな人たちが、当時のマドンナが戻ってきた!と錯覚するようなものになれば素敵だなと思います。がんばります!

011502_6.jpg

◆公演情報
ミュージカル『プリシラ』
2019年3月9日(土)~3月30日(土) 日生劇場

【演出】宮本亜門
【翻訳】エスムラルダ 
【訳詞】及川眠子

【出演】
ティック(ミッチ):山崎育三郎
アダム(フェリシア):ユナク/古屋敬多(Lead)
バーナデット:陣内孝則
DIVA:ジェニファー、エリアンナ、ダンドイ舞莉花
ミス・アンダースタンディング:大村俊介(SHUN)/オナン・スペルマーメイド
ボブ:石坂勇
マリオン:三森千愛
シンシア:キンタロー。/池田有希子
シャーリー:谷口ゆうな

ICHI
大音智海
奥山寛
鈴木ゆま
砂塚健斗
髙木裕和
土器屋利行
広瀬斗史輝
堀部佑介

陳慶昭(子役)/瀧澤拓未(子役)

【公式HP】https://www.tohostage.com/priscilla/

(撮影/咲田真菜)

 

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。