ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』目次立樹×堀善雄×大村まなるインタビュー!「“曖昧なもの”を“曖昧な人たち”でやりたい」


劇団ゴジゲンの番外編『なんかすごいSF的なやつ』が、2017年7月6日(木)より東京・下北沢 小劇場B1にて上演される。主宰の松居大悟不在の中で行われるこの番外編では、かつての自身の劇団ザ・プレイボーイズで作・演出を務めてきた堀善雄を脚本に迎え、目次立樹が初演出に挑戦する。果たして、どんな公演になるのか?!今回、客演として久しぶりにゴジゲンに参加する劇団プレステージの大村まなるを交え、公演への意気込みや、同世代で作る公演だから話せることなどを聞いた。

ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』目次立樹×堀善雄×大村まなるインタビュー

初日ならではの、遠慮とためらいを取っ払う稽古を

――目次さんの記念すべき初演出作品となりますが、稽古の様子はいかがですか?

目次:初日の夜、さっそく善雄と反省会をしました(笑)。僕、集合してすぐに稽古を始めちゃったんですよね。そしたら、善雄から「役者さんは声出したり、各々のアップがあるんだから、始めるの早すぎ!」ってダメ出しが・・・。

堀:いやいや、あえて言ったんですよ!演出は、人それぞれやり方があっていいものですし。

――堀さんの目には、演出・目次さんはどのように映っていますか?

堀:やりたいことがいっぱいあるんだなって思いましたね。目次自身も、俳優としていろんな現場をやってこられているので「こういう風にやりたい」というビジョンをしっかり持っているんだなと。だから、稽古をすぐ始めちゃうのも、それが溢れ出したんだなって思いました(笑)。だからダメ出しじゃないんですよ?

大村:二人でそんな反省会してたんだ!知らなかった。でも、稽古初日からすごく楽しかった気がします。なんか、新しいやり方に感じたんだよね。

目次:最初は特に何も決めずに、その場で思いついたことから始めた感じでした。今回は、最初の「本読み」から、キャストの皆さんにまず会議をしてもらいました。どういう風に本読みを進めていきたいか、その目的って何なのか、というところを明確にできるように。

大村:初めてだったよ、そんなことするの(笑)。

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――「本読み」の進め方に注目したのは、何かきっかけや目的があったんでしょうか?

目次:実は、去年出演した舞台で「本読み」について悩ましい思いをしたことがあって・・・。僕は最初から全力でやったんですが、周りと温度差を感じたんですね。「ここは、ほかの役者さんたちのテンションと擦り合わせた方がいい!」と、とっさに変えて。だから、皆が実際にどうやっていきたいか、聞いてみたかったんですよ。

大村:それ、すごく分かる!毎回不安に思う部分なんだよね。皆、探ってる感じがするんですよ。どういう感じで読むんだろう、どのくらいの勢いで来るんだろうって、空気を読む感じ。

目次:そう、それ!そのためらいが、僕はちょっと邪魔なんじゃないかなって思っていたんですよ。

大村:今回は、最初に三つの決めごとをしたんだよね。「恥ずかしくてもいい・モチベーションMAX・すべて受け入れる」だったかな(台本にメモをしていた大村さん)。

目次:そうそう、テンションの擦り合わせね!

大村:そうやって始めてくれたから、最初の本読みから自分を出しやすかったよ。楽しかったし、これからの稽古が楽しみだなって思えた。

目次:この方法も、同世代が集まっているからこそできたと思うんだよね。

堀:そうかもしれない。

目次:配役も、選挙方式で決めたんです。どの役が、どのキャストさんに合うと思うか、投票してもらったんですよ。

堀:学生の頃、学級委員を決める瞬間を思い出したよね(笑)。

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同世代だからできることを突き詰める

――「同世代」というキーワードも、今日お聞きしたかったことの一つなんです。ゴジゲンは「同世代」で発信していくことをすごく大事にしている劇団だと感じていたので。

大村:確かに、僕もゴジゲンってそういう感じする。

目次:プロデュース公演とかだと、いろいろなところから人が集まってきて、もちろん初対面ということもあるし、経験したことのないタイプの現場に入ることもあるだろうし、人間関係を構築していく時間が、結構必要だと思うんです。稽古でも、どこか無意識に遠慮してしまうこともあったりするし・・・。でも「同世代」でものづくりをするってなると、圧倒的に距離が縮まる時間が短いです。

