振付から見る演劇「ハイキュー!!」の魅力!大注目の振付師、左 HIDALI・笹尾功×Zukeインタビュー


集英社「週刊少年ジャンプ」で連載中の大人気バレーボール漫画の舞台化、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」。東京・大阪・宮城公演を終え、2015年12月10日(木)から13日(日)まで、再び東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoで凱旋公演を行う。しかも大千秋楽は、全国の映画館でライブビューイングも実施。当日券も長蛇の列ができる「漫画×演劇×映像のハイブリッドパフォーマンス」とは?本作の振付を担当した大人気振付師ユニット左 HIDALIの笹尾功(ササオツトム)と、振付助手のZuke(ズーク)に制作秘話を聞いた。

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー
(左)Zuke、(右)左 HIDALI・笹尾功

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――演劇の振付をする、というのをやってみて、どうでしたか?

笹尾:普段はミュージックビデオやCMなどの振付をやらせていただくことが多いです。
映像以外にもアーティストさんのLIVEやダンスのパフォーマンスをすることはありますが、”演劇”というのは初めての畑だったのでとても面白かったです。当たり前ですけど、台詞があるし、喋りながらどう動くかという兼ね合いが難しいポイントでもありましたね。ミュージカルだと、ここは踊りのパート、ここは歌のパート、とか分けて作ることもあると思いますが、この演劇「ハイキュー!!」という舞台はすごく特殊で、演劇、映像、音楽、動き、全てが混ざり合ってるイメージですね。

Zuke:音楽も映像も動きも演技も、すべてが混ざり合っていますよね。

――主演の須賀健太さんと木村達成さんはいかがでした?

笹尾:二人ともすごく動けるよね。

Zuke:動けます。最高ですね!須賀君はめちゃくちゃダンスをやっていたわけではないだろうけど、座長として舞台を引っ張るし、その場の空気を作れるし、誰よりも練習しますね。

笹尾:稽古はじまりから台詞もほとんど入っているから台本持たないし!達成も今まで殺陣とかをやってきた経験もあるみたいで、すごく動けるよね。

Zuke:身体は硬いですけど(笑)

笹尾:そう、めちゃくちゃ硬い。ストレッチでも「痛い痛い!」って(笑)

Zuke:でも振りの覚えもすごく早かったですよ。

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー_2

――ダンス未経験の出演者も多くいましたよね?

Zuke:半数ぐらいはダンス未経験でしたね。

笹尾:稽古初日はカウントが数えられない人もいたもんね。ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ・シックス・セブン・エイト・・・ってリズムに乗ってカウントするのは意外とできないから、そこから練習を始めました。みんな頑張っていましたね。

――実際はどう振付していくんですか?

Zuke:一番最初、稽古が始まる前にパイロット版を作ろうという話になって、烏野校内戦3対3の試合シーンをどんな動きで見せるのか、まずやってみたんです。

笹尾:演出のウォーリー木下さんも一緒にスタジオで集まって、とりあえず1回作ってみようと。まだ音楽も決まってなくて、どういう風になるんだろうって想像もつかなかったね。敵同士が向き合う構図がいいかな・・・なんていろいろな動きを試していたら、ウォーリーさんが「今のおもしろいね!俺もちょっとやってみていいですか?」と面白い動きをつけてみる。ウォーリーさんの動きの発想は面白かったよね。

Zuke:面白かったですね。一番最初に衝撃を受けたのは、3対3のバレーの試合なので、3人ずつ向かい合わせていたんですが、ウォーリーさんが「まぜちゃおう」と言って、敵と味方の立ち位置をごちゃまぜにしたんです。でも、攻めチームと守りチームがまざっている状態なのに、どっちのチームが押しているのか観てわかるんですよ。

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー_3

笹尾:驚いたよね。なるほどね!って。

Zuke:そんな見せ方ありなんだって思いましたよね。

笹尾:思った。でもめちゃくちゃ面白いんだよね!

Zuke:ちゃんと攻めと守りが見てわかるし、しかも本番ではチームで着ているユニフォームの色が違うから、立ち位置がまざっていても成立するんですよね。それがもうビックリだった。ごちゃまぜでもなんでも、伝わればいいんだって思いました。

笹尾:そんなふうにウォーリーさんが大枠の動きをやってみせて、「後からまとめてもらっていいですか?」と言われたり、ウォーリーさんが下書きのようなものを描いて、俺たちがその絵に色を塗っていくみたいなこともよくありました。

Zuke:ストーリーとして、初めはスパイクがうまくいかなくて何度も失敗しちゃう、というのを、台詞じゃなくてダンスで表現したりしました。

笹尾:最初は気持ちがバラバラだった主人公の二人が、どんどん噛み合っていく様子を振付で表したり、バレーボールが上手くなっていくのを動きで見せたりね。

Zuke:あと、笹尾さんは本物のバレーボールの試合をダンスのカウントに当てはめたらどうなるのだろうって研究してましたよね。

笹尾:そうそうネットでバレーボールの試合を見ながら、リズムを取ってみたんですよ。そしたら意外と、ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ・・・とリズムが合った。例えば、ワンとファイブのタイミングで打つことが多いとか、ね。たまにクイックとか不規則な時もあるんですけど。

Zuke:クイック(笑)!

笹尾:スパイクしようとしてフェイントかけたりする時はリズムがちょっと崩れたりするんですけど。基本的にはかなりリズムが合っていました。面白かったですね。

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー_4

――振付で大変だったことは?

