ミュージカル『王家の紋章』宮野真守にインタビュー!「現場での“衝動”を胸にイズミルを演じます!」


1976年から現在まで連載が続き、累計発行部数4000万部を誇る少女漫画の金字塔『王家の紋章』。これまでアニメ化、実写化のいずれもされなかった本作が、この夏、世界で初めてミュージカルとして上演される。

本作でメンフィスのライバルであるヒッタイト国の王子・イズミルを演じる宮野真守(Wキャスト)に開幕直前の心境を聞いた。

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー

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――『王家の紋章』世界初演の幕がいよいよ上がります!

本当ですね!先日から稽古場にオーケストラが入って、通し稽古を重ねる中で、作品の全貌がより明確に見えてきたような気がします。40年以上続く少女漫画の『王家の紋章』を世界で初めてミュージカルとしてご覧いただくわけですが、壮大なロマンに満ち溢れた作品になると確信していますし、僕自身も、舞台ならではのイズミル像をお見せできればと思っています。

――Wキャストの平方元基さんとはイズミル像についてどんなお話を?

元基くんとは普段からとても仲が良くて、イズミルに関しても「このシーン、僕はこういう思いでやっている」的な話は良くしますし、情報交換も密にしています。基本的な役の解釈もほぼ同じだと思うのですが、それがお互いの身体や感情を通すと微妙に違う表現になって現れるのが面白いと思います・・・これってWキャストの醍醐味ですよね。

イズミルの行動の基盤はエジプトへの復讐心

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_3

――イズミルもメンフィスに負けず“ツンデレ系”という印象があります。

今回は原作の序盤がメインストーリーになっていることもあり、舞台上のイズミルはどちらかというと“ツン”の要素が大きい気もします(笑)。というのも、今回、イズミルの行動の基盤になっているのがエジプトへの“復讐心”なんです。イズミルが大切に思っていた妹の復讐のために、仇であるエジプトの王・メンフィスが愛するキャロルを手中に収めようとし、それが上手くいかないことに憤りながら、次第にキャロルに魅かれて葛藤する・・・そんな熱くて繊細な感情を表現していければと。

――メンフィス役の浦井健治さんとも初共演ですね。

健ちゃんは・・・太陽のような人です(笑)。稽古場でも「みんなのことが大好きだー!」という思いがいつも伝わってきますし、常に明るいテンションでカンパニーを引っ張ってくれる存在ですね。「この人、前世は本当に王様だったんじゃない?」って素で思える勢いで、もはやメンフィスにしか見えません(笑)!

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_5

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――“健ちゃん”って呼んでいらっしゃるのですね(笑)。演出の荻田(浩一)さんは宮野さんにとってどんな存在でしょう?

オーディションの前段階の時から、とても優しく話しかけてくださって、ありがたかったです。歌稽古の時にいただくアドバイスも、ものすごく分かりやすくて感動しました。

僕にとって『王家の紋章』に参加させていただくことは本当に大きなチャレンジで、気合いが入っていた分、最初は肩に力が入り過ぎていたところもあったかもしれないんですが、そんな時もいつも荻田さんの方から距離を縮めてくださいました。現場では基本、フレンドリーに接してくださりつつ、演出の肝の部分ではプロとしての厳しい顔も見えて、その空気がとても心地良いんです。気を抜いていると、とんでもない方向から“荻田さんジョーク”が飛んできたりもしますので、演技とは別の部分でも常にアンテナは張っていますよ(笑)。

――キャストのみなさんのSNS等を拝見すると、現場の結束感や仲の良さが伝わってきます。

本当に仲が良いカンパニーですね・・・どうしてここまでぎゅっと固まれるんだろう、っていうくらい(笑)。全員が世界初演の作品を一緒に作っている感覚を共有しているからなのかな・・・。これまでやってきたフィールドやキャリアに関係なく、演技や歌についてのディスカッションも常に飛び交っていて「ここにいる人は、全員、本当に芝居が好きなんだなあ」と稽古場で実感する毎日です。空き時間にはカメラアプリで写真を撮り合って加工して遊んだり、みんなで差し入れを美味しくいただいたり・・・タイトでハードな稽古の中でも笑いが絶えない幸せな現場です。

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_7

――ベテラン・山口祐一郎さんや、歌姫・濱田めぐみさんとはどんなお話を?

