舞台『かもめ』トリゴーリン役の田中圭にインタビュー!「挑戦であり確信のある作品」


ロシアの劇作家アントン・チェーホフの傑作戯曲『かもめ』が、2016年10月29日(土)から東京芸術劇場 プレイハウスにて上演となる。出演は、満島ひかりをはじめ田中圭、坂口健太郎、渡辺大知(黒猫チェルシー)、あめくみちこ、山路和弘、渡辺哲、小林勝也、中嶋朋子、佐藤オリエと若手注目俳優から実力派まで錚々たる出演陣が揃っている。演出を務めるのは、2010年に上演されたジャン・コクトー作『おそるべき親たち』で毎日芸術賞千田是也賞を受賞した気鋭の演出家・熊林弘高。

スタッフ・キャストともに注目度の高い本作で、若き流行作家トリゴーリン役を務める田中圭に熊林演出の魅力や本作にかける意気込みを聞いた。

『かもめ』田中圭インタビュー

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――田中さんは『Tribes トライブス』(2014)、『夜への長い旅路』(2015)と熊林作品に2作出演されていますが、改めて振り返ってみて熊林さんはどんな演出家なのでしょう。

脚本の解釈も含めて自分では気づかないことに気づかせてくれる演出家ですね。面白いのは、熊林さんは稽古の中で閃くように演出をつけることが多々あって。例えば突然「このシーンで指を舐めようか」とか「おんぶしてみようか」って(笑)。こっちは「え・・・!?」ですよ(笑)。

でも、実際に演じてみると不思議と腑に落ちるんですよね。今回は出演者も多く個性豊かな出演陣だと思うので、熊林さんがどのように対応されるか楽しみですね。初めての方が多いので面食らう方もいるんじゃないかな・・・。

――ある種、独特な稽古場になっているんですね。

めちゃめちゃ変な稽古場ですよ!熊林さんの稽古の特徴として、現場での突飛な演出もさることながら、稽古時間がすごく短いということもあります。稽古時間が13時から15時までの3時間だったりするんですよ。しかもその理由が熊林さんの気分だったりして(笑)。稽古の内容としても、同じ場面を繰り返すスタイルではなく一発集中型なので、本番前は不安になったりもしますね。(満島)真之介くんと共演した『夜への長い旅路』の時なんかは一回も全編通さずに本番を迎えたりして・・・なかなかすごいですよ(笑)。

――それでも信頼しているということですよね?

そうですね。今のところ一度もギスギスしたことはないです。今回どうなるかわからないですけど(笑)。『夜への長い旅路』の稽古中、真之介くんと二人のシーンで熊林さんが「あなたたちのお芝居は下手くそで見てられないから今から飲みに行ってきてください。それが稽古です」って言われたことがあって(笑)。「わかりました!」ってそのまま真之介くんと飲みに行ったりしたこともありました。ただ誤解のないように言っておくと、稽古時間が短い分、稽古中はとてつもなく集中させられるんですよ。なので、決して怠けているのではなく、きっと熊林さんのひとつのスタイルというか方法なんですよね。

演技をする上で演じる人種は関係ない

『かもめ』田中圭インタビュー_2

――田中さんは映画やテレビ、舞台と活躍されていますが、映像と舞台では演技の捉え方は微妙に変わってくるのでしょうか?

どちらもやっていることは同じだと思っています。もちろん映像ではカットがかかりますし、舞台だと劇場が広いので若干演技のボリュームが大きくなったりするんですけど。でも、基本的には「演技」の根本は同じだと考えています。

ただ、舞台の方が「贅沢」だとは思いますね。俳優としては時間をかけて役を吟味できますし、見に来ていただく方にとっては作品とより親密な関係を築ける。お客さんの雰囲気が直に伝わってくるので、その日その日で微妙に作品が変わってくるのも贅沢なことですよね。

――田中さんにとって演技における「核」とはどのようなものですか?

平凡な言い方ですけど、媒体問わず「役を生きているか」ということが大事だと考えています。

――なるほど。今作の『かもめ』はロシア人の役ですが、「役を生きる」という意味で、外国人を演じることに関して困難なことはありますか?

