『ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>』岡田将生インタビュー!「僕たちと一体となって、物語を体感しましょう」


登場人物は二人。中年弁護士キップスと若い俳優は、キップスの呪われた体験を観客のいない劇場で語る――。英国ホラー演劇の傑作『ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>』が、岡田将生、勝村政信の新キャストで7年ぶりに上演される。若き日のキップス(ヤング・キップス)を演じる俳優役に挑むのは、昨年初舞台を踏んだばかりの岡田将生。「また舞台に立ちたかった」という彼に、舞台の魅力、今回の舞台への意気込みを聞いた。

岡田将生

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――昨年11月に『皆既食』(蜷川幸雄演出)で初舞台を踏まれました。その時の心境を教えてください。舞台で演じてみていかがでしたか。
舞台で、毎日同じ芝居していると飽きる人もいると周りから聞いていたのですが、いざやってみると、突き詰めてやっていけば毎回違うお芝居になるんです。場面ごとにすごく感情が変わっていく。蜷川さんには、「そういうふうに、感じたままにやってほしい」と言われてました。すごく充実した日々でした。辛い部分もあったけど、それ以上に毎日がすごく楽しくて。案外舞台が自分の性格とマッチしてました。

――お客さんの顔が見えるところでお芝居をすることが楽しかった?
そうですね。生で演技することがなかったので、お客さんのリアクションがすごく分かりました。「こういうところで笑うんだな」とか、「あ、悲しい顔をするんだな」とかが直にわかったんです。最後に拍手してくださるだけで、生きてる感じがしたというか。映像とは感じるポイントが全く違ったんです。
映像だと、1カット1カット感情を作っていきますが、舞台は最初から最後まで、止まることなく集中して演技ができるので、感情の起伏も自然に作ることができます。それが今までにない感覚でした。なにより最後にお客様から拍手をいただけるだけで、あんなにも充実するものだと思っていなくて、すごく感動しました。

――お客さんの前で生で演じることは、怖いとかはなかったですか?
初日は、戦争に行くような感じ。大げさではなくそれくらいの気持ちでした。今回も、またそれが待ってるかと思うと、なかなか辛いなと思います(笑)。でも、何事も楽しいこともあれば辛いこともある。それを乗り越えて、お芝居が出来たらいいなと思っています。

――そういう感覚は、舞台をやってはじめて感じたことですか。
そうですね。映像のときにももちろんあります。クランクインのときとか、前日寝れなかったことももちろんありますし。でもやっぱり映像とは違うものがある。自分のなかでは舞台に惹かれるものが多かったので、今回はどうなるかわからないですけど、これでまたひとつ舞台のいいところだったり、違うところを知ることができるのも嬉しいです。自分の糧にしていけるので。

――では、この作品の話がきたときの心境は?
もう一度やりたいなと思っていたので、こうやって声をかけてくださったのは嬉しかったです。パルコ劇場で出来ることもそうですが、なにより勝村さんとの二人芝居というのが魅力的でした。

岡田将生

――脚本を読まれたそうですが、作品の感想をお聞かせください。
どういう結末になるのかも分からず読みましたが、ただただこの物語に引き込まれていきました。いろんな鳥肌が立って、読み終わったとき、この世界観のなかにすごい入ってた!って思ったんですよね。僕はこの物語に入り込んでる時点で、やりたいと思った。しかも2人で物語を進めていく面白さと、恐怖と不安と混乱と。自分の頭の中ですごくイメージができて。それを芝居で見せていくのは大変だけど、こんなに面白いことはないと思ったので、できるかどうかわからないけど、やってみたいって思ったんです。

――イメージできたのは、舞台上の勝村さんとの姿ですか?
そうですね。どういう雰囲気で自分がどう舞台に立って、どう表現するか、お客さんと一体となって一緒に物語を共有しながら進んでいく感じもおもしろいなと思いました。

――岡田さんは、勝村さん演じる弁護士キップスの若き日を演じる“ヤング・キップス”に挑みますが、ヤング・キップスの印象は?
未来ある情熱をもった若者で、使命感にあふれていて、物事に向き合っていくということができる人物だと思います。僕とはだいぶかけ離れてる感じです(笑)。

――共通するところはないですか?
かけ離れてると言いましたが、自分も物事に対しては真摯に向き合っていきたいという気持ちはあるので、それは共感できるところかも。責任感があるところはなんとなく共感できたりします。

――“ヤング・キップス”は、西島秀俊さん、上川隆也さんらそうそうたる顔ぶれの俳優たちが演じてきた作品でもありますね。資料をご覧になったりしましたか?
少し見ましたけど、勝村さんが、今回キャストを変えてやる意味として、前回とは違う、それを越えなくては行けないんだということをおっしゃっていて、それはほんとうにその通りだなと思っています。ですから今のことしか考えていないです。僕たちなりの『ウーマン・イン・ブラック』をつくろうと。そういう心構えでいます。

――勝村さんとの共演についてはいかがですか。
演技に対しての的確なアドバイスをくださるんです。以前、共演させていただいたときも、「ここはだめだ」「それはいいけど、これはだめ」とか、はっきりと教えてくれました。勝村さんはずっと蜷川さんのところでされていたこともあって、そういうことに対して黙っていられないタイプだとおっしゃっていて。そうやってお芝居とずっと向き合ってきた先輩と、二人芝居で濃密な時間を共有できることが、今後の自分のためになると感じています。だから今回勝村さんと、とことん舞台を突き詰めていきたいと思っています。さっき勝村さんと本読みをやったと言いましたけど、じつはダメ出しが多くて、二幕にいけなかったんです(笑)。僕にとってはそれがすごく嬉しい。毎日勉強だなと感じています。

