劇団鹿殺し15周年記念第三弾 伝説リバイバル『image-KILL THE KING-』オレノグラフィティ×小沢道成インタビュー「もう二度とできないことをしたい!」


演出家・菜月チョビと作家・丸尾丸一郎によって2000年に旗揚げされ、活動15周年を迎えた劇団鹿殺し。その記念公演第三弾となる『image-KILL THE KING-』が、2016年11月から12月にかけて東京と大阪で上演される。本作は2003年に初演され、今なお劇団史上No.1の衝撃度と呼び声高い作品だ。

今回、鹿殺し黎明期から劇団を支えるオレノグラフィティと「虚構の劇団」所属で念願の鹿殺し初出演を果たす小沢道成にインタビュー。作品にかける想いやお互いの劇団についてなどを語ってもらった。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー

――『Image』は、2003年に初演された作品ですが、オレノさんは、鹿殺しさんに入られる前にこの作品をご覧になっていたんですよね。

オレノ:そうなんです。16歳の頃、演劇に対する価値観を一転させられた作品です。当時の僕は、高校演劇をやっていて、シチュエーションコメディとか、きちんとした枠のある“ザ・演劇”な作品が好きだったんですね。日常という枠があるからこそ、共感が得られるものが演劇だと思っていたんですけど、この作品は、今まで観てきた演劇ではない“演劇”だと衝撃を受けました。

小沢:そうだったんだ・・・「アバンギャルド!」っていう感じ?

オレノ:そうかもしれない。ストーリーを追っていく話でもないし、登場人物の誰に感情移入していいのかも分からない。ただひたすらに、アツアツの剥き栗を投げられているような感じ(笑)。熱ッ・・・!って思いつつ、その栗を食べてみると、案外うまい・・・!みたいな。
演劇の形って、別に決まったものではないし、熱量と感情があれば人は共感できるんだということに感動させられた作品でした。それから、鹿殺しの作品を毎回観に行くようになりました。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_6

――チラシもかなりインパクトの強い仕上がりですが、小沢さんは、ビジュアル撮影で実際に鹿殺しさんの世界に触れられてみていかがでしたか?

小沢:僕は、これまでも鹿殺しさんの作品を何度も観に行かせていただいていて。ずっと、一緒にやりたいなと思っていたので、念願叶いました。しかも、強烈なインパクトの作品で・・・(笑)!ビジュアル撮影の前日に、衣裳のイメージ写真をデータで見せてもらったんですけど、開いて衝撃を受けました。「これを、着るんだ・・・!」って。僕、こういう恰好をするのが初めてなんです。ほとんどの方が経験していないことかもしれませんが(笑)。

オレノ:だいぶ攻めてるもんね!

小沢:そう、(チラシを手に取って)これ、写っていないところもかなり攻めてるんですよ。本番がどうなるのかはまだ分からないですが、すでに(作品の)入り口でかなりの衝撃を受けました(笑)。撮影の時に思ったのが、まさに小劇場!という匂い。最近の鹿殺しさんは、サンシャイン劇場で公演ができるほど大きくなっているのに、あえてこのタイミングで、駅前劇場での公演をするというのが、また楽しみですね。

――サンシャイン劇場で、次回公演のチラシを見た時は、とても驚きました。駅前劇場で、お客様入りきるのかな・・・?って。

小沢:僕が言うのは変かもしれないけど、この企画自体が、まずすごいなあって。絶対におもしろくなると思います!サンシャイン劇場でもあれだけガーンと響いてきたものを、駅前劇場でやったら・・・皆びっくりしちゃうんじゃないかなと(笑)。でも、そういう挑戦をするところにも、鹿殺しさんの小劇場への想いが溢れていますよね。

オレノ:唐(十郎)さんのお芝居とかもそうだもんね。お尻痛~いって思いながら(笑)。そんな作品になるといいな。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_4

――そして、オレノさんと言えば、今回も音楽が気になります。

オレノ:嬉しい!「オレノグラフィティと言えば・・・」って言ってもらえるようになったんですね。今年は確かに、役者としてよりも、音楽で携わる仕事の方が多いかも・・・。

小沢:僕の「EPOCH MAN」(小沢自身の演劇ユニット)の公演でも、音楽を作ってもらいました。

――作品の作り手として、小沢さんはオレノさんの手掛けた音楽のどんなところに魅力を感じていますか?

小沢:オレノさんは俳優さんなので、やっぱり作る音楽にも俳優の目線を感じがします。感情から発信されているようなイメージで。作品作りの段階でセッションをしていても、僕の「こういう気分になりたい」っていう感覚を、そのまま分かってくれるんです。その感覚は、音楽だけをやっている方との間にあるものとはちょっと違っているのかもしれません。

オレノ:役者で立ってる時に「ここでかかってほしいな」っていう音楽を作りたいって、毎回思っているんです。お客さんとして観ている時の感覚と、音楽としての役割をすり合わせていくんですけど、そういう役者をやっているからこその直感的な感覚は、自分の中で大事にしていきたい武器だなと思っています。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_5

――今回の公演も、オレノさんが音楽を手掛けられるということで。

オレノ:実は、鹿殺しの本公演自体の音楽を一人で担当するのは初めてなんですよ。一緒に作曲・編曲をやってた入交(星士)が、今デンマークに留学中なので・・・。なので、入交の幻影を背負いながらやろうかなって(笑)。入交の音楽を、僕のフィルターを通すとこうなるよっていう音楽にしたいですね。
この『image』という作品は、僕自身にとってすごく思い入れが強い作品なので、ダークポップというか、アングラキッチュというか、相反する二つのものをうまく融合して、深い闇の間口を広げたいと思っています。

――オレノさんは鹿殺し、小沢さんは虚構の劇団と、お二人とも“劇団”という集団に属していらっしゃいますよね。それぞれの劇団に対しては、どんな印象を持たれていますか?

