ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン 文化は国境を越える?!日韓“ハンス役”ミュージカル俳優対談!


韓国の大人気創作ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』の日本版再演が5月に開幕する。
日本版オリジナル演出を加え、心理スリラーミュージカル”として、韓国版とは一味違ったストーリーが楽しめることから初演直後から再演が待ち望まれていた本作。2015年の日本版初演に続き、ハンスを演じる小西遼生が、コンサートのために来日した韓国初演のハンス役チョン・サンユンをたずね、日韓ミュージカル俳優対談が実現した!

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン

関連記事:『ブラック メリーポピンズ』演出・鈴木裕美インタビュー!「俳優の魅力を存分に堪能して下さい!」

――サンユンさんは今回の対談に際して、日本版の映像をご覧になったそうですね。まずは感想を聞かせてください。

チョン・サンユン(以下サンユン):韓国の初演に出演したのは2012年なので、覚えていないことも多くて(笑)。自分の時を思い出しながら見ました。韓国版は照明やセットで少し古い感じ、あいまいな感じを出しているんですが、日本版の白を基調にしていて高級感があるセットに驚きました。この作品は観客の皆さんに想像させる部分が多いと思うんですけど、このセットが子どもたちの現在、過去の姿を想像しやすくする感じを受けました。韓国の観客が日本版を観たらどう感じるか興味がありますね。

――小西さんは日本版初演で台本を読んだ時の作品の印象はどんな感じでした?

小西:(脚本・歌詞・音楽の)ソ・ユンミさんがおひとりで、本を書いて、音楽を作っていることが興味深かったというか面白かったです。人物の関係性、話の流れ、音楽も含めて一人の頭の中で出来上がっているから、会話とか音楽の重なり方がすごく筋が通っていて、とても魅力的に感じました。

サンユン:そうですね。曲が作品の特性と雰囲気に合わせてよく作られている印象でした。そこは脚本・歌詞・音楽を、同じ人が作っているからかもしれないですね。

小西:僕にとってこの作品は、“ダークな絵本”というイメージなんです。その世界観を作っている大きな部分を音楽が担ってる印象。要所要所で、お客さんにミステリアスな印象を与えるときも、すごく音楽が生きてるなって感じがします。

サンユン:なるほど。

小西:韓国の初演のときは、どんな感じだったんですか?

サンユン:初演でしたし、僕はユンミさんとも初めての作品で、稽古の過程においては悩みました。韓国オリジナル版では演出もユンミさんが手掛けられているので、ユンミさんやキャストたちとたくさん話しましたね。いろんな面で僕にとっては印象深い、意味深い作品になりました。この作品に参加できて良かったと思っています。

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン_4

小西:日本版の初演は、映像を見ていただいた通り、韓国版と変わっています。セットや照明もですが、ストーリーや役のキャラクターも。ユンミさんと日本版演出の鈴木裕美さんが話し合って、日本版として作り変えています。僕も韓国版は映像だけでしか見ていないので感覚的ですが、兄弟の力関係が日本版のほうがはっきりしているような感じがしています。

サンユン:そうですね、僕も日本版のほうが登場人物たちの関係性がより明確になっている感じがしました。

――それぞれハンスを演じるうえで苦労はありましたか?

サンユン:子どもの頃に兄弟と悲惨な火災事件を経験しているのですが、兄弟は皆、事件の記憶を一切無くしているわけです。彼らを助けた家庭教師のメリーも失踪したまま。事件から12年経って、ある出来事から少しずつ過去を思い出しそれに耐えていく、それが自分的にも役柄的にもとても辛かったですね。妹のアンナのことも…。ハンスは、4人の子供たちのなかでもとても弱い人なんですが、そんなハンスが一歩を踏み出すときの痛みが・・・。

小西:わかります!僕も一緒です(笑)。それから、日本版と韓国版の演出で、一番大きな違いはメリーの存在だと思うんですね。

サンユン:はい。日本版を見て驚いたところでしたね。

小西:彼女の存在によって、子どもたちの人生もだいぶ違ってくると思うんです。もしかしたら、日本版のほうがちょっとだけ救われてるかも、と。起こったこと自体は変わっていないから、辛いことはもちろん変わらないけど。

サンユン:そういうとらえ方もあるかもしれないですね。

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン_2

――さて、今回『夢友 春コンサート』のために来日されているサンユンさんをたずねたわけですが、昨夏以来2回目のコンサートだそうですね。サンユンさんにとって日本での公演はどんな位置づけなのでしょう?

サンユン:普段は韓国で公演していますが、日本のファンの皆さんがたくさん韓国へ来てくださいます。ですから機会があれば自分が日本に行って歌を聞かせたいという思いがあったんですね。そしてコンサートを企画している「夢友」との良い機会があって昨夏初めて実現しました。すごくいい公演になったので、また来たいと思ってその気持ちを伝えたところ1年待たずして再び来ることができました。こんな良い季節に来ることができて嬉しいですね。日本のファンの人たちは、温かいですね。韓国と比べると静的な温かさがあります。韓国は動的な感じ。良い意味ですよ(笑)。

小西:確かに。この間韓国へ行ってミュージカルを見たんですが、韓国の観客の皆さんはノリが良かったですね。盛り上がると上演中にも客席から「ウォ~!!」って声がでちゃう感じ(笑)。日本ではそういう人はほとんどいないから。

