WOWOW連続ドラマW『ふたがしら』早乙女太一にインタビュー!「今、この時に宗次という役に出会えて本当に良かったと思います!」


2015年6月13日(土)にスタートするWOWOW連続ドラマW『ふたがしら』。オノ・ナツメの同名人気漫画を新しい切り口で時代劇化した注目の作品だ。本作でクールな色男・宗次を演じる早乙女太一に、役に賭ける思いや撮影中のエピソード、子役時代から“百年に一人の女形”として活躍した「劇団朱雀」の解散など、さまざまな角度から今の思いを語って貰った。

早乙女太一

――『ふたがしら』は先日クランクアップしたそうですが、早乙女さんから見てどんな作品になりそうですか?

新しく、面白い視点で描かれた”時代劇“になっていると思います。と言うのも、時代劇と言っても侍はほとんど出て来ないし、刀を使っての斬り合いもほぼありません。これまでスポットが当たらなかった人々のストーリーと言う事で、時代劇を良くご覧になっている方達には新鮮に、普段あまり時代劇をご覧にならない方達にも斬新なドラマとして楽しんで頂けるのではないでしょうか。

これまでも「クール」な役を演じる機会は多かったのですが、それは少年や青年特有のクールさで、今回の宗次役では大人の部分を意識して演じさせて頂きました。宗次は胸に熱い思いを抱いてはいるのですが、それをストレートに表に出せない部分もあって、そういう彼の葛藤は自分と近しいと感じる所もありました。今までの早乙女太一とは一味違った役どころとして観て頂けると嬉しいです。

――『ふたがしら』の撮影に入られたのは「劇団朱雀」解散公演の直後だったと伺っています。

解散公演の千秋楽から数日後には撮影がスタートしていました。現場に入ってまず思ったのは「次に進む場所があって良かった」という事でしたね。僕自身も宗次と同じように胸にウズウズした感情があって、その感情を使いながら役と向き合っていたような気がします。

映像の現場の経験が多い方ではないので何とも言えないのですが、京都での撮影では映画関係のスタッフさんが大勢いたり、スケジュール的にもキツい事があったりと、通常の撮影とは違う所も多かったらしいのですが、僕は「へえ、そうなんだ」と通常モードで参加させていただいていました(笑)。劇団解散直後の撮影という事もあり、1日現場に居られる事はむしろうれしかったですし、じっとしていたらいろいろ考えてしまう時期に、作品や役に向き合える機会を得られて良かったと思います。

――入江(悠)監督とはどんな事をお話になりましたか?

オファーを受け、最初にお会いした時に監督から「現代風時代劇ではなく、ちゃんとした形で時代劇を撮りたい」と伺いました。入江監督自身、とても時代劇がお好きなんだそうです。「僕より時代物については詳しいと思うのでよろしくお願いします」と言っていただいたりもしました。ただ、舞台と映像では時代物と言ってもまた違うので、その中で自分が出来る範囲の事を精一杯やりたいと監督にはお伝えしました。

実は現場ではほとんど監督としゃべっていないんです(笑)。勿論、細かい動きや演技についてはその都度話しましたが、後は喫煙所でもお互い無言だったり(笑)。あ、でも一度「ブログ、見ましたよ、全然更新していないじゃないですか」とツッコまれ、僕も「書けてないですねー」と返したかな…うん、現場で芝居と関係ない監督との会話はこれくらいだったかもしれません(笑)。

早乙女太一

――『ふたがしら』の脚本は劇団☆新感線の中島かずきさんですね。

新感線の舞台には何度か出演させていただいているんですが、昨年の『蒼の乱』では『ふたがしら』弁蔵役の松山ケンイチさんとご一緒させていただきました。今回もそうなのですが、中島さんの脚本は変な風にひねりがないというか、真っ直ぐでエンターテインメントの王道という気がして、セリフをしゃべっていても気持ちがいいんです。

――早乙女さんが思う宗次の見どころを教えて下さい。

今回僕が演じた宗次という役はキャラクター紹介でも「クールな色男」と書かれています。自分としてはその部分に実はいちばん引っ掛かりも感じましたし、難しいなあ、と思いました。映像は舞台と違ってアップもありますし、メイクもほぼしていない状況で芝居をします。色々ごまかしがきかない上に髪型は“ちょんまげ”。最初は“ちょんまげでクールって…どんなだ?”と思ったり(笑)。更にそこに“色気”を足すという事でどうしようかと思いました。