――そういう意味でも、今回の公演は好調な滑り出しとなったんですね。

目次:今回は、初めての方もいるんですが、皆さんガンガンぶつかってきてくれる方なので、本番が楽しみでしかないです。逆に、同世代が集まっているからこその苦労があるとするなら、上の人がいない分、技術的なことや知識の伝承、教わる機会が少ないっていうことかな。

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大村:いいところも悪いところも「同じ空気感」というところにあるのかも。上の人だけじゃなくて、下の年代にも教わることはあるからね。僕が所属する劇団プレステージには、かなり若い子もいるので「こいつ、こんな若いのにこんなことやるんや・・・!」っていう脅威を感じることもあります。でも、同世代だけで作品づくりをする機会はそんなにないので、貴重な経験だなと思う。

目次:単純に、楽しいよね!

堀:僕、温泉に行ってるみたいに感じるんですよ。

目次:え、いきなり何を言い出すの(笑)。

大村:温泉・・・???

堀:遊んでるとか、そういう意味じゃないよ!リラックスしながら目的地を目指している感じ、っていう感覚かな。道中、何があるか分からない旅ですけど(笑)。

目次・大村:そういうことか~(笑)。

「曖昧なもの」を集めた、ゴジゲン的SFに

――今回、台本は堀さんがお書きになったわけですけど、執筆段階で目次さんと相談されたりしましたか?

堀:そうですね。目次には、方向性に迷った時とか、相談してアドバイスをもらったりしました。

目次:僕が「とにかく3月中に書き上げて」って指令を出していたんですよね。

堀:そう!6月から稽古開始なのに、3月中には本をあげとけっていう・・・。

大村:え~!!早くない・・・?鬼演出家じゃん(笑)!

堀:この業界って、稽古初日に台本が出来上がってたら「早いね」って言われる世界じゃないですか・・・。でも目次にそれを言ったら「それはこの業界がおかしいんだ!」って言われて・・・。

大村:そう言われると、確かにそうかもしれないけど(笑)。

堀:目次には、演出を初めてするから準備がしたいっていう思いがあったんだよね。でも・・・3月に書き上げるのは、無理だったよね(笑)。

大村:なんで、そんなに早く上げてほしかったの?準備のため?

目次:・・・善雄さんのね、本を・・・早く読みたかったんですよ(ニヤリ)。

大村:え~!なんなのそれ(笑)!!

目次:今回の公演に関しては、このメンツが揃ってくれた時点で不安はなかったんです。善雄が書くものにも、絶対的な信頼を置いているし。実は3月に、僕自身が他の公演の脚本を書いてたんですね。で、まあ、なんていうか・・・僕も3月に上げろと言われていたので、ライバル的な存在が欲しかった。

大村:私的な理由だったの・・・!

堀:しかも、僕は間に合わなかったけど、目次は3月中に書き上げていたからね。すごいよね。

目次:しかもそれ、8月の分(どや顔の目次さん)。

大村:すごーい・・・。立樹って、しっかり準備する人なんだね・・・!

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――堀さんの脚本は、稽古前には間に合ったんですか?

堀:なんとか稽古前には仕上げました(笑)。企画段階から、大村くんをはじめ、キャストの皆さんのお名前が上がっているのを見ていたので「このメンツでやれたら最高だな!」っていう思いで書き上げました。見事に、それも叶って嬉しかったですね。皆さん、いろんなスケジュールがあってお忙しいだろうに。

大村:いや、特に忙しくないですよ!

目次:そこは忙しいって言っておこう?!ほら、お前、忙しいじゃん!

