映画『Sea Opening』主演・黒羽麻璃央インタビュー「友達や大事な人を大切にしようと思った」


俳優・黒羽麻璃央が主演する映画『Sea Opening』が、2018年2月10日(土)から公開される。本作には、黒羽のほかにも2.5次元舞台を中心に活躍する人気の俳優たちが集結。和田琢磨、玉城裕規、佐伯大地、大平峻也、河合龍之介、佐藤永典らが出演する。共に舞台を駆け抜けてきた仲間と、映像の世界へ。

しかも今回の役は「若手舞台役者」。黒羽自身とも重なるその設定に臨んだ。映画について、俳優という仕事について、そして2018年のテーマなども聞いた。

映画『Sea Opening』主演・黒羽麻璃央インタビュー

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舞台は大きく、映画はリアルに

――『Sea Opening』間もなく公開ですね。完成した映画を見ていかがでしたか?

実は最初に台本を読んだ時、ぜんぜん理解できなかったんですよ。コンテンポラリーダンスのシーンから始まるんですけど「コンテンポラリーってなんだろう?」と思いました。けれど完成した映画を見てピースが埋まっていきました。もちろん撮影の段階からどんなストーリーなのかは知っているんですけど、初めて客観的に観て「あ、『Sea Opening』ってこういう物語だったんだな」とようやく実感しました。映画は、出演者でもお客さんと同じものが見られるのでおもしろいです。舞台に立っていると絶対に自分の作品は見えないけど、映像でならお客さんと同じタイミングで見られるので自己分析しやすい。そこが映像作品の好きなところですね。

――映像と舞台の大きな違いですね。

お芝居の仕方も違いますね。舞台は大きく表現しなければいけないけれど、映像はよりリアルに近い。僕にとって映画は俳優という仕事に憧れるきっかけのものなので、映画作りに関われることがすごく好きだし、嬉しいんです。舞台は、俳優としての僕が育ってきた大切な場所。目の前にいる方々が感動したり笑ったりする反応を、その場でリアルに感じられるのでとてもおもしろいですね。それぞれに違いがあり、どちらも楽しいです。

――映画は、完成するまでどんな作品になるか分からないですよね。

そうなんですよ、できてからのお楽しみです。僕たち俳優は、作品のパーツは作るけど、いざピースをはめていく作業には関わりません。例えば、撮影する時はいろんな角度から同じシーンを撮ることもありますけれど、実際にどの角度から撮られたものが使われているかは見てみないと分からない。完成作品を観ると「ああ、この角度から撮られていたのか」と感じたり、すごく不思議な感覚です。それから、撮影している時は無音ですが、完成した映画にはすごく良い音楽が重なっていて「こんなにかっこいいシーンになったんだ!」と興奮しました。完成してこそ、音楽ってすごく大事だなあと実感しますね。
でも今回の作品はわりと台本の順番通りに撮影していったので、撮影シーンが急に飛ぶということはなくて演じやすかったですよ。

映画『Sea Opening』主演・黒羽麻璃央インタビュー_2

信頼できる共演者たちと

――内向的だけれど才能溢れる俳優、清祐樹(きよし・ゆうき)を演じていかがでしたか?

清くんの台詞には「・・・」がすごく多いんです。感情を言葉にしないので、何を考えているのか分からない。演じる時は、画面を通して表情や雰囲気で伝わるように心がけました。心の奥に何かを隠しているけれど、傍にいるとなんとなく気持ちが分かるような人でありたかったんです。でも清くんと僕は全然タイプが違うんですよ。彼は開放的ではなく内に溜めていく人だけれど、僕は思ったことをすぐに言っちゃう。「疲れた~」とかぽろっと口に出ちゃうんですよ。だから清くんを演じる時は、何も言わずに目で訴えました。役作りもせずに、直感で自由に気持ちを表現させてもらったので、画面越しでも清くんの感情が感じ取れるんじゃないかな。

――感情を表に出さない清が、唯一こだわって強く憧れる先輩が、和田琢磨さん演じる片桐幹生(かたぎり・みきお)ですね。

清くんにとって片桐さんは、同じ劇団の先輩でとても慕っている相手です。僕にとっての琢磨くんも俳優の先輩だし身近な人なので、実際の関係に近くてとてもリアルでした。琢磨さんはゴールデンレトリバーみたいで親しみがわくんですよね。それに僕の母もミュージカル『テニスの王子様』を観て「和田さんがすごく素敵!」とファンになっていたので、今回親しい役で共演ができて喜んでるんじゃないかな(笑)。

