表現・さわやか 池田鉄洋にインタビュー「先輩たちがまだふざけてるから、うちらもふざけ倒さなきゃって思います」


個性派俳優として映像作品でも活躍する一方、コメディ作家・演出家としても活動しているイケテツこと池田鉄洋。近年は商業演劇系の舞台も増え、主宰する“苦笑系”コントユニット「表現・さわやか」(以下「さわやか」)も昨年で10周年を迎えるなど、地道かつ確実に支持を高めている。そんなイケテツに「さわやか」の次回公演『TanPenChu-♥』の話や、「ただ笑えるだけの舞台」を作り続ける思いなどについて語ってもらった。

池田鉄洋

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ムズムズが止まらないという、新しいジャンルの笑いに。

──番外公演だけあって、今回は半分以上が初ゲスト出演者ですね。

恋愛をテーマに書き下ろしたけど、事情があって没になった短編コントがあったんです。これを使いたいと思って、今回は恋愛モノをやることにしました。でも10年以上の付き合いのある(「さわやか」の)連中と、今さら恋愛話なんてしたくないので(笑)、女優さんを中心に、たくさんのゲストをお呼びしました。

──中でも異色なのは鈴木砂羽さんですよね。

砂羽ちゃんは昔からずっと「出たい」と言ってたんですが、ついに「なんで呼んでくれないんだ!」と怒り出したので(笑)。でもコントをやってもらうイメージがないので、最初はしっかりしたストーリーのある芝居にしようかと思ったんですよ。でも本人は「どコントやるんだあ!」と、チラシ撮影でも頼みもしないのにソバカスを描くほど大はしゃぎで。その要望に応えて、やっぱりコント色を強めることにしました。

──「かもめんたる」さんは、お笑い界からは初のゲストになりますか?

初めてですね。共演の経験はなかったんですけど、彼らのコントが一ファンとして大好きでして。マニアックな世界を取り上げながらも「誰でも笑わせたい」と思ってらっしゃるという、その職人性というか、真面目さがすごいなあと。だから「さわやか」とは、いい掛け算になることを期待してお呼びしました。

──でも「キングオブコント」のチャンピオンを、自分のコント作品に出すって大胆不敵ですよね。

自分でも「馬鹿か!?」って思いますよ(笑)。だから砂羽ちゃんは「お力お借りしまーす!」という感じだけど、「かもめんたる」さんには「勉強させていただいてよろしいでしょうか?」という気持ちです。でもお二人は、役者としてすごく上手いんですよ。本人たちは「僕たちは役の入れ物」と言ってるらしいので、多分憑依系の役者なんだと思います。

──梅舟(惟永)さんと浅野(千鶴)さんは?

梅舟さんは昨年映画の撮影でご一緒して「この人上手いなあ」と思ったのでお呼びしました。浅野さんは「味わい堂々」という女性3人のユニットのメンバーなんですが、この子もまた面白いんですよ。二人とも最近チョコチョコと客演が増えているので、目ざとい人は注目している存在だと思います。

『Tan Pen Chu-』

──それにしてもこのメンバーで恋愛って、相当濃いものになりそうですね。

いっそのこと、結構ガチでイチャイチャする、目も当てられないようなものにしようと思っています。深夜の駅で酒に酔ってチュッチュしてるカップルを見てる時のような、ムズムズさが止まらない感じの公演にしたいなあと。それって実は、新しいジャンルになり得るんじゃないかと思ってるんですよ。「そんなもの見たくない!」って大コケするかもしれないけど(笑)、でもちゃんと笑いを届けることはお約束します。

──いつもの「苦笑系」とはちょっと違う感じ?

だと思いますね。男性同士のキスがいっぱいあるコントを書いたことがあるんですが、あの時と同じように「イヤだー!」みたいなことになるんじゃないかと。扱うのは男女の熱い恋ですけど、同じような悲鳴が上がると思うんですよねえ。

──悲鳴系?

そうかもしれない。笑いと悲鳴が混在するといいなあと思います。

池田鉄洋

──「さわやか」ではイケテツさんの女装もお約束になっていますが、今回も女性役で出るんですか?

実は今、誰を女役にするかで悩んでいるんですよ。(「かもめんたる」の)槙尾(ユウスケ)さんは女装が名物だし、うちの(佐藤)真弓さんは男役で行くだろうし、じゃあ俺は男かなあ? 女かなあ? と。

──何ですかそのジェンダーフリーな感じは。

そうですねえ、本当に変な団体です(笑)

「大人の学芸会」を、ちゃんとできれば楽しんでもらえる。

第11回公演『The Greatest Hits Of HYOGEN SAWAYAKA』
第11回公演『The Greatest Hits Of HYOGEN SAWAYAKA』

