劇団エムキチビート『アイ ワズ ライト』村井良大×元吉庸泰にインタビュー!「元吉さんの作品にずっと出たかった!」


2016年8月3日(水)より東京・紀伊國屋サザンシアターにて上演されるエムキチビート第十三廻公演『アイ ワズ ライト』。今回、主演を務める村井良大と劇団エムキチビート主宰の元吉庸泰は、これまで「俳優」と「演出助手」として、数々の作品に取り組んできた。互いに厚い信頼を寄せる二人に、メインとして初タッグを組む心境と意気込みを聞いた。

『アイワズライト』インタビュー

――村井さんはエムキチビートへのご出演は初めてですが、元吉さんとのお付き合いは結構長いんですよね。

村井:そうですね。最初にお会いしたのは、『カワイクなくちゃいけないリユウ』の初演(2012年)の時だったかな。その時、元吉さんが演出助手をされていて。それ以来、増えましたね。

元吉:舞台『弱虫ペダル』シリーズとかも(演出助手として)一緒にやったね。

――元吉さんは、ご自身で演出を手掛けられる他にも、演出助手としてたくさんの作品に関わられていますよね。

元吉:業界のめんどくさい担当って呼ばれているので(笑)。

村井:どんな現場もまとめられるからなんですよ!元吉さん、マジで優秀だから。だからみんな頼っちゃうんです。現場に行って、元吉さんがいればみんな大丈夫って思えちゃう。

元吉:ありがとうございます(笑)。おかげさまで、演出助手として武道館公演もやらせていただきました。(2013年に行われた井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎によるStarSの日本武道館公演『StarS ありがとう公演 ~みんなで行こう武道館~』にて)

『アイワズライト』インタビュー_4

村井:元吉さん、マジで演出助手に収まってる場合じゃないですよ!演出助手として優秀すぎるけど。もっと前に出て行ったほうがいいですよ。

元吉:演出助手をするのは、インプットができるのですごく楽しいんですよ。いろんな先輩たちの仕事ぶりが見られるし。演出家さんの話も聞いて、俳優の皆さんの意見を聞いて・・・と、いろいろな考えがぶつかる中間にいるから、お互いがやりたいことがわかる。そこをうまく整理することが、一番の“演出”なんじゃないかなって思うんだよね。

村井:なるほど~、深いな・・・。

元吉:ちょっと第三者目線でもあるんだよね。演出家と俳優、それぞれが自分にとっては俯瞰で見てくれる人になるから。

――今回は、元吉さん主宰の劇団公演で、村井さんが主演を務められますが、今回の公演に至ったきっかけを教えていただけますか?

元吉:エムキチビートは、第十二廻公演の『黎明浪漫譚-れいめいロマンティック-』と、去年の11月にやった音劇『朱と煤-aka to kuro-』を吉祥寺シアターで上演しまして、ありがたいことにどちらも満席で終えることができたんですね。そこで、次の公演はもう一回り大きく出よう、次の段階に進もうと考えていたところに、今回上演させていただく紀伊國屋サザンシアターさんから上演機会のお話をいただいたんです。で、「誰に出てほしい?」って聞かれた時に、真っ先に村井くんの名前を出したら・・・叶いました(笑)。

村井:声をかけていただいて、すごくうれしかったですよ。一俳優と演出助手という立場でお仕事はさせてもらっていましたけど、元吉さんの作品に出たいってずっと思っていたので。今回願ったり叶ったり。

『アイワズライト』インタビュー_3

元吉:ほんと?僕も(村井の出演が決まった時に)ちょっと泣いたもんね。

村井:なんで泣いたんですか(笑)?

元吉:村井くんのマネージャーさんとメールで連絡を取っている時に、あるインタビュー記事で、村井くんが僕のこと話してくれているって話を聞いて、その記事を見せてもらったの。ちょうど、あらゆることで気持ちが下がっていた時期だったので、それを読んで、ちょっとホロリときちゃったんです。マジで、がんばろうって。救いの光でした。

村井:・・・いくらでも泣かせますよ!!

――お二人の間に、ものすごい信頼関係が見えます!

