演劇集団キャラメルボックス 結成30年の集大成『BREATH(ブレス)』を上演中!演劇界を楽しみ続ける大人気劇団へインタビュー


幅広い層から人気を集める、演劇集団キャラメルボックス。現在、劇団30周年となる2015年最後のクリスマス公演として、新作『BREATH(ブレス)』をサンシャイン劇場にて上演している。テーマソングをTUBEが書き下ろしたことでも話題になった本作から、メインキャストの多田直人と岡内美喜子の二人に、神戸公演、新潟公演を終えた感想や、30周年についての思いを聞いた。

『BREATH』多田直人&岡内美喜子インタビュー

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――まずは、お二人の役どころについて教えてください。

岡内:私の演じる恭子は、劇場に勤める婚期を逃した等身大の女性です。そこにある日突然、高校の同級生の男の子が「覚えてる?」と現れて再会し……というお話です。

多田:僕が演じるのが、その相手役の一馬です。

岡内:一馬は芥山賞っていう小説賞をとった小説家で、ちょっと謎めいている。まぁ、とにかく変な人だよね。

多田:変な人ですね。一馬が主役だと言われてもピンとこないんじゃないかな~というくらい、変な人。普通のお芝居だったら一人の主役に感情移入して感動したり笑ってくれたりすると思うんですけど、僕の演じる一馬に感情移入してくれる人は一人もいないんじゃないかなあ……っていうくらい変な人です(笑)だから観ている人は、一馬に振り回されている恭子に感情移入するんじゃないかな。

岡内:そうかも(笑)

『BREATH』多田直人&岡内美喜子インタビュー_3

――その二人を中心に物語が進む……かと思いきや、今回の舞台は映画『ラブ・アクチュアリー』に着想を得て、何組もの男女を描いたオムニバス作品のようになっているそうですね。

多田:そうなんですよ。だから、チラシやポスターには僕と岡内さんの二人しか写っていないんですが、この二人の物語がメインなのかというと、実はそうではないんです。他の登場人物にもすごくストーリーがあるんですよ。
稽古が始まるまでは「今度は主演をやるのかあ」と思っていましたけど、台本を貰ったその日からは主演の責任感みたいなものを、良い意味で感じずにやれていますね。15人いる登場人物の一人として、この作品に関わっているという感じがしています。

岡内:登場人物それぞれに、キャラクターや見せ場があるんです!

――作品の見どころとしては、やはり15人それぞれの模様が描かれているところでしょうか?

岡内:そうですね。男女の恋愛はもちろん何組も描かれていますけど、それだけじゃなくて、“おばあちゃんと孫”とか、“お父さんと結婚前の娘”とか、会社での一コマとか、いろいろなシチュエーションがあるんです。様々な役どころの人が出てくるので、「他人の恋愛を観て楽しめるか分からない」という人も、「クリスマスにあえて男女の恋愛を見たくない」という人も、恋愛以外の部分でハッと思う箇所が必ずあるんじゃないかなあ。たとえば私も、娘の結婚を反対するお父さんに感情移入したりしています。いろいろ楽しめる要素が詰まっていると思いますよ!

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――恋愛というよりも、いろんな形の愛情を描いているんですか?

岡内:そうですね。この『BREATH』というタイトルも、作・演出の成井豊が“愛”の物語をイメージした時に浮かんだ言葉だそうです。愛ということを考えた時に、「Every Breath You Take」という曲のイメージが湧いてきたそうです。たぶん、“息吹”のようなイメージなのかなあ。
多田:お客様それぞれが自由に、いろんな“愛”をイメージしてくれたらいいかな。

――恋愛に限らないので、カップルでなく女友達や親子で観ても楽しめそうですね。

岡内:もちろんです!