大村:そうだった、そうだったね!CMも映画も全部断ったわ(笑)。

堀:こんな空気感なので、このまま最後まで楽しくいけるんじゃないかなって思っています(笑)。

――お話を聞いていて、稽古場の和やかな雰囲気が目に見えます(笑)。ところで今回、すっごくふんわりとした掴みどころのないタイトルになっているんですが、お話はゴジゲン初のSF作品なんですよね。

堀:このタイトル、すごく漠然としているじゃないですか?「的」とか「やつ」とか。でも、この漠然さとした感じが、よい作用を生み出すんじゃないかなって思っています。・・・作品に可能性を与えているというか。

大村:なるほど・・・。

堀:例えば「宇宙戦争します」とか、端的にストーリーを示すタイトルやあらすじを言うこともできるんですけど、それを言ってしまうことで、作品の余地や可能性を奪ってしまうんじゃないかなって。できる限り膨らませたいし、「一体何をやるんだろう?」っていう含みを持ったものにしたかったんです。内容も、そういう「曖昧なもの」を集めた作りになっています。

――堀さんが思う「曖昧なもの」とは、例えば?

堀:そうですね。例えば・・・「素粒子」とか。あれには「観測されるから存在する」みたいな考え方があるんです。でも、じゃあ観測されなかったものはどうなるのか。そういう「あるけどない、ないけどある」みたいなことです。「人の記憶」とかもそうですよね。全然確かなものじゃない。

さっき、同世代という話が出ましたが、僕らは30代。それこそ「30代」って、ものすごく曖昧だなって思ってるんです。ヨーロッパ企画の上田誠さんも「30代が描きづらい」っていうお話をされていたことがありましたが、本当にその通りだと思うんです。でも、せっかくこうして30代の同世代が集まっているだから、そういう“曖昧なもの”を“曖昧な人たち”でやりたいなって思ったんです。

目次:確かに、30代ってふわふわしてるよな。身を持って思うわ・・・。

堀:ね、何してんだろうね俺たち。定職にもつかずにさ。

大村:ちょっと!やめてやめて(笑)

ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』目次立樹×堀善雄×大村まなるインタビュー_3

深夜のサシ飲みで繰り広げられた、熱い(?!)裏話

――皆さんは堀さんの脚本を読んでどう感じられましたか?

大村:意外と言ってはなんですが、ドラマ要素が多いなって思いました。堀さんがやっていた劇団ザ・プレイボーイズは、青春のイメージだったんですよ。結構いかつい下ネタ盛り込んできたりね(笑)。

堀:そうですね。そんなこともやってました(しみじみ)。

大村:ゴジゲンも童貞とか扱っていたから、この本を読むまでは「男くささのあるものにSFがプラスされるのかな」ってイメージしてたんです。でも読んでみたら・・・どっちかと言うと爽やか!その意外性が印象的で、それを30代で演じるおもしろさも感じましたね。

目次:これは、松居大悟は書かないだろうな~。

大村:すごく堀くんらしいというか、堀善雄くんの本来持つ“優しさ”みたいなものが伝わってくるようだなと思いました。少年漫画の、純粋なワクワク感みたいなのがあるよね。

堀:下ネタ作家からずいぶん出世できました(再びしみじみ)。

目次:ちょっとここで、そもそもの話をしてもいいですか?

――なんでしょう?

目次:ゴジゲンとして今回の公演をやると決まった時に、同時期に松居が別の仕事を抱えていて「どういう公演にするか」迷っていた時に、善雄の家で二人で飲んでいたんですね。てっぺんになっても飲み続けて、朝の3時、4時くらいだったかな。善雄がボソっと「・・・俺、本当は書きたいんだ」って絞り出すように呟いたんですよ・・・。

――すごくいい話じゃないですか!

目次:僕、なんか感激しちゃって。その次の、ゴジゲンの会議の時に「ちょっと皆、聞いてくれ!善雄が書きたいんだ!」って言ったんです。それで、この企画ができたっていう。

堀:・・・(何とも言えない表情の堀さん)。

目次:でもね、これ、本人に言わせるとちょっと違うらしいんです・・・。

堀:このまま、いい話で終わらせたかったんですけどね・・・。

大村:ちょっと待って、怖い!何、何?!

