ソニン・パーソナルインタビュー!「演劇がもっと身近になれば」日本演劇界への熱い思い


第41回菊田一夫演劇賞を受賞するなど、数々の舞台、ミュージカルで活躍するソニンが、2018年年始より芸能事務所を移籍し、アミューズ所属となったことを発表した。今後は、舞台分野にとどまらずグローバルな活動を目指すという。このあと、ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち』『マリー・アントワネット』と大作への出演も決定しているソニンに、移籍や演劇への熱い思いを赤裸々に語ってもらった。

ソニン・パーソナルインタビュー

――年始早々、アミューズへの移籍が発表され話題となりましたが、移籍に踏み出された心境を教えていただけますか?

これまで、周りの方が作ってくださる環境の中で成長してきたのですが、ニューヨークに留学させていただいたり、仕事を続けていく中で、自分がこの世界にいる意味や自分がやるべきこと、やりたいことが、パッと眼の前に開けて見えたんです。でもそれは、一人ではなかなか実現できない。いろいろと自分でぶつかっていく中で、一人では何もできないということを改めて感じました。

共に歩んでくれる方々を求めた時に、事務所を移籍するという考えが浮かびました。そして、今の自分にとってベストだと思ったのが、アミューズさんでした。タイミングがうまく合ったこと、(移籍することが自分にとってプラスになると)間違いないという直感のもと、ご縁があって移籍させていただくことになりました。

――舞台にまつわるお話を聞くことは多いのですが、こういったパーソナルなお話を伺えるのはとても貴重です。

そうですよね。(舞台が)始まる前にインタビューを受けることは多いんですが、話したいことって、舞台が終わった後にこそ、たくさんあるし、盛り上がるんですよね(笑)。

――ソニンさんは、公演が終わるといつも、ブログでファンの方からの質問に答える「一問一答」をなさっていますよね。

お客さんも観劇後に感じる興奮をお持ちでしょうし、私自身も、終わったあとこそ思いがいっぱい溢れちゃうんです。一つ一つの舞台にすごく愛着があるので、何も語らずに終わってしまうのが嫌なんですよ。
だから、観てくださった方とシェアしたかったんです。舞台は形に残らないものなので、ロス感が強いけど、語ることによって少しでも満たされたらいいなと思ってはじめました。でも、一問一答をやるのは結構大変で(苦笑)。あれを書くのだけでも、4時間ぐらいかかるんです。いつもたくさん質問をいただくので、ブログでは選ばなくちゃいけないんだけど、これから皆と直接会って話せる機会があればいいなと思っています。

――いつも、ソニンさんからはお客様へ向けた思いを強く感じます。

お客さんのために舞台に立つ、それは常に意識しています。舞台は、毎日公演がありますから、後半になってくると疲労が溜まってくるし、特にミュージカルの場合は喉の心配もあります。だから精神的にもめげそうになる時もあるけど「お客さんが喜んでくれるなら」と思うと力が湧くんです。私の中で、お客さんの存在は、舞台に立つ上での何よりの活力源ですね。

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――ここからは、女優としてのソニンさんの歩みを振り返っていただきたいのですが、女優というお仕事を始めるきっかけはどこにあったのでしょう?

『高校教師』というドラマが、女優としての最初の仕事でした。「カレーライスの女」(2002年発売のソニンのソロデビュー曲)のジャケットを見て、脚本家の野島伸司さんがキャスティングしてくれたそうです。その時はまだ、芝居の道に進むという覚悟があったわけではなかったんですが、次のクールのドラマにも出演させていただき、映画のお話も・・・と、気がついたら女優業が多くなっていました。

――初舞台を踏まれたのは?

