『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』デロリス役の森公美子が涙ながらに語る!「死ぬまでにこれほどのミュージカルにはもう出会えないかも」


2014年の日本初演で大好評を博したミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』。ウーピー・ゴールドバーク主演で大ヒットした同名映画のミュージカル化だ。初演でヒロイン・デロリスを演じた森公美子は、第40回菊田一夫演劇賞を受賞し話題となった。作品は高評価を受け、すぐに再演が決定。帝劇生活30年のなかで、人生最大の“当り役”に出会えたと言う森に、体当たりで望むそのようすを詳しく聞いた。

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー

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――2014年の初演後、すぐに再演が決まりましたね!

ね~!初演の公演中に「これは再演だね」なんて言われていたんですけど、本当にすぐ決まって嬉しかったです。でもこの作品のために体を絞り込んで痩せてたんです。終わったら思いきりご飯が食べられると思ったのに、できなくなっちゃった(笑)

――森さんにとってこの作品は“30年目の奇跡”なんて言われていますが?

そうなんですよ!30年前に帝国劇場でアンサンブルキャストからスタートして、少しずつ役をいただくようになって、30年目にしてやっと主役をつとめさせていただく事になりました。アンサンブルの時は2列目だったカーテンコールが、『天使にラブ・ソングを』では真ん中に立てたことは本当に有難い奇跡です。長く続けていればいつかはこんなことがあるんだから、一生懸命ひとつの事を頑張るのは大切なのかもなぁと実感しました。

――しかも今作で、菊田一夫演劇賞を受賞されましたね。

ドッキリかと思いましたよ!「受賞したよ」と言われても、「またまた~、授賞式に行くまで信じない」と言い張ってました(笑)授賞式に誰を呼ぶかという話になって、やっと慌てふためきましたね。結局、授賞式には83歳の母に来てもらったんです。親孝行ができたかなぁと思っていたら、母は同時受賞した佐々木蔵之介さんと写真を撮ったのが一番嬉しかったみたいで……まぁ、喜んでいただければなんでも幸せです。こんなチャンスを与えてくださった皆さまに本当に感謝ですね。

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー_4

――再演にあたっては一部キャストも変わりますね。Wキャストの蘭寿とむさんとはお話をされましたか?

「どんなふうに演じようか」と話しました。私が「ダンスの振りを覚えるの遅いから頼むね」と言ったら、力強く「任せて!」と。さすが宝塚で訓練されてきた方です。きっと全然違うヒロイン・デロリスになると思いますよ。ブロードウェイバージョンのデロリスはナイスバディで背が高いので、蘭寿さんみたい。私のデロリスはドイツバーションに近いです。せっかくのWキャストなので両方を観ていただければ楽しいはず。新しく加わったキャストたちの力で、初演よりも更にパワーアップしたものをご覧にいただけるんじゃないかな。それがさらに山田和也さんの演出で面白くなっていきますよ。

――初参戦のキャストのなかでも、今井清隆さんと石川禅さんとは長いお付き合いですね。

すごく長いです!今井清隆(キーヨ)さんとは30年以上の付き合いですから、もうマブダチですね。今回の出演が決まった後は「俺、頑張るね」と言っていました。「キーヨは台詞さえしっかりすれば大丈夫。でも訛るからなぁ~」なんて返しましたが(笑)

――今井さんは製作発表で「すでにできている作品に加わるのはどんな感じかなぁ」と少し不安がっていましたが……。

できてないですよ。だって、再演にあたって台本を見なおしたけれど何一つ覚えていませんでしたから(笑)また新たな気持ちで、ゼロから作り始めますよ。

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー_2

(写真提供・東宝演劇部 2014年帝劇公演より)

客席と一緒になって、歌い踊る

――原作はウーピー・ゴールドバーグ主演の映画ですが、舞台ならではの魅力はなんでしょう?

やっぱり生歌ですね。舞台は映画と違い、その場にいる全員がひとつの空間を共有します。しかもミュージカルですから、オーケストラの音楽によって、お客さんと出演者が繋がっていく。自分が歌う呼吸とお客様の呼吸が合う一体感で、ものすごく心地よい空間ができるんです。舞台というのはお客様の反応によって生かされていきますから、再演が決まったのも、作品がお客様に成長させていただいたからですね。

――客席との一体感というと、カーテンコールで一緒に歌いますね!

歌いますし、一緒に踊りもしますよ!客席の皆様が自然とスタンディングオベーションになっていくようすは感動します。さらにキャストが歌いながら客席へ降りていき、劇場が一体になって楽しんでいる。その様子を見た舞台上のキャストが涙ぐんで声をつまらせて……私も泣いて歌えなくなっちゃった。

――カーテンコールの様子はインターネットでも公開されていますが、かなり泣かれてますね。

泣きましたねー。あの時は前から4列目いっぱいに友達が並んでいて、ワンワン泣いていたのでもらい泣きしちゃいました。その友達たちは、長い年月ずっと応援してくれて、仙台からわざわざ観てくれていたんです。“30年目の奇跡”の時も、「やっとセンターにきたー!」と誰よりも喜んでくれて。公演前のなかなかセリフが覚えられない時は、毎晩2時くらいまで稽古に付き合ってくれる友達もいたんです。皆に支えてもらって迎えた初演だったので、本当に有難かった!

