ミュージカル「さよならソルシエ」 ゴッホ兄弟を演じる良知真次&平野良インタビュー!「大人の2.5次元ミュージカルになりますよ」


ゴッホ兄弟を描いた漫画「さよならソルシエ」(小学館)は、宝島社「このマンガがすごい!」2014年オンナ編1位に選ばれた人気作。多くのファンを持つこの作品が、ミュージカル「さよならソルシエ」として2016年3月17日(木)からZeppブルーシアター六本木で上演される。今回のミュージカル化にあたり、主役のゴッホ兄弟を演じる良知真次と平野良に話を聞いた。

ミュージカル「さよならソルシエ」良知真次&平野良インタビュー

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ミュージカルだからこそ伝わる、「さよならソルシエ」

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――出演が決まった時はいかがでしたか?

平野:原作ファンの多さも頷けるほど面白い作品で、お世話になっているスタッフさんや役者さんにも、「さよならソルシエ」が好きという方が多いんです。そんな作品に出演できるというのは非常に嬉しいです。しかもミュージカル作品!これからミュージカルにどんどん挑戦していきたかったので、僕にとっては一石二鳥の出演です。

良知:僕は、少女漫画と言われるものを初めて読んだんですよ。「女性にとってはこういう男性が理想なのかな」なんて思いながら読んでいたら、世界観がとてもしっかりしていて、次のページが気になって仕方ないという感じであっという間に読み終えました。出てくるキャラクターは実在していた人物で、一筋縄ではいかないそれぞれの思いや策略が交差していく。そのなかで、すごく心の綺麗な兄・フィンセントと、すべてを裏で操っている弟・テオの対比がしっかりと描かれている。あまりに素晴らしい作品だったので、「これをミュージカルにするの?」って不安だったんですよ。

平野:なるほどね。

良知:だってミュージカルって、とてもハードルが高いでしょ?原作ファンのお客様にとってはどのシーンが歌になるのかわからないし、イメージと違うかもしれない。しかも「ミュージカルは苦手」という人もいるし、「なんで急に歌うの?」「なんで急に踊るの?」と感じる人も多いと思うんです。しかも、制作側から返ってきた答えは「ピアノ一本でやります」って。それを聞いて「これは本気なんだ!」と思いました。マーベラスさんが本気であるからには、僕も本気で臨まないといけなくなりましたよね。

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――ミュージカルで、楽器はピアノだけというのは珍しいですね!

平野:ピアノしかないうえに登場人物もそれほど多くないからこそ、キャラクターそれぞれの色が出そうですね。出演者の皆さんもいろんなジャンル出身の方ですし。

良知:2.5次元ミュージカル出身の方もいれば、泉見洋平さんは『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などの世界を代表するミュージカルに出られている。ほかにもストレートプレイ、劇団四季、ミュージシャンなど、今の演劇界の縮図のようなキャスト陣です。みんなの良い所を集めたらすごく素敵な舞台になるんじゃないかな。

――登場人物は個性豊かになりそうですね。とくに中心となるゴッホ兄弟は、まったく真逆のタイプですよね。

平野:生き方がまったく違いますよね。僕の演じる兄のフィンセント・ファン・ゴッホは、いつも笑っていて、自然にあるがままの世界が好きな人物です。

良知:弟のテオドルス・ファン・ゴッホ(テオ)は兄の絵の才能を信じ、世に出そうと画策する画商です。そのため、一流の美術商会で画商としての才能を発揮しているのに、フィンセントの絵を認めない美術商会と対立していく。周りの誰もから認められる地位を持っていても、本人にとってそれは幸せじゃなかったんです。自分なりの幸せを目指して進んでいくというところに、かっこ良さや男を感じます。逃げずに戦うところ、尊敬しますよ。

平野:二人とも、まったく違う才能を持っているんですよね。しかもどちらも自分の持つものすごい才能を自覚してない。そういう人って多いですよね。本人は才能だと思ってなくて、好きだからとか、別の理由で続けている。

