岸谷五朗×柚希礼音×西川貴教「ZEROTOPIA」クロストーク「千秋楽にはさらに一歩進化した自分になっていそう」


岸谷五朗と寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」プロデュースの最新作「ZEROTOPIA」。今回は、豪華客船が沈没し、色を失った地図にない島に流れ着いた男女と、彼らを待ち受ける運命を描いている。2018年4月9日(月)に開幕した本作について、開幕前にW主役を務める柚希礼音と西川貴教、そして演出を務めつつ自身も役者として出演する岸谷五朗に話を聞いた。

岸谷五朗×柚希礼音×西川貴教「ZEROTOPIA」クロストーク

――地球ゴージャス15作目の作品となる「ZEROTOPIA」。人間の心の闇や傷といったものをテーマに物語を描こうと思われたのは何故ですか?

岸谷:地球ゴージャスの舞台はいつもそうなんですが、その年代だからこそ書ける脚本、その年代だからこそやりたい作品を上演しているんです。地球ゴージャスが誕生する前の岸谷プロデュース時代からの作品タイトルを一気に並べると、それはもう僕自身の年表になるんです。この年はこんなことを考えていたんだ、世の中はこんなことが起きていたんだな、とすべてが分かるんです。今回上演する「ZEROTOPIA」も今の世相や世界の状況の中で僕が張り巡らしているアンテナにひっかかったものが形になっているんです。だから、今回のテーマも今自分が感じ取っている物なんでしょうね。

――岸谷さんが脚本を書かれる時は物語先行ですか?キャスト先行ですか?

岸谷:地球ゴージャスの場合、全員アテ書きなんです。こういう顔ぶれが揃うのなら、この人はこういう役どころにしよう・・・と決めて書いていくんです。だから(昨年末に実施した)製作発表の時に脚本が完成していなくて当たり前・・・(遠くを見つめながらドヤ顔)。

――開き直りましたね(笑)。さて、今回地球ゴージャス初参加となる柚希さんと西川さん。当初想像していた演出家・岸谷さんのイメージは今現在のイメージと何か変わったりしましたか?

柚希:想像していた以上で感動しています!知れば知るほどすごい方だなあって。役者さんをされながら演出をしているので、両方をよく把握した上でどうやったらこの役者がもっと力を発揮できるか、一人ずつしっかり把握していらっしゃるんです。私は宝塚歌劇団で育ちましたが、そこでは常に上級生が下級生の指導をしていました。でも外の世界に出ると、作品ごとでカンパニーが都度変わっていく。そんな中、岸谷さんは台本を書きながら、自分の芝居もしながら、皆を育ててくださる。私に「ジュン」という役を与えてくださり、私の中の違う何かを引き出そうとしてくださっていると思うと、とても楽しいんです。

西川:僕は岸谷さんにすごくストイックなイメージを持っていたんです。自分の作品の中で「ここはこうしてほしい」「こうしないとダメ」という強いこだわりを持った方なんじゃないかな、って。だから最初は僕もこのカンパニーのカラーに染まれるかな、という気持ちでいたんですが、いざ話をしてみると、こちらが何かしら動いたことをニュートラルに受け止めて「そう動くのならこうしてみよう」と一緒に考えてくださいます。柔らかく受け止めてくださる方なんだと思いました。僕が演じる「ロマン」は、心にトラウマが強く残っていて自分の感情を表に出すのが下手な男。これまでやったお芝居では絶対に来なかったような役柄です。この「ロマン」とどのように向き合えばいいのか、いい緊張感を抱きながら取り組んでいます。

柚希:それぞれのキャラクターにしっかりとしたストーリーがあるので、そういう人たちが集まったときにどのような物語となるのか。自分も今までやったことがないような何かが出てくるのかもって思いますね。

岸谷五朗×柚希礼音×西川貴教「ZEROTOPIA」クロストーク_2

――地球ゴージャスと言えば、稽古からすでにすべての物語が始まっているのでは、と思うくらい熱い集合体、というイメージを持っています。その点はいかがですか?

柚希:地球ゴージャスというカンパニーは、最後は皆が泣いてしまうくらい熱い現場になるんだと聞いていました。劇団育ちの自分としてはそういう熱さが大好きなので、皆と一緒に思いっきり汗を流し、笑って、泣いて、時には悔しくなったりもして、最後は喜びを共に味わいたいと思います。

――普段ソロ活動が多い西川さんにとって、グループ活動に慣れた方々が集まるカンパニーに加わるお気持ちは?

