『家族の基礎~大道寺家の人々~』堀井新太インタビュー!「今回の舞台は自分にとってのターニングポイント」


2016年9月6日(火)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて開幕する、舞台『家族の基礎~大道寺家の人々~』。舞台『鎌塚氏』シリーズや、NHKのコント番組『LIFE!』の脚本など、コメディ作品に定評のある倉持裕がシアターコクーン公演に初登場。W主演の松重豊、鈴木京香を中心に、風変わりな家族の物語を描く。
個性的な登場人物の中で、誰もが大道寺家の子だと信じて疑わない染田明司役を演じる堀井新太に、本作にかける意気込みや見どころなどを聞いた。

『家族の基礎』堀井新太インタビュー

――この作品への出演が決まった時のご感想は?

演出家の倉持さんのコメディ作品に出演できること、そしてこのキャストの皆さんと一緒にお芝居をさせていただけることがホントに嬉しかったですね。出演が決まって、いろんな方に観に来てくださいとお話しした時に、「倉持さんの作品に出られるなんていいなぁ~」と言ってくれる方が多かったんですよ。こんな恵まれた環境でお芝居をさせていただけるのは、役者としてこの上ない幸せですね。

――今回の役どころについて教えてください。

染田明司というのは、松重さん率いる大道寺家に、家族同然のように居座っている近所の子です。それには理由があって・・・、明司の家は貧乏なので、大道寺家に憧れているんです。そういう憧れから、悪気なく家に居座っているんですね。傍から見たら「お前おかしいだろ!」という感じがおもしろく見える、そんな役どころですね(笑)。

――台本を読ませていただきましたが、明司はどこか掴みどころのないキャラクターですね。

そうですね。役者としては非常におもしろいんですが、今、演じる難しさも感じています。個人的に、この掴みどころがないところがミソだと思うんですよ。台本に書いていない部分、しゃべっていない“間”とかは、好きに演じることができるんですけど、そこをどう演じるか、なんですよね。でも倉持さんの本には、ヒントが絶対に書いてあるので、必ず答えに辿り着けるんです。だから、いろんなチャレンジをして、これは違うなという部分を自分の中で消していければ、稽古をした成果が本番で出せると思っています。

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――では、その“間”も一つの見どころですね。

そうですね。一つ一つの行動にちゃんと理由があって動いていますから、「今、何を考えて何をしているんだろう?」って注目してほしいですね。

――明司のキャラクター像は堀井さんご自身のイメージにも重なる気がするのですが、倉持さんはその点も考慮されていたりするのでしょうか?

僕が明司にピッタリだと、他の役者さんから言われるので、倉持さんに聞いてみたんです。そしたら、「まったく当て書きじゃない」って言われました。でも「合っているからオファーしたんじゃないか」とも言われたんですけどね(笑)。無邪気さという部分では、堀井新太という人間が明司に近いのかなと感じますね。

――そこはしっくりする感じがしますか?

そうですね・・・、稽古段階では色々と試行錯誤しています。倉持さんのコメディは大げさじゃないのが、おもしろいところなんですよ。大げさではなく、ちゃんとその役として生きた結果、人とズレているのがおもしろいっていうのは、作り方として美しいと思うんです。それを今、模索しています。あとは、もっと自信を持って演じられたらいいなと。

――松重さんと鈴木さんという大ベテランとの共演はいかがですか?

稽古場が常にキラキラしています(笑)。僕が小さい頃からテレビで観ていた方々なので、一緒に稽古をしているのが不思議ですね。改めて、稽古場に僕がいていいのかという感じになりつつ、稽古場に行くのが楽しみです。この前、松重さんから「新太、稽古でやりたいところある?」と話しかけていただいて、ぜひとお願いしたんです。そうしたら、京香さんも一緒に稽古してくださることになって!驚きもありましたが、嬉しかったですね。

――夏帆さんや林遣都さんという年齢の近い方の印象は?

すごい方々です・・・。動作の一つ一つとか、ご自分の役を組み立てる速さとか、役者としての力の大きさをビシビシ感じます。毎日刺激を受けていますね。

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――前回の舞台出演から本作までに、様々な映像作品にご出演されてきましたが、舞台とドラマの違いやご自身の変化は感じていらっしゃいますか?