多田:いろいろなエピソードが絡み合っていくストーリー形式って、キャラメルボックスとしては新しい試みなんです。今までは、一人の主人公を軸にタイムトラベルをしたり幽霊が出てきたりとSFやファンタジーを交えつつ、登場人物がワーっと皆でしゃべって、早いテンポとコミカライズされたお芝居で盛り上がっていくという感じでした。
でも今回は15人の登場人物がいて、そこで7組のカップルが出来上がる。だから二人きりで会話するシーンがすごく多いんですよ。1対1で会話をして、その二人の会話や関係性の面白さをお客様に楽しんでいただく芝居はキャラメルボックスとしては珍しいし、新しいんじゃないかな。大人向けの劇団なら二人だけの関係性を見せるお芝居は当り前にやっていることだとは思うので、僕としては大人の階段をのぼっていくような感覚もあるかもしれません。

岡内:たしかに新しい部分もあるので、「今までのキャラメルが好きだったのにな……」と思う方もいるかもしれないです。でも新しい中にもファンタジー要素のあるパフォーマンスシーンやド派手な曲や照明っていう、キャラメルボックスらしいところも含まれているので……良いトコ取りしてます(笑)
観る人が観ると、やっぱり今までと変わらないねって思うかも!?

多田:結局キャラメルだ!ってね(笑)

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――新たな試みは、劇団30周年という節目を意識されてのことですか?

多田:実は僕たちからすると、30周年だから何かしようとは特に意識していないんですよ。それよりも、お客様に「今年30周年ですよね?何かしないんですか?」と言われているのを受けて「よし、じゃあやるか!」という感じだった気がします。僕らにとっては「30年やってきて頑張ったね」という思いももちろんありますけど、まだまだ通過点にしかすぎないかな。劇団31年目の準備も、もう始まっています。とはいえ、やはりお客様にはいろいろ楽しんでいただきたいので、30周年という年にかこつけて盛り上がっています(笑)

岡内:しかも『BREATH』は、キャラメルボックスが毎年やっているクリスマス公演にあたります。30周年のクリスマス公演という特別なものとして、すごく楽しみにしてくださっているお客様もいると思うんです。意識したわけではなく偶然ですが、その期待に応えられるような、キャラメルボックスらしい明るく賑やかな温かい作品になりました。

多田:そうですね。はからずも今回は客演やゲストの方もいらっしゃらないですし、キャラメルボックスのメンバーで30周年を締めくくる事ができて良かったです。時間が経つほど、この『BREATH』という作品で良かったなとも思いますね。

『BREATH』多田直人&岡内美喜子インタビュー_7

――さらに30周年ということがきっかけで、TUBEさんがテーマソングを提供してくださったそうですね。

岡内:そうなんですよ、「30周年同士一緒にやりましょう」って声をかけてくださったんです。

多田:しかも書き下ろしてくださったんですよね。これまでTUBEさんは夏のイメージがあったんですが、冬の曲もいいですよ。

岡内:そう!冬の歌なんですけど、慣れ親しんだ前田亘輝さんの声なんですよねぇ。

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――楽曲も含め見どころの多い舞台だと思いますが、東京公演に先駆け、神戸・新潟で上演して、お客さんの反応はいかがでしたか?

多田:『BREATH』には、長くキャラメルボックスを観てくださっているお客様に喜んでいただけるような、隠されたお楽しみ要素があるんです。そこに対して盛り上がってくださっている様子は、(作・演出の)成井の狙い通りでしたね。それだけでなく、あまりキャラメルボックスを観た事がない方でも楽しんでいただいているという雰囲気も、ものすごく伝わってきました。神戸・新潟とやってきた手ごたえをキチっと掴んで東京にやってまいりました。

岡内:思っていたよりも、初めてキャラメルボックスを観てくださるお客様が多かったんです。TUBEさんが曲を提供してくださったからというきっかけで来てくださった方もいました。そんななか、客席も温かい雰囲気で盛り上がり、すごく嬉しかったです。想像していた以上にお客様がワァーと笑ってくださったり喜んでくださっているのが伝わってきて、とても良い劇場の空気でした。

多田:もちろん不安もあったんですよ。初めて台本を読んだ時に僕は「すごく面白い話だなあ」と思って、成井さんに直接「これ面白いですね!」って言いに行ったんです。でも4~5週間と稽古を重ねていくうちに、「あれ、本当にこれで大丈夫かな?」と不安になってきて……。僕としては、オムニバスのように散らばった15人の物語が1つに繋がっていくのがすごく面白いなと思ったけれども、「果たしてこの面白さがお客様に伝わるのだろうか」と思ってしまって。今までのキャラメルボックスの作風とちょっと違うし、「こんなのキャラメルボックスじゃない」と言われたら嫌だなと不安になっていたんです。それでも神戸・新潟でお客様の反応を見て、僕が最初に台本を読んで面白いと思った感覚と違わなかったんだなぁと確信を得た感覚がありました。

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――神戸・新潟公演ではそれぞれ違うチームが上演されましたね。ダブルキャストという事で、チームによっての違いはありますか?