西川:最初は、他人様のお宅に「おじゃまします・・・」って入るような気持ちでした(笑)。でも「住めば都」って言いますからね!

――地球ゴージャスの稽古場を過去何度か拝見しましたが、全員が一丸となって1~2時間じっくり取り組む準備運動(アップ)が印象的でした。

岸谷:アップはすごく大事なことです。2ヶ月やると肉体も喉の強さもすべてが変わりますから。「身体を順番に作る」・・・いきなり腹式呼吸で声を出そうとしてもそう出ないんですよ。順番としてはまずエンジンとなる肺が動かないと。肺を動かす運動から始めて最後に腹式呼吸に繋げ、そしてようやく声を出す・・・僕の持論なんですけどね。でも本当に声を出すにはそこまでで1時間はたっぷり必要だと思うんですよ。

――柚希さん、宝塚時代も含めて、これまではどのような準備運動をなさっていましたか?

柚希:それぞれに自分に合った発声練習を劇場のロビーでしたり、バーレッスンをしたり、と自分がやりたいと思った運動をしていました。ミュージカル『ビリー・エリオット』の現場では海外スタッフがその準備運動のプログラムをきちんと組んでくださったんですが、それがすごく良かったんです。・・・地球ゴージャスの稽古場ではマット運動をするって聞いた時は驚きました。

岸谷:そう。ヨガから入るんですよ。(キャストの中村)百花がヨガのインストラクターの免許を持っていて、皆に教えてくれるんです。時間に余裕があるときはヨガから入ってみようって。

柚希:『ビリー・エリオット』のスタッフに「倒立が身体に良い」と聞いて試しにやってみたら本当によかったんです。

西川:そこから柚希さんは三転倒立の形になり・・・。

岸谷:お!静かだと思っていたらついに話に入ってきましたね!

西川:(柚希さんは)ものすごいハイレグの服で、腰に小さい鈴をつけ、激しく腰を振りながらレゲエダンスを踊る、と。これは宝塚時代からやっていたと・・・。

柚希:やっていませんから(笑)!すごく細かく(妄想が)見えているんですね(笑)!

岸谷:鈴をつけているのは、今初めて聞いたなあ(笑)。

西川:現役中の“白”組トップ時代で5作品中4作品がそういう姿だったそうで・・・。
※すべて西川さんのめくるめく妄想です

一同:(大爆笑)!!

岸谷五朗×柚希礼音×西川貴教「ZEROTOPIA」クロストーク_3

西川:(素の表情に戻り)僕はというと、発声練習をしたことがないんです。

柚希:え?本当ですか?あの『AAA』(Act Against AIDS 2017『THE VARIETY 25』)の時もステージに登場して、歌い出したあの声がその日の第一声?

西川:そうなんです。ほぼ何もしてないんです。ライブの時もツアーになるとリハーサルもしないで「ここの音量を上げて、スネアの音下げて・・・」と音響のチェックを3曲くらい固めて本番に入るんです。

柚希:本番で歌ってみて「ああ今日はダメだったな~」という日はないんですか?

西川:歌っているうちに喉があったまって声が整ってくるんですよ。

岸谷:・・・いるんだよな、こういう神に選ばれし声の持ち主って。普通の人がこういうことをすると一発で喉をダメにしちゃうんですよ。

西川:ちゃんとしたボイストレーニングをしないで自己流でここまでやってきたんです。一度ちゃんとしたトレーニングを習いたい気持ちもあるんですが、ただもう自分なりのメソッドが出来てしまったので・・・。

岸谷:むしろ違う発声練習をしたら声が枯れてしまうかもね。

西川:そうかもしれないですね。でも舞台は歌と共に台詞を言わないとならないから、発声練習はやっておきたいですし、身体を動かすことも常日頃やっているので、「地球ゴージャス」でやるやり方に挑戦したいです。普段はソロで動いているのでこの舞台の期間、皆と一緒にいることが本当に楽しみです。

岸谷:腰に小さい鈴を付けて踊っている人もいますしね!

