坂元健児&菅野こうめい『Finding Mr.DESTINY』インタビュー!「この作品は“恋愛推奨ミュージカル”」


2006年に韓国・大学路で初演されて以来、ロングランを続けている人気創作ミュージカル『キム・ジョンウク探し』。初恋の人を探す会社を始めた青年の元に一人の女性が訪れ巻き起こるこのロマンティックコメディミュージカルは、2016年に日本版が初演され、好評を博した。そんな本作が、タイトルを『Finding Mr.DESTINY』と一新し、2017年8月4 日(金)より再び幕を開ける。日本版初演から引き続き演出を手掛ける菅野こうめいと、劇中24役ものキャラクターを演じる新“マルチマン”役の坂元健児に、本公演に向けての意気込みを語ってもらった。

坂元健児&菅野こうめい『Finding Mr.DESTINY』インタビュー

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――2016年の『キム・ジョンウク探し』から『Finding Mr.DESTINY』に変わりましたね。変更した理由はあるんですか?

菅野:この作品は、韓国オリジナルの作家さんが監督で映画も撮っているんですけど、その映画の英語タイトルが『Finding Mr.DESTINY』なんです。実は、日本版初演でもサブタイトルに使っていたんですよ。日本版は、よりスタイリッシュになった感じがあったので、今回は英語のタイトルを前に出していこうということになりました。

――キャストも高田翔さん、玉置成実さん、そして坂元健児さんに一新されました。

菅野:そうですね。再演と言っても3人とも違うキャストなわけですから、これはもう、ほとんど初演と同じ気持ちですね(笑)。

坂元健児&菅野こうめい『Finding Mr.DESTINY』インタビュー_2

――坂元さんは日本版初演をご覧になったそうですね。

坂元:観ました!ほんとにおもしろくて、終演後楽屋へ行って「この役やりたい!」って言いまくったほど(笑)。

菅野:そうそう!

坂元:駒田一さんに直接「代わりにやらせて!」って言ってみたり・・・。

菅野:(爆笑)

坂元:そんなことを言っていたら、本当に出演のお話が来まして(笑)。

菅野:でもさ、あの時点で駒田さんの代わりになっても、きっと台詞覚えられなかったよ。

坂元:あれは覚えられないですね~。

菅野:それだけ大変な役なんです、“マルチマン”は。

坂元:それは分かっていたんですが、以前から一つの作品の中で何役もやることに憧れがあったんです。それもあって、この作品を観た時に「これだ!」っていう、観ながらも思わず動きたくなるような感覚になったんですよね。

――それだけ大変な役と分かっていても「やりたい!」と思わせた理由はどこに?

坂元:一番魅力的だったのは、やはり、どんどん役替わりして登場するおもしろさ。24役あるんですが、なかなかそんなに一つの作品の中でできることではないですから。

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――菅野さんは、坂元さんに「やりたい!」と言われた時はどう思ったんですか?

菅野:驚きましたよ。坂元さんとは何度も仕事していますが、そんなことを思っていたとは知らなかった。見出せていなかったのかな(笑)。「坂元健児」という役者に対して、そんなに弾けた面があることに気づいていなかったんです。だから初演の時、楽屋に来ていきなりやりたいって言われた時には「そうなの?!」って、ひたすら驚いていました(笑)。

――マルチマンが演じるキャラクターで、坂元さんが演じたら新鮮かも、と思うキャラクターは?

菅野:新鮮というか、この作品は脚本に自由度が与えられている作品なんですね。だから、役者のキャラクターに、アイデアを自由に取り入れられるんです。つまり、マルチマンのキャラクターは変えていいとされている。もし、稽古中にやってみて「こういうのがいい」というのが出てくれば、それもありなんです。キャラクターを創造するところから入ることができるので、日本版初演で駒田さんがやったキャラそのままではなく、「坂元健児」から想像したキャラクターが登場することも、期待していただいていいと思います。

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――駒田さんのマルチマンも、駒田さんオリジナルキャラがあったわけですね。

菅野:「聖闘士星矢」は、韓国版にはありませんでした(笑)。稽古をやっていくうちにどんどん変わっっていったものもありますね。救世軍のキャラも出てくるんですが、僕がその前に『ガイズ&ドールズ』をやっていたから、そこからヒントを得て「駒田さんにトランペット吹かせたら、おもしろいんじゃないか」と思ってやり始めたんですよ。

坂元:マルチマンって、ほんとに自由度が高いんですね。

菅野:そうなんだよ。他の二人はある程度固定して、脚本通りのキャラクターをやらないとストーリーが分かりにくくなってしまうからね。でも、マルチマンは演じるほとんどのキャラが、二人の旅の中で出会う人たちだから、自由度高くできるんだよね。

――実際決まった時、駒田さんに報告されたんですか?

坂元:はい、メールで・・・。怖かったんで、メールだけしました(笑)。

菅野:ははは(笑)!

坂元:駒田さん、初演の時に「この役は誰にも渡さない」って公言されていたんですよ。

菅野:言ってたね(笑)。

坂元:だから出演が決まってから、しばらく経って・・・今年の正月頃かな、元旦の正午になった瞬間に、新年の挨拶を利用してメールを送りました。

――駒田さんはどんな反応をされましたか?

坂元:普通に「がんばってね」って言ってくれました(笑)。でも、内心悔しいんじゃないかなと思うんですけど。

菅野:まあ、誰でもそうだよね。僕なんか仕事もらった時、他の誰かにやられるぐらいなら自分でやる!って思う時があるもの。今回の、駒田さんと坂元さんはよく知った間柄だし。

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――共演の、高田翔さん、玉置成実さん、二人の最初の印象はいかがでしたか?

