20周年記念コンサートに賭ける!濱田めぐみインタビュー「普段の生活や自分自身に全く興味が持てないんです」


1996年の舞台デビュー以来、数々の作品で多くの観客を魅了してきた女優・濱田めぐみ。デビュー20周年となる2016年は自身のソロコンサートで幕を開ける。「これまで」と「これから」がテーマだというコンサートの全貌が見え始めた今、何を思いマイクの前に立っているのか…歌稽古初日を終えた濱田に話を聞いた。

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◆「これまで」と「これから」を全力で歌う

――本日が20周年記念コンサート第一回目の歌稽古だったそうですね。

そうなんです!11月に『スコット&ゼルダ』が終わって、リフレッシュも兼ねて伊勢神宮にお参りに行ってきました。ウエンツ(瑛士)君に紹介して貰った宮司さんともお話が出来てデトックスも万全です(笑)。そんな状態で今日は声を出してみたんですが、久しぶりに歌ったナンバーで自分の声の変わり具合にちょっと驚いちゃって(笑)。

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――どんな風に?

ニュアンスの付け方やテクニックは当時と比べて成長していると思うのですが、その分ピュアさやあどけなさを出すのにちょっと苦心したりして(笑)…声があの頃に比べると明らかに成熟していているんです。私は喉をある種の“楽器”として捉えていて、今はその“楽器”がとても扱いやすくなっている分、過去の出演作の音源を改めて聞き直すと、どこか「とぅるん」としていて、ちょっとむずむずしちゃったり(笑)。

――今日、移動中に『アイーダ』を聴いていたのですが、確かに今の濱田さんの声とは違うと思いました。

『アイーダ』も2月にリリースするアルバム「Campanula」用に改めて録音しましたが、演じていた当時のものを聞き直してみるとやっぱりむずむずしましたね(笑)。私は自分へのジャッジが人一倍厳しいので、音程やピッチが少しでもズレていると「あああー」ってなっちゃったり(笑)。でもその分、当時は役の人物としての不安定さや儚さがちゃんと表現出来ているんですよね。自分としては舞台でその役を演じていた頃と、今も同じように歌っているつもりなのに、当時と今とでは表出するものが違うっていうのがとても不思議な感覚です。

――アルバム「Campanula」も豪華なラインナップが並びました。光枝明彦さんとの「ガス~劇場猫~」(『キャッツ』)など、ゲストとのコラボレーションも楽しみです。

私もあのナンバーはかなりレアだと思います。光枝さんがスタジオで歌いだした途端に、レコーディングルームが一瞬にして“劇場”に変わったんですよ!光枝明彦さんという熟練の俳優の色気やいい意味での抜け感、温かさがこの一曲に凝縮されてるんじゃないかと。

『アイーダ』ラダメス役のナンバーで参加してくれた(福井)晶一くんも、CDで自分のラダメスの音源が残るのは初めてということもあって、物凄くテンションを上げてくれました(笑)。多くの方にお楽しみいただける構成になっていると思います。

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――20周年記念コンサートはEX THEATERのチケットが即日完売で、追加公演も決まりましたね。

チケットが完売という嬉しいお話を聞いた後に、すぐ追加公演のオファーをいただいたのですが、実は自分の中でちょっとした迷いもあったんです。と言うのも、コンサートで歌うのは私にとっての一大事で、エネルギーの消耗も相当激しいんですね…下手したら次の作品に影響が出てしまうくらい。そうこうしている内に、オーチャードホールが一日だけ押さえられたということになり、じゃあ、一週間空くし、六本木のバージョンとは一部違うモードでトライしてみようかと。

――EX THEATERとオーチャードホールでは何が大きく変わりそうですか?

まず、ドレスが一着増える予定です(笑)。そしてオーチャードバージョンでは音楽監督の塩田明弘さんが指揮棒を振ってくださいます。追加公演が決定した時に真っ先に笑顔で「俺が振るからね~」と言っていただいて(笑)。EX THEATERではバンド編成ですが、オーチャードではクラシックモードの小編成オケになりますので、そこも大きな違いかな。ゲストとして鹿賀丈史さんと田代万里生君に登場していただくので、曲も若干変わってくると思いますよ。

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◆劇団退団後に転機となった舞台

――今回のコンサートは“20周年記念”と銘打たれていますが、濱田さんが四季を退団なさってもう5年になるんですね。

うわ、もう…5年?全然そんな実感なかった!そうか…早いですね。フリーになって新しい出会いは増えたと思います。共演者の方もそうですし、最近ではサンリオピューロランドのパレードでご一緒したアートディレクターの増田セバスチャンさんとお話しできたのがうれしかったです。人との出会い…特に異業種の方とお会いする機会は退団後にぐっと増えましたね。

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――いわゆる“座長”的な立場を担われることも多いかと。

そういうことはほぼ意識できていないかも(笑)。役を演じることに必死だからか、作品に入ると他のことは全く目に入らないモードになって…稽古が終わると真っ先に帰りますし(笑)。稽古中や公演中も基本、作品と役のことしか考えていないので、慣れるまでは共演者の方も話しかけづらい雰囲気になるみたいです…本人はシャットアウトしているつもりは全然ないんですけど。

――退団後、濱田さんにとって転機となった作品はなんでしょう。

転機…俳優として舞台に立つ上で、流れが変わるというか“山”や“波”のようだと感じた作品は二つありました。一作は『二都物語』で、もう一作は『デスノート The Musical』。

