『バイオハザード』ミュージカル化に挑む、柚希礼音インタビュー!「怖いだけでなく、人間の深さを描く作品を」


柚希礼音は、宝塚歌劇団のレジェンドとも言われている。宝塚歌劇団100周年イベントの顔を務め、退団公演の千秋楽には過去最多となる1万2000人ものファンが集まった、元星組トップスターだ。その柚希の退団後初主演作が『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』。大ヒットゲームの舞台化であり、初のオリジナルミュージカル化でもある。初めてづくしの舞台に臨む、その思いを聞いた。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー

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伝説の宝塚トップスター、退団後初の主演作

――宝塚歌劇団退団後、初の主演ミュージカルですね。

宝塚を退団してからは、海外の方とミュージカルで共演したり自分のコンサートをしたりと、歌ったり踊ったりの幸せな舞台が続きつつも、そろそろお芝居がしたくなってきていたんです。でも、退団後初の舞台でのお芝居ですから、どういうものが良いんだろうとも悩んでいました。今回『バイオハザード』が決まった時は、演じるリサ・マーチンという女性がとても好きなタイプの素敵な女性だったので嬉しかったです。

――どんなところが役の魅力なんですか?

記憶をなくして、自分自身について考えながら戦うんですけれど、ただ強いだけではなく、優しさや愛情や勇気がすごくある方。周りの人から好意を寄せてもらっても、可愛く媚びたりもしない、強い女性です。脚本・演出のG2さんから「ヒロインの勉強として観て」と映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をお薦めいただいたんです。そのヒロインが丸刈りで強くて・・・・・・そんな女性がすごく好きなんです。

――女性役としての舞台のお芝居は初めてですが、どんな準備をされていますか?

初めは、どうやって喋るのだろう、声のトーンや動きはどうしよう・・・・・・なんて考えてしまっていたんです。でも宝塚時代にも、男だとか女だとか関係なく人間の心の動きは一緒だなと思っていたので、リサという人間の心の核になっている部分を大切にします。リサが思ったことを口にしているうちに自然に喋り方ができていくといいですね。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_2

――共演者はすべて男性。男性と舞台でお芝居をされるのも初めてですか?

はい。今まで男役を引き連れたことは何度もありましたが、本物の男性と並ぶとまた雰囲気が違いますね。みなさんそれぞれの格好よさがあります。メンバーが豪華なので、宝塚を退団して外のいろんな方々と共演できるのがとても楽しみです。初めてのことづくしなので、いろんなことを勉強しながら一歩一歩やっていきたいなと気持ちを新たにしました。

――共演のみなさんは、初めてお会いになる方々ですか?

そうなんです。今回共演する渡辺大輔さんや平間壮一さんや吉野圭吾さんの最近の舞台は拝見しました。最近はたくさん舞台を観ているんですよ。宝塚歌劇の現役中は兵庫県の奥地にいるので、休日に頑張れば大阪の舞台は観られるけれど、お休みも急に決まるので難しかったんです。宝塚を辞めて東京に住んだら、たくさんの舞台が観られるようになり驚いています。

ミュージカルでしか表現できない『バイオハザード』を

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_3

――G2さんと作品について話されましたか?

G2さんは最初、なぜ「バイオハザード」をミュージカルにするかという意味を考えて、すごく頭を抱えていらっしゃったみたいです。だからミュージシャンを登場させることにしたそうです。物語に音楽が絡むことで、ゲームでも映画でもない、『ミュージカル バイオハザード』を作り出せるんでしょうね。

ほかにも、海中のシーンがあるそうで、どんな舞台空間になるのか楽しみです。G2さんには「海だと思い込んでやろうね」と言われました。みんなが「ここは海だ」と思えば海になるのは、舞台ならではの表現ですよね。最近はものすごく映像の技術が発展していますが、舞台だからこそ、技術だけに頼らない表現ができそうです。

――映画ともゲームともまた違う『バイオハザード』になりそうですね。

そうなんです。出演が決まった時は、普段は連絡が来ないような方・・・・・・たとえば兄の友達の友達からも「『バイオハザード』の何作目をやるの?」「もしかしてレオン役?」という質問がいっぱい来たんですが、完全なオリジナルです。原作のキャラクターは一人もいません。でも、『バイオハザード』生みの親であるCAPCOMさんがチェックしてくださっているので、ちゃんと「バイオハザード」感があるんです。世界観としては、私の好きな映画『アイ・アム・レジェンド』や、『マッドマックス』に近くなりそうかな。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_4

