ミュージカル『ボンベイドリームス』加藤和樹にインタビュー「ヴィクラムの表と裏の顔を見せたい」


ミュージカル界の巨匠、アンドリュー・ロイド=ウェバーがプロデュースした“マサラミュージカル”『ボンベイドリームス』。インド映画界“ボリウッド”を舞台にしたこの作品で、主人公・アカーシュと恋敵(!?)となる弁護士・ヴィクラムを演じるのは近年ミュージカル界での活躍も目覚ましい加藤和樹。2015年の幕開けを飾る作品を前に、今思うこととは?

『ボンベイドリームス』加藤和樹

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――この『ボンベイドリームス』というのはインド人作曲家を起用してウエストエンドで作られた作品、という少し特殊な作品ですよね。出演が決まった時の感想はいかがでしたか?

チャレンジだなと思いました。僕たちは日本人なので、インドの方が作曲した音楽に日本語がどうのるのか…僕も音楽をやっていますから、そこの難しさはあるなと。正直、海外ミュージカルはどうしても日本語になった時に言葉がのり辛い部分はあると思うんです。なので訳詞の方にどんな言葉を紡ぎだしていただけるのか、そしてそれを僕らがどう伝えられるのか。そこが一番の壁になってくるだろうとは思いましたね。でも音楽の魅力というのはとてもあって、本当にキャッチーですぐ覚えられるようなフレーズばかりなんですよ。

――ボリウッドを舞台にしていますが、ストーリー自体もマサラムービーのようにストレートな作品ですよね。

わかりやすいですよね。起承転結がはっきりしてて、笑えるところは笑える、泣けるところは泣ける。お客さんも気持ちの流れが作りやすいんですよ。もちろん単純明快だからこそ難しい部分もあるし。この作品はボリウッドを舞台にしてるという魅力もあって、僕自身はそこには直接的に関わらない役柄ですが、インド映画界の裏表を描いているという面白さもあります。国によって貧富の差があったり、環境は違うかもしれないけれど、同じ人間だから国が違っても共感できる部分はあると思うんです。だから日本人が日本語にのせて伝えられるマサラミュージカルもあるだろうし、音楽に乗せてより伝わりやすい伝え方をしたいですね。

『ボンベイドリームス』加藤和樹

――なんというか、作品全体の熱量がすごく高いですよね。

僕らの生活には映画だけじゃなくてたくさんの娯楽が溢れてるけど、インドにおける映画というのは僕らの思う“娯楽”とは違うんですよね。一攫千金じゃないですけど、夢を見られる世界。だからこそ、貧困を知ってるからこその雑草魂じゃないけど…僕も地方から出てきてるからわかりますけど“夢を追いたい”という思いは誰しも持ってて。でもそうもいかない現実もあるじゃないですか。それを変えたいと思う青年がアカーシュで。主人公がまっすぐだから共感できる部分がありますよね。

――今回の役柄についてはいかがですか?

ネタバレになるのであまり説明できないのが辛いんですが(笑)ヴィクラムというのは自分が信じた道があって、そこには真っ直ぐなんですよね。それがどんな道であろうと、正しいと思う。でもそれって誰でもそうだと思うんです。自分が信じるものの正義というか、誰が悪いというわけではない。彼は彼なりの信念に基づいて行動をしている。ヴィクラムの持つ表と裏の顔、そこが見えればいいなと思ってます。

『ボンベイドリームス』加藤和樹

――単なる弁護士役ではない感じですよね。

傍から見たら嫌なやつなんですよ(笑)。インドで弁護士と言ったらかなり身分も高いですし。だからこそ「なんで?」と思う部分が僕自身もあって。そういう見えない部分をどう料理していくか、そこの味付けをどうするかが楽しみですね。

――しかし今回、キャストもなかなか“濃い”というか、個性豊かな方が揃いましたね。

そうなんですよ。これが本番で歌って踊って芝居するのかと思うと、今のうちに慣れておかないとですね(笑)。実は初めてご一緒する方が多くて、浦井健治君も共演は初めてなんです。もちろん存在は昔から存じてましたけど、ようやくご一緒できたなと。