――たしかに、日本ではあまり考えられないですね(笑)。では続いて、“自分にとっての舞台”“舞台の魅力”を聞かせてください。

サンユン:舞台上でその瞬間、その人物になることによって感じられるカタルシス。観客と1つになれる感じもいいですね。なにしろライブですから、その日だけその日来た観客としか共感できないことがある。それが魅力なんだと思います。“自分の人生のもと”です。

小西:サンユンさんと近いですね。ライブであることの面白さというのは何よりも魅力だと思います。
さらに自分自身にとっては、良い本と良い演出家といいスタッフの人に出会えた時。芝居をしていることの面白さ、お客さんの前で演じている面白さ以上に、自分の生活とか人生を豊かにしてくれる。僕はそこで見つけることがほぼほとんどというか。すごく色んな得難いことを得られる場所というのが舞台です。もう離れられないですね(笑)。

――最後に、二人の今後の予定を教えてください。

サンユン:5月からエドガー・アラン・ポーを題材としたミュージカル『ポー』に出演します。僕は悪役で出るので、皆さん大きな感心を寄せていただけたらと思います。

小西:僕は、『ブラック メリー・ポピンズ』のあと、昨年上演された『エンド・オブ・レインボー』の再演、その次は『ガラスの仮面』と続きます。

サンユン:『ガラスの仮面』ですか!有名な漫画ですよね。日本の漫画は子どもの頃から読んでいます。

小西:好きな作品はありますか?

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン_5

サンユン:浦沢直樹さんの『MONSTER』ですね。浦沢さんの他の作品も好きですけど。あとは『寄生獣』とか。映画化されたのを見て、また読み返し始めたところです。

小西:なるほど。深い作風のものが好きなんですね。

サンユン:いえいえ!『スラムダンク』とか『ドラゴンボール』も好きですよ(笑)。あと、『るろうに剣心』も。

小西:『るろうに剣心』はいま宝塚でやっていますよ。ミュージカルですし、ぜひ韓国で(笑)。

サンユン:僕が出演?じゃあ斎藤一をやりましょうか(笑)。最後に僕たち漫画で1つになりましたね(笑)。

小西:漫画は日本の誇れる文化です。日本は最近、漫画原作の“2.5次元”というジャンルがあります。

サンユン:知ってます。ミュージカル『テニスの王子様』ですよね?

小西:ご存知ですか?僕出ていたんですよ。10年前ですけど。

サンユン:えっそうなんですか?キャラクターは?

小西:不動峰の伊武深司っていう・・・。

サンユン:伊武!手塚のライバルですよね?

小西:はい、そう・・・でした!サンユンさん僕より知ってますね(笑)。

サンユン:文化は国境を越えますね(笑)。小西さん、いつか舞台で共演したいですね。

小西:もちろんです!先日韓国で刺激を受けたばかりですし、同じ役を演じている韓国の俳優さんとお話できたのは光栄でした。ぜひ共演したいですね。また会いましょう!

ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』小西遼生×チョン・サンユン_3

☆プロフィール
小西遼生(こにし・りょうせい)
1982年2月20日生まれ、東京都出身。2003年に舞台デビュー。2005年、ドラマ『牙狼<GARO>』の主人公・冴島鋼牙を好演、注目を集める。2007年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演。以降、舞台を中心に活躍。最近の主な出演作に、ミュージカル『NEXT TO NOMAL』『シャーロック ホームズ2~ブラッディ・ゲーム~』、『ダブリンの鐘つきカビ人間』。今後の出演作に、7月より東京、大阪、水戸で『End of the RAINBOW』、9月より東京、大阪で『ガラスの仮面』、来年1月より日生劇場にてミュージカル『フランケンシュタイン』。

チョン・サンユン
1981年5月15日生まれ。2004年、『地下鉄の恋人』で初舞台。『オペラ座の怪人』『キム・ジョンウク探し』『ブラックメリーポピンズ』『サリエリ』『JSA』『風と共に去りぬ』『スルー・ザ・ドア』のほか、『Some Girl(s)』『プライド』などのストレートプレイにも出演。海外作品からオリジナル作品まで幅広く舞台で活躍している。ミュージカル『スリル・ミー』では「彼」と「私」の両方を演じたことがあり、その演技力が評価され“スリル・ミーの職人”という呼び名がある。5月24日より、韓国・光臨アートセンターBBCHホールにてミュージカル『ポー』に出演。

☆公演情報
◆ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』
脚本・作詞・音楽:ソ・ユンミ
演出:鈴木裕美
上演台本:田村孝裕
訳詞:高橋亜子
出演:中川翔子、小西遼生、良知真次、上山竜治、一路真輝

【東京】2016年5月14日(土)~29日(日)世田ヶ谷パブリックシアター
【兵庫】2016年6月3日(金)~5日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【福岡】2016年6月9日(木)福岡市民会館
【愛知】2016年6月17日(金)愛知県芸術劇場 大ホール

☆オフィシャルサイト
https://m-bmp2.com

◆『夢友 Musical show with LeeGunMyung』
出演者 :イ・ゴンミョン
公演日時 :2016年6月5日(日)1日2回公演
1回(昼):14:00(開場 13:30)
2回(夜):18:30(開場 18:00)
会場 :CBGKシブゲキ!!

☆オフィシャルサイト
https://www.yumetomo.info/

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。