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――才能については、原作のテオのセリフに「“才能”を英語でなんと言うと思う?……ギフトだよ」という言葉もありますね。

平野:そう、神様からの贈り物。才能って、自覚した時点で成長が止まっちゃいそうですよね。だからゴッホ兄弟はお互いに、自分の才能よりも相手の才能をうらやましく感じていたりする。

――まったくタイプの違う二人だからこそ、お互いへのいろんな思いが交差していきますね。

良知:そうですね。原作でも心理描写のシーンが多いから、セリフにはできない。そこを歌に乗せることで、キャラクターの気持ちがよりお客さんに伝わるようになるんじゃないかな。さらに楽器がピアノしかないから、「言葉に出して言えない気持ちを歌や踊りに乗せるんだ」ということが大きなスケールで伝わる。それが今回の舞台の魔法(ソルシエ)だと思います。
違うジャンルの芝居で活動してきた才能を集め、それぞれの良い部分をとって一枚の絵を作り上げていく……それをキャスト・スタッフが一丸になってお客様に“ギフト”として届けることが、僕たちの才能なんだろうなって思います。

舞台に19世紀末のパリを蘇らせる

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――舞台と原作は違うものになりそうですね。登場人物も違いますし……。

良知:原作では名前しか登場しないゴーギャンが出てきます。演じるKimeruさんはビックリしてると思いますよ。漫画読みながら「どの役だ!?」って。

平野:出てこないからね(笑)。

――舞台オリジナルの展開も含め、どのシーンが舞台化されるのか楽しみです!

良知:一番最初のテオの登場シーンはぜひ歌で届けたいね!チェスをしているホームレスの前に急にあらわれて、ゲームを支配していく。楽曲に乗せてチェスの駒を動かして、最後は「チェックメイト!」とキメたい。

平野:抜群にカッコよくなるはずだよね!一瞬でテオのキャラクターがわかるし、物語に引き込まれるシーンになりそう。他にも、フィンセントが耳を撃ちぬくというのは歴史的にも有名なエピソードなので、印象的なシーンになるんじゃないかな。

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――史実では、ゴーギャンとの関係がうまくいかずに発狂して耳たぶを切り落としたとされていますが。

良知:漫画だと、史実とは違うフィンセントとテオのエピソードが原因になっています。けれど、「だから耳を撃ちぬいたんだ!」って衝撃を受けるし、納得もできるはず。

平野:そう!フィクションなのに、実際にあった話とリンクしてくる!

良知:史実とフィクションがいい具合に交差していくよね。フィンセントが死んでテオが精神的に病んでしまうところとか、こう繋がるんだなって!

平野:テオが狂気に満ちていく様子、すっごく好きです!テオはフィンセントの絵を後世に残すために、ある計画をたてるんです。それが今作のクライマックス。天真爛漫なフィンセントではなく、今の僕らが知っている「炎の画家」というゴッホ像は実はテオの策略から生み出されていく。この展開がもし真実なら、現代の僕らもテオの思惑に踊らされてるってことになるから、うわーすげえなー!と思いました。

良知:兄のためにここまでできるのか!って。すごい結びつきの兄弟だと思いました。だからこの「さよならソルシエ」って、ゴッホ兄弟の関係が大切なんです。僕たち役者は、歌がうまいとか踊りがうまいといったことも大事だけれど、それ以前にテオとフィンセントの関係を描くことが一番のキモ。もし平野くんと僕がすごく仲が悪かったら、もうこの舞台は失敗ですよ。

平野:たしかに(笑)。

良知:実は、平野くんに会う前にマネージャーから「平野くんってちょっと(良知)真次と似てると思うんだよね」と言われたんです。どういうことだろう?と思っていたけど、わかった!似てるよ!(笑)

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――例えばどういったところが似ているんですか?