村井:元吉さんは、お世辞を絶対言わない人なんですよ。「いや、それは違うと思います」とか、言うべきことをきっぱり言ってくれますし。しかも、それがとっても紳士的。否定もしなければ肯定もしないけど、こうしたほうがもっとよくなる、おもしろくなるってことを、わかりやすく提示してくれる。だから、すぐに飲み込めるんです。きっと、同じ目線でいてくださるんですよね。

元吉:僕にとっての村井くんも、すべてにおいて信頼できる俳優さんです。単純に、すべての仕事において、信念に基づいて全うしてくれるという部分と、もう一つ、俳優として物語を“語れる”という部分が大きいです。主演として、舞台の真ん中に立っている姿をたくさん観せてもらってきましたけど、「この人が物語を語ると、必然性をちゃんと感じられる」というのは、すごく大きなことだと思いますね。普通、役者として演じる役に責任を持つことは当然として、そこにプラスで物語についての責任を持つことは、なかなかできることではないと思っているので。だから、そういう部分も含めて最大の信頼を置ける相手です。

『アイワズライト』インタビュー_5

――今回の『アイ ワズ ライト』についてお聞きしたいのですが、まずストーリーについて教えていただけますでしょうか?

元吉:この作品は「震災」をモチーフとしていまして、その後のボランティアにある女性が参加するところから始まります。その女性は、ある意図を持ってボランティアに参加していて、夜、宿舎を抜け出し立ち入り禁止区域となった森の中に入っていきます。そして、森を抜けた先にあったホスピスのような施設で、二人の男の子と出会います。男の子の一人は目が見えず、もう一人はその子が語る「ピーターパン」の物語をずっと記し続けていて・・・という物語です。

村井:僕が演じる役は?

元吉:村井くんには、目の見えない男の子を演じてもらいます。この作品は、もともと2012年に上演した第十廻公演の『I was Light』をリライトしたものになるんだけど、僕が今まで書いた脚本の中で、構造が一番複雑。ミステリー的な要素が強いかもしれないですね。

――初演の時は英語表記だった『I was Light』を、今回『アイ ワズ ライト』とカタカナに変更されたところには、何か意図が込められているのでしょうか?

元吉:もともと、“あらゆる嘘の中で真実の光を探すお話”として、『I was Light』というタイトルにしたんです。でも、英語って訳次第で様々な捉え方ができるから、言葉の持つ輪郭がすごくぼやけたイメージになるんですよね。そこは実は、僕が表現として逃げた部分でもあって・・・。希望を描くには、ちゃんと絶望を描かないといけない。前回の上演した際は、希望を描くことを急いでしまって、絶望を描く深さが甘かったという反省点があったんです。だから再演が決まった際に見直して、改めて勝負をしたいと思い、日本人が一つの意味でしか捉えようがない7文字のカタカナで『アイ ワズ ライト』と表記する形に変更しました。

――村井さんは、ご自身の演じられる役についてお聞きになって、どのように感じていらっしゃいますか?

『アイワズライト』インタビュー_2

村井:目の見えない役は今までやったことがないので、いろいろ勉強したり、経験しなきゃと思いました。身近には目の見えない方はいないので、自分なりに調べないといけないなと・・・。

元吉:余談なんだけど、東日本大震災で原発事故が起きた時、目の見えない人の中で「瞼の裏で青白い光を見た」という方が非常に多くいらしたそうなんです。確かに、彼らの目は世界を見ることはできないけれど、光や相手の心の動きとかは、見ることができるんじゃないか・・・って、それを聞いた時に思ったんですよね。

村井:知らなかった・・・。すごく精密な世界が描かれているんですね。
精密であればあるほど、やりがいを感じます。演劇として、きちんとその世界を伝えたいですね。

――村井さんは、最近ミュージカル作品への出演が続いていましたが、久しぶりのストレートプレイですね。ご自分の中で、ふり幅が広がっている感じですか?

村井:そうですね。僕は今年で28歳になったんですけど、もっともっと広い世界を見ていかないといけないと思っています。自分で可能性を広げていかないと、役者として第一線に立てないですし。最終的に(役者として)自分がどういう形になるのかは死ぬまでわからないですけど、今はそれを探しながら、俳優として“人生の旅”をしているところですね。今回も、元吉さんの演出作品に出演するという、ずーっと出たかった“旅”が始まるので、すごく楽しみです。

――今回の出演者の方の中には、お二人がご一緒された舞台『弱虫ペダル』シリーズに出られていた森本亮治さんや山本侑平さんもいらっしゃいますね。

村井:お話のテイストを聞いて、あれ?なんで亮治さんがいるんだろうなってなってましたよ(笑)。

元吉:男の子が語る「ピーターパン」の世界にはネバーランドが出てくるんですけど、森本くんにはネバーランドの世界の役をやってもらおうと思っています。

村井:それピッタリ!