――でも柚希さんも怖いものは苦手なんだとか。

普段はコメディ映画とかすごく明るくて楽しい作品が好きで、ホラーは観ません。最も苦手なのはおばけ・・・・・・映画『リング』の貞子とか、すごく怖いです。ゾンビは絶対に現実にいないと分かっていつつも、ゲームや映画は音楽で脅かしてきたりするから怖いんですよ。あと、ゲームだと自分でどんどん次の部屋に進んで行くじゃないですか!そんなの私だったら絶対にしたくないです。バレない場所でずっとじっとしていたい・・・。だけど、演じるリサという女性は自分からゾンビを倒しに行くので、そこは役作りとして理解しないといけないですね・・・・・・。

――ゲームだと、事情も分からないのに絶対次に進まないといけないですしね。

そうなんです。だからゲームだと次に進むのが嫌すぎて、ずーっとグルグルグルグル周りを見回すだけで時間が経ったりしちゃうんです。後ろから襲ってくるんじゃないかという気がして、不安で不安で。

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――では、出演が決まるまで「バイオハザード」のゲームはされたことなかったんですか?

名前は知っていましたが、どんな物語なのかも知らなかったんです。出演が決まってからゲームもやってみたんですけれど、一匹目のゾンビが倒せなくて、なかなか進められないんですよ。すぐにプレイヤーが死んじゃう・・・・・・。

だから映画の『バイオハザード』を何回も観ました。観るまではゾンビが出てきてちょっと怖いというイメージが先走っていたんですけれど、実は人間ドラマが描かれているんだとすごく感じたんです。戦うことばかりではなくて、人間が危機に陥った時に、裏切る人と信じられる人がいたりする。きっと、平和で怖くない世界だったら作品としては面白味がないんでしょうね。観ている間は終始ワクワクして、すごくテンションが上がっちゃいました。ただ怖いだけの作品じゃないから、『バイオハザード』ファンの方が多いんでしょうね。CAPCOMの方に伺ったら、ゲームも人間ドラマが強いらしいのでなんとかクリアしたくて・・・これから頑張らないと(笑)。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_5

――ゾンビに襲われるという極限状態だからこそ、人間ドラマが見えるのかもしれませんね。

そうなんです。実は、G2さんも、監修をつとめてくださるCAPCOMの小林裕幸さんも怖いものがダメで、本来はゾンビが苦手なんだそうです。でも怖いからこそ、どうしたらお客様が怖がるかが分かるみたいなんです。それに自分が苦手だから、ただお客様を驚かせたり怖がらせたりしたくはない。仲間の関係性といった人間の深さを表現する作品になると思うので、「バイオハザード」ファンの方々も、ちょっとゾンビが怖いからと敬遠している方々も楽しめるものになればいいなと思っています。

――「怖いから」と敬遠されている声も聞かれますか?

ええ、よく言われるんですよ、「ゾンビが怖いから行きたくない」って。でも、大丈夫ですよ。たとえるなら韓国料理は辛さが苦手な人にとってはただ辛いだけという気がするけれど、実は韓国料理にも味噌の旨味やらがある・・・・・・みたいに、ただ怖いだけじゃない魅力がある。だから、ゾンビと戦うという「バイオハザード」感もありつつ、観終わった後には何か温かいものを感じられる作品になればいいなと思います。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_6

――アクションシーンも多そうですね。

多くなりそうですね。アクションの先生がついてくださっていて、プロモーション映像も指導をいただきながら撮影しました。「ゾンビが前にいると思って振り向いて」とか「気配を感じて振り向いて」という芝居を入れてくださいました。本番でも同じ先生が指導してくださるので、すんなりとアクションができそうです。でももっと筋肉をつけなければいけないと思って、地味に毎日筋トレをしています。普段から体づくりとして家で筋トレはしているんですけれど、本番までにもっと鍛えないと!

――柚希さんの新たな挑戦、楽しみです。

新しいことをするのは楽しみなんですけど、初日までは不安がいっぱいなんだろうなあ・・・。それは宝塚時代でもそうでしたし、共演する皆さんにとっても今作は挑戦なんだなと感じています。どんな方でも常に挑戦をし続けていくものなので、挑戦できる場があることはとても有難いですね。ゲームファンも、映画ファンも、私をまったく知らない方も、“私=リサ・マーチン”として観ていただき、納得していただけるものになればと思って臨みます。

『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』柚希礼音インタビュー_7

<柚希礼音 プロフィール>
大阪府出身。宝塚歌劇団に入団後、1999年に初舞台を踏む。2009年宝塚歌劇団星組トップスターとなり、2014年には武道館での単独コンサートも実現。2015年5月に退団後、ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』に唯一の日本人キャストとして出演。2016年3月には退団後初のソロコンサート『REON JACK』を行った。第30回松尾芸能新人賞、第65回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第37回菊田一夫演劇賞を受賞している。

◆『ミュージカル バイオハザード ~ヴォイス・オブ・ガイア~』
9月30日(金)~10月12日(水)東京・赤坂ACTシアター
11月11日(金)~11月16日(水)大阪・梅田芸術劇場メインホール

(撮影/高橋将志)

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