柚希:またその話に戻すんですから(笑)。

――これまで地球ゴージャスに出演された役者さんを、その後舞台などで拝見すると、元々持っていたポテンシャルがさらに進化しているような気がするんですが。

柚希:絶対そうだと思います。役者さんの発声、舞台に立ってから喉をつぶさない方法、身体を壊さないやり方などを毎日教えてくださるから。一つ一つのミュージカルの現場ではそこまで教えてもらえないですし。稽古場ではガンガン行けたのに公演の途中で「あ・・・」ということが起きたりする。そうならないための基礎を教えてもらっていただいたからこそでしょうね。

岸谷:舞台経験があまりない子が、がんばってやろうと挑んだものの、事前に必要なことをやらずに本番で喉をやられて舞台が嫌いになってしまう・・・そういうことになってしまう役者は、実はすごく多いんです。楽日までお客様の前で不完全な状態でやり続ける、それはつまり役者本人としては恥をかき続けることでもあるので。

岸谷五朗×柚希礼音×西川貴教「ZEROTOPIA」クロストーク_4

――作品を作ることと共に役者としての身体の作り方も教えてくださる現場って貴重だと思います。

岸谷:僕が教えるだけではなく、地球ゴージャスに集まる30人以上の役者がそれぞれ別々のやり方を体験してきているので「ほかにもこういうやり方がありますよ」と皆が経験してきたことを持ち寄ってくれるんです。それが僕にとってもすごく勉強になるんです。

柚希:・・・さっき、話をしていて初めて知ったんですが、私は満腹状態で舞台に出る派だったんですが、西川さんは身体の中で横隔膜をどれだけ広げられるかで声の出が変わるから、いつも空腹状態で舞台に出るんですって!?

西川:そうなんです。

岸谷:僕も舞台前はまったく食べない派です。

柚希:そういう情報を一つ聞くだけでもすごく勉強になるんです。

西川:僕からすれば、岸谷さんにしろ、柚希さんにしろ、これまで様々な経験を積み重ねてきた方のすべてを側で見させていただけるのが貴重な機会になると思います。舞台そのものを観るのも勉強になりますが、本番に向けて積み上げていく途中経過を見ることができるのがすごく楽しみなんです。

岸谷:皆一人一人やり方が違うからね!

――皆が持ち寄った経験値を積み上げ、作り上げる「ZEROTOPIA」ですが、千秋楽を迎える頃には、どんな自分になっていたいですか?

柚希:稽古期間から始まり、長い公演期間を迎えることになりますが、一つ一つの公演をやり終えたら今の自分とは違う、もう一歩進んだ自分になれるんじゃないかと期待しています。五朗さん、寺脇さん、そして様々な分野で活躍されている皆さんからいろいろなことを教えていただき、一つずつ試してみたりしながら、結果どんな自分になっているのか。どうぞ成長していますように。

西川:いろんな意味で勉強できる場所、吸収できる場所で僕は一皮も二皮も剥けたいと思っています。また、一人一人が担う物語や役割を集めたものが「ZEROTOPIA」になると思っているので、そこで自分はどんなことを担うのか、お客様に何を期待していただけるのか、それらを深めていきたいと思います。僕にとっても今年は新しい西川を見せる年になりそうなので、自分の人生においても「ZEROTOPIA」を大きな自信に繋げたいです。

岸谷:僕にとっての「千秋楽」は「すべての終わりの日」という印象です。すべての言葉が西川くん、柚希さんたちの身体を通して放たれ、お客様の心と劇場に吸われて消えていく、大好きだったあの照明はもうこれで見ることができなくなる、この役者たち全員ともお別れして「ZEROTOPIA」も消えていく・・・。きっと愛しさでいっぱいの状態になっていると思います。

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◆公演情報
ダイワハウス Special 地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.15「ZEROTOPIA」
【東京公演】4月9日(月)~5月22日(火) TBS 赤坂ACTシアター
【愛知公演】5月29日(火)~6月2日(土) 刈谷市総合文化センター
【新潟公演】6月9日(土)・6月10日(日) 新潟テルサ
【福岡公演】6月22日(金)~6月24日(日) 福岡サンパレス
【広島公演】6月30日(土)・7月1日(日) 広島文化学園HBGホール
【大阪公演】7月6日(金)~7月15日(日) フェスティバルホール

【作・演出】岸谷五朗
【出演】
柚希礼音、西川貴教
新田真剣佑、宮澤佐江・花澤香菜(Wキャスト)、
藤林美沙、原田薫、大村俊介(SHUN)、
水田航生、植原卓也、
岸谷五朗、寺脇康文 ほか

(撮影/エンタステージ編集部)

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