多田:もちろん、全然違います。それがダブルキャストの面白みですね。神戸ではREDキャスト、新潟ではGREENキャストのみで上演したんですが、REDキャストの方は5人のダブルキャスト中3人が劇団新人デビューなんです。一度に新人3人も出演するのは劇団史上初の事らしいです。こんな事ありました?

岡内:……ないかもしれない!

多田:ないですよね~!だから、どうなるんだろうと不安に思ったこともありましたけど、神戸での7ステージ中にみんながみるみる成長していきましたね。彼らは若いし、スポンジのようにいろいろな事を吸収して、初日と神戸の最終日ではまったく印象が変わったんじゃないかな。

――では東京公演でも、初日と千秋楽とでは全然違うかもしれないですね!

多田:そう思います。しかも、神戸ではREDキャストだけ、新潟ではGREENキャストだけで公演したので、ダブルキャストの人はまだお互いの本番を観ていないんですよ。

岡内:そう、他のキャストがどんなことをやっているかわからないんですよね。

多田:だから、東京公演でそれぞれの芝居を観て触発され合うと、また面白くなるんだろうなって思います。

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――2週間の東京公演中にどんな変化が起こるのか楽しみですね!
では最後に、観に来られる方へメッセージをお願いします。

岡内:クリスマスには、白くてイチゴの乗ったオーソドックスなホールケーキ1個をドーンと食べるのもいいですけど、この『BREATH』はチョコもあれば生クリームもあるといった賑やかなプチケーキが山ほど入っているようなお芝居です。「どれにしようかな」って選べるようなすごく贅沢な作品になりました。

多田:ケーキバイキングですね?

岡内:そう、ケーキバイキング! いろんな味を楽しめるし、好きなケーキだけを楽しむことができるし、驚く要素も詰まっている。本当にいろんなものが詰め込まれた素敵な作品『BREATH』で30周年を迎えられて私も嬉しいので、その空間をお客様と一緒に過ごせたら幸せだなと思います。ぜひ、クリスマスを一緒に味わいに来てください。お待ちしています!

多田:30年間劇団を続けてこられた強みや面白みや自信みたいなものが、この作品には詰まっていると思います。『BREATH』には、キャラメルボックスの過去の作品に関係してきたキャラクター達が出てくることもそうですし、恋人同士の“愛”だけでなく、親子やその他の“愛”も描けるというのは、長年やってきて劇団員の年齢幅も広がっているからなんです。「30年を経たからこそ迎えられる今」の強みが余すところなく出ている舞台だと思いますので、「今」のキャラメルボックスをぜひ体感して欲しいです。
それに、こんなにも真正面から“愛”について取り扱っている作品ってなかなか無いと思います。普段は愛について語ることは恥ずかしくてなかなかできないかもしれないですけど、クリスマスだし、お芝居だし、キャラメルボックスだし……なんて理由にかこつけて、愛に向き合える良いきっかけにしていただけたらなと思います。

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演劇集団キャラメルボックス
1985年に早稲田大学の学生演劇サークル「てあとろ50’」出身者を中心に結成。1994年、東北新幹線で上野から岩手まで一泊二日で往復する特大シアターイベント「シアターエクスプレス」を成功させテレビでも話題に。1995年、劇団員の上川隆也(2009年退団)が主演に抜擢されたNHKのドラマ『大地の子』が大ヒット。”人が人を想う気持ち”をテーマに、”誰が観ても分かる””誰が観ても楽しめる”エンターテインメント作品を創り続けている。作風はSF、時代劇、ラブ・ストーリーなどのエンターテインメント・ファンタジー。日常の中で非日常的なことが起こるのが特徴。

多田直人
1983年12月17日生まれ、北海道釧路市出身。2004年キャラメルボックス入団。
岡内美喜子
1976年11月17日生まれ、東京都出身。1997年キャラメルボックス入団。

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