笹尾:リアルなバレーボールの動きにこだわったことかな。出演者の方たちは、稽古が始まる前に何度か本物のバレーボールの練習をしていたんですよ。稽古場にはバレーボールの先生も来るんですよ。

Zuke:僕たちはよかれと思ってカッコいい振付にするんですけど、「そんな動きはバレーにはありません」「もっと腰を入れて構えて」と言われたり。ここまでバレーにこだわるんだ!?って驚きました。

笹尾:あったねー!

Zuke:つられて僕たちもどんどんこだわりはじめて。

笹尾:だね。しかもバレーボールの試合って、選手がポジションをローテーションするルールがあるじゃないですか。この役の見せ場をダンスで作るために前に出てきてもらおうとすると、「俺のポジション、その時そっちにいないんですけど・・・」みたいなことがよくあって・・・ローテーションルールに合わせるのが大変でした(笑)

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー_5

Zuke:バレーボールのルールにはかなり忠実ですよね。

笹尾:あと大変だったのは、やはりセリフとの兼ね合いですかね。音楽と動きとセリフが同時に存在するけれど、ミュージカルのように歌うわけでもない。歌やダンスと違って、どのタイミングでどんなふうにセリフを言うのかは役者さんの間もありますから、どこで動くのかを決めるのは難しかった時もありました。

Zuke:その場の空気感によって、役者さんの言い方も変わるでしょうしね。しかも、セリフを言いながら動きのカウントをとるってできないんですよ。映像やSEでタイミングをとってもらったりしました。

笹尾:映像担当の大鹿奈穂さんとも直接打合せしたりもしました。全体のことはウォーリーさんが全て把握しているので、「このシーンはこういう映像が流れるので、合わせた動きを作ってください」ということもありました。

Zuke:逆に笹尾さんの方から、「こんな動きってバレーボールのシーンに使えませんか?」と面白い動きを提案したりもしましたよね。

笹尾:いろんな動きの作り方があった方が面白いよねー。

Zuke:ですね。普通は舞台の振付の場合、お題の曲をいただいて、振りを付けて、出演者に教えて終わりで、稽古場にいないことが多いと聞いたのですが、僕たちはなるべくウォーリーさんの横にいてその場で動きをつけたりしました。「普通、振付師はこんなに稽古場にいないよ~」とか言われましたね。

笹尾:言ってたねー!まぁ来てくださいって言われれば行くよね(笑)?

――本番では、漫画「ハイキュー!!」の世界観が舞台でもそのままですよね。

笹尾:それはウォーリーさんをはじめ、みなさんすごく意識していたんじゃないかな?めちゃくちゃアツイ漫画なので、漫画に描かれている根本の軸はブレないようにしていましたね。

演劇「ハイキュー!!」振付師左 HIDALI笹尾&振付助手Zukeインタビュー_6

――“動き”の見せ場シーンはどこですか?

笹尾:チラシやポスターのポージングが再現されているところですね。最初に今回のチラシを見たときに「すげーカッケー!」と思ったんですよ。それで、ウォーリーさんに「これ舞台でやりません?」って相談したんです。日向役の須賀君が中央の一番高い上にいて、バッと画がキマる。そういう、大人数で一枚の画をつくっていくシーンは何カ所もあるので、見せ場ですよ!

Zuke:その他で言えば、ダンスアンサンブルのような、キャラクター以外の動きも全部役者さんたち本人がやっているので、世界観を作り上げていく熱量がすごいんですよ。絶対に疲れるのに全て出演者だけでやってる。「あ、あの人、実はここでこんなこともやってるんだ!」という動きがあるのも面白いですね。

笹尾:そうだね。後ろの席なら舞台の全体が観られるし、前の席なら役者の熱量を感じられるし。

――観る席によってずいぶん印象が変わりそうですね。

笹尾:そうなんです。しかも舞台は生ものですから、たぶん毎公演違うはずなんです。だから振付や映像って素晴らしいパフォーマンスだけれど、結局は作品のアシストしかできない。最終的にお客さんの前に立つのは役者さんですからね。毎公演観るお客さんも違うから、役者さんのテンションも変わってくるだろうし、毎回違う感動を味わえるんじゃないかな。

Zuke:全然違いますよ~。

笹尾:ほんとに、別物だよね。

Zuke:何回観ても飽きないんです、ほんとに!

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左 HIDALI(ひだり)・笹尾功プロフィール
振付師。神奈川生まれ。世界的コンテストで数々の受賞歴を誇る日本屈指のロックダンスチーム「SHUFFLE!!」のメンバー。ロッキング以外にも、肉体やアスリートを活用したアスレチックな動きを得意とし、ライブやリアルステージを多く担当。ダンサーとしてメディア露出することも多く、ダンス番組のリポーターやチュートリアルDVD講師として活躍。LAから帰国した2013年5月より正式に振付師ユニット「左」(HIDALI)へ入った。「左」(HIDALI)は、ヒト、モノ、オト、コトなどを「動かす(振り付ける)」ことによって引き起こされるリアクションをつくる集団である。

Zukeプロフィール
エンターテインメントパフォーマンス集団「Team Black Starz(ブラスタ/チームブラックスターズ)」のリーダー。メンバーのほとんどが会社員という異色のグループながら、邦楽や人気のアニソンを使用したパフォーマンスは、動画共有サイトでの累計再生回数が1,000万回を越えるなど国内外で絶大な人気を誇る。結成以来、全作品の構想・振付に携わっている唯一のメンバーでもあり、多くの案件をまとめる「頭脳」でもある。左との関わりも深く、現在は助手のほか、様々な左作品にも出演している。

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