2004年です。ミュージカルは2007年の『スウィーニー・トッド』が初めてでした。実は、それまでほとんどミュージカルを観たことがなかったんです・・・。でも、大竹しのぶさんが出演されるというのを聞いて「しのぶさんと共演したい!」という動機で、オーディションを受けました(笑)。この作品で“役になる”という経験をして、「なんだこの感覚は?!」と衝撃を受けました。

――それは、ソニンさんの中で舞台に“ハマる”感覚につながったのでしょうか。

そうですね。『スウィーニー・トッド』の次が、白井晃さん演出の『血の婚礼』だったんですが、この演出がまたおもしろくて・・・。白井さんは、役として自由さを問う演出をつけてくださったんですね。これが、私にとっては今までに感じたことのない刺激だったんです。役として生きる喜び、達成感。そこからは、だんだんと舞台を中心に活動するようになっていきました。

――ご自身にとって、ターニングポイントとなった役、作品があれば教えてください。

ミュージカル『ミス・サイゴン』(2008年・2009年)のキム役かな。(公演中は)キムとしてずっと生きていたから、役が自分にもたらす影響があまりにも強かったです。生活のすべてが、キムのためでした。だから、すごく愛着もあるし、大変だったという思いもあります。
キムから学ぶことも多かったです。『ミス・サイゴン』で描かれている時代は、戦時下で、常に死と隣り合わせ。厳しい状況下で生きる人たちの、人生が凝縮された作品の中で、キムの生き方を体現した時に、人生ってこんなに豊かなんだって気づいたんです。舞台上で「このまま死んでもいいや」って思ったぐらい、自分の人生としても大きな影響を受けた役でした。

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――個人的に、『RENT』で拝見したソニンさんが印象的でした。2010年の公演ではミミ役、2012年以降の公演ではモーリーン役と、同じ作品で二役ご経験されているのも驚きでした。

そうですよね(笑)。私も、ミミを演じていた時は、まさかモーリーンもやることになるとは思わなかったですもん。今も、『RENT』には常に関わっていきたいという気持ちがあるんです。『RENT』が作られた当時と、今では、時代も変わってきているじゃないですか。でも、『RENT』が発するメッセージは普遍で、変わらない。エネルギーが失せてしまったら、『RENT』ではなくなってしまう。それをやり続けるためには?と考えると、今を生きる子たち、新しい役者がやるべきないんですよ。だから私、スタッフとして参加し続けたいんです。

――昨年の『RENT』で、アフタートークに参加された際もおっしゃっていましたね。

裏から支えるお仕事、結構好きなんですよ。サッカー部のマネージャーをやっていたこともあります(笑)。意外と向いていると思うんですよ~。俳優さんが舞台の演出をやったり、映像の監督やったりするケースもありますが、それと同じだと思ってください。『RENT』に関しては、演じる側も普通の役者だけじゃなくて、スタッフとして参加し続けたいという夢があるんですよ。アーティストの方や、尖った部分がある方が演じることが多いんですが、芝居が初めての方も少なくない。それに加えて、時代が変わってきたことで『RENT』が持っているを伝えていく方法も変えていかなければならない。別に、そのメッセージだけを強く打ち出す必要があるわけではないけれど、役者はちゃんと知っておかないければいけない。そういった意味で、『RENT』には役者と演出の間に入るアドバイザーが必要だと思うんです。私、めちゃめちゃ適役だと思うんだけどな~(笑)。

――ぜひ実現してほしいです。続いて、役者人生に影響を与えた人物というとどなたでしょう?

大竹しのぶさんです。いろいろな大切なことを教えてもらいました。いまだに芸能界のお母さんみたいな存在です。パワフルに天才的な芝居を見せてくれるという意味でも、変わらずリスペクトもしていますね。それから、宮本亜門さん。初めてご一緒した時に「ソニンは絶対に海外に行ったほうがいい」と言われたことを、すごくよく覚えています。その時から「いつか海外に行こう」って思い始めました。

――今回の移籍時のコメントでも「グローバルな活動も視野に入れたい」とありましたが、今はよりその気持ちを強くされているのでしょうか?