僕は戯曲作品をやることが多いので、むしろ舞台では日本人の名前がつくことの方が珍しかったりするんです。なので、そこに対する抵抗はもうないですね。翻訳劇だからといって外国人の真似事をしているわけではないので、演技をする上で人種はあまり関係ないかもしれません。ただ、強いて挙げるならチェーホフ作品はみんなの名前が言い慣れない名前ばかりなので、間違えないようにしなくちゃいけないとは思っています(笑)。

――チェーホフ作品は非常に静かな会話と長台詞も特徴ですよね。

台詞量はどんなに多くても基本的には消化できますが、おっしゃる通り今回は長台詞が多いのでちょっと緊張しますね・・・。やっぱり長台詞って難しいんですよ。台詞中に寝られちゃったら嫌ですし(笑)。でも今回は熊林さんが「長台詞あるから田中くんお願い」と声をかけてくれたので、そこは楽しんで挑戦したいなと思っています。

――では、今回のトリゴーリンの長台詞も必見ポイントになりそうですね(笑)。ちなみに田中さんはどうやって台詞を覚えていらっしゃるんですか?

家でひたすら台本を読んで覚えます。マネージャーに読み合わせを手伝ってもらったりもしますが、基本的に台詞覚えは一人の作業です。台詞を覚えるっていうのは俳優にとって一番最初の作業だと思っているので、台本があがった時点で覚え、稽古場には基本、台本を持って行かないようにしています。

熊林演出の『かもめ』は絶対に面白いという確信がある

『かもめ』田中圭インタビュー_3

――今回は相当豪華な出演者が揃っていますよね。この顔ぶれを知った時はいかが思われましたか?

率直に、錚々たる方々と『かもめ』ができるのがとても嬉しいと思いました。初めましての方も多く、まだ稽古も始まっていないのですが、とても楽しみです。人見知りな性格なので稽古を通してゆっくり打ち解けながら役を作り込んでいきたいと思っています。

――田中さんが人見知りというのは意外ですね。

もうガンガン人見知りですよ(笑)。

――今回共演される満島ひかりさんの弟さんである真之介さんとは『夜への長い旅路』での共演をキッカケに仲が深まったんですよね。

そうですね。今じゃ親友みたいな感じになっていますよ(笑)。真之介くんは僕と正反対の性格というか、ものすごくポジティブなので、一緒にいるのが、すごく楽しいんですよ(笑)。

――ちなみに田中さんは昨日(7月10日)誕生日を迎えられたそうですが、今年挑戦したいことはありますか?

一つひとつ誠実に作品と向き合って、着実にレベルアップ、スキルアップしていきたいと考えています。もちろんその中に舞台『かもめ』もあります。熊林さん演出で、錚々たる出演陣。十分、挑戦に価する作品になるはずです。

――それでは最後に本作への意気込みを聞かせてください。

僕にとっては「挑戦」になる作品ですけど、作品としては絶対に面白いものになると確信しています。何度も言ってしまいますが、チェーホフの戯曲を、熊林さんが演出で、この出演陣。作品の評価としての不安は全くないです。なので、その中に自分がどれだけ参加できるかというか、みんなに引けを取らないよう、どんな風にトリゴーリンという役を飲み込めるかが自分の課題なので、一生懸命に挑戦していこうと思います。

――熊林さんの世界観と共に、田中さん演じるトリゴーリンも楽しみにしています!本日はありがとうございました。

『かもめ』田中圭インタビュー_4

◆舞台『かもめ』公演スケジュール
2016年10月29日(土)~11月13日(日)
東京・東京芸術劇場 プレイハウス

【東京公演】10月29日(土)~11月13日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【宮崎公演】11月16日(水) メディキット県民文化センター 演劇ホール
【長野公演】11月19日(土)・11月20日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
【宮崎公演】11月23日(水・祝) 札幌市教育文化会館 大ホール
【滋賀公演】11月26日(土)・11月27日(日) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
【神奈川公演】11月29日(火)・11月30日(水) 杜のホールはしもとホール
【愛知公演】12月2日(金)~12月4日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

(スタイリスト/山本隆司・ヘアメイク/北村典雄)

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