Dステ17th『夕陽伝』瀬戸康史インタビュー「昔も今も変わらない愛の形を楽しんでください!」


実力派若手俳優によるエンターテイメント舞台を世に送り出し続ける、俳優集団D-BOYS。2015年10月22日(木)には、彼らによる演劇ユニット公演「Dステ」の第17回公演『夕陽伝』が幕を開ける。今作は日本神話・古事記をモチーフにしており、殺陣あり、笑いあり、涙ありの青春奇譚だ。
主演は注目の演技派俳優、瀬戸康史。9月に公開され、モントリオール世界映画祭コンペ部門に日本作品で唯一出品された主演映画『合葬』、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』や、白井晃演出の舞台『マーキュリー・ファー』でもその演技が高く評価され注目を集めている。
俳優集団D-BOYSの中心メンバーでもある瀬戸に、Dステ17th『夕陽伝』の見どころについて聞いた。

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――「Dステ」出演は3年半ぶりですね。ホームに帰ってきた感覚はいかがですか?

プレッシャーはありますね。Dステは僕らD-BOYSが主体となる作品なので、責任を感じます。舞台そのものは年始に白井晃さん演出の『マーキュリー・ファー』に出演しているので久々ではないんですが、自分たちが中心になって舞台をつくるというのはやっぱり違う感覚です。その責任感は、僕だけじゃなくてメンバーそれぞれが持っていると思います。誰も口には出さないですけどね。

――今作のテーマは、日本神話「古事記」だそうですね。

そうなんです。僕は8年前の初演からDステに出演しているんですが、その頃からDステは、あまり現代劇をやらなかったんですよ。昭和時代の話や、シェイクスピアや、アガサ・クリスティーや、韓国の題材や・・・自分たちの暮らす現代日本を描いた作品はほぼなかったんです。
今回17公演目となる『夕陽伝』は日本神話を基にしていますし、現代劇ではなくあえて違う世界観に挑むことが、僕らに課せられた試練なのかなあと思いながら、ずっとやってきています。

――「古事記」は読まれたことがあったんですか?

「古事記」という名前はもちろん聞いたことがありましたけど、どういう話なのかはまったく知らなかったです。今回出演が決まってから本を読んだりして勉強したら、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)とか、有名な話もたくさんありました。
でも『夕陽伝』では日本神話はあくまでもベースでしかなく、ファンタジー要素やスパイスとして物語に絡んでくるだけです。ストーリーもかなりわかりやすいんですよ。

海里は「人間らしいヒーロー」

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――チラシにも「青春奇譚」とありますよね。『夕陽伝』の魅力はどんなところですか?

神話ですけれど、今に通じるようなものが作品の中にたくさん詰められているところですね。親子や兄弟の絆だったり、恋愛要素も絡んできます。神話でも今でも、恋愛が大きな問題になるのは変わらないのかなって感じますね。

――瀬戸さん演じる海里(カイリ)はどんな役ですか?

海里は王の長男で、自分もいずれは王にならなきゃいけない立場なんです。それなのに「国を滅ぼせばいい」なんて言ったり、なんにも考えていないような発言をするんですよ。けど本心は、国を守らなきゃいけないとか、自分が王を継がなきゃいけないというプレッシャーを誰よりも強く感じている。

人って、喋りながらも、内心ではその言葉の裏にあるなにかを汲み取ってほしいと思うことってありますよね。実は言ってることと真逆のことを思っていたり・・・そんな葛藤が海里の発言にも表れていて、とても人間らしいなと思います。主人公が格好いいヒーローじゃないというのは共感できていいですよね。むしろかなり屈折している(笑)。演じるのはちょっと難しいですね。

――瀬戸さんと海里に似ているところはあります?

僕は王になるなんて大きな運命を背負ってないので、そこは共感するのは難しいんですけど(笑)。でも海里にも弟がいるように、僕も実生活で3人兄妹の長男なので、すごく気持ちがわかる。長男だからこその呪縛みたいなものってあるんですよね。

海里はきっと小さい頃から、「長男なんだから王にならなきゃいけない」って言われ続けて育ったんだと思うんです。だから、僕らでいう反抗期みたいなものが海里にとっては「自由になりたい」「外の世界を見てみたい」ということになってるんだろうなあ。その気持ちはものすごくわかりますね。