──イケテツさんの芝居って「あーバカらしかった、以上」みたいな感じが、魅力といえば魅力ですよね。

それってすごく、私にとっては褒め言葉ですね。本当に、多くの方に笑っていただきたいというのがありますけど、やっぱり自分が見たい世界を作るという、指針はそこしかないんです。「これウケそうだから、こういうのがいいんでしょ?」みたいなのをやったことがない。それができれば、もうちょっとお客さんが入るんでしょうけど。

──確かに舞台上の人たちが、ひたすらやりたいことやってて「…楽しそうですね、皆さん」と苦笑するような世界です。

昔「大人の学芸会」というキャッチフレーズを付けてたんですが、学芸会ってやってる本人が一番楽しいわけですから。そういう姿をちゃんとお見せできれば、まず間違いはないかなと。私は(TV番組)『オレたちひょうきん族』を見て育った世代ですけど、あれって出演者がすごく楽しんでたじゃないですか?

──そう言われるとあの番組も、「さわやか」と同じような学芸会っぽいノリでしたよね。

観ている側もその世界を「楽しそうだなあ」と喜んでいたし、私もそれに憧れましたね。だからユニットのメンバーにも、毎回オファーをする時は「楽しくなかったら出なくていいよ」と言ってます。私はこれが王道のつもりでやってるんですけど、今の若い人にとってはそうじゃないんですかね?

第10回公演『ストレンジ ストーリーズ』
第10回公演『ストレンジ ストーリーズ』

──コメディ系の芝居をやってる人からよく聞く話ですが、最近は「さわやか」のように、ストイックに笑いだけを追求するような芝居は少なくなってきていますね。

そうですよね。特に東京だと、うちらより下の世代があまりふざけてないじゃないですか? 変なエネルギーを持っている人は、芸術方面にはいっぱいいると思うんですけど。でも笑いって、確実に身をけずっていく作業でもあるから、歳を重ねるとどうしても劣化していくんですよ。将来を考えたら、あまり挑戦しない方がいいジャンルかもしれない。でもまあ、他にいない方が差別化ができるから、ラッキーっちゃラッキーなんですけど(笑)

──ただ劇団★新感線などのように、上の世代や同世代でもバカバカしい笑いを元気にやり続けている人は多いわけですしね。

確かにね。先輩たちがまだふざけてるから、うちらもふざけ倒さなきゃって思います。(宇宙レコードの)小林顕作君とか、(カムカムミニキーナの)松村武君とかも未だに頑張ってて、やる気まんまんですからね。周りは「そろそろ落ち着けよ」と思うかもしれないけど、改めてちゃんと存在を示していかないとなあ、と思います。やっぱりふざけて面白い人はカッコイイですからね。結婚して私生活はだいぶ落ち着いちゃったんですが(笑)、芸は落ち着かないようにしたいです。

──でも本当に、無駄に知性をアピールしないこのスタイルを貫いてほしいです。

うん、知性は出したくないです。知性とか芸術性は、他の人に任せますわ。チラシもこんな感じで、毎回徹底的にふざけてますけど、これを見てちょっとでも「面白そう」と思っていただけたら、多分舞台を観ても間違いがないと思います。もう「さわやか」にとって、チラシは踏み絵みたいなものですよ(笑)

池田鉄洋

【プロフィール】
池田鉄洋(いけだ・てつひろ)プロフィール

1970年10月31日、東京都出身。映画『裸の銃を持つ男』シリーズのレスリー・ニールセンに憧れてコメディの道を志す。1993年に劇団「猫のホテル」に入団して演劇活動を開始(2012年退団)。数々の舞台に立つほか、『サラリーマンNEO』『TRICK』などのテレビ出演でクセ者俳優の地位を確立する。2004年に個人ユニット「表現・さわやか」を立ち上げ、コメディ系の作家・演出家としても注目される存在に。最近は『BACK STAGE』『GO WEST』などの商業系の舞台の作・演出も手がけている。

【『TanPenChu-♥』とは?】
強烈なキャラクターの人々がやりたい放題の限りを尽くす、オチもカタルシスもガン無視なコントの数々に思わず苦笑する…という「苦笑系」の笑いで観る者を楽しませる「表現・さわやか」の番外公演。“だめんず”好きをこじらせて貧乏神に恋する女、名軍師に対して戦争ならぬ恋愛の相談をする女など、何とも奇妙なラブストーリーの数々をかわいくもおかしく描いていく。彼らいわく「胸キュンならぬ、胸ザワ」な恋愛コント集になるそうだ。

表現・さわやか 番外恋愛公演『TanPenChu-♥』
◆作・演出
池田鉄洋

◆出演
鈴木砂羽
岩崎う大(かもめんたる) 槙尾ユウスケ(かもめんたる)
梅舟惟永(ろりえ)浅野千鶴(味わい堂々)
佐藤真弓 いけだしん 岩本靖輝
池田鉄洋

【東京公演】赤坂RED/THEATER
2015年 9月5日(土)~13日(日)
【大阪公演】HEP HALL
2015年 9月18日(金)~ 21日(月・祝)

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