舞台で“色気”のある役を演じる時は敢えてその事を意識しないようにしていているんです。色気とか色っぽさを意識して表現しようとすると、その瞬間全部消えてしまいますので。今回は舞台の時より更に意識を消すようにしました。極限まで意識を消した中で宗次の“色気”がどこまで出ているか、映像を観て感じて頂けたら嬉しいです。

早乙女太一『ふたがしら』(C)オノ・ナツメ/小学館 (C)2015WOWOW/ホリプロ

――現場の若手チーム…松山ケンイチさん、成宮寛貴さん、菜々緒さんとはどんなお話で盛り上がりましたか?

一番長く盛り上がったのはカメムシの話ですね(取材陣爆笑)。撮影で京都の山に入る事も多かったんですけど、虫も多くて…僕、虫が苦手なんですよ(笑)。で、ある一匹のソレが、カメムシなのか、ミドリムシなのかって現場で論争になりまして(笑)、成宮さんがスマホでいろいろ調べてくれて…それが一番盛り上がりましたね。人面のカメムシもいたんですよ!

松山ケンイチ『ふたがしら』(C)オノ・ナツメ/小学館 (C)2015WOWOW/ホリプロ

成宮寛貴『ふたがしら』(C)オノ・ナツメ/小学館 (C)2015WOWOW/ホリプロ

――弁蔵役の松山(ケンイチ)さんとは一緒に過ごされる時間も多かったとか。

松山さんとは食事の時も含めほとんどの時間一緒にいました。新感線の『蒼の乱』でご一緒した時から、凄く大きなエネルギーを内に秘めている方だと思っていました。裏表のない方で、仕事でもプライベートでも変な使い分けが一切ないんですよね。芝居の事を話す時もあるんですが、基本的には一緒にいてもお互いあまりしゃべらないという(笑)。自然体の二人だったと思います。

――宗次は頭(國村隼)の意志を継ぎつつ、一味から離れて別の居場所を探します。この生き方が早乙女さんの“今”とリンクしていると感じました。

本当にその通りで、このタイミングで宗次という役に出会えて凄く良かったと思います。今までは「劇団」という形があり、そこに家族や所属している劇団員たちがいて、皆で舞台に立っていました。実は僕、劇団の責任を負うという事に対して積極的ではなかったんです。でもいつの間にか先頭に立つ形になっていて…。ただ、背負うものがあるという思いが自分の活力になっていた所もあり、劇団を解散したら、いろいろな意味で“軽く”なるのかとも思っていたのですが、全然そんな事はなく、むしろ“重く”なっていったんですね。

いろいろな覚悟を決め自分の意思で「劇団朱雀」を解散する事にしたのですが、劇団や劇団員、家族に対する思いや責任感はますます重く、強くなっていきました…そういう所が宗次とのある種の共通項でもあり、彼の気持ちにすっと入っていく事が出来たのかな、と。

まだ自分自身、完璧に劇団解散後の新スタートが切れているかと問われれば、そこは微妙なんですが、作品の中の宗次は確実に新しいスタートを切っていると思います。『ふたがしら』でこれだけ今の自分と重なる役と出会う事が出来たのは本当に幸せなことです。

――WOWOWで放送される「ノンフィクションW」では「劇団朱雀」の解散公演を30日間に渡って追っていますが、公演の期間中、どんなお気持ちでしたか?

公演中にはあまり最後だ、という感覚はなかったですね。本当の千秋楽の前日位に「あー 明日で終わるんだなあ」と実感したくらいで。とにかくこれまでの中で最高のものをお見せしたい、お見せするんだ!という一念が強かったです。自分としてはそれをやり切った、という感覚で、千秋楽の幕が下りるのを舞台の上で見た時は何だか変な感じでした。終わり、なんだけど終わりじゃない…みたいな。

――解散公演には山崎銀之丞さんや久保田創さん、富岡晃一郎さんら外部の舞台でご一緒した皆さんも参加されていましたね。

よくご存知ですね(笑)。皆さんに出演のお願いをした時も、僕から解散の事を話す前から何となく気付いてはいたみたいでリアクションは薄かったです(笑)。更に解散公演ではあるけれど、これは「終わり」なのではなく、この先どうなっていくか、どうしていくのかを話した上でのオファーでしたので、明るく引き受けてくれました。

