『血の婚礼』インタビュー!木村達成×須賀健太、5年ぶりの共演は「答え合わせ」


2022年9月15日(木)より舞台『血の婚礼』が開幕する。『血の婚礼』は、スペインの劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが生んだ三大悲劇のうちの一つ。結婚を控えた“花婿”と“花嫁、そして“花嫁”のかつての恋人が引き起こす、逃れられない血の宿命の物語だ。

一人の女性を奪い合うこととなる男たちを演じるのが、木村達成と須賀健太。木村と須賀の共演は、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』以来5年ぶりとなる。本番に向けて、この共演への想いや、作品にかける意気込みなどを聞いた。

5年ぶりの共演「感情をぶつけ合う」ことはすでにできている

――お二人は、久しぶりの共演になりますね。

木村:健太とまた共演ができると聞いた時は、とても嬉しかったです。それでいて、離れていたこの5年がどう作用するのか。前回共演した時は、1週間顔を合わせない日はないぐらい一緒に作品づくりをしていたので。この5年間、お互いが携わってきた現場で重ねてきた経験を持って、また一緒に取り組めることが何より楽しみです。お客様もこの共演を喜んでくださっていると聞いているので、最高の作品にしたいですし、この2人がこの作品やってよかったと思ってもらえるような形にしたいです。

須賀:達成は、いつかはまた共演したい役者の一人だったので、このタイミングでまたできることがすごく嬉しいです。(前回の共演)当時の僕らに負けないように、逆にパワーアップしたと思っていただけるように、高みを目指せればいいなとは思っています。

――作品がスペインの古典悲劇である『血の婚礼』だと知った時は、いかがでしたか?

木村:詩的な表現が多い分、言葉だけが劇場の中に散らばっていかないように、しっかりと自分たちの発した言葉にしなければいけないなと思いました。何かに頼るのではなく、相手の胸にしっかりと意味と感情を乗せた言葉を届ける、台詞を歌わないように届ける能力がないとできない作品だと思うので、一つ一つの言葉に真摯に向き合っていかなければと。

須賀:戯曲の根源、テーマにあるものは割とシンプルですよね。一人の女性を男が取り合う・・・そこに集約できてしまうからこそ、どれだけ深めていけるかが、この作品に取り組む人たちにとっての一番の課題なのかなと思ってます。人間の中にある愛憎は普遍的で、いつの時代にもあるものだから。だからこそ、この作品は時代を超えて上演され続けているのだと思いました。

木村:でも、健太と「感情をぶつけ合う」ことはすでにできていると思っているので。その一歩先で戦っていける場にしたいですね。

須賀:そうだね。今の僕たちが挑む『血の婚礼』を、色濃く表現したいね。古典作品って聞くと、少しとっつきにくい印象を持たれるかもしれません。僕自身も、最初はそう思ったので。でも、そういう意識も取っ払えるぐらい、各々の役を突き詰めれば、物語として純粋に感情移入してもらえるんじゃないかなと、個人的には思ってます。

「最強の不協和音を生まないといけない瞬間もある」

――今回は、翻訳も一新しての公演になると聞いております。

木村:翻訳劇って、海外の感覚を言葉にしているから、台詞を言っていて少し居心地悪く感じる瞬間もあるんですよ。その感覚は、純粋に悪い時もあると思うんですけど、逆にそうであっていい時もあると、僕は思うんです。言語が変わっているからこそ、最強の不協和音を生まないといけない瞬間もある。不協和音に気持ちを乗せるからこそ、相手に届くものがある。そういうのも、おもしろいところなんじゃないかなって、僕は思うんです。

須賀:多分、日本人って世界を見渡しても特に感情を出すことが下手な人たちだと思うんです。だからこその繊細さをすごく大切にしたいと思うんです。海外の戯曲を読んでいると、テンションの上がり方が「0か、100か」に読めるところがたくさんあって。でも、それを日本人の感覚で受け止めると「87か、42か」みたいな微妙な加減が見えてくる。だから、海外の戯曲だから海外の感覚に無理して合わせるのではなく、演じる僕らがその役柄として抱いた感情がちゃんとお客さんに伝わるように、ちゃんと身が詰まった言葉として投げたいです。

木村:愛するとか憎むとか、国や時代を超えても変わらない、感情を書いた作品ですからね。その場に立って、お互いの表情を見て生まれるものを、その時発する言葉にどれだけ乗せられるか。それを大事にした方がいい作品なのかなと思います。

須賀:台本って教科書だけど、それが必ずしも答えではないと思うから。翻訳劇だからということではなく、役として僕らの中から自然に生まれた言葉として向き合っていきたいね。

この共演は「5年間の答え合わせ」

――ビジュアル撮影で久しぶりに対面された時はどんな感じでしたか?

須賀:久しぶりな感じはなかったよね?

木村:なかった。お互いに「うっす!」みたいな感じでした。逆に「久しぶり」とかやってたら、照れくさくなっちゃってたかも!あの導入って多分すごく大事だった(笑)。

須賀:確かに、小っ恥ずかしくなっちゃう(笑)。

木村:やりにくくなっちゃう(笑)。

須賀:共演していなかった間も、ちょいちょい連絡を取り合ったりはしていたので、完全なる5年ぶりというわけではなかったので、5年前の延長線上に訪れた瞬間って感じでした。

木村:公演を重ねながら、5年間の答え合わせをしていきたいですね。・・・これ、見出しだ!