――長男だからこその責任感が、瀬戸さんにもあるんですね。

ありますねえ。僕はわりと、問題や悩みを自分自身の中に溜め込んで、自己解決しようとするタイプなんです。たぶん海里もそういうタイプなんじゃないかな。それをあまり周りに悟られないようにするのも似てるかな。
あと、僕も海里も、嫌なことから目を背けるようなところがあるかも。中学生の頃に先生から言われたことあるんですよ・・・「瀬戸くんは問題から目を背けることがある」って通信簿に書かれました(苦笑)。今は問題にも向きあうようにしてますけど。

――それは、なかなかハッキリ言われましたね(笑)

だけどこの間、その先生から僕のブログにコメントがあったんです! その時は、「いつも頑張ってるね」と褒められました(笑)
でもやっぱり、子供の頃に作られた性格って、変えようとしてもなかなか変わらない事もありますよすね。『夕陽伝』のセリフでも、「人は簡単には変われない」というのがあるんです。変わりたくても、人ってやっぱりそう簡単には変われない。

恋に関してもそうなんです! 海里は幼馴染の陽向(ヒナタ/小芝風花)のことが好きなんですよ。だけど、弟の都月(ツヅキ/宮﨑秋人)の方が彼女の恋人にはふさわしいと思っているし、王としても、自分よりもしっかりした信念を持っている弟のほうがいいと思っている。反対に弟は、兄の海里の方が、王としても陽向の恋人としてもふさわしいと言う。

切ないですよ。兄弟で、お互いを思いすぎている。どちらも辛い選択を迫られるので、演じるうえでは精神的にもすごくキツくなるのかもしれないです。
ただ、二人は真逆の性格の持ち主なので、舞台上では面白い対比になるんじゃないかな。

――瀬戸さんなら、弟や親友と同じ人を好きになったら・・・?

うーん、好きな人は遠慮しないですね。積極的に行きたいですね!

――恋愛については、物語のテーマにも「亡くなった大切な人を生き返らせたいか」という問いがでてきますね。

それは誰もが一度は思うんじゃないですかね。死んだじいちゃんに会いたいとか、思いますよ。『夕陽伝』でも死者が生き返りますが、もし本当に生と死の境が曖昧になってしまったら、死生観がよくわからなくなってすごい世の中になるんじゃないかなあ。人の痛みがわからなくなっちゃったり、自己中心的な人間ばかりになっちゃったりするかも・・・。

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ライバルであり仲間。俳優集団D-BOYSという存在

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――稽古はどんなふうに進んでいますか?

演出の岡村俊一さんは、1シーン1シーンを丁寧に稽古してくださいます。セリフを覚えるためというよりも、なぜそのセリフが出るのかを掘り下げたり、そのシーンの意味を把握したりといったところから、ひとつひとつ積み重ねている感じです。

――岡村さんは、稽古場で本読みをしない演出家だと聞いたことがありますが、今回は読み合わせもされたんですね。

小芝さんは初舞台なので、そういった丁寧な作り方がものすごく合ってるんじゃないかな。僕も岡村さんの作品に参加するのは初めてですが、かなり舞台を拝見していて、岡村さんの演出ってわりとド派手かと思ったら、心にストレートに響くセリフの言い方をさせたりするんです。
たぶんそれは、「なぜこのセリフをこの人は言うのか」を突き詰めている結果なのかなと感じています。つまり役者自身がその役をどれだけ掘り下げているのかということにもなるんですけどね。

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――稽古場の雰囲気はどうですか?

みんなで作品を創っているという感覚がものすごく感じられますね。芝居がちょっと詰まったりすると、自分が出ていないシーンでもみんなで話し合って「これはどういう場面だろう?」とひとつひとつ丁寧に紐解いていくんです。そうすることによって、信頼感も芽生えてきてるのを感じています。

どのキャラも濃いうえに屈折しているので、役としてとても面白いです。その役に合わせてセリフも付け加えていくんですよ。しかも岡村さんがその役を演じる役者に「おまえだったらこの場面でどう言う?」って聞くんです。だから岡村さんは、僕たち役者同士の距離を近づけてくれるだけでなく、僕と海里の距離も近づけてくれていますね。

――役に合わせてセリフを加えるのは面白いですね! 岡村さんの過去の演出作品を見ると、役者さんのプライベートネタが出てくるんじゃないか・・・なんて期待しちゃいます。

どんな舞台になるのか本番までわかりませんが、まずは殺陣のシーンが多いので筋トレに力を入れています。みんなで輪になって一緒に数を数えながら腹筋するんです。部活みたいですよ(笑)。そういうちょっとしたことから団結力が生まれてくるんでしょうね。ちなみに、殺陣のシーンはかなり多いですから見どころですよ!

