「ETERNAL CHIKAMATSU ―近松門左衛門『心中天網島』より―」中島歩インタビュー!「サプライズのあるお芝居になると思います」


演出家デヴィッド・ルヴォーのオリジナルアイデアに基づき、谷賢一が書き下ろす新作戯曲『ETERNAL CHIKAMATSU』。遊女小春、治兵衛、その妻おさんの三角関係を描いた、近松門左衛門の代表作『心中天網島』を翻案に、現代社会に生きる女性・小春が近松の世界を旅し、新しい愛の存在に気付いていく。本作に出演する中島歩が、公演に向けての現在の心境、意気込みを語った。

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩1.jpg

関連記事:深津絵里×中村七之助「ETERNAL CHIKAMATSU 近松門左衛門『心中天網島』より」2016年2月上演!

――出演が決まった時のお気持ちから聞かせていただけますか。

シアターコクーンの舞台にたてるということがまず嬉しかったですね。なにかきっかけがあったわけではないのですが、僕のなかでは憧れの劇場なんです。その憧れの劇場に出演できる嬉しさと、(主演の)深津(絵里)さんに会える嬉しさと(笑)。そういう感じです。

――深津さんのファンなんですか?

そうですね(笑)。NODA・MAPで見たとき、力強くてエモーショナルで・・・。野田(秀樹)さんの作品ということもありますけれど、重力を感じる立ち方というか、どっしりとした感じも魅力的だなと。普段の映像で見る印象だと、吹いたら飛んでいきそうな儚さを感じますよね。そういう美しさもありながら、舞台ではまた違う印象があって。両方持っている、素晴らしい方だなと思っていました。

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩2 

――演出のデヴィッド・ルヴォーさんのオリジナルアイデアが基にされた新作戯曲ということも話題ですね。

近松門左衛門の『心中天網島』を翻案する、古典を現代風にするということ、そして演出がデヴィッドさんということで、かなり想像を絶することになるなと思っています。いまは不安とワクワクが同居している感じです。
今回ご一緒することになるまで、デヴィッド・ルヴォーさんのことはお名前しか知らなくて、作品も観たことがなかったんです。今回プロフィールを拝見したら、ジュリエット・ビノシュさんともやられているんですよね。すごい方なんだなと。

――近松の世界がデヴィッド・ルヴォーさんの演出でどう現代と結ばれていくのか気になるところですね。

いわゆる“心中もの”の古典が、お客さんにどのように伝わるかってことが気になりますよ。どう受け取られるのか。
シノプシスを読んだ印象だと、心中は、恋した気持ちを貫き通したい気持ちと、社会的なモラルが相反するがゆえに起こりうることだと思うんです。けれど、その社会的なモラルというところを現代に寄せている感じがしました。すごく身近なことが社会的なプレッシャーになるみたいなことというか。

あとはどういう表現になるかですよね。ルヴォーさんの演出で、どういった表現、どういった見せ方になるのか、それは本当に未知なので。それが不安でもあり、楽しみでもあります。

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩3

――デヴィッド・ルヴォーさんとはお会いになりましたか?

はい、一度。

――第一印象はいかがでしたか?

疲れてるなあと。その印象が強いです(笑)。あとでスタッフに話を聞いたら、日本に到着して、仮眠もそこそこに、今回の作品の出演者と会われていたそうなんです。それも一人一人に同じように丁寧に、作品の成り立ちを説明されていたそうです。なぜこの作品をやろうと思ったのか、一生懸命に。
演出家さんですから、存在感もすごいですし、ものすごくコミュニケーション能力に長けた方なんだろうな、と感じました。すごく緊張しましたけど、良い俳優と思われようと頑張ってアピールしました(笑)。

――まだ稽古まで時間がありますが、現段階で準備しておこうと思ってることや、このあたりが課題になりそうだなというようなイメージはありますか?

まだ具体的に決まってることが少ないので・・・。ただ、現段階のシノプシスでは関西弁になりそうだったので、そこは気になります。別の舞台で、台本で1、2行程度の関西弁を話さなければならないことがあったんです。それは関西弁をしゃべらない人が関西弁をしゃべる役だったので、上手く話せなくて良いのですが、大阪公演のときはちょっとニヤニヤしちゃいました。恥ずかしくて(笑)。まだ関西弁になるか決定していないのですが、そうなったら課題になってくるんじゃないですかね。あとは、『心中天網島』が、人形浄瑠璃のために書かれたものですし、そこに本質があると思うんです。翻案ではあるんですけど、そこは知っておく必要があるなって思います。

――さきほど深津さんの舞台を観ていたというお話がありましたが、もともと舞台には興味があったんですか?