須賀:いいこと言った(笑)。

――では、特に変化を感じることもなかったですか?

木村:そうですね、当時から発言に責任を持って、みんなを引っ張っていく行動を常にしてくれていたので。健太がそういうスタンスでいてくれたから、僕は自由に自分の考えた方向に進めた気がするんです。あの時、一緒にやるのが健太でなければいけなかったと思うぐらい、出会った頃から僕にとっては大きな人でした。だから、そんな健太が僕の知らない5年間でどんな経験をして、変わらない中でどんな実りを得てきたのか、それを答え合わせで知るのが楽しみで仕方ないんです。

須賀:僕も、当時から達成は何でもできるって思ってた。アクロバット的なパフォーマンスを求められても、身体能力もセンスもあるからすぐにできちゃう。自分にはないものを持ってる人だって感覚は、初めて会った時からずっとありました。根本的なことは変わらないけど・・・でも、やっぱ2人も歳取ったよね(笑)。

木村:分かります、もうあんなに動けないっす(笑)。

須賀:(笑)。老けたとかじゃなくて、お互い同じだけちゃんと年数重ねてきたんだって、久しぶりに会った時に思えたのは嬉しかったな。純粋に、顔つきとかもお互い変わっていると思うし。僕は割と「大きくなったね」と言われ続けて育ってきた感じだったから、こういう感覚が持てたことが面白かったし、なんか嬉しかったです。

「達成とじゃないと成立しないものがあるんだろうって、僕もすごく思う」

――そんなお2人が演じるからこその面白さが、この共演にはありそうです。

須賀:共演のお話をいただいてから、どんな戯曲をやるにせよ、2人は仲良し!みたいな関係の役はこないと思っていたけど・・・でも、殺し合うとは思ってなかった(笑)。

木村:(爆笑)!確かに、そこまでいくとは思わなかった。いがみ合いの果てに和解する関係とかなら想像がついたけど、殺し合ってしまうところまでいくとはね。

須賀:前回は相棒でもありライバルで、今回もこういう関係性に置かれるということは、そういう星の元なのかも。お互いがまったく違うものを持ってるからなんだろうね。達成とじゃないと成立しないものがあるんだろうって、僕もすごく思う。

――レオナルドと花婿の配役については、お互いどう思いますか?

木村:僕がレオナルドで健太が花婿なのは、すごくバランスがいいと思います。でも僕、なんだかんだこういう役はあんまりやってきていないんですよ。でも、まんまできてる気がする(笑)。

須賀:そうだね、戯曲を読んだ時も達成はレオナルドしか考えられなかった。これが逆だったりしたら・・・いやいや、ないな!

木村:それはおもしろくなっちゃう(笑)。

須賀:どこか一公演、やってみる?

木村:スペシャル公演で(笑)!

須賀:衣裳とかもそのまま取り替えてやってみたいね(笑)。

木村:僕が健太の衣裳着たら、ピチピチで六分丈ぐらいになるよ(笑)。

須賀:(爆笑)!

木村達成、須賀健太らの『血の婚礼』ツモリチサトを衣裳にしたメインビジュアル公開

何も持ち帰らなくていい、集中して浴びてもらいたい

――座組作りについてはいかがですか?

木村:すごく素敵な方々たちが集まってくださったので、一緒にこの『血の婚礼』を作り上げられるってことがすごく楽しいです。最初に名前を書いていただいていますが、別にかしこまって真ん中にいるみたいな感じではなく自由にやらせてもらうつもりでいます。主演だからこうしないと、みたいなこともないですから。

須賀:お弁当の差し入れぐらい?

木村:そうですね、おべんべんですね!

須賀:お弁当のことおべんべんって言うな(笑)。実力と経験を兼ね備えた方ばかりなので、何も心配はなく、自分の役に向き合う時間をたくさん取れますね。でも、仲良く明るくいたいね。決して明るい話ではないから、裏側は明るくバランスを取っていこう。

――今の木村さんと須賀さんだから作れる『血の婚礼』を楽しみにしています。

木村:どっちも正義でありたいですね。公演本番中にもどんどん変わっていくような座組は、正直めちゃくちゃいい座組だと思うし。本は変わらないけれど、誰かの変化でフォーカスも変わっていくような、自分たちだけが知る景色を探していけるようなカンパニーでありたいですし、それを観に来ていただきたいですね。

須賀:戯曲自体が何か答えを出す作品ではないと思うので、幕が下りて席を立つ時にどういう気持ちになるかは十人十色です。何かを持ち帰ろうとせずに、フラットな気持ちで観ていただけるのが一番いいんじゃないかなと思います。僕らが5年ぶりに共演する、とかも忘れて、作品に集中して浴びてほしいね。僕らも、そうなってもらえるような土壌作りを稽古場でして、劇場でその世界観を作れるようにしたいね。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

 

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舞台『血の婚礼』公演情報

上演スケジュール・チケット

【東京公演】2022年9月15日(木)~10月2日(日) 東京・Bunkamuraシアターコクーン
【大阪公演】2022年10月15日(土)・10月16日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

スタッフ・キャスト

【原作】フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
【翻訳】田尻陽一
【演出】杉原邦生
【音楽】角銅真実、 古川麦

【出演】
木村達成
須賀健太
早見あかり

南沢奈央
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良

安蘭けい

<演奏>
古川麦
HAMA
巌裕美子

【公式サイト】https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/
【公式Twitter】@chinokonrei






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