――初めて観たストレートプレイの舞台作品が浦井さん主演のものだったとか。

そうなんです。『暗くなるまで待って』という作品だったんですけど、すごく狂気に満ちた役柄で、こんな役者さんがいるんだと。その後いろんな作品を観て「本当に幅広い人だな」と思ってました。ストイックな方なのかなと勝手に思ってたんですけど、実際に会うといい意味で軽いというか、すごく柔軟だし気さくで。何より、一緒にいて楽しそうなんですよね。

――会見の時も、舞台裏から常に楽しそうな声が聞こえていたのが印象的でした。

それはもう、浦井さんの人柄ですね。新年一発目のハッピーな作品なので、僕らが一番楽しみたいと思います。

――2015年はこの作品の後に『タイタニック』で初主演も控えてますね。

そうなんですよね…時間があまり無いですが、もう、やるしかないなと思ってます。

――近年、ミュージカル作品の出演も多くなっていますが、ご自身の中での変化は感じられますか?

自分はもともとミュージカルが苦手で。でもこれはよくお話するんですけど、山崎育三郎君と出会った時、彼の歌の表現力が本当に素晴らしくて…これがミュージカルなんだ、と。歌は歌、芝居は芝居だとそれまで思っていたのが、ミュージカルというのはお芝居なんだ、と自分の中で納得したんです。そこに気づいた時、ミュージカルの表現って面白いなと。自分のやってる音楽とも違うし、伝え方も違う。これをもっともっと徹底してやりたいなと思ったし、また彼と共演したいとも思った。それが大きいです。その後もミュージカル界の先輩方と共演させていただくことによって、色々なことを学びましたし…その学びをまた自分なりに消化して、自分にしかできないことをやりたいですね。

『ボンベイドリームス』加藤和樹

――音楽活動へのいい影響というのも感じられているとお伺いしましたが、今後はその吸収されたことを表現としていろいろな形で拝見できるのでは、と思っています。

僕自身もそう思いますね。30歳になって、今が一番いい時期だよ、脂がのってくるよとも言われますし。去年一年、自分自身すごく充実していたんです。特にミュージカルで喉の使い方を学んだことで、歌うことがすごく楽になったんですね。今度はそれを応用する番だなと。より芝居で歌えるようになれればいいな、と思っています。


■加藤和樹 プロフィール
1984年10月7日生まれ。愛知県名古屋市出身。第15回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれたことがきっかけで芸能界デビュー。その後2005年『ミュージカル テニスの王子様』の跡部景吾役、2006年『仮面ライダーカブト』の仮面ライダードレイク / 風間大介役で脚光を浴び人気を高める。TVドラマ、映画、舞台、声優など幅広く活躍中。近年では、『真田十勇士(2014年版)』『ミュージカル レディ・ベス』『SONG OF SOULS -慶長幻魔戦記-』に出演。

■ミュージカル『ボンベイドリームス』あらすじ
映画スターを夢見る青年アカーシュ(浦井健治)。彼が住むスラム街は、再開発のあおりをくらい、一斉撤去目前となっていた。これを回避すべく弁護士のヴィクラム(加藤和樹)が彼らを訪ねるが、アカーシュのおさななじみ、ヒジュラのスウィーティ(川久保拓司)の対応は冷ややか。そんな中、スウィーティが抗議活動の的としている美女コンテストの現場でアカーシュは映画監督を目指すプリヤ(すみれ)に恋をする。抗議活動の混乱の中、スターになるチャンスとTVカメラの前で歌い踊り出すアカーシュに、映画プロデューサーでもあるプリヤの父が目を止める。気に入られたアカーシュは大スターのラニ(朝海ひかる)と映画で共演し、一気に人気スターの道を駆け上がるが、そこに待っていたものは――。

ミュージカル『ボンベイドリームス』

2015年1月31日(土)~2月8日(日)東京国際フォーラム ホールC

2015年2月14日(土)~2月15日(日)梅田芸術劇場メインホール にて上演

『ボンベイドリームス』公式ホームページ

Photo:高橋将志

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