――それはちょっと意外な気がします。

『デスノート』に関してはかなり早い段階から出演が決まっていて…ただ、役柄が「死神」じゃないですか。まず「死神」って一体どんな存在なんだろう、ってところから入って、次に原作コミックのイメージを考えて…製作発表の時に、リューク役の吉田鋼太郎さんと最初に交わした言葉が「死神、どうします?」「分かんねーよ(笑)」だったんですよ(笑)。稽古が進むうちに、演出の栗山(民也)さんからは「“死神の世界観”をもっと出してみようか」なんて指示が入って、悩んだ末に鋼太郎さんに相談したら「めぐなら出来るよ」ってにこにこ笑われて…一時はどうしようかと思いました(笑)。

でも段々、鋼太郎さん演じるリュークと私が演じるレムはある意味真逆で表裏一体の存在なんだという関係性も見えてきて、初日に照明や音楽、共演者の方たちの演技が全て一つになった時に“愛に満ち溢れた死神・レム”という存在がはっきり生まれ落ちたのが分かったんです。レムというキャラクターを演じたことで、役へのアプローチの仕方が変わったという意識はありますね。

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――未知の存在である死神を演じたことが、ノーマ(『サンセット大通り』)や『スコット&ゼルダ』のゼルダ役へのアプローチへと繋がっていくんですね。

ノーマに関しては試行錯誤もしましたし、自分とは全く違う存在…真逆のキャラクターということで何から手を付ければいいのか分からなくて大変でした。結果、多くの方に「Wキャストで全く違う舞台だった」とも言っていただいたのですが。でも、私も安蘭(けい)さんも同じことをやっているつもりだったので、周囲からそういう風に言われることに全然実感が持てなくて(笑)。

『スコット&ゼルダ』は、ほとんどの場面に出ていたこともあり、台詞の膨大な量にまずヤラれました(笑)。演出の鈴木裕美さんからは「蓬莱(竜太)君の脚本は完璧だから、一言一句変えずに喋って欲しい」とはっきり言われてビクっとなったり(笑)。稽古から常に100%の本気でゼルダと向き合っていましたね…うん、いつも本気でした。当たり前ですが「お芝居って…すごい事だよな」って、ゼルダという役を通して改めて認識もしました。

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――そのゼルダの本気感や、ベン(山西惇)に対しての言葉の投げかけがグサグサ刺さりました。

第一声で「ゼルダ・セイヤーです!」と言いながら舞台に出るのが実は毎回すごく不安だったんです…これから2時間半、自分はゼルダとしてちゃんと生き抜けるんだろうか、今日の舞台は無事に幕を下ろせるんだろうか、って。もちろん、出た瞬間からそんな不安は消し飛んでパーンって役に入るんですけど。

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――今でも普段の生活にあまり興味はないですか?

全然ないですね(笑)。お腹が空いたなって思っても、ファストフードで買ったチキンをぱぱっと食べて満足しちゃうし、疲れが出やすいってなったら、スタンドで野菜ジュースを作って貰って体に良いことをした気になってるし…と言うか、普段の自分にもあまり興味がないかもしれないです。以前は稽古場や事務所に「車だから大丈夫~」って、稽古着のまま来ちゃうこともあり、事務所の人が心配して「どうしたら濱めぐがおしゃれに興味を持ってくれるんだろう」って(笑)。食事もお腹が空いてたら何でも美味しい!ってこだわりなく食べちゃうし…あれ、これちょっとマズイかもしれないですね(笑)。

――まさに「劇場こそ我が家」なのが良く分かるお話でした(笑)。では最後に、コンサートを楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。

本日がコンサートのお稽古初日ということもあり、歌いながらあまりの懐かしさに身悶えしたりもしつつ、1月のコンサートで素敵な舞台をお見せできるよう一歩一歩進んでいる感じです。役を演じていた時とほぼ同じアレンジで歌うナンバーもあれば、少し趣向を変えてお届けする曲もあり、楽しんでいただけるステージ構成になっていると思いますので、ぜひ劇場にいらしてください。

濱田めぐみ「20周年コンサート」インタビュー

舞台デビューから20年…濱田めぐみは多くの作品に命を吹き込み、唯一無二のプレイヤーとしてさまざまな舞台に立ち続けた。カリスマ性に満ちた王女から男勝りの女の子、抑圧をはね返し自由を手にする女性、復讐心に満ちたマダム…忘れられた大女優、そして愛に満ちた死神。全ての役と100%の本気で向き合い、自らの身と心を削って舞台の芯に立つ彼女から観客は身が震えるようなエネルギーを得て明日への糧とする。

舞台から降りた濱田はいつもこれ以上ない位の“自然体”である。普段の生活にも自分にも全く興味がないと笑顔で言い切り、役を演じている時は“濱田めぐみでいること”が面倒だと笑う。

そんな濱田が20周年という節目の年に最初に挑むのが多彩なゲストと共に紡ぐコンサートだ。“素”と“役”が舞台上で交差するコンサートで彼女がどんな歌声を響かせ、トークを聞かせてくれるのか…20年という時を劇場で共有するのが今から楽しみでならない。

◆濱田めぐみ20周年記念コンサート◆
2016年1月9日(土)19:00開演/1月10日(日)13:00&17:00開演 EX THEATER六本木
2016年1月18日(月)19:00開演 Bunkamuraオーチャードホール(追加公演)
お問い合わせ:ホリプロチケットセンター 03-3490-4949

◆濱田めぐみ20周年記念アルバム「Campanula」
2016年2月24日(水)発売

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