二人の間にはズレや秘密がありますが、深く考えすぎずに素直に演じました。琢磨くんと一緒にいても、演技についてあれこれ打ち合わせをするよりも、野球の話ばかりしていましたね。ちょうどWBCの時期だったんですよ。たとえば琢磨くんの撮影が夕方に終わった後に僕が撮影している時、ふと休憩中にLINEを見たら野球の速報が入っているんです。映画の中に、バットもボールもなくジェスチャーだけの「エア野球」のシーンがあって、とても楽しかったです。映画を観ていると分からないかもしれませんが、撮影の朝にすごく雨が降って芝が水を含んじゃったから、(大平)峻也がすっ転んで水浸しになったり・・・ハプニングだらけだったけれど、みんなで笑いに変えて、楽しかったなあ。

――清が沖縄で出会うシックス(玉城裕規)が、独特な存在感を放っていました。

玉城くんはお美しかったですよ・・・。今回初めてお会いしましたが、とても綺麗な方だなあと思いました。けれど会う前は超怖かったんです!一見クールだし、人ならざる者のような、美しい妖怪のような独特の雰囲気がある方なので(笑)。しかも今回の役は6人殺したという噂がある役だしビビっていたんですけれど、最初の撮影の時に玉城くんが沖縄の地ビールを買ってきてくれて、車の中で一緒に飲んだんです。話してみると、人間らしくて気さくで、全然イメージと違いました。その時に撮影した二人の出会いの場面は、偶然にも雨が降ってきて玉城さんの妖しさがすごく表現された良い雰囲気のシーンになりましたよ。

――ほかにも佐伯大地さん、大平峻也さん、河合龍之介さん、オラキオさんなど、舞台・映像など多彩に活躍されているメンバーが集合した作品でしたね。

キャストにはとても恵まれていましたね。俳優もスタッフさんも舞台などで一緒に仕事をしてきた方が多かったので、楽しい撮影でした。たいていの映像の現場では初めてお会いする方が多くて、打ち解けるまでに少し時間がかかるんですけれど、それがなかったのが一つの武器になりました。それに、ご活躍されている方は優しい人が多いんです。僕の持論ですけれど、気遣いができる人じゃないと長くこの仕事は続けられないんだと思います。

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俳優なら、夢だった体育教師にもなれる

――脚本・監督の堀内博志さんとは『Please Please Please』(2015年)でもご一緒していますね。

『Please Please Please』の時はあまりお話しなかったんですけれど、堀内さんはプラスのエネルギーがすごく強い方で、作品のイメージとはだいぶ違うんですよ。作る映画はけっこう重くて鉛のようなんですけど、ご本人はとても明るい。自分で脚本も撮影も監督も編集も全部やっているから、映画がすごく好きなんでしょうね。『Sea Opening』もアーティスティックな雰囲気があって、映像がまるで絵みたいに感じます。監督の世界観が出ている独特な作品に仕上がっていますよ。

――撮影はほとんど沖縄で行われたそうですね。

沖縄ですけど、冬だったので寒かったです。それこそSea Opening・・・海開きの時期でしたね。舞台『熱海殺人事件』が終わった頃なので2017年3月の撮影だったと思いますが、すごく寒いなかプールにも入って凍えるかと思いました(笑)。沖縄での撮影は空気感が独特で、すべて思い出に残っていますね。なかでもすごく印象的だったのが『イラブー汁』です。

――ウミヘビを煮た沖縄料理ですね!黒い蛇のぶつ切りがそのまま入っていて、初めて見るとかなりインパクトの強い料理ですよね。

初めて見た時は「うわぁなんだこれ!?」と驚きました。皆で食べるシーンがあるんですけれど、あの蛇が食べられなくて・・・。現地の方々はイラブー汁を「美味しい、美味しい」と食べているんですけど、僕は料理される前のウミヘビの姿を見てしまったこともあってよけいに食べられない。映画の中では初めてイラブー汁を見て戸惑うという役だったことに救われました。見た目が衝撃的な食べ物は苦手なんですよね、カエルは絶対に無理だし、アワビとかもあまり好きじゃない。目で食べるタイプなんでしょうね(笑)。でもそれ以外の沖縄料理はすごく好きになりました。あったかい家庭料理が多いのに惹かれて、最近でも沖縄料理屋でソーキそばを食べたりしますよ。

――映画の中で清は「なんで役者になった?」と質問されます。黒羽さんはいかがですか?