舞台とドラマ、僕は似ていると思っているんですよ。根本的なことは変わらないので。自分自身の変化としては、“役として生きている”という感覚を大事にするようになってからは、あまり緊張しなくなりました。舞台もドラマも、人に見られていると思った瞬間アウトだと思うんですよ。あんまり見られていることを意識せずに、役に集中して、役を生きている感覚を持つんです。いろんな経験をさせていただくことで、いい意味での緊張感もありつつ、もっと広い視野を持って、肩の力を抜いて演じられるようになったことが、以前と変わったところかなと思いますね。

――そういう意味では今回の舞台は良いタイミングですね。

本当にいいタイミングです。今回の舞台は、自分にとってのターニングポイントになりますね。この明司という役をちゃんと演じきれたら、役者としてすごくレベルアップできると思います。これまでお世話になった監督の方々から「堀井はコメディをやったらいいよ。それはお前が愛嬌があるから。愛嬌におもしろさが加わったら無敵だよ」と言われてきたんです。この作品では、そのコメディの原点や基礎を学ばせていただいている気がしているんですよね。今、勉強するのがすごく楽しいです。

――どんなことを勉強しているのですか?

笑いを狙わずに、真面目にやることですかね。デビューしたばかりの頃の僕は、おもしろいことをしようと狙いがちだったので・・・。改めて、基礎をこの舞台で学んでいる感じです。本番の幕が開いたらどうなるのかなというのはあるんですけど(笑)。

――製作発表の際に、松重さんが「舞台は怖い」と発言していましたが、その怖さは感じますか?

僕も怖さは少なからずありますね。でも、この舞台は通るべき道のような気がするんです。この舞台を経験することによって、自分がなりたいと思う魅力的な役者に近づけるのかなと思っています。何より、こんなすごいキャストの皆さんと、シアターコクーンに立てるんですからね!神様が与えてくれたんだと思っています(笑)。

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――同じく製作発表の中で、堀井さんは「朝ドラ『マッサン』(NHK)に出演してから芝居に対する気持ちが変わった」と発言されていましたが、具体的にどう変化されたのですか?

『マッサン』以降、引いた視点で自分を見て、歩き方、姿勢、しゃべる間、それがどう見えるのかを考えられるようになったんですよね。『マッサン』では、家族の一員として、親との接し方や姉ちゃんとの距離感といった、バランスが重要だったんです。以前は一つのことしか見えなかったんですけど、今は演じていると色々な道が見えてくるようになったんです。役者として、役の表面だけでなく色々な可能性を探っていくということが、『マッサン』以降、僕の中で多面的に広がるようになりました。

――本作では親の思いと子どもの思いのすれ違いが描かれていますが、堀井家でも似たようなことは?

母ちゃんが口うるさいタイプなんですけど、ずっと無視してました(笑)。大人になった今でも関係性はあまり変わってないです。家族ってそういうモノですよね。唯一、気が休まる場所ですから。

――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

僕の演じる明司は、台本を読んだだけでおもしろさが伝わってくる人物です。最初に「こいつは何者だ?」みたいな違和感を出すんですけど、それが不思議と、だんだん周りに溶け込んでいくんです。最後にどうなるか・・・、皆さん驚くと思いますよ(笑)。倉持さんのすごいところは、いろんな布石が打たれていて、すべての登場人物の伏線がしっかり回収されていくんです。そこにお客さんが集中できるように、笑いや緊張感を僕たちがコントロールして、提示していかなければと思っています。

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◆公演情報
『家族の基礎~大道寺家の人々~』
【東京公演】9月6日(火)~9月28日(水) Bunkamura シアターコクーン
【愛知公演】10月1日(土)・10月2日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール
【大阪公演】10月8日(土)~10月10日(月・祝) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【静岡公演】10月16日(日) 浜松市浜北文化センター 大ホール

◆プロフィール
堀井新太(ほりいあらた)
1992年6月26日生まれ、東京都出身。2010年3万人の中からオーディションでグランプリを勝ち取りデビュー。主な出演作は、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』、TBS『下町ロケット』、TBS『表参道高校合唱部!』、NHK連続テレビ小説『マッサン』、戦後70年スペシャルドラマ『妻と飛んだ特攻兵』。映画『青空エール』が公開中の他、CS放送フジテレビTWOドラマ『甲子園「変身」』への出演が控えている。

(撮影/櫻井宏充)

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