岡田将生

――二人芝居ということもあって、セリフ量が多いですよね。いままでの作品より多いんじゃないかなと。
今回はほんとうに苦しくて。なんで二人芝居なんか選んじゃったんだろうって(笑)。いま絶賛(セリフを)入れているところなんですけど、全く入らなくて。勝村さんに、「先輩、セリフが入りません」って言ったら、「大丈夫、僕もだ」って(笑)。この間、いい機会があったので、勝村さんと2人で台本の読み合わせをやったんです。焦らず、ゆっくり、この『ウーマン・イン・ブラック』というお話に僕たちが入っていけば、自然とセリフも入ってくるんじゃないかと思っています。

――セリフ覚えはいいほうですか?
ものすごく悪いんです。あせらずゆっくり向き合っていきたいです。

――どうやってセリフを覚えるんですか?
ずっと台本を読んでいます。口に出したり。前の舞台は、いたるところの壁に台本を全部貼っていたんです。ほんとうに覚えられないところは、洗面所の鏡に貼ったりとか。そうやって追い込んでいたんですけど、今回も焦ったらそういうふうにしようかな(笑)。

――セリフ以外に、稽古が始まるまでに準備しておきたいことはありますか?
まだ演出のロビン(・ハーフォード)さんとは会っていないんですけど、先日、「演出家ノート」というのをいただきました。役に関する入り方とか、こういう感じでいてほしいっていうことが書かれていました。心構えとして、ものすごく勉強になったというか。僕も考えていることはありますけど、あまり決めつけてしまうとなかなかそこから抜け出せなくなってしまうので、柔らかいイメージで稽古まで決めつけずにいこうと思っています。

――その「演出家ノート」の中で印象に残っていることを教えてください。
若き日のアーサー・キップスの情熱が、俳優の情熱とマッチしてくんだということが書いてあったんですが、そういうところでしょうか。

――体力的な面では準備していることはありますか。
体調の管理くらいです。のどもそうです。

――今回の舞台での課題はありますか?
ただただ、怖いと。舞台に立てるかな?ということしかないです。前回の舞台で感じた課題はもちろんありますけど、毎回芝居によって変わると思うんです。今回の課題は、稽古が始まっていくうちに見えて来ると思うので、それを千秋楽に向けてどう変えていくのか。勝村さんとのやりとりもそうですし、演出家の話を聞いて自分のなかでどう変化を見せていくかはあると思います。なので、今の段階では、セリフを覚えなくちゃいけないとか、初日がどうなるかという不安しかない。舞台をやると決まってからは、セリフが出ない夢をたまに見るんですよ(笑)。ありがちですけど。

――それでも、ハードルの高い二人芝居に挑むと。
チャンスがあるんだったら逃す必要がないと思っています。まだ僕も若いし、失敗することに意味があると考えるほうなんです。常にチャンスがあれば挑んでいきたいです。

――前回の舞台で、印象に残っている蜷川さんの言葉はありますか?
前回蜷川さんに言われたことは、どれだけ芝居を楽しむかということ。一瞬一瞬を役で生きろということ。この言葉は、今後の舞台でも映像でも、忘れることはないだろうと思います。

岡田将生

――今回の作品のジャンルは、「英国ホラー」なんですよね。岡田さんご自身ホラーがお好きだと聞きましたが。
そうなんです。好きなんです。

――好きなジャンルを演じられるというのは、どんな心境ですか。
いまは楽しみだけです。

――合宿をするかも、という話もあるようですね。
時間が合えば合宿したいですね。いわば稽古が合宿みたいな感じだと思うので、みっちり稽古して、いろんなものとちゃんと向き合いたいと思っています。

――名古屋、新潟、と地方公演があります。
前回の舞台で、東京と大阪でもお客さんの反応が違ったんです。新潟や名古屋の反応も楽しみです。いろんな方に観に来てほしいですね。

――では最後に、公演に向けての意気込みをお願いします。
自分が出来る限りのことをやりたいと思っています。今年の夏は『ウーマン・イン・ブラック』にどっぷり漬かって、観てくださる方と一体になって、その時間を一緒に物語を追体験していきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていていてください!

◇岡田将生(おかだ・まさき)プロフィール◇
1989年8月15日生まれ、東京都出身。最近の主な出演作に、ドラマ『不便な便利屋』、映画『想いのこし』『ST赤と白の捜査ファイル』『エイプリルフールズ』、舞台『皆既食-Total Eclipse-』。現在、主演映画『ストレイヤーズ・クロニクル』が公開中、『秘密 THE TOP SECRET』が2016年公開予定。

◇『ウーマン・イン・ブラック』◇
世界40以上の国で上演され、ロンドン・ウエストエンドでは26年目のロングラン公演に突入した英国ホラー演劇の傑作。
観客のいない劇場。中年の弁護士キップスは、自らの呪われた体験を、若い俳優の手助けにより劇場で語ることにより、その呪縛から解放されようとする。俳優が“若き日のキップス”、“キップスが出会った人々”をキップスが演じる。

若きキップスは、顧客の老婦人の遺産整理のために人里離れた片田舎に出かける。そこで彼は、いるはずのない老婦人の無人の館の裏でいるはずのない黒い服の女を目撃、その夜から次々に不可解で奇妙な出来事に遭遇することとなる…。

公演日程:
【東京】2015年8月7日(金)~30日(日) PARCO劇場
【名古屋】2015年9月3日(木)、4日(金)名古屋市青少年文化センター アートピアホール
【新潟】2015年9月6日(日)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
【大阪】2015年9月8日(火)~12日(土)森ノ宮ピロティホール

原作:スーザン・ヒル  脚色:スティーブン・マラトレット
演出:ロビン・ハーフォード 翻訳:小田島恒志
出演:岡田将生、勝村政信

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