舞台『メトロポリス』森山未來×松たか子×串田和美インタビュー!「綺麗な夕焼けを見て感動するように理屈抜きで楽しめる舞台を作りたい」


2016年11月7日(月)から東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、舞台『メトロポリス』が上演される。原作は、1926年にドイツで製作された同名のモノクロ・サイレント映画。当時から100年後の未来都市を描いたこの映画は「SFの原点にして頂点」とも呼ばれ、その後の映画界だけでなく、漫画、音楽など、数々のSF作品に多大な影響を残した。今回、原作の誕生から90年の時を経て、日本初の舞台化となる。

SF映画の金字塔的作品である『メトロポリス』果たしてどんな舞台が完成するのだろうか。本作演出の串田和美、主演を務める松たか子、森山未來から話を聞いた。

舞台『メトロポリス』森山未來×松たか子×串田和美インタビュー

――本作の原作は「SFの原点にして頂点」と名高い評価を受けるフリッツ・ラング監督の『メトロポリス』ですが、ラング監督の元妻テア・フォン・ハルボウの小説版も合わせて、原作の印象を教えてください。

森山:僕は原作の映画も小説も見ないようにしているのですが・・・、『メトロポリス』というタイトルを聞いて僕が連想するのは手塚治虫先生が初期に描かれた漫画「メトロポリス」なんですよね。手塚先生もラング監督の『メトロポリス』の影響で描かれたそうですし、今でもSF映画の草分けとして今でも色あせることなく存在感を放っている。そんな原作に対して、どう向き合うのかというのはチャレンジであり、楽しみにしているところです。

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松:私は原作の映画を観たのですが、小説はまだ読んでいないんです。映画については、すごくパワーがある作品だと思いました。約90年前の作品なのに、とても緻密に作られている。だからこそ、舞台版『メトロポリス』では原作のパワーを引き継ぐような形で臨んでいきたいと考えています。また、ロボットの印象とか都市のイメージについては当時と多少ズレがあると思いますが、想像力をフル稼働して創るスタンスは今も同じだと思っています。

串田:実のところ、舞台の内容が原作とはほど遠いものになってるから、二人とも「そういえば原作あったね」って感じなんじゃないかな(笑)。でも、松さんが言ったとおり、原作が生まれてから90年も経た時代を生きている自分たちが“改めて『メトロポリス』を創る作るのなら”当時の熱量を引き継ぎながらも、原作のイメージから距離を置いてでも、自分の方に引き付けなくちゃいけないなと考えています。

――稽古ではどのようなクリエーションが行われているのでしょうか?

森山:『メトロポリス」はニューヨークの摩天楼に衝撃を受けたラング監督が撮った映画なので、建物の壮観さやそこで働く労働者たちの数を舞台上でどう表現するか、試行錯誤している状況です。舞台上で描写する建物や群衆は、お客さんと演者で想像力を交感しあう必要があると思うんですよね。

――稽古を通して、共演者の方にはどのような印象を持たれていますか?

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森山:松さんについては、マリアの他にアンドロイドの役も演じるのですが、パンフレットのイラストの通りメトロポリスの上に君臨しているような印象があります。やっぱりメトロポリスの象徴として松さんがいてくれることで、僕らは自然に動くことができるんですよね。

松:私は・・・稽古を見ていて、皆さんとっても“(作品を)掘るのが似合う人たち”だなって。今回、舞台版のオリジナルキャラクターを演じる趣里ちゃんなんかも一見フワフワしたキャラクターに見えて、しっかりと地に足がついているし、飴屋法水さんみたいに立ってるだけで何かしでかしそうな人もいる(笑)。未來をはじめ、優れた身体的能力を見せてくれる人、どんなことでも何とかしようとする頼もしい先輩たちがいるので、それぞれの個性に感嘆する日々です。

――サイレント映画が原作なので、今回は潤色という形で脚本を加藤直さんがご執筆されたんですよね。

串田:脚本を書いていただくにあたり、加藤さんには「完成図じゃなくて、出発点を書いてほしい」とお願いしました。完成図っていうのは、ガイドブックのような脚本で、目標に至るまでのルートが書いてあるので、それに沿っていけば(完成に)到着できるようになっているものです。一方、「どこにいくか」とか「どこに集合」としか書いてないものが出発点のような脚本。この作品は、あっちじゃないか?こっちじゃないか?と閃きと出会いに左右されながら、旅をするように舞台を作っていけたらと思ってお話ししました。

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――森山さん、松さんは稽古に入る前に準備しておいたことなどありましたか?

森山:舞台というものは、役者とスタッフが稽古場で作品を揉みながら作っていくものだと思っているので、「自分はこうしよう」みたいな気持ちを持つ必要がないのかなって、僕は考えています。

松:私も映画を観たことと、ちょっとでも元気でいよう!という心持ちぐらいかな(笑)。稽古に入る直前に戯曲をいただいたのですが、「ものすごいところに向かおうとする脚本だ・・・!」と感じたので、一人ではどうにもこうにも乗り越えられないだろうって思ったんです。だから、稽古場で皆と一緒に『メトロポリス』の世界を進んで行こうと、心を切り替えて臨みました。

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――串田さんの舞台は、これまでもイマジネーション豊かな作品を創られてきましたが、今作では振付に山田うんさんが入り、音楽演奏もあるということで、原作のイメージをはるかに超えるような作品に仕上がる予感がしています。内容に関して、アピールポイントがございましたら教えてください。

串田:僕は、人間って起承転結のある物語では収まらない、わけの分からない存在だと思うんです。起承転結で物を書くことを教わるようになったのは近代からなんだけど。だから、物語というのは昔の作品の方が支離滅裂だったかも。歌舞伎もそうだけど、破天荒な要素を楽しむ文化が多少なりともあったと思うんだよね。

特に、最近の価値観って“分かる”ことを過剰なまでに求めすぎな気がしていて・・・。自然って、基本的には不思議なものですよね。例えば「こんな夕焼け見たことない!」って思うほど綺麗な夕焼けを前に「なぜ自分は感動しているのか?」ということを理屈で考えるのは難しいと思うんです。僕の作る演劇もそれと同じで“綺麗な夕焼けに負けない、理屈を超えた舞台”を作りたいとずっと思っています。アピールになるか分からないけど、そういう風に観てもらえたら嬉しいです。

この作品にも歌やダンス、音楽と様々な要素が入っているけど、それが何か決まった意味を持つ要素にはならないように創りたいんです。だから、稽古場でも「ここまでは演技で、ここからはダンス」といったような線引きはしていません。言葉にするのは難しいんだけど、歌もダンスも表現として重要だけど、その間にあるものも大事にしていきたいですね。

舞台『メトロポリス』森山未來×松たか子×串田和美インタビュー_2

◆公演情報
シアターコクーン・オンレパートリー2016『メトロポリス』
11月7日(月)~11月30日(水) 東京・Bunkamuraシアターコクーン

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