『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』安蘭けいにインタビュー!「“自分が知らない自分”とひょっこり出会える稽古場です!」


1964年から69年までNHK人形劇シリーズとしてオンエアされ、奇想天外な物語と個性豊かなキャラクター、そして誰もが口ずさめるテーマソングで多くの視聴者から愛された『ひょっこりひょうたん島』。あれから46年・・・『ひょっこりひょうたん島』が全く新しい舞台作品として生まれ変わる!本作でこどもたちに愛されるサンデー先生を演じる安蘭けいに話を聞いた。

『ひょっこりひょうたん島 』安蘭けいインタビュー

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ワークショップから始まった稽古・・・新たな“演劇の扉”を開く

――『ひょっこりひょうたん島』では、出演者の皆さんでワークショップを重ねていると伺っています。そういう現場を経験なさったことは?

初めての経験です。本番が近付いてきて、これから更に色んなことを覚えたり、新しい何かを呼び起こしていくと思うとちょっとした武者震いですね(笑)。ワークショップは『ひょっこりひょうたん島』が元々人形劇だったこともあり、「じゃあ、まずは皆で“人形”になってみようか」・・・みたいなところから始まりました。これまで“人形”の気持ちを考えたこともありませんでしたし、動きについても研究するのは初めてでしたので、それがすごく新鮮で。

――以前お話を伺った時に『幽霊』(2014年)のお稽古でエチュードを体験して驚いた・・・と仰っていましたが、今回はその先の世界にも足を踏み入れた、と。

そうですね(笑)、『遠い夏のゴッホ』(2013年)という作品でアリの女王役をやった時のことを思い出してます(笑)。あの時も人間ではない存在の動きを振付の方と研究したなあ・・・なんて。今回も新たな演劇の扉を思いっきり開いてる感じですね。

『ひょっこりひょうたん島』安蘭けいインタビュー_5

――演出の串田和美さんと組まれるのも初めてですよね。

初めてです!とても自由な発想をお持ちで、稽古場での私たちの表現に対して「正解」「不正解」のジャッジがないんです。何でも許していただいている様な感覚ですね。串田さんとのお稽古中、時に“自分が想像していなかった自分”との出会いがあるのもすごく面白いです。

――俳優として引き出しが増えそうなお稽古場です。

本当にその通りで、自分が意図していなかった世界にふっと連れて行っていただく感覚が新鮮なんですよね。特に今回はミュージカル以外で活躍なさる方たちとご一緒ですので、ワークショップで共演者の方の思いもかけない発想に驚かされることも多いんです。「ああ、そう来たか・・・なるほど!」みたいな(笑)。

――安蘭さんが演じるサンデー先生、今回の舞台版ではどんなキャラクターになりそうでしょうか。

まだ完全には固まっていないので、現時点で見えている部分のお話を(笑)。彼女は学校の先生で、子どもたちをとても大事にしている女性です。正義感を持ちながら天然の部分もあり・・・周囲から見たら少しユニークな発想をする人だと思います。本人的には自分のことを“常識人”だと信じて振る舞っているのですが。演じる側から見てもとても魅力的な女性です。

『ひょっこりひょうたん島』安蘭けいインタビュー_3

――『サンセット大通り』でお話を伺った時に、ノーマと自分とを繋ぐ糸は「女優であること」とおっしゃっていましたが、今回は全く違うアプローチになりそうですね。

『サンセット大通り』の時とは全く違いますね。今の時点では共演者の方たちと舞台上でどうコミュニケーションを取っていくかということに重点を置いてワークショップに参加しています。稽古前にはみんなで太極拳をやっていたりもするんですよ。

今、自分の中で迷いながらも方向性を見つけようとしているのが、お稽古中の舞台上での居方・・・というか、心の置き所でしょうか。サンデー先生はみんなを統率する先生ですが、そういう気持ちを常に胸に置いてワークショプに参加するのか、安蘭けい本人としていろいろな面を出していけばいいのか模索中です。いろんな形の芝居のやり方があると思いますので、自分なりに何かしらの道を見つけたいな、と。

――俳優さん同士でディスカッションをしたりすることも?

今回の現場ではそういうことも良くあります。串田さんからの指示を待つだけではなく、自分たちからも何かを提示して行こうという感じですね。今はガッチリ全てを決めて稽古が進んでいくというよりは、たくさんのアイディアや案を出し合っている状況で、この先、そのアイディアの中から串田さんがチョイスをなさっていくんじゃないかと。

――まさに「漂流劇」ですね。

確かに!私はこういう風に作品を作る体験が初めてで、時に「大丈夫かな・・・」と自分がちゃんと出来ているのか不安に思ったりもするのですが、大森(博史)さんをはじめ、串田さんとずっと一緒にやっていらした方たちが「大丈夫だよ~」と引っ張って下さるのでそこはすごく心強いです。

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『サンセット大通り』と『CHESS』の再演で見えたもの

――今年は『サンセット大通り』『CHESS』と二本の大作ミュージカルにもご出演なさいました。

両作品とも初演に続いて再演にも参加させていただく形になりました。『サンセット~』は、実はWキャストの濱田めぐみちゃんと、お互いの稽古を全く見ずに本番を迎えたんです。

――それは意図的に、ですか?