――本格的な殺陣師さんに指導いただいてるとのことで、楽しみです。客演としては、ベテラン俳優の山本亨さんが参加されますね。

山本さんと共演するのは初めてなんですが、絶対の信頼を置いています。ご本人は「あまり頼りにしないで」なんておっしゃるんですけど、やっぱり頼りにしちゃいますね。いやあ、存在感ありますよ!

――登場するキャラクターもすべて個性的で、笑いも溢れる舞台になるらしいですね。ずっと一緒にやってきた俳優集団D-BOYSの仲間として、久々の共演はどうですか?

他のキャストそれぞれが、今まで映像や他の舞台作品でも見たことがないような役に挑戦しているので、ものすごく楽しみです。ここ数年でみんないろんな現場を経験してきて、10代にはあった甘えがなくなりストイックになってきた。それによって、今回の舞台ではより団結力が出てるなと思いますね。

こんなに近くにたくさんライバルがいるということが、ものすごく刺激になっています。みんな思ったことを正直に言ってくれるんですよ。社交辞令がないので、すごくいい関係性だと思います。ライバルでもあり、仲間でもあり、良い距離感ですね。

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――瀬戸さん自身も、大河や映画祭などいろいろな経験をされましたよね?

挑戦した、というと言葉が軽い気がするんですけど・・・新しいことをいろいろやってみましたね。イベントで一人芝居をしたり、初めて海外の映画祭に参加してフランス語でスピーチしたり、今回の『夕陽伝』だって初めての日本神話ですし。

お芝居以外にも、ナレーションなどの声のお仕事や、絵を描かせていただいたこともあるんです。あるイベントで、自分で絵を描いて物語を創った時はかなり苦労はしましたね。でも、観に来てくれたお客様たちが涙してくださったりしているのを見て、「ああ、こういう表現の仕方もあるんだなあ」と感じたので、今後はお芝居以外の表現もしていきたいと思います。

――お客さんの反応を、瀬戸さん自身も舞台上で感じているんですね。

そうですね。きっとお客さんと同じだと思います。目の前で行われているライブ感というのは魅力的ですよね。同じ舞台でも、毎公演違ってくる。だから今回の『夕陽伝』も、劇場まで足を運んでいただいて近くで感じて欲しいですね。

『夕陽伝』は愛の形や家族間の絆といった、昔から変わらないなにかをストレートに感じることができる作品だと思うんです。兄弟のことを思い出したり、家族のことを思い出したり、大切な人のことを思い出したりする物語だと僕は思っています。
たとえば海里が山賊兄弟に襲われるシーンがあって、その兄弟二人を見て海里は自分の弟を思い出すんですよ。僕も日常生活で家族と離れているので、その気持ちはとてもわかります。

――ではこの『夕陽伝』、どんな方に観ていただきたいですか?

子供から大人まで、舞台を観たことがない方にも構えず観に来ていただいて、楽しんでいただけたらいいなと思いますね。殺陣がかなり迫力があるので見ているだけで興奮するし、ストーリーがわかりやすいのでお子さんでも楽しんでいただけますよ。「神話を勉強しなきゃいけないのかなあ」と気負わず、ぜひ、フラットな気持ちで観ていただきたいです。

――瀬戸さんたち演じる『夕陽伝』のほかに、関西版D-BOYS・劇団 Patchが同じ脚本でもうひとつの『ユウヒデン』・・・『幽悲伝』を上演されますね。

そうです!あちらの『ユウヒデン』は、脚本を書いた末満(健一)さんが演出されるんです。しかも『夕陽伝』にも出演する中山義紘と三好大貴が出演するんですよ。
同じ脚本だけど、稽古場の雰囲気も全然違うみたいですね。こちらの『夕陽伝』は青春奇譚で、向こうの『幽悲伝』は悲劇なので、ぜひ両方観ていただきたいです。

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殺陣あり、笑いあり、涙ありと、「もっともDステらしいDステ」である今作。Dステ以外ではできないようなエンターテイメント性溢れる作品に期待が募る。

公演は2015年10月22日(木)~11月1日(日) 東京・サンシャイン劇場にて上演後、11月21日(土)~22日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホールにて関西公演。
関西版D-BOYS・劇団Patchによる『幽悲伝』は、12月19日(土)~20日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。

撮影:高橋将志

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