良知:平野くんが「考えすぎると、時々たまらなくなって自然の中に出かける」って言ってて、一緒だなあと思いました。僕も代々木公園とかに出かけたりしますもん。

平野:一緒ですね(笑)。考えすぎて辛くなって、稽古中に急に高尾山に登ったり、本番中でも大きい自然公園に行って散歩したりします。いっぱい考え込んじゃうところはテオのような性格かも。でも、自然の中でバランスを取ろうとするところはフィンセントに似てるのかなあ。

良知:わかる!やっぱり似てる!自分に似てるなって思う人が周りにあまりいないから、今回は共演できて嬉しいな。年齢もほぼ変わらないので、自然に作り上げられる気がするのはすごく久しぶりです。

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――どんなゴッホ兄弟ができあがるのか楽しみです。実際のゴッホの絵についてはどうですか?

平野:くたびれたブーツだけの絵が気に入ってます。フィンセント・ファン・ゴッホが旅してきた結果ボロボロになった靴なんじゃないか、と解説されている絵なんですけど、すごく哀愁があっていいんですよね。

良知:ひまわりの絵も多いよね。なんであんなにたくさん描いたんだろう。

平野:不思議だよね。僕、絵画の知識はまったくないんですけど、ゴッホや当時の画家の絵はすごいなって思います。まだ写真やテレビという媒体がないから、いろんな絵の手法を使って、見た世界を切りとって違う国の人々に伝えている。

良知:ゴッホとかベートーベンとかピカソとか、今では世界中の誰もが知ってるような一流の人たちってすごいよね。自分たちで時代を作ってきたんだもん。

――最後に、本公演へ向けての意気込みをお願いします。

平野:今回の舞台では、彼らの生きた19世紀末パリの佇まいを表現したいな。『さよならソルシエ』は、実際のゴッホの生い立ちを知っている人も、知らない人も面白いと思えるお話なので、少人数のメンバーで物語の世界観をギュッと作り上げたいですね。

良知:原作ファンが多い作品をピアノ一本でミュージカル化するっていう、とてもハードルの高いことに挑戦しているよね。おそらく今までにない大人な2.5次元ミュージカルができると思います。原作が大好きなお客さんや、キャストのファンの方々の期待をいい意味で裏切れるような作品にしたいね。

平野:そうですね。物語の世界を音楽にのせて、漫画を読んだ方にも原作に描かれている以上の感情を伝えたり、「こういう見方もあったんだ」という発見をしていただけるように頑張ります。ミュージカルだからこそ伝えられることがあると思いますから。

良知:観た人が「なんだ原作と違うじゃないか」じゃなくて、「なるほど、テオならこうだね」「フィンセントならそうするよね!」という確信を得られるものにしますよ。それを表現することが、生身の人間が演じる意味だと思っています。役が目の前で生きるということを大切に、繊細に、責任を持ってみんなで作品を作っていきたいです。

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◆プロフィール
良知真次 <弟(画商)/テオドルス・ファン・ゴッホ役>
1983年、東京都出身。15歳でジャニーズ事務所に入所し、デビュー。2004年、劇団四季に入所。退団後、舞台、テレビ、映画、アーティスト、振付などのほか、エレクトロポップ&ダンスユニット「AUTRIBE(オートライブ)」としても活動。主な出演作品は超歌劇『幕末Rock』(主演・坂本龍馬役)、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』(アルフレート役)。映画『タイガーマスク』『群青 愛が沈んだ海の色』など。

平野良 <兄(画家)/フィンセント・ファン・ゴッホ役>
1984年、神奈川県出身。中学生の時に劇団東俳に所属し、1999年『3年B組金八先生 第5シリーズ』で映像デビュー。主な舞台に、ミュージカル『テニスの王子様』(一氏ユウジ役)、『ふしぎ遊戯』(鬼宿役)、ミュージカル「SONG WRITERS」、舞台「ハンサム落語」、舞台「夜の姉妹」、テレビ「戦国鍋TV」「戦国★男士」など。

(C)穂積/小学館フラワーコミックスα
(C)ミュージカル「さよならソルシエ」プロジェクト

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