『アイワズライト』インタビュー_7

元吉:でも、ネバーランドからは出さないようにしたいと思います(笑)。ネバーランドから出た瞬間、何かがおかしくなりそうだから!『弱虫ペダル』の時もおもしろすぎて、演出の(西田)シャトナーさんに「亮治くん、それは違う!」って何回も言われてたもんね(笑)。

村井:あと、山さんね~!山さんはなんにでも合う調味料みたいな人ですよね。

元吉:確かに!塩にも麹にもなるし、塩麹にもなる・・・。

村井:なる(笑)!役者はなんでも演じられなければいけないから。本当にいい役者さんですよ。

――そんな多彩な出演者の方々を迎える中、元吉さんが村井さんに望むことはなんですか?

元吉:そうですね・・・ひたすらに自由に、物語の旅に出てほしいです。それはもう、トニー賞を取るくらいに(笑)!感じたいことを感じて、拾いたいことを拾って、思いたいことを思いながらその公演に立ってくれたらと。

村井:一番やりやすいやつだ。

元吉:だから、毎回拾うことが違ってもいいですし、毎回旅の内容が違ってもいいです。本当の意味での物語の旅をしてもらえれば、公演って毎回違う色になる。ラストシーンを観るお客さんの表情が毎回違うぐらい、自由にやってくれたらと思っています。

――村井さんから、演出家としての元吉さんに望むことはなんですか?

村井:気持ち的には、今元吉さんがおっしゃったことと一緒かもしれないです。元吉さんの演出を受けるのは初めてですし、言いたいことはなんでも言ってほしいです。暴言でもなんでも。どんな言葉でも受け止めたいし、受け止める自信があります。いつもは、初めましての演出の方だと、ラスト1週間くらいで仲良くなったりするんですけど(笑)。

元吉:遅っ(笑)!

村井:今回はそれが頭からないので、がっつりいきましょう!

元吉:そうだね~、がっつり!やろう!!

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――最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

元吉:今回の作品では、劇団としても自分としても、何か一つお客様の中に届くものをしっかり作り上げたいと思っています。音楽もすべて生演奏で、役者の芝居やお客さんの気持ちに合わせて奏でられます。劇場でしか感じられない、何か“特別なもの”をお渡しできるようにがんばりますので、よろしくお願いします!

村井:元吉さんは僕の最も信頼する演出家さんの一人ですし、感性も似たものを感じる方です。本当、将来ビッグになる演出家さんなので今から観ておいた方がいいですよ!将来「あの人が有名になる前から、私観てたんですよ」って自慢できるから(笑)。それぐらい、今後の演劇界を背負っていく方だと勝手ながら思っているので。

元吉:うわぁ、裏切らないようにがんばります・・・(笑)!

村井:それぐらいの意気込みで、自分も取り組みますし(笑)!その瞬間に、痛烈に感じるものを思いっきり出して、皆さんの目の前に提示していけたらいいなって思います。僕も楽しみ。楽しみしかないです(笑)。ぜひ、劇場でお待ちしています!

元吉:お客様を地獄にも天国にも連れていく、そのために僕たちは血反吐を吐きましょう!

村井:吐きましょう!早くやりたいです!!

『アイワズライト』インタビュー_8

◆プロフィール
村井良大(むらいりょうた)
1988年6月29日生まれ、東京都出身。2006年デビュー。最近の出演作に、舞台『里見八犬伝』、舞台『弱虫ペダル』シリーズ、『殺意の衝動』、ミュージカル『RENT』、『SHOWル・リアン』、TV『乾杯戦士アフターV』、『俺旅。』、映画『醒めながら見る夢』、『ハンガー・ゼット』、『ドクムシ』など。2017年4月、ブロードウェイミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』に出演予定。

元吉庸泰(もとよしつねやす)
千葉県出身。舞台演出家、演出助手、脚本家。明治大学在学中に芸能活動を始め、2005年に演劇ユニットとしてエムキチビートを旗揚げ。2007年に劇団化し主宰を務める。2010年には、鴻上尚史の虚構の劇団演出部にも所属。また、板垣恭一、深作健太、鈴木裕美、小林香、辻仁成、西田シャトナーなど第一線で活躍する演出家の演出助手として、さまざまな作品に関わっている。2015年には、俳優の米原幸佑、板倉光隆と共に演劇ユニットPUBLIC∴GARDEN!を結成。2016年6月から7月にかけ、『ハッシャ・バイ』を大阪と東京で上演し、好評を博した。

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