俳優は、やりたいことややってみたいことがなんでもできる、いろんな可能性がある仕事です。僕はもともと体育教師になりたかったのですが、俳優は体育教師にもなれる、役ならね。いろんな人生を歩めるのはすごく楽しいです。

――同じく作品内の「何のために(役者を)やってる?」という質問についてはどうですか?

生きるためにやっています。「この世界でご飯を食べていく!」と決めたから。とてもシンプルですよ。

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2018年のテーマは「時間」

――黒羽さんの思う、作品の見どころは?

清くんは、泳げない、海に入れない、という設定があるんです。それが『Sea Opening』=海開きというタイトルにもあるように、一歩踏み出していく。自分にとって大きな決断をしていく清くんを通して、そっと背中を押してくれて優しく寄り添ってくれる映画じゃないかな。
僕もこの作品に関わって、友達や大事な人を今よりもいっそう大切にしようと思いました。

――「時間」というのは、2018年の黒羽さんのテーマでもあるそうですね。

はい、時間を大切に使うことが今年の目標です。『Sea Opening』で清が自分の大事な人とあらためて向き合っていくなかで、僕自身も「時間」を意識するようになりました。僕は『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』という映画がとても好きなんですけれど、それは自分の父親との時間をどう過ごすかという話。僕はまだ好きな人や大事な人がいなくなるという経験はないけど、だからこそ、あとで後悔しないように時間を大切にしようと強く思いました。「楽しい」「好き」と感じる時間をなにげなく流したくない。

最近Netflixの『あいのり』にハマっているんですけれど、そのなかで「増やせないのは時間だけ」と言葉があったんです。時間は有限だし、時間を使うことは寿命を使うことと同じ。ですからこの映画を見に来る方はその時間を大切に、流さずに、ちゃんと見てくれたら嬉しいです。ぜひ寿命を使って見てほしいですね。

見た結果、何を感じるかはその人次第。この作品を見て人生が変わる人がいるかもしれないし、何も感じない人もいるかもしれないし。ただ僕たちは気の許せる人たちと楽しく精一杯作りました。何かを感じて家に帰ってもらえれば、とても嬉しいです。

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◆作品情報
映画『Sea Opening』
2018年2月10日(土)より全国順次ロードショー

【キャスト】
黒羽麻璃央 和田琢磨 玉城裕規
佐伯大地 大平峻也 河合龍之介 佐藤永典
今川碧海 古谷大和  渋谷盛太 安藤稜浩  熊谷魁人  松田将希  石井貴就 安藤瑠一 杉本海凪  阿部快征 佐藤智広 佐藤流司(友情出演)
小池樹里杏 MIO YAE 札内幸太 勧修寺保都 栗原卓也 紗々 石崎チャベ太郎 宮平柚希
鈴木ケリー プリンスモーガン 森郁月 オラキオ

【STAFF】
プロデューサー・脚本・撮影・編集・監督:堀内博志

【あらすじ】
「僕らが物語を語るとき、必ず現実はそこにいる・・・」
人気若手舞台俳優、片桐(和田琢磨)は主演舞台の稽古に励んでいた。
片桐の所属する劇団員たちは、演出家・佐竹(河合龍之介)に振り落とされるかもしれないという恐怖に怯えながらも、その狂気をはらんだ演出に心酔していた。
そんな稽古が続く中、片桐は自分を慕う後輩俳優の清(黒羽麻璃央)に「俺が居なくても芝居続けるか?」と問う。
そして公演直前に突然降板を告げ姿を消す片桐。その理由は片桐の口から語られることはなく、周囲は戸惑う。結局、舞台公演は中止となった。
突然の出来事に混乱し、清の心は揺れる。
清は答えを求め、地元の幼馴染であるナオ(佐藤永典)の元を訪れる。夢の実現のために働くナオは、ファッションショーのリハーサルの真っ最中だった。優しさが込められたナオのキツイ言葉にも清が求める答えはない。

茫然とリハーサルを眺める清の前に突然現れる片桐。「遊ぼう」と片桐の生まれ故郷である沖縄に清を誘う。そこには、片桐の兄貴分、そして片桐のただ一人の友がいた。

東京と沖縄を舞台に繰り広げられる現実と幻想の世界。
二人がたどり着いた「真実」とは・・・?

【公式HP】https://seaopening.com/

映画『Sea Opening』主演・黒羽麻璃央インタビュー_6

(C)2017エス・エル・エフ/パーフェクトワールド

(撮影/河野桃子)

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