現時点で、具体的に「これをやります」と言えるものはないんですが、日本だけにとどまる理由もないと思っているんです。私自身、韓国人として日本で育っていますし、欧米の考え方やオープンなマインドが自分にすごく合っていると感じます。ある意味、ボーダーレスな人間なのかも。だから、自分のオープンな考えが活きるような仕事をしていきたいんです。アミューズは、海外に目を向けているので、その点でも自分と考えが合うなと思ったんですね。

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――ちなみに、今の日本の演劇界についてはどんな思いをお持ちですか?

演劇を観に行くということ自体が、もっと身近になればいいなと思っています。例えば、ブロードウェイでは「観劇すること」自体がカジュアルなイベントになっているので、劇場に「観に行く」ことにためらいがないんです。芝居を見ながら、スナックをバリバリ食べていたりしますし。演じている身からすると「観る方に集中して!」って思いますけど(笑)。でも、終わった頃には「最高だ!こんな芝居観たことない!」って堪能して大満足で帰っていく。日本の演劇ファンの方々はとても情が深くて愛があります。それが日本的な良いところでもあると思うんですが、そこにもう少しカジュアルに観る感覚や場が生まれるといいなと思っています。

――確かに、初めての人や、興味を持った人を誘いやすい環境ができたらいいなと思います。

そうするためには、値段設定や、劇場の場所も考えていかなければいけないと思います。それから、「作品を観に行く」より「ある俳優さんの芝居を観に行く」の方が傾向として多いように思います。それは作る側が、作品をみせることよりも、動員を見込むために俳優から決めていくシステムがあるから、なかなかすぐには変わらないかもしれないんですけど・・・。そういう空気ももっと生まれたらいいなと思います。

――最近では、舞台で活躍していた役者さんが、テレビや各メディアで脚光を浴びる機会も増えてきましたよね。

演劇をもっと身近なものにしていくために、“知ってもらう”ことは一番大切ですよ。日本でも演劇の「アカデミー賞」「トニー賞」のようなものがあったらと思うんです。今もいろんな賞がありますが、全部ひっくるめたアワードを作って、それをテレビで放送する。そうすれば、もっと興味を持ってくれる人が増えて、役者がパフォーマンスできるフィールドも広がる。これは、演劇・ミュージカルの価値を上げる意味でも必要だと思っています。

――ソニンさんは、2020年にデビュー20周年を迎えられますが、節目に向けて何か考えていらっしゃることはありますか?

今、日本の演劇について熱く語ってしまったんですが、私自身は何も考えていないな~(笑)。節目って“なる時になる”と思っているので。アミューズに入ったことで、「ニュー・ソニン」の準備はもうできています(笑)。今まで培ってきた経験や思いが、これからに活かせたらいいなと。そのためには、協力を得ることが何より大事だと思っているので、私自身が協力を得られるコミュニケーションの取り方をすることも大切ですし、人間力も必要になってくると思うんです。新しい環境で、力を合わせて一つ一つ、実現していけたらなと思っています。

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◆プロフィール
ソニン
1983年3月10日生まれ、高知県出身。2000年10月18日に、EE JUMPのメインボーカルとして「LOVE IS ENERGY!」でCDデビュー。2001年よりソロ活動を開始。代表作に『スウィーニー・トッド』『ミス・サイゴン』『RENT』『モーツァルト!』『キンキーブーツ』『ロッキーホラーショー』など。

◆今後の出演予定
ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』
【東京公演】4月9日(月)~5月12日(土) 帝国劇場
【大阪公演】6月2日(土)~6月25日(月) 新歌舞伎座
【福岡公演】7月3日(火)~7月30日(月) 博多座

ミュージカル『マリー・アントワネット』
【福岡公演】2018年9月 博多座
【東京公演】2018年10・11月 帝国劇場
【愛知公演】2018年12月 御園座
【大阪公演】2019年1月 梅田芸術劇場 メインホール

(撮影/エンタステージ編集部)

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