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー_5

――次の再演では、新たに挑戦したい事はありますか?

前回は大澄賢也さんにつけていただいたダンスの振りが難しくて、なかなかうまくできなかったんですよ。今回は振りが変わるらしいのでもっと頑張ります!

――ダンスで動き回ると衣裳が暑そうです……。

デロリスは動きまわるから本当に汗をかくんですよ。でも衣裳に秘密があって、脇の下に保冷剤が入っているんです(笑)この修道服は本当に凝っていて、修道院長役の鳳蘭さんの衣裳は私たちとは別の布でできているんです。素材だけでなく、襟のデザインも院長と一般のシスターたちではちょっと違います。顔も黒塗りだし、アフロヘアーだし、見た目にこだわりすぎて黒人の方から「ナニ人?」と聞かれてしまいました。「I’m Japanese.(日本人です)」と答えたら「ウソ! Same black!(黒人でしょ!)」と言われて、もう「Almost black(そんなような感じです)」って言っちゃった(笑)

――たしかに修道服がよくお似合いです!森さんはデビューも修道女役ですよね。

『修道女アンジェリカ』でオペラデビューでしたね。修道女役で30年目にして主役をさせていただけるというのは、ご縁かもしれませんね。

――森さんにとって『天使にラブ・ソングを』という舞台はどういう位置づけでしょう?

主演という重荷を背負い、たいへんな試練となる作品でした。50歳を過ぎて、冒険はせず現状のままでいられたら……なんて考えていたんですが、30年目にしてこの試練がきてしまった。しかも乗り越えることができて、すぐ再演まで決まりました。まだまだ夢は叶うんだなって思いましたよ!

この作品に出会えたことで、未来の可能性に対して消極的になっていた私が、自分さえしっかりしていれば常にステップアップしていけるんだと考えが覆りました。観劇した友達も「私もやりたかった事をもう一度見直してみる」と言ってくれたんです。私の舞台に友人が刺激を受け、それにまた私も刺激を受けました。私にもまだ可能性はあるし、世の50代の女性も「私はもういいの」なんて言わず、どんどん挑戦できますよ!自分が一生懸命やれば、新しい自分になり、その新しい自分も一生懸命やれば、また違う自分が発見できる。そんなふうに、人は何かに対して常に挑戦的でなくてはいけないんだろうな。果たして死ぬまでにこれだけのミュージカルにまた出会えるだろうかと思うくらいの良い作品です。

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー_6

――デロリスと同じですね。デロリスも悩みながら、夢を追っていますよね。

そう、歌手を目指してたくさん悩んでる!そんなデロリスがシスターたちに歌を教えることで、全員が変わっていきます。それまで誰かに望まれることなんてなかったデロリスが、歌を通して「私、望まれてる?」と思い、それだけで人生がどんどん変わっていくんですよ。

――森さんも長年歌われてきて、歌のパワーを感じているのではありませんか?

歌の力ってものすごいんです。東日本大震災後に仮設住宅の方々と歌った時に、一生懸命歌いながら涙を流される方がいたんですよ。その姿が、デロリスに感化されて歌うシスターたちとリンクしたんです。一生懸命歌ってくださる気持ちや、音楽の力というのは、計り知れなく大きいなと実感しています。

お客様のなかには「映画よりもストーリーが入ってきて、ものすごく力を貰った」と仰ってくださる方もいて、それはアラン・メンケンさんの音楽の力のすごさなんでしょうね。

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――観に来られる方に、その音楽に浸っていただきたいですね

ええ。この舞台の一員となって一緒に歌って踊っていただけたら、すごく心が温かくなり、人に笑顔でいようと思えますよ。デロリスによって修道院長が変わり、周りのみんなも変わり、デロリス本人もまた変わっていく……その様を見ていただくと、自分の中にひとつの小さな優しさが生まれるんじゃないかな。

大人も子供も思いきり楽しめるミュージカルですし、あまり構えず、何の準備もなくただ劇場に来てくださるだけでいいんです。ハッピーオーラをいっぱい出しますので、ぜひそれを吸い取ってください!

『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』森公美子インタビュー_3

◆森公美子プロフィール
宮城県出身。昭和音楽短期大学卒業、1982年『修道女アンジェリカ』でオペラデビュー。翌年『ナイン』でミュージカルデビュー。97年のオリジナル版『レ・ミゼラブル』からマダム・テナルディエ役を演じている。『シスター・アクト』地球ゴージャス『Xday』『海盗セブン』、など舞台の他、テレビなど多方面で活躍。『千客万来!森クミ食堂』(BS日テレ)出演中。第40回菊田一夫演劇賞を受賞。

◆ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』◆
2016年5月22日(日)~6月20日(月) 帝国劇場(東京・日比谷)
※東京公演千穐楽後には大阪・名古屋・岩手・札幌・仙台・福岡・浜松・松本で上演予定

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