堀:僕、目次にそんな風に言った覚えがないんです・・・。

大村:嘘でしょ・・・?本当に?

堀:ゴジゲンの公演をやるけど松居がいないって聞いた時に、僕は「それぞれレギュラーメンバーが持ち寄りで短編を書いてやるのがいいんじゃないか」って思ったんですよ。目次も書くし、俺も書く。
その飲みの時に、目次に聞かれたのは「役者・脚本・演出だったら、次はどれがやりたい?」みたいなことで。だから「脚本かな」って答えたんです。確かに、近しいことは言ったんですけど、ニュアンスが恐ろしく違っていて・・・。

目次:僕には、そっちの記憶がありません!

堀:目次の中では、6、7時間飲み明かした後に、僕が魂の叫びを伝えたっていうことになっていたんです。でもまあ、これもおもしろいなって思って・・・。さっき、「いい話じゃないですか」って言ってくださったように、会議でも、その場にいた全員がそういう雰囲気になっちゃって(笑)。松居も「お前そんなこと思ってたのか、俺は嬉しい!」みたいなことを言っていて、すごく熱いムードになってしまって、引くに引けなくなりました。

大村:「俺、そんなこと言ってないよ」って言えないね・・・。

堀:そう!でも、今となっては「俺、すごく書きたかったのかも」ってなってる(笑)。これこそ素粒子の観測じゃないけど「書きたいと思っていなかった僕」だけど、皆が見つけてくれたというか。「お前、書きたかったのか!」って言われることで、最終的には「書きたかった僕」が存在してる。

大村:素粒子だねえ。

目次:化学だねえ。

堀:いや、お酒だよ!

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――素粒子的に発見された物語を、楽しみにしています(笑)!最後に、公演に向けた意気込みをお願いします。

目次:(携帯のメモを開いて)ちょっと、見ていいですか?

大村:立樹、書いてきたの?!やっぱり立樹はすごく準備をする人なんだね。

目次:そうそう、これが言いたかった(確認終了)。今回、不安はありません! 堀善雄の素晴らしい本があって、それをこのメンバーで出来る。実際、本番2週間前から始めてもできるんじゃないかと思うぐらい、安心感のある座組みです。だからこそ、突き詰めて、作品の可能性を広げるだけ広げまくって、本番に臨めたらと思います!

大村:僕は、ゴジゲンへの客演がすごく久しぶりです。今の僕たち、30代ができる爽やさやロマンティックさを感じてもらいつつ、僕自身も楽しみつつ、お客様には“大村まなる”になった僕を観ていただきつつ、空気感を楽しんでほしいです。

堀:企画からずっと楽しいまま、最後まで突き進めるような気がしています。温泉に向かっているような感じで・・・。温泉に行くって、絶対楽しいじゃないですか。それと同じで、絶対おもしろいものがあるので、ぜひ来てください!

目次:また温泉の話が出てきた(笑)。上手く言えてるか(笑)?

大村:温泉に浸かりに来てくださいってこと?

堀:うまく言えているのかもう分からないけど、行き先として温泉くらい楽しいものになるってことです!

ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』_チラシ

◆ 公演情報
ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』
7月6日(木)~7月10日(月) 東京・下北沢 小劇場B1
【作】堀善雄
【演出】目次立樹
【出演】大村まなる(劇団プレステージ)、奥村徹也(劇団献身)、木村圭介(劇団献身)、土田祐太、藤尾勘太郎(犬と串)、堀善雄、目次立樹

【アフターイベント】
7月7日(金)19:00公演 「戦極ゴジゲンバトル~松居と東と最強の殴りこみ~」
目次立樹、奥村徹也、堀善雄
ゲスト:松居大悟、東迎昂史郎、本折最強さとし

7月8日(土)18:00 「大村まなる生誕祭~最高に祝えるのは誰だ~」
出演者全員

7月9日(日)18:00 「堀善雄プレゼンツ ゲーム王は俺だ!~なんかすごい盛り上がる的なやつ~」
出演者全員

ゴジゲン番外編『なんかすごいSF的なやつ』目次立樹×堀善雄×大村まなるインタビュー_11

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