山口さんの存在感・・・すごいですよね。通し(稽古)の時にも、あの“圧”というか、一瞬で空気を変える力というか・・・圧倒されました。普段はとーーっても優しい方で、僕らの士気を上げるために「頑張れ~!」って声をかけてくださったり、若手が緊張で固まらないよう、笑顔で空気をほぐしてくださって・・・いろいろな面ですごい方だと思います。

アイシス役のめぐさんとは、舞台上でそんなに絡む場面がない分、稽古場でたくさんお話させていただいています・・・めぐさん、本当にチャーミングな方なんですよ(笑)。休憩時間に僕たちやアンサンブルのみんなでカメラアプリを使って遊んでいると「何?それどんなバージョン?」って飛び込んでいらしたり(笑)。でも、そんな様子が嘘のように、アイシスになるとガラッと変わるのがまた素敵です。イズミルもアイシスも、自分の想いが遂げられない役ということで、共通点もあり、アイシスのシーンを観ていると胸に突き刺さるものがあるんです・・・個人的にもアイシスの場面は大好きですね。

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帝劇の舞台に立つことは子どものころからの夢だった

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_4

――開幕が目前に迫っています。製作発表の時に「帝劇の舞台に立つのは子どものころからの夢だった」というお話がありましたが、その夢が“現実”になりつつありますね。

実は、今日の時点ではまだその実感がないんです。多分、舞台を使っての稽古に入った頃から、いろいろな感情がぶわーっとこみあげてくると思うんですが。今はとにかく、カンパニーのみんなと一緒に、この作品を作ることに集中して、目の前の課題を具体的にクリアしている状態です。だけど、今、お話をしていて、ちょっと想像したら・・・うわあ、実際にその時が来たら、どうなるんだろう(笑)・・・って、かなりドキドキしてきました!とにかく舞台に立たせていただくまでは、自分がやらなければいけないことを、着実に、誠実にこなしていきたいと思います。そう言えば僕、帝劇の舞台裏や舞台袖の状態がどうなっているのかもまだ知らないんです・・・わあ、本当にドキドキしてきた!

――宮野さんのテンション、伝わってきます(笑)!お稽古も今が一番大変な時期かと思いますが、どんな方法でリフレッシュを?

それが・・・今の時点では特に何もありません。稽古が始まった頃は、元基くんと一緒にお酒を飲みに行って、盛り上がるのがひとつのリフレッシュでしたが(笑)。僕、作品に関わると、ある時期から思いっきり追い込まれて、その世界にどっぷり浸かりたいってモードになるんです。だから、今もあえて気分転換をしようとは思わないんですけど、他の仕事の現場で一旦気持ちをリセットすることが、良い循環になっているのかもしれませんね。

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_2

――なるほど!現時点で“宮野イズミル”のここに注目して欲しい!というポイントがありましたら教えてください。

イズミルって、視点によっては悪役や敵役にも見えるキャラクターだと思うんです。復讐の情念に駆られてキャロルを奪おうとするわけですし。歌うナンバーもマイナーで力強い曲調のものが多いんですよ。そんな中で僕が特に大切に思っているのが“絆”です。なぜイズミルが復讐に走るのかといえば、彼がそれだけ妹・ミタムンのことを大切に思っていたからです。また、ルカ役の矢田(悠祐)くんが、イズミルに対して、ものすごく強い忠誠心を持って演じているのが稽古場でもひしひしと伝わってくるんです。そんな彼の姿を見ていると胸に迫るものがありますね。元基くんとふたりでエジプトに潜入しているルカの場面を見ながら「ヒッタイトにあいつがいてくれて良かったな」なんて語り合ったりして(笑)。そうやって稽古を積み重ねていくうちに、僕の中でも“チーム・ヒッタイト”の絆や愛がどんどん深まってきて、この気持ちをイズミルを演じる上で活かせればと。

こういう感情は、台本を読んだだけの状態では生まれなくて、稽古場でみんなとゼロから作品を作る上で芽生えたものなんです。僕、ある時、稽古の中で、矢田くんやミタムン役の愛加あゆさんが古代ヒッタイトで生活している姿が見えたような気がしたんですよ。最初はもっと冷静にイズミルと向き合おうと思っていたのですが、現場での衝動や、共演者のみなさんとのやり取りの中で生まれた感情を大切にして、僕なりのイズミルを演じたいと思っています。

ミュージカル『王家の紋章』宮野真守インタビュー_6

帝劇での装置建て込みが始まり、稽古場では朝から夜遅くまで通しが続く中、イズミル役の宮野真守に話を聞いた。朝早くの取材にもかかわらず、にこやかに現れた宮野の口から次々と飛び出す“『王家の紋章』カンパニー愛”。自分のことを語る時より、共演者について話す時の方がテンションが上がるのは彼の人柄だろう。・・・ああ、この人はいろいろな現場で周囲の人たちに愛されているのだな・・・と、あたたかい気持ちになった。

そんな宮野が子どものころから憧れの場所だったという帝劇の舞台に立つ。ずっと追い続けてきた夢が叶うその時・・・イズミル王子が舞台上で輝く瞬間を、客席からしっかり見届けたいと思う。

◆ミュージカル『王家の紋章』 帝国劇場
2016年8月5日(金)~27日(土)
8月3日(水)~4日(木)プレビュー公演

(撮影/高橋将志)

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