そうです・・・演出の鈴木裕美さんからそういうお話があって。最初はやはり気になりましたし、どういう風に進んでいるんだろうと、Bチームのお稽古を見たくて仕方がなかったんですが、ジョー役の(平方)元基くんとも「ここは自分たちの道を」と話し合って、裕美さんに全てを委ねることに決めました。本番は大阪の千秋楽・・・最後の最後でめぐちゃんのノーマを観ました。多くの方が仰る通り、私が演じるノーマとは全く違うアプローチだったので、すごく不思議な感覚でしたね。

『ひょっこりひょうたん島』安蘭けいインタビュー_2

――大千秋楽の後で、お二人が『アラジン』を観劇しているお写真がSNSに上がっていて、ものすごくほのぼのしました(笑)。

そう!普段はとても仲が良いんです。

――そして秋には『CHESS』のミュージカルバージョンにご出演。フローレンスもとても難しい役柄だったかと。

フローレンスも難役でした・・・ある意味捉えどころのない人というか。この作品はコンサートバージョンでスタートして、今回はミュージカル版での上演だったのですが、コンサートの時とはまた違った手ごたえがありました。とても仲の良いカンパニーでしたし、お客さまからの反響も大きくてうれしかったです。

――再演作品ですと、改めて見えるものや気付きもありますよね。

今年出演させていただいた海外ミュージカルは両方とも再演で、初演時の熱量を噛み締めながら、新しい舞台に出来ればと思って参加していました。再演ということで、初演の時と比べて自分の成長を再確認できたのは大きな収穫だったと思います。初演の時は出来なかったり分からなかったことが再演でふっとクリアできたり…常に勉強、ですね。

――今後やってみたい作品や役がありましたらぜひ!

『サンセット大通り』も『CHESS』も基本はシリアスな作品でしたので、近いうちにちょっとコメディ路線のものもやってみたいです。ミュージカルでもタッチの軽い作品なんていいですね。

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――そう伺うと、安蘭さんに“コメディ”というイメージはあまりないかもしれません。

そうなんです、全くないですよね(笑)。私自身はコメディやお笑いも大好きなので、そういうモードが舞台上で活かせたら楽しいだろうな、と思うんですけど。笑いに関しては関西人の血が騒ぎますし(笑)。ミュージカルでも海外作品への出演が多いので、日本のクリエイターが作った作品にもトライしてみたいです。

――そこで“小ネタ”を見せるシーンがあったら最高ですね!

確かに(笑)!積極的に行きたいと思います!まずは12月から幕が開く『ひょっこりひょうたん島』で新しいジャンルの舞台に挑戦しますが、もし色々な小ネタが出て来るような作品に出演が決まった時は、絶対取材にいらして下さいね(笑)!

『ひょっこりひょうたん島』安蘭けいインタビュー_7

『サンセット大通り』では“忘れられた大女優”・ノーマに挑み、『CHESS』では国家の争いに巻き込まれながらも、強く生き抜く女性・フローレンスを演じた安蘭けい。そんな彼女が2015年の締めくくりに出演するのが『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』だ。

演出家・串田和美のもと、俳優同士のワークショップから作品を作っていく体験は初めてだという安蘭が「怖さも楽しさもある」と語る稽古場では一体どんな化学反応が生まれているのだろう。明るく語る彼女の心の奥にある葛藤と情熱とが舞台上でスパークする様を早く客席から観たいと思う。

シアターコクーン・オンレパートリー2015-2016+こまつ座
◆『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』◆

東京公演:2015/12/15(火)~12/28(月) Bunkamuraシアターコクーン
東京2月公演:2016/2/3(水)~2/11(木・祝) Bunkamuraシアターコクーン
松本公演:2016/1/9(土)~1/10(日) まつもと市民芸術館 主ホール
大阪公演:2016/1/15(金)~1/17(日) シアターBRAVA!
福岡公演:2016/1/23(土)~1/24(日) キャナルシティ劇場

特設サイト
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_hyotan/index.html

CONCENTO 03-6427-4412
ヘアメイク・佐藤裕子〈スタジオAD〉 スタイリスト・森保夫〈vitamins〉
撮影:高橋 将志

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