この仕事を始めてから観始めて、そこからどんどんハマっていきました。僕自身、これまでの仕事も舞台の方が多いです。

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩4

――最近では映像作品への出演も増えていますよね。それぞれを経験してみて演技の取組み方の違いなどはありますか?

映像のほうは、画面の一部としてどう見せるか、絵的な部分が強いというか。演劇は、俳優の身体性みたいなところまで問われます。どんどん俳優のものになっていくというか。表現の多様さということにおいて、演劇は面白いですね。表現についての視野を広げてくれる場のような気がします。

――中島さんは2013年の美輪明宏さん主演『黒蜥蜴』が初舞台で、今年もご出演されていましたが、美輪さんの印象に残ってる言葉はありますか?

言葉ではないですが、2年前と今回で向き合い方が変わったというか。美輪さんは、自分の思うものがこれだいうことがはっきりしている方。美輪さんの演出は厳しいですけど、ロジックに考えてしまいがちな、へんなこだわりがある僕には、そのスパルタな演出の必要があるんだと。

美輪さんが求めるところに行くまでにはすごく恥ずかしかったり、腹が立ったりすることがあるんですけど、その先には新しい引き出し、表現の幅が広がっている。それくらいやってこそ、その先に行くことができることを教わった。といいますか・・・色々な演出家さんがいて、それぞれの求めるものに応えることが俳優の仕事だと実感できたというか。

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩5.jpg

――2年の間に舞台や映像、いろんな現場を経験したからこそ感じられたことかもしれませんね。

そもそもの意識が変わってきましたね。以前はもっと簡単に考えていたんですが、「これでやっていくんだ。この仕事で生活しているんだ」という怖さや覚悟が必要なんだなと。
自分が好きな芝居というのはありますが、それにとらわれずにどんどん広げていった方が面白くなるんだということも最近すごく感じます。自分のこだわりが全然大したものじゃなかったってことですよね・・・根拠のない自信みたいなのを、バリバリ持ってたんだけど(笑)。

――そんな新たな変化のなか、ルヴォーさんの演出で、どんな中島さんの新たな一面が引き出されるのか楽しみです。

初めてなので、どんな演出をされるのか分からないですが、新しい自分、演じたことないところに行けたらいいなとは思います。どうなるんでしょうね・・・(笑)。

――では最後に、この作品を楽しみにしている方へのメッセージを。

現代において、いま近松の心中ものが成り立つのか、お客さんがどう感じるのか気になります。僕にとってもまだ未知のお芝居ですが、きっとサプライズのあるお芝居になると思うので、ぜひ劇場にご来場ください!

『ETERNAL CHIKAMATSU』中島歩6.jpg

◇中島歩(なかじま・あゆむ)プロフィール◇
1988年10月7日生まれ、宮城県出身。2013年、舞台『黒蜥蜴』で俳優デビュー。2014年、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』に出演し注目を集める。主な出演作に、映画『グッド・ストライプス』、舞台『生きてるものはいないのか』など。11月18日(水)午後10時より、BSプレミアム山形発地域ドラマ『私の青鬼』、12月4日(金)より、青山真治×古典プロジェクト『フェードル』に出演。

◇ETERNAL CHIKAMATSU ―近松門左衛門『心中天網島』より―公演情報◇
<あらすじ>
妻子持ちで現在失業中ながらも風俗店に通い詰めている男・ジロウは、そこで働く売春婦・ハルに惚れ込み、周りの制止も振り切り命がけの恋に落ちるが、突然ハルはジロウへの態度を変え、捨てられてしまう。
自暴自棄に陥り、街をさまようジロウは、かつて遊女の涙で溢れたという蜆川(曽根崎川)のあった場所で意外な人物と遭遇し、古い古い恋の物語に引き込まれていく――。

<公演スケジュール>
2016年2月29日(月)~3月6日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2016年3月10日(木)~3月27日(日)東京・Bunkamuraシアターコクーン

<スタッフ・キャスト>
作:谷賢一 
演出:デヴィッド・ルヴォー
出演:深津絵里 中村七之助/伊藤歩/中島歩 入野自由 矢崎広 澤村國久 山岡弘征 朝山知彦 宮菜穂子 森川由樹/中嶋しゅう/音尾琢真 ほか

撮影:原地達浩

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。