オレノ:僕は、虚構の劇団さんに何度も出させていただいているんですけど、最初に参加した時の印象は「きちんとした劇団、あるべき姿の劇団」という感じがしました。それはたぶん、鴻上さんが“作りたかった劇団”であり、もしかしたら、第三舞台の時にできなかったことを、若い人たちを集めて“今”やろうとしてるんじゃないかなと。
僕ら鹿殺しよりスマートでデザインされた劇団なんですけど、出させてもらって、持っている意欲の部分は同じだなって思いました。こういうやり方をすれば若い子たちはもっとがんばってくれるんだとか、こういう劇団員であれば主宰の人は意欲に応えてくれるんだとか、ウィンウィンの関係を見せてもらった気がします。

小沢:僕が鹿殺しさんの魅力だと思っていることの一つが、脚本を丸尾(丸一郎)さんが書いて、(菜月)チョビさんが演出をするという創作スタイルです。作・演出を同じ人がやることが多い中、鹿殺しさんの作品は、二人で作ることによって“エンターテイメント”性が高まる感じ。丸尾さんの世界が、チョビさんの手によって、より多くの人に受け入れられる形になっていくというか。

オレノ:鹿殺しのやっていることも虚構の劇団がやっていることも、プロデュース公演だと、きっと出来ないことなんですよね。劇団員だから、酸いも甘いも、苦しいも嬉しいもひっくるめて、同じ方向に向かっていくんだっていう気概がある。

小沢:劇団での経験が与えてくれた強さって、あると思います。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_2

――ちなみに、お二人はどんなきっかけで劇団に入ろうと思ったんですか?

オレノ:僕は、小学校から演劇をやっていたんです。ただ、鹿殺しに入る前の2年間くらい、演劇に絶望していた時期がありまして(笑)。二度と演劇なんてするもんか!って思って、カラオケとか、居酒屋とかでバイトして遊び回ってたんです。でも、それも半年ぐらいすると、遊ぶって、大しておもしろくないなって・・・。そう思っていた矢先に、丸尾が「鹿殺しに入らないか」って声かけてくれて。その時、すでに鹿殺しの芝居を何度も観ていて、関西でおもろいのは鹿殺ししかないって思ってたから、ここでもう1回、本気で演劇やってみようと決心して入団しました。

小沢:そうだったんだ・・・。その言葉が、オレノくんの人生を変えるきっかけになったんだね。

オレノ:そうだね。でなきゃ、今頃カラオケ店の店長だったもんきっと(笑)。みっちーは?

小沢:僕はもともと、「第三舞台」とか「夢の遊眠社」の舞台をビデオで観ていたんです。15。16歳の頃、関西で芝居を始めたんですが、やがて東京で活躍したいと思うようになり身一つで上京しました。でも、すぐに東京というところの怖さも知って(笑)。オーディションも受からないし、友達もいないし、もうダメかも・・・って、地元に1週間ぐらい戻った時に、鴻上さんが「虚構の劇団」を立ち上げるからオーディションをするっていうのをチラシで知って、受けてみて、今に至る感じです。

オレノ:みっちーが、鴻上さんとか野田さんを観て演劇おもしろいって思ったみたいに、これがお芝居の楽しさなんだ!って伝えられる作品作りをしたいね。

小沢:そうだね。演劇って、コンプレックスすらも可能性になるものだと思うんです。今回の作品も、ぜひこれから演劇をやっていこうと思っている、僕たちより若い人たちにも観てほしいです。

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_3

――熱い想いがほとばしる公演になりそうですね!最後に、楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

オレノ:鹿殺しの15周年の一番最後を飾る作品で、気合いの入っている公演です。駅前劇場でやるのは約4年ぶり、いろいろ経て帰ってきました。密な空間で、「もう二度とできないことをしたい」っていう気持ちがありますね。もしかしたら、この距離でやれるのは最後かもしれません・・・、鹿殺しの歴史を語る上で欠かせない公演になると思います。15周年のすべてを出しつくしますので!観逃さないでくださいね!!

小沢:駅前劇場の距離感と密度で、鹿殺しのお芝居を体感する衝撃は、計り知れないと思うので。このチラシビジュアル以上のインパクトが、目の前に現れることにご期待ください。きっと、演劇でしか味わえない体験になると思います。ぜひ楽しみにしていてください!

劇団鹿殺しオレノグラフィティ×小沢道成インタビュー_7

◆公演情報
劇団鹿殺し15周年記念第三弾 伝説リバイバル『image-KILL THE KING-』
【東京公演】11月23日(水・祝)~12月4日(日) 駅前劇場(下北沢)
【大阪公演】12月8日(木)~12月11日(日) ABCホール

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