坂元:玉置さんは『アイラブミュージカル』というコンサート形式の作品でご一緒しただけで、お芝居で共演するのは初めてなんです。高田くんも、元『ライオンキング』の子シンバと聞いたんですけど、一緒の舞台に立ったことはなくて、今回初めて。新鮮ですね。

菅野:初対面の頃から、すでにいいチームワークが生まれている印象があったから、これはうまくいくと思った。僕は、稽古場で俳優たちを見ながら作品を仕上げていくタイプだから、稽古を通して皆で汗をかいて、それが今回ならではのものになればいいなと思っています。

――この作品は、韓国オリジナルミュージカルでロングランを続ける人気作ですが、作品のどういったところに魅力を感じますか?

菅野:前回やっていく中で思ったんですけど、この作品は“恋愛推奨ミュージカル”という側面があるなと。今時の人たちは、恋愛を回避している風潮があるという記事を読んだりするけど、周りを見ても、実際そうなんだろうと感じることがあります。僕も、きっと坂元さんも、年頃の時代は女の子のことしか考えてなかったんだけど(笑)。今の子たちには、そういう感じがあまりないんだよね。ないというか、見せない。隠している感じ。この作品は「もっと皆で恋をしようよ、恋する気持ちを見せていこうよ」って、恋愛についての気づきを与えるミュージカルだと思う。今回、出演者の年齢が少し下がったこともあり、そこをもっとストレートに出せるんじゃないかと思っています。“胸キュン”のミュージカルって言っていましたけど、もっと、キュンキュンする部分を恥ずかしがらずにやろうと思っているんです。

坂元:確かにこの作品を観て、自分の初恋を思い出しましたね。ちなみに僕の初恋は、幼稚園の先生。その時不思議と、自分が子どもであるという意識はなかった気がする。先生が僕のことを抱っこしてくれるたびに「この人は、俺のこと好きだな」と、男として思ってたんですよ(笑)。その先生とは、今も付き合いがありまして。

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菅野:えっ、それはすごいね!

坂元:そうなんです。この初恋の話もしたことがあるんですけど「ええ?!そうだったの?」と、僕の気持ちにはまったく気づいていなかったようでした(笑)。

菅野:そりゃそうだよ(笑)。

坂元:でも、その当時の気持ちを思い出す度にキュンキュンします。キュンキュンする感覚って、年齢を重ねても変わらない感じがするんですよね。

――キュンキュンさせる要素として、音楽もかなり重要ですよね。

菅野:日本で、オリジナルミュージカルの楽曲がヒットして、いろんな人に歌われることってあまりないんだけど、この作品の楽曲は、韓国の大きな音楽祭で必ず歌われているんだよね。例えば、ブロードウェイでミュージカル目指す人たちがコーラスラインの「What I Did for Love」を歌うのと同じ感覚。そのくらい、この作品のナンバーは楽曲的に優れているんだよね。

坂元:ポップス系だったり、芝居の内容にリンクしていたりと、曲を聞いていて楽しかったなというイメージがあります。

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――歌うのは難しいですか?

菅野:難しいと思う。僕は訳詞も手掛けたから、特にそう思っているのかもしれないんだけど、文節というか、音節が英語の訳詞に慣れてる僕たちにとっては、ちょっと違う感覚。だからわざと、トリッキーな譜割りにしたんですけど。そうしないと、ハマらなかったりしたから。ミニョク、キム・ジョンウクのナンバーは、特にそれが多かったかな。でも、マルチマンってあまり歌わないんだよね(笑)。

坂元:僕は今回、歌ではなく24役の芝居をがんばりますよ~。

――坂元さんのマルチマンが、どんな役で登場するのか楽しみにしています。

菅野:韓国のオリジナル版では、マルチマンの役数がどんどん減っているらしいんだよね。

坂元:えっ、そうなんですか?

菅野:でも僕らのバージョンは、前回同様、オリジナルをさらにパワーアップした形になりますよ。マルチマンが、坂元パワーでどう変わっていくのか。もしかしたら増えているかも・・・(笑)。早替えとかも、ほんと大変だからね。

坂元:がんばります!

――最後に、公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

菅野:キャストも一新され、再演というよりも初演に近い感覚です。ただ、前回観てくださっている方も多くいらっしゃると思うので、その方たちも決して裏切らないものにしたいと思っています。劇場を一歩出たら「ああ、恋をしてみたい」と思ってもらえるはず。最近そういう作品があまりないので。日常に近いところで「恋」を感じてもらえれば嬉しいです。

坂元:初演を一観客として観て、すごく楽しく胸キュンした作品だったので、今回ご覧になる皆様にも、同じように観て感じてもらえたら嬉しいです。曲もいいですから!キュンキュンしながら、劇場を後にしてもらえるんじゃないでしょうか。お楽しみに。

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◆公演情報
ミュージカル『Finding Mr.DESTINY』
【東京公演】8月4日(金)~8月13日(日) DDD AOYAMA CROSS THEATER(DDDクロスシアター)
【大阪公演】8月17日(木)・8月18日(金) ABCホール

【脚本・演出】菅野こうめい
【振付】広崎うらん
【音楽監督】かみむら周平
【出演】高田翔、玉置成実、坂元健児

(撮影/エンタステージ編集部)

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