僕が大衆演劇というものにきっちり向き合ったのはここ最近の話で、それまでは恥ずかしさみたいなものもあって、否定してしまったり、胸を張って出来ないと思っていた所もあるんです。早乙女太一という名前の前に、必ず「大衆演劇の」って付くのも正直嫌でしたし。それが演出するようになったり、外部の舞台でいろいろ挑戦をさせていただくことで段々気持ちが変わってきました。

大衆演劇には大衆演劇ならではの良さ、楽しみ方がある…明治座の舞台に立った時に改めてそう思いました。そこで共演した山崎銀之丞さんが僕の活動をほめて下さったのも凄く嬉しかったです。

ノンフィクションW 早乙女太一 旅立ちのラストショー ~大衆演劇「劇団朱雀」最後の30日~

――座長でお父様でもある葵陽之介さんに解散のことをお話した時、どんな反応だったのでしょう?

実は覚えていないんですよ(笑)。ただ以前からこの先の目標みたいなことは話していましたし、それには劇団という形をどうするか考えなくては…という思いも伝えていたので、いつかそういう日が来るということは座長も理解してくれていたと思います。そうですね、「ついにその時が来たか」みたいな感じだったのかな。

いろいろ厳しい条件の中、親が座長として立ち上げた劇団でしたし、大変なことも多かったので、僕とはまた違う強い思いを座長は抱いていたと思います。ある意味“ホーム”とも言える劇団が無くなってしまうのはひとつの大きな転機ですが、僕を含め劇団員全員が新しい挑戦をするための解散でした。

一人になった事でプレッシャーもありますが、同時に大きなパワーが宿るのも感じています。今はまだ力不足な所もありますが、いつかもっと力が付いた時に自分が皆の“ホーム”になるような場を作っていけたら、と。僕自身、解散をネガティブなものとは全く思っていないんです。それがいつなのか、どういう形になるのかはまだ分かりませんが、その時が来たらまた皆で集まって朱雀の流れを引き継ぐような芝居が出来たらいいですよね。

早乙女太一

一見、他者を寄せ付けない雰囲気をまといつつ、取材陣からの問いに対し、丁寧に言葉を選びながら懸命に語ってくれる彼の姿を見て「多くの波を乗り切ってきた人なのだな」と思う。劇団解散後の自分の姿と『ふたがしら』宗次の姿を重ね、「今、この役と出会えて本当に良かった」と語る早乙女太一の目は確かに“明日”を見据えていた。

彼の新スタート第一弾とも言える『ふたがしら』で、宗次がどう躍動するのか、オンエアが楽しみでならない。

◆土曜オリジナルドラマ 連続ドラマW『ふたがしら』
WOWOWプライム 6月13日(土)22:00スタート(第1話無料放送)

豪放な性格の弁蔵(松山ケンイチ)とクールな色男・宗次(早乙女太一)は、八王子の飛脚問屋で働いていた。彼らの裏の顔は“赤目”を名乗る盗賊の一味。「脅さず殺さず汚え金を根こそぎいただく」のが赤目の仕事。赤目の頭(かしら)・辰五郎(國村隼)を敬愛する二人は、夜な夜な仲間とともに悪人の屋敷に忍び込み仕事に精を出していた。

だがある日、辰五郎は二人の手を取り、「一味のこと、まかせた」と言って息を引き取ってしまう。しかし、おこん(菜々緒)が預かった遺言状には、辰五郎の弟分・甚三郎(成宮寛貴)に跡目を継がせると記されていた。納得のいかない二人は、赤目一味とたもとを分かち、旅立つ決意をする。そう…「でっかいこと」を成し遂げるために!

◆早乙女太一 旅立ちのラストショー ~大衆演劇「劇団朱雀」最後の30日~
WOWOWプライム 6月13日(土)13:00

◆劇団朱雀 解散公演 「FINAL」 早乙女太一
WOWOWプライム 6月13日(土)13:45
(C)オノ・ナツメ/小